艦これすとーりーず ―僕が異世界版艦これの提督になった件について―   作:謎のks

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死者の証言──隠された想い

 ──俺は、戦争で恋人を喪ったんだ。

 

 銀髪の女性だった…ガキの頃から付き合い始めて、何年かしてお互い大人になって、結婚の約束までしていた。

 そんな折──戦火に巻き込まれた街中で、彼女と一緒に避難したんだがはぐれてしまって…全てが終わった後には、彼女の焼死体を呆と眺めてる自分が居た。

 

 もう戦争はたくさんだ、いつ終わるのか分からないのなら…自分が終わらせてやる、そんな気持ちで俺は提督養成学校へ入学し晴れて連合の提督となった。

 

 何でこんな話をって? はは…早い話俺の「惚気話」みたいなものかな? でもそれを言わないと語れないと思ってな…なんせ、死んだと思った恋人と「瓜二つ」の女性が、俺の前に現れたんだから。

 

「──初めまして、正規空母クラスの翔鶴です。よろしくお願いします…♪」

 

 確かあれは俺が南木鎮守府に初めて着任した時だった、その時は社交辞令を交えて終わったが、俺は内心胸が高鳴っていた。

 これは神さまが俺に与えてくれた奇跡だと、彼女を今度こそ守ってやれよ…そう言われた気がしてな?

 翔鶴を見て思ったのは、そんな「訳アリの一目惚れ」だったんだが…彼女自身を知っていく内に死んだ彼女と違う点が浮かんでな。彼女はお淑やかでよく笑う人だが翔鶴は…少し不安げで周りの評価を気にするような「儚さ」を持っていることに気づいた。まぁそれを含めて俺は翔鶴を──好き、だったよ。

 最初は死んだ彼女と重ねていた…だが翔鶴にしかない魅力があることに気づいた。俺は…彼女の「虜」になっていたさ。

 

 ──だが、俺は彼女に最後まで気持ちを伝えられなかった。

 

 提督は指揮する「人」として、艦娘は命令を受ける「兵器」として。それぞれ違う立場もあった、だから中々言い出せなかった。翔鶴は異能体と呼ばれる艦娘の中でも特に蔑まされてるというカテゴリーだったから、余計にな?

 …それでも俺は、彼女を影ながら支えていこうって決めたんだ。彼女だけじゃない、鎮守府に所属する艦娘たちは、俺の娘も同然だ。戦果は挙げないといけないが極力危ない橋を渡らせない…そう決めた。

 

 ──そんな時、俺は「艦娘騎士団崩壊」の報を聞いた。

 

 そして連合上層部から「騎士団に代わる特殊部隊創設案の急募」が各鎮守府に伝えられた。

 南木鎮守府は長い間アサヤケ海域の平和を守ってきたが、同時に艦娘騎士団の援軍として艦娘を戦場に送り出すことも多かったと言う、俺が鎮守府に来る前の話だが…連合もこちらからの良案を期待していたと聞く。正直な話…「知らねぇよ」って突っぱねたい気分だったが、そうは行かなかった。

 艦娘騎士団は全世界から見ても秩序の「楔」だった。それが失われた以上このまま行けば…世界がどうなるか分からなかった。だから…俺はナベさんの推薦もあって、翔鶴たちを中心とした「異能部隊」を設立することにした。

 本当は拒否したかったんだがな…異能部隊に入れば彼女たちに何かあるかも分からない。だがそうも言っていられない状況なのは確かだった。俺は周りの意見を聞きながら慎重に任務内容を吟味し、翔鶴たちが最小限のリスクを背負うだけで済むように取り計らった。…翔鶴の無事を毎日のように神棚に手を合わせて拝んでいたよ。

 

 ──それから一年後、異能部隊が当たり前となった頃。

 

 俺の元にTW機関という連合の秘密組織から抜け出して来たという男が転がり込んで来た、それが「マサムネ」だった。

 マサムネはTW機関の研究員の一人だったが、その研究員のリーダーである「ドラウニーア」という男は、連合に隠れて非合法の実験を繰り返し続けていたと言う。

 とうとう連合の介入により機関の研究員を全員取り押さえようとする動きがあり、自分も含めた数名の研究員は今まで何とか逃げ延びた来たが、逃亡生活に嫌気が差して投降した。そう言っていたな?

