艦これすとーりーず ―僕が異世界版艦これの提督になった件について― 作:謎のks
また展開早めかも…すみません。
翔鶴に手紙を音読してもらい、僕たちも瑞鶴の想いを共有していく。
手紙の内容を読み終わった後──暫くの沈黙、そして。
「──……っ」
想いを受け取った翔鶴の目に、何度目か分からない一筋の涙が。でもこれまでの「悲しみに咽び泣く涙」ではなく、もっと晴れやかな、爽やかな笑顔と共に流れる涙だった。
「馬鹿ね…希望なんてらしくない言葉使って。文章の所々に消した跡があるし、あの娘なりに頑張って書いたんだろうなぁ…フフ」
「瑞鶴は最期まで翔鶴のことを考えていた、君に自分が居なくなった後も笑顔で生きてほしいって願ったんだ。だから…君が全てを知った後でこの手紙を読むことを想定して、あの夜の会話の後にこの遺書を書いたんだと思う」
僕は端的に彼女の想いを表すと、翔鶴も静かに微笑んで頷いた。
「そうね、もしあの惨劇の後にこの手紙を読んでいたら…少しは落ち着いて生きることが出来たかしら?」
「きっとそうなってたよ。でも…南木鎮守府が崩壊してしまって、その機会も失ってしまったわけか」
「なんだか…そう考えると翔鶴が可哀想だね」
「ウィ…なんとも言えませんがね、状況がじょうきょうでしたので」
金剛と野分は翔鶴の辛い過去に思いを馳せると、翔鶴は二人にお礼を言うと補足した。
「ありがとう、でもこれはこれで良かったのかも。例え落ち着いていたとしても私自身は変わらなかったと思うわ、自分と「向き合う」ことは出来ずに誰にもココロを開けなかったと思う。頭がおかしくなるぐらいの憎しみを抱いたから…その旅路で貴方たちと出会えた。こうして皆の想いを理解して和解出来たのは、貴方たちが居てくれたおかげよ。…本当にありがとう」
翔鶴が頭を下げてお礼を述べると、僕たちは思わず微笑んで翔鶴に向けて黙って頷いた。
──すると、僕の目の前が文字通り「光」で一杯になった。
「…っあ!」
「タクト、どうしたの?」
「──やった…IPが出たぁ!!」
「おぉっ!」
「ブラーヴァ!」
『やったじゃないか! …マサムネ、お前はこうなると読んでいたのか?』
僕らがIPの出現(=翔鶴改二の条件クリア)に沸き立つ中、ユリウスさんの言葉にマサムネさんが反応する。
『そうだヨヴェイビー! 翔鶴君は真面目で自分を出すのが苦手だと聞くけど、そういうヒトは大抵「相手の感情を読むことも苦手」なのサ! だから彼女の場合は能力の強化に先立って、精神力を養う必要があると考えたのサ』
「それは何となく分かりましたけど…具体的には?」
僕の疑問に、マサムネさんは嬉々として答えた。
『翔鶴君が今まで関わった艦娘、人の考え…その人がどうしてそういう行動に出たのか、そこにどんな想いがあったのか。それを理解しなければいけないのではないカナ? 南木鎮守府崩壊事件の真相はその上で明らかになる事柄ということサ!』
「そうか、瑞鶴の気持ちは南木鎮守府崩壊とは、直接的には関係なかったからなのね?」
「あぁなるほど。…でもマサムネさんが心を理解したみたいなこと言っているの、ちょっと意外」
翔鶴が納得の言葉を零す中、僕は素直な感想をぶつけるとマサムネさんは困惑した顔でそれを投げ返した。
『君はぼくを何だと思っているんだい? まぁよく「仮面被ってるよね?」とは言われるけどサ! それでも科学者として感情の動きぐらいは理解出来るヨヴェイビー!』
『コイツはこういう良識は持ち合わせているからなぁ、私としても驚きを禁じ得ないが』
『あはは! さぁタクト君、思う存分モノリスの啓示を読み調べたマエ!』
僕は言われなくてもというやる気の顔を見せると、頷いてIPの文字を調べる──
・・・・・
──好感度上昇値、規定値以上検知…。
特殊条件ロック…解除完了。
翔鶴の「アンダーカルマ」が解放されました。
…翔鶴のプロフィールに、新たな情報が追記されます。
裏の使命(アンダーカルマ):??? → 『託された想い』
──その運命が示す道…「希望」
激戦に次ぐ激戦…敵(深海棲艦)は尽きることを知らず、彼女の居場所を蝕もうとした。
愛する者、仲間、そして…親愛なる妹。かつての彼女は確かに満たされていた。
だがして、結局彼女は喪ってしまう…全てを、全てに裏切られた。そう”思い込んだ”。
愛する者は、目前の愛よりも使命を優先した。