 

「もしぼくを匿ってもらえるなら、君にぼくの知っている情報を全て教えてあげるヨ! ただ教える代わりに罪を軽くしてもらえないカイヴェイビー! そのくらいバチは当たらないだろう?」

 

 ──明らかに「怪しい」それが俺の素直な感想だった。

 

 連合本部に問い合わせたところ、ドラウニーアは連合上層部の追跡を何度も掻い潜り、情報を喋ろうとした同僚たちを「粛清した」とまで言われている。どうやっているのかは分からないが…それだけ厳しい目を躱して彼が情報を「話せている」時点で、疑いの目が向けられるのは必然だった。

 だが俺は…マサムネの話を「信じてみる」ことにした。聞けばドラウニーアはあの「艦娘騎士団崩壊」を主導していた危険人物だと言う、そんな男を放っておけないし、情報も圧倒的に足りていないと聞いたからだ。

 何かあったとしても、その都度対応する形を取りたい。敵はそれだけ得体が知れない相手だったから、仮に俺に何かあったとしても連合にとって有益な情報が出てくれば重畳だ。死にたくはないというのが本音だけどな? それに…マサムネの話にも「()()()()()()()()()()()()()」からな。

 俺はナベさんと、連合から派遣された選ばれし艦娘の長門と共にドラウニーアの足取りを追うことにした。

 

 ──安直過ぎだった、俺はあの時…ヤツの「思惑」にまんまと嵌っていたのだ…!

 

 …その後、マサムネからの情報を受けて次々とドラウニーアの拠点を見つけて行った。ヤツは海域ごとに拠点を設けているようだった、ハジマリ、トモシビ…ボウレイ海域は分からなかったな。……何、海底研究所? はは…道理で?

 だがその拠点及び研究所には大きな情報は少なく、研究資料も持ち出された後だった。断片的であるがヤツが「世界を壊して楽園を創造する」ことや、超科学というとんでもない技術を持ち出していることは理解した。

 世界破壊だなんて大それた考えだが、艦娘騎士団崩壊の件を考えればそれが嘘ではないことは明らかだ。何としても食い止めなくては…俺がそう焦りを感じ始めたある日──マサムネの言葉に、俺は衝撃を受けた。

 

「──このアサヤケ海域に、ドラウニーアが!?」

 

「そうだヨ、おかしいと思ったんダ。ドラウは研究所の資料を持ち出して雲隠れした、ということは何処かで新しい拠点を見つけないといけないだロウ? でも海域中の拠点にそれらしい情報がないということは、このアサヤケ海域に居る可能性は捨て切れないのサ!」

「だ、だが…ボウレイ海域の研究所がまだ見つかっていない。ヤツがそこに隠れている可能性もある」

「ん〜、それはどうカナ? ドラウは目上のデキモノは可能な限り潰していく。どんなに汚らしくても凡ゆる手段を使ってネ! 君たち異能部隊の噂を嗅ぎつけてそろそろ動き出してるんじゃないカナ?」

「なっ、貴様…何でそんな大事な情報を!」

「ぼくに怒るのはお門違いサ! こうなることは頭を捻れば誰でも分かったことダ、彼が超科学を使って君たちの目を欺いてこの海域に居る可能性もネ? 超科学の一種「ステルス迷彩」で拠点を隠すことも簡単だからネ!」

「……っ、くそっ!!」

 

 俺は取調室を駆け出し、執務室へ戻るとナベさんに海域中の島を洗いざらいするよう命じた。

 そうしたらマサムネの言ったとおり、南木鎮守府を囲うようにして建てられた謎の機械設備が建てられていたというじゃないか。マサムネの言っていたことに疑いもあったがそんなこと言ってる場合じゃない、俺は──

 

 ──いや、俺は選んでしまったんだ。

 

 あれだけ艦娘たちは俺の娘、そう言い聞かせて来たのに…俺は彼女たちを「兵器」として送り出してしまったんだ。罠だと分かり切っていながら…世界のためだ緊急事態だ諸々理由をつけて、翔鶴たちを…死地に送り出したんだ。

 だが、これが当時の精一杯の判断だった。俺はいつものように…いつもより力強く天に願った「翔鶴たちを無事に帰還させて下さい」と…だが、結果は。

 

 ──南木鎮守府、崩壊。

 

 それは一瞬の出来事だった。建物が酷い揺れに襲われたと思えば水路から深海棲艦の大群が侵攻している姿が見えた。さっきの揺れは敵が砲撃を加えていたんだ。

 外で待機していたはずの四島強襲部隊も見張りの艦娘たちも、監視塔の見張り員でさえナニモノかに「殺害」されていたようだ。だから懐に入られるまで気が付かなかったんだ、俺は愕然とした…やられた。

 

 俺は何とか鎮守府の皆を逃がそうと奮闘するが、奇襲に遭った艦娘たちやその他人員もほぼ全員「殺された」後だった。なんとかナベさんや彼の数名の部下を救命ボートに乗せることに成功したが──

 

「提督殿! 貴方もお早く!!」

 

「──ごめん、責任取ってくるよ」

 

「な!? 何を…提督殿ーーーーーっ!!!」

 

 俺はナベさんたちの制止を振り切ると、そのまま燃え盛る鎮守府内部へ足を踏み入れた。

 自分の馬鹿さ加減に嫌気が差していた…この事態を招いたのは俺が「マサムネを引き入れたから」だと理解し、その汚名を何としても雪ぐためせめてマサムネだけでも取り逃がす訳にはいかないと、俺は足元を炎が走る鎮守府を駆け抜けた。

 

「マサムネ! マサムネぇっ!! どこだぁっ!!」

 

 俺が怒気交じりに声を張り上げても、マサムネは遂に姿を現すことはなかった。

 そんな時──俺の後ろから声を掛ける男の姿があった。

 

「──無様だなぁ? 栄光ある南木鎮守府もこんな愚将が率いていたのでは世話もない」

「っ! 誰だっ!!」

 

 それは──連合の資料で何度も顔を見た男、世界滅亡の首謀者「ドラウニーア」だった。

 

「貴様…貴様がドラウニーア!」

「お初お目に掛かる、目障りな腫瘍を…取り除かせてもらうぞ?」

「何っ、何を(グシャッ)────…え?」

 

 俺はドラウニーアに気を取られている一瞬、背後から何者かに胸を「貫かれていた」。

 俺の胸から血が滴り落ちる腕が見える…だが、その一見華奢な腕には覚えがあった。

 

「…っ! 由良…っ!!?」

 

 後ろを振り返る俺が見たのは──虚ろな眼で俺の心臓を一突きした、異能部隊の一人の「由良」だった。

 

「な、んで……?」

「フ、フフ…フハハハハハッ!! 種明かしだ教えてやろう! この鎮守府を襲撃する前、予め見張りの人員を潰しておいたのだ。その役割を…お前の愛しの「兵器」に担わせたのだ」

「由良は…由良はそんなことしないっ!」

 

 体の力が抜けていく中、俺はドラウニーアの言い分を否定した。事実由良は終始穏やかな性格で、ヤツらに加担することなどあり得なかったからだ。だが…アイツはとんでもないことを言い出した。

 

「何を言うか、それをさせたのは「お前自身」だろう? 南木鎮守府提督よ!」

「どういう……っ!?」

 

 そこで俺が見た光景は──俺と全く一緒の人影が、ドラウニーアの隣に急に現れた不可思議な場面だった。

 

「これはエーテル粒子によりホログラムに肉付けをした、お前の「ダミー」さ。俺はコイツを利用してお前の手駒を懐柔させてもらったのだよ!」

「なん…だと! こ、このクソ野郎……っ!!」

「フハハハッ、負け犬の遠吠えほど見苦しいものはないなぁ? 何れにしろ貴様はもう終わりだ、精々良い断末魔を聞かせてくれ? フハハハハハッ!!」

 