仲間は、彼女の本性を垣間見て失望した。
そして妹は……自分を置いて逝ってしまった。
絶たれた未来、黒く淀む眼、生の願望はとうに無く。
憎み、にくみ、ニクミ、全てを恨み抜き──その先に「光」を見た。
新たな絆の示した「光」、かつての仲間が導いた「光」。彼女はもう一度未来を掴むため、その一歩を恐るおそる踏み出す。
…その果てに漸く、彼女は辿り着くだろう。
──託された想い、その真実の彼方へ。
・・・・・
僕がIPを読み進めていると、同時に翔鶴の気持ちも流れて来る。
「(この気持ちは…"劣等感"か?)」
誰よりも自分が劣っている、相手に勝る長所が無い。そんな自分が、周りが、悔しくて妬ましくて仕方ない。そう思い込んではそれを悟られないよう不遜に装い、仮初の「自信」を形作った。
翔鶴は自分のいけない部分を理解していた、だから自分を更に良く装っていた。成る程…その気持ちの根底にあったのが劣等感か、人間誰でも持っている感情だろうけど、拗らせると人生がここまで変わってしまうものなのか……恐ろしいなぁ。
「(…って、僕も人のこと言えないな?)」
僕も翔鶴のように「彼女」を守れなかった後悔が僕自身の「劣等感」に結びついていた。それから僕は塞ぎ込んでは胸に穴の空いた人生を送っていた…やっぱり似ているな、彼女と僕は。
翔鶴もそうだけど、個人的には南木提督にも共感持てるなぁ、
「タクト?」
翔鶴が心配して僕の顔を覗き込んでいる、感傷に浸ってる場合じゃないな。
僕は翔鶴に向き直ると、僕が見た彼女の「本質」を伝える。
「私が「劣等感」をか…やっぱりね」
「自覚はあったの?」
「そうね、瑞鶴からもよく「相手のこと気にしすぎじゃない?」なんて言われていたから」
「ねぇ。僕もそういう経験あるから気持ち分かるよ」
「そうなの? まぁ…タクトもちょっと薄暗い感じがあるわよね、何て言うの? ドウテイ? インキャ?」
「ゔっ!? 陰キャで合ってるけど…それ一応馬鹿にしてる言葉だから、僕以外には言っちゃ駄目だよ?」
「えっ、そうだったの? ごめんなさい、そういう意味で言った訳じゃないから」
翔鶴は困った顔で謝るが、僕は特に気にしない。寧ろあの誰も寄せ付けなかった翔鶴がネットスラング用語を使うなんて…それだけ彼女の中に余裕が出来たということか、ある意味で凄い変化に驚くほどだよ。
さて…後は彼女の好感度を最大まで上げることが出来れば、改二改装が可能だけど──
「・・・」
──…どうしよう、どうすれば
今までは…天龍や綾波が瀕死の時に気持ちが昂った時になってたみたいだけど、だとしたらこれ以上どうしようもないってこと? うぅん…出来れば改二に改装した後にドラウニーアたちとの戦いに臨みたいんだけど。
『──タクト君、翔鶴君の改装は済んだのかな?』
ユリウスさんの言葉を聞いて、僕はハッとして気持ちを切り替えた。
そうだ、これ以上それに費やす時間はない。最低限の目的は果たした以上今は任務を遂行しなきゃ、そう思い僕は皆の方へ顔を向ける。
「いえ、条件はほぼ揃ったのですが…直ぐにとはいかないみたいです、すみません」
『いや、こればかりは仕方ないさ。その口ぶりだと時間を掛ければ問題ないようだしな、だが…』
「もうそんな時間はないわよね。次はゼロ号砲の破壊に行きましょう、で…一応聞くけどもう用事はないわよね?」
翔鶴は厳しい顔つきでマサムネさんを見やる、これでも彼女的には心を開いているんだよ? 好感度システムのおかげで理解してるんだけど。
『問題ないヨヴェイビー! 君たちの役に立てたなら幸いサ、ゼロ号砲の破壊はぼくにとっても他人事じゃないからネ、死んだオリジナルの仇を取ってくれたマエ!』
「色々ありがとうございましたマサムネさん。…じゃあ行こうか?」
僕は移動を促しその場を後にしようと動く、翔鶴たちもそれに頷いて後に続こうとした──その時。
──ズウゥゥウン…ッ!!
「…うわぁっ!?」
急に地鳴りが響くと建物が大きく揺れ始め、僕らは思わず体勢を崩すも立ち止まる。一体何が…?
『ッ! タクト君! 今しがた事態が大きく動き始めたようだ、デイジー島のレーダーに、クロギリ全体に及ぶ大規模の敵性体が確認された。各部隊に向けて…深海棲艦が強襲している!!』
「っ!?」
ユリウスさんは僕らに向けて緊急事態を告げる、やっぱりアイツが…動き始めた!