 どうやらアイツは人が絶望する瞬間を見て、自分に浸りたいらしい。ハッ…今思い返しても胸糞悪いな、マサムネの方がまだ可愛く見える。

 だが…俺は絶望を叫ぶよりももっと大切なことがあった。そう思い由良の方へ顔を向けると…涙を零して許しを乞うた。

 

「──由良、ごめんな…」

 

 よく見ると由良の肌は元の白い肌よりも青白く変化していた、額には角のようなものも見える。まるで怪物のような彼女を見て息が更に苦しくなった。

 俺の失態のせいで、由良が利用されてしまった。しかも酷い変わりようで……俺は自分の鈍感愚考を恥じ、不甲斐なさを込めて謝罪した。すると──

 

『──…ッ! テ、イト、ク………?』

 

「ぬっ!? まさか海魔の呪縛が……完全に深海化していなかったかっ、クソ!!」

 

 ドラウニーアは俺たちに背を向けるとそのまま走り出し、視線から消え失せた。どうやら…操られた由良が目を覚ましたみたいだった。

 

『…ソ、そんナ………!?』

「由良…君は、き、み、だけで、も……ぃ………──」

 

 俺は由良を何とか宥めようと声を振り絞るが……もう、限界みたいだ。

 意識の薄れる中、俺は由良の──彼女から今まで聞いたことがないような絶叫が響くのを耳にしていた。

 

 そして──俺はいつものように願った。

 

 

 ──どうか、翔鶴たちが無事でありますように…と。

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・

 

「…っ」

 

 覚悟はしていたけど…想像以上に酷かった。苦しかった。

 僕がさっき立てた仮説は皮肉にも「正しい」と証明された、由良に深海棲艦になる薬を手渡したのは──南木提督の「複製体」だったんだ…!

 くそ…エーテル粒子でニセモノを作るって、そんなことよく思いつくな!? 怒っても仕方ないけど…やっぱりアイツが全ての黒幕だった!

 提督さんは最後まで…自分の命の尽きる一瞬まで、翔鶴や艦娘たちを心の底から心配していた。こんなに出来た人が居なくなってしまうなんて…っ。

 僕は心底アイツに対して腹正しさを感じていた。でも…それでも彼の言葉がなかったら、由良があそこまでココロを強く保つことはなかったかもしれない。由良が受け継いだ彼の「想い」が…ドラウニーアの野望を打ち砕いた要因だったのかもしれない。

 

「…提督、貴方は」

 

 翔鶴が心配そうに彼の顔を覗き込む、提督さんは…流石に取り乱すことはない、寧ろ今までのどの人物たちよりも「爽やかな」雰囲気だった。言いたいことを言ったしやるべきこともやった…悔いはなかったんだ。

 提督さんは翔鶴に向けて微笑むと、優しく語りかけてくる。

 

「心配ないよ、俺は意味なく死んだわけじゃない。君たちが生き残ってあの男を捕まえてくれれば、そこに「俺の意志」は在るからさ?」

「…フフ、貴方らしいお言葉です。安心して下さい提督、ドラウニーアは私たちが今正に「追い詰めて」います、必ずあの男を捕まえて…貴方に報いて見せます!」

 

 翔鶴の言葉に南木提督は笑って頷いた、そして…目を細めると翔鶴に対し和やかに声を掛けた。

 

「翔鶴…髪切ったんだな。すごく似合ってる、可愛いよ」

「そ、そうですか…」

 

 翔鶴は頬を赤らめて顔を俯く、照れ隠しだね?

 

「あぁ、それに前より清々しい感じになった。君は漸く「自分の殻を破って」多くの価値観を学んだようだ」

「それは、どういう意味ですか?」

 

 提督さんの言葉に疑問を隠せない翔鶴、そんな彼女に彼は答えを掲示した。

 

「君は真面目で優秀だけど、少しだけ内気で「自分」を外に出すことを躊躇っていた。…思い当たらないか?」

「っ! それは…」

「よく聞いてくれ翔鶴、自分を出すことに兵器も人間も関係ない。君が本来どういう性格なのかは分からなかったが、俺は君がココロ優しい艦娘であることはよく理解しているつもりだ。どんな顔があったとしても「君はキミ」だよ、自分の気持ちを理性と言葉に乗せて言えたら、きっと皆解ってくれる!」

「提督…!」

「だがそれは…本来は俺が説いても何の意味もない、君自身が見つけなくてはいけないことだったんだ。少し不安だったが…瑞鶴やサラトガ、そしてここに居る新しい仲間たちが、君に良い刺激を与えてくれたようだ」

 

 それだけ言うと提督さんは、僕たちの方へ向き直ると改めてお礼を述べた。

 

「本当にありがとう、君たちには感謝してもしきれない。これからも…彼女と仲良くしてやってほしい、頼むよ」

 

 提督さんは僕たちに向かって頭を下げてお願いした。本当に…こういう人を「カリスマ」と呼ぶんだろうな。

 

「もちろんです、これからも…彼女は僕たちの仲間です!」

「うん!」

「ウィ!」

 

 僕と金剛、野分の言葉に提督さんも満足そうに頷いてくれた。

 

 ──そして。

 

「…っ! 提督…光が!」

 

 翔鶴は提督さんの身体が「光り始めている」ことに驚いていた、マサムネさんも慌てて言葉を投げた。

 

『エーテル粒子が崩れ始めてるヨヴェイビー! もう会えないだろうから思い残すことがないようにネ!』

「翔鶴、君が提督さんにやり残したことはない!?」

「ええっ! 急に言われても……っ!」

 

 僕とマサムネさんが焦らせたせいなのか、翔鶴は提督さんの方へ小走りで近づくと──

 

 

 ──チュッ!

 

 

 …提督さんと「キス」をした、しかも僕の時の頬キスでなく「唇のプレッシャーキス」だった…ちょっと、羨ましいかも。

 

「…これで、思い残すことはありません」

「っ! …ああ、俺もだよ!」

 

 提督さんは翔鶴に笑いかけていた、本当にお似合いの二人だな…僕がそんなことを考えていると、不意に提督さんが僕に語り掛けて来た。

 

「君が翔鶴の新しい提督だな、翔鶴を…出来れば他の娘たちも、よろしく頼むよ!」

「…っ! はいっ!!」

 

 提督さんの頼みを断れるはずはない、僕は…絶対に約束を守る、その気持ちを込めて返事をした。

 彼はそれを聞き届けて確りと頷くと、今度は翔鶴に──最後の言葉を投げた。

 

「ありがとう翔鶴、俺は君を──()()()()()()

 

「っ! ……私も、()()()()()()()()()!」

 

 二人はそれだけ言って互いに笑い合うと──悲運の将は憂いを見せない「笑顔」のまま、光に消えていった。

 

 

 

 

 

・・・・・

 

「終わった…」

 

 僕は妙な満足感を感じていると、マサムネさんが訊ねて来た。

 

『ヴェイビー、これで良かったのカイ? 南木鎮守府崩壊事件の真相は明らかになったはずだけど?』

 

 そうだった、これで一連の流れは理解したぞ、分かりやすく言うと。

 

 

 

・マサムネさんが提督たちを唆して、南木鎮守府の四方に兵器(穢れ注力装置)が設置されていることを教える。

 

 ↓

 

・長門さんが敵の作戦に嵌った振りをしてカウンターを仕掛ける作戦を思いつく。トリガーを引く異能部隊にはあくまで「シルシウム島の偵察任務」と嘘をつく。

 

 ↓

 

・提督さんが異能部隊にシルシウム島偵察任務を伝えるが、勘の良い瑞鶴とサラトガには事前に本当のことを伝える。

 

 ↓

 

・ドラウニーアは提督さんのダミー(エーテル粒子で出来た傀儡)を使って由良に深海細胞を植え付ける、由良に触れた際もエーテル粒子で体温が真似れるとのことで、違和感はなかった模様。

 

 ↓

 

・異能部隊と長門さんがシルシウム島に出向いている間、操られた由良がカウンター作戦の艦娘たちや、監視塔の見張り員の人たちを「殺した」。

 

 ↓

 

・ドラウニーアが南木鎮守府を強襲、それと同時にシルシウム島で大量の深海棲艦が異能部隊に襲い掛かった。

 

 ↓

 

・異能部隊は長門さんが逃がしてくれたが、道中で瑞鶴が敵の餌食となり沈んでしまう…。

 

 ↓

 

・南木鎮守府では提督さんがマサムネさんを追いかけていたが、ドラウニーアに見つかり殺されてしまう。由良はその際提督さんの胸を貫くも、彼の呼びかけに意識を取り戻した。

 

 ↓

 

・異能部隊が帰還した時には、既に南木鎮守府は崩壊した後だった。翔鶴は何もかもを喪ったショックで「憎しみに呑まれ」、仲間たちと深い溝を作ってしまった……。

 

 

 

 …といったとこか、な、長い…漸くピースが埋まったね。

 

「これが事件の真相か……って、あれ?」

 

 僕は辺りを見ているが、出るはずのものが「無い」ことに気づいていた。

 

「嘘だろ…IPがまだ出てない!? もう殆どの人に聞いて回ったのに!」

『どうしたんだい? マダ何か足りないのカイ』

「えっと、実は…」

 

 僕はマサムネさんに改めて翔鶴の「改二」について話す。

 好感度を上げていけば、IPと呼ばれる光る板が現れるはず…それだけ伝えると、マサムネさんは独自の解釈を加えて纏める。

 

『つまり君たちは翔鶴君を「カイニ」とやらにするために、南木鎮守府崩壊の真相を追っていたんだネ? 本来なら彼女と親密になれば「アイピー」という光る"モノリス"が出現するけど、それがなかったと』

「はい、僕としてはこの南木鎮守府について調べれば何か分かると思って」

『それは、ぼくは少し「解釈が違う」と思うヨヴェイビー!』

「それってどういう意味ですか?」

 

 マサムネさんは何も答えず、コンピュータから床に倒れる「生前の自分」を指差す。

 

『そこのぼくの白衣の右ポケットを漁ってごらん? きっとそこに答えがあるヨ!』

「ぅえ!? し、死体のポケットを…? うぅ…やらなきゃいけないかぁ?」

 

 僕はマサムネさんの言葉を訝しみながら、恐るおそる死体の白衣右ポケットに手を突っ込む。祟られそうで何かやだなぁ……ん? これは。

 

「──手紙?」

 

 何と、誰かの書いた手紙が入っていた。後ろの差出人欄から手紙を書いた人を探す、すると…そこに書かれていたのは。

 

「…っ! これ、"瑞鶴"からの手紙だ!?」

「えっ!?」

「何と…!」

「何ですって!?」

 

 僕の言葉に艦娘たちも驚きを隠せず、僕の周りに集まり始める。

 翔鶴は僕に顔を近づけると、手紙の差出人の文字を確認する。

 

「──本当にあの娘の字だ…どうして?」

 

 どうやら本物のようだ、それにしても…何で瑞鶴の手紙をマサムネさんが?

 

『ぼくが崩壊した鎮守府を散策した時に見つけたのサ! ドラウを怪しく感じ始めていたぼくは何か証拠がないものかと、鎮守府内を色々探し回ってたんだけど。正に偶然彼女の部屋に入っていたのサ』

「焼かれずに残ってたんだ、流石幸運の空母だね。…でも何で持ち出したんです?」

『単純に艦娘の意思の書かれた手紙に興味があってネ? 後でサンプルに……ん”んっ、まぁ細かいことはこの際言わないことダ。中身も拝見させてもらったけど、どうやら遺書のようだヨ。君のことについて書かれていたヨ翔鶴君?』

「っ! 瑞鶴の遺書……」

「翔鶴、ほら?」

「…うん」

 

 翔鶴は僕から遺書を受け取ると、少し躊躇いつつも手紙の封を開けて、中に入っていた「彼女の想いを綴った紙」に目を通した──

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 ──拝啓、翔鶴様。

 

 この手紙を見ているということは、アタシとの約束を破ってくれていると信じます。といっても真面目な翔鶴姐だから本当に死んじゃってるかもだけど、そうなっていないと思いたいし、生きているなら伝えたいことがあるので、筆を取らせてもらいます。

 

 ──翔鶴姐、貴女は私の"希望"でした。

 

 アタシ、異能部隊に入る前は貴女と同じように、海域の哨戒部隊に配属されていたの。ちょっとガラは悪かったかもだけど…皆と過ごした時間は、今も瞼の裏に焼き付いているんだ。

 

 でもね…その部隊はアタシを残して全滅してしまった、貴女が見た怪物…深海棲艦によって。

 

 アタシはあの化け物たちの危険性を感じ取っていた、だから早く駆逐するよう連合に訴えた、でもアイツらは目撃例が少ないって理由で、アタシの嘆願を無視し続けたの。現場の声を信じてないってその時は自棄(やけ)になりそうだった。

 それからアタシは戦場を転々として、武勲を上げていった。戦いの中であの時の恐怖をどうにか拭えないか試したけど…弓を持つ手が震えない日は無かった。

 最終的に南木鎮守府へ転属になって、提督や翔鶴姐と出会った。あの時の提督の言葉覚えてる? アタシたちが姉妹みたいって。あはは、確かに似てるなぁって思って、でも…接してみたら貴女は私とはまるで逆でさ。

 優しくて面倒見も良くって、美人だし真面目で仕事も出来るし。貴女は皆の憧れだったんだよ? まぁ…ちょっと毒がある時もあるけど、それも貴女の個性だからね、アハハ。

 貴女は態度の悪かったアタシを何度も庇ってくれた、本当に感謝してる。あのナベシマとかいうオッサンに絡まれてる時に、アタシは貴女に恩返ししなきゃって頭が一杯になってて…つい、貴女を怒らせちゃった。ホントごめん。あのオッサンも話してみたら悪いヤツじゃないからさ、アタシが居なくなっても…喧嘩しないで話だけでも聞いてあげてね?

 …貴女みたいに八方美人になれたら良かったんだけど、これがアタシだからさ? 今更イイコにはなれないというか、昔の皆を否定するみたいで…怖かったんだ。変わろうとする自分が。

 

 でも、今の私には「異能部隊」の皆が居る。シスターや由良は基本的に優しいし、プリンツと酒匂も面白くってつい一緒になって燥いじゃうしで、あれだけ怖かった昔のことが皆と笑顔で居るだけで吹き飛んじゃった。おかしいよね? でもそれは──翔鶴姐が居てくれたからだと、アタシは思うんだ。

 

 だから…貴女たちを護れたのなら、私はどんなことになっても平気。沈むことだって怖くない! …多分。

 

 白状するとね…マジで怖い。今だって自分の沈んだ姿想像してゾっとしてる、当たり前か。でもアタシには翔鶴姐たちが居なくなる方が嫌。貴女たちをあの怪物たちの餌食になんてさせない、先立つ私の我儘を…どうか許してください。

 

 我儘ついでに、あの夜に約束したこと…なかったことにしてほしいんだ。あの時は頭が回らなくって、つい肯定しちゃってた、翔鶴姐があそこまで言ってくれたんだって思うと…嬉しくってね?

 

 私は…貴女に生きてほしい、だって私は下手したら昔の恐怖を引きずったまま生き続けていたかもしれない。そんな私に生きる希望を与えてくれたのは──間違いなく貴女だよ?

 

 もし、貴女が私を喪って何もかもに絶望したのなら…大丈夫、貴女はきっと立ち直れる。暗闇の道の先にもきっと「希望」はあるよ、私が保証する。

 

 

 だから──立ち上がって、私のため…皆のために。

 

 

 貴女が生き続けてくれる限り、貴女は誰かの「希望」であり続ける。私は…貴女にそうやって生きてほしいと、遠い空の上で願っています。

 

 

 

 

 

 ──貴女の最愛の妹、瑞鶴より。

 

 

 

 

 

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