・・・・・
──同時刻、シルシウム島にて。
拓人たちが南木鎮守府に潜入している間、天龍隊は遠目からシルシウム島の様子を窺っていた。
最初のうちは島の周りを深海棲艦が、数十の
「こちら"テモアカナ"、深海棲艦の増群を確認した。まだ増えるようだぞ…どうぞ?」
天龍隊が目にしたのは、シルシウム島から外へ雪崩出て行く黒い群勢。深海駆逐艦イ級、ロ級、ハ級、ニ級の大群が天龍隊に向かってその牙を突き立てようと海面を掻き分ける醜景だった。
幸い距離があるため今すぐにということではないが、異常事態であることに変わりはない。天龍はカイトに「映写型通信機」で呼びかけた。
『此方も確認している、どうやら各部隊に刺客が差し向けられたみたいだ』
「だろうな、今更驚くこともないが」
『それを踏まえて準備を進めて来たからね? さて…今しがたユリウス殿と情報共有したが、南木鎮守府部隊は無事第一関門を突破したみたいだよ。これから第二段階のようだ』
「っ! ……そうか、何よりだ。報告感謝する、これより俺たちは雑兵を対処する」
『あぁ、頼んだよ?』
カイトとの通信を終えると、天龍は深海駆逐の群れに突撃し剣を構える。
「瞬速──抜刀!」
──シュバッ!
天龍の高速の斬撃は空間を敵諸共「切り裂き」、先頭の大群を海に沈める。
『◾️ ◾️ ◾️ ◾️ ◾️ーーーッ!!』
それも第一派に過ぎなかったか、直ぐに後方の第二波が押し寄せて来るのが確認出来る。数では此方が圧倒的不利であるが、実力の差がある以上力押しに見えた。
「コイツぁ想像以上だねぇ?」
望月はそう言って皮肉笑いを浮かべている、しかしどこか余裕そうな表情をしていた。他の艦娘たちも皆同様に落ち着いた様子で深海棲艦の群を見据えていた。
「望月、これをどう見る?」
天龍がそう尋ねると、望月は眼鏡の位置を調整しながら見解を述べた。
「あの野郎がアタシらの動きを読んでいるのは間違いない、今までの大胆な行動を鑑みて見りやぁ解ることだし、その上でアタシらを踊らせてテメェの目的果たそうとしてたんだからな。だからこそカイトはシルシウム島へ考えうる最大戦力ぶつけたんだ、ヤツの考えがそう簡単に上手く行かねえようにな。…だが」
「何か疑問がおありですか?」
綾波は望月を一瞥しながら回答を促す、望月もそれに頷いて考えを示した。
「ヤツは大体「これで上手く行った」と思った矢先に必殺の一手を打って来やがる、嫌がらせのようにな。アタシらが対策を考えて最大戦力で来たことを考えないとは、どうしても思えねぇ」
「ん~、確かにアタシら相手に「この程度」の戦力はねぇ?」
加古は敵を見回して望月の考えに同意した、敵は駆逐イ級を始め「ロ級、ハ級、ニ級」のイロハ駆逐艦群、後方からは軽巡ツ級、重巡リ級、戦艦ル級が新たに現れたことが伺えたが──改二艦からしてみれば──「雑兵の山」であることは明白。押し通ろうと思えば──時間は掛かるかもしれないが、敵陣の真ん中へと赴くことも可能である。
「望月はドラウニーアがまだ何か隠しているって思ってる?」
「まぁな、だがな長良。この場合は隠しているというより「機を窺っている」と見て良いだろう。ヤツはアタシらが下手に行動した隙を突いて、何かを画策しているんだろうぜ。このまま行くのは不味い気がするぜ…下手したらどんな姫級差し向けられるか、分からねぇからな?」
「うむ、しかしこのままあの雑魚共を放置するのもいかん。他の島の部隊や南木鎮守府、それこそデイジー島に向かわれては」
「皆さんの危機に繋がる、ですか…望月さんの仰っていることは「確実」なのでしょうが」
「とにかくさぁ、バァーーッてやっつけりゃ良いんじゃねぇか?」
「加古さぁ…流石にこの量は、どんなに雑魚でも時間掛かるって;」
他の部隊のためにも目前の大群を逃すことは出来ない、しかし今までの流れから考えてこの状況もまた敵の作り出した「ざる罠」であることは間違いない。姫級が居ないにしても安易に飛び掛かるのもまた悩ましい。
「妖精のヤローじゃねぇが、このまま相手取れば「ヤツの思い通りの展開」になる可能性がある。どうしたものかねぇ…二手に分かれて行動するぐらいしか思い浮かばねぇし」
天龍たちは疑心が晴れず敵の動向を窺っている、望月は次の一手を考えながら何となしに上を見上げると──
「──…っ! おいお前ら上だっ!!」
「何……っ!?」
一同が空を見上げた瞬間に映りし光景は──凡そ信じられない光景だった。
「──おおおおおおオォっ!!」
何と、上空にドラウニーアと港湾棲姫の姿が。その足を支えていたのは大量の「深海艦載機」だった。
望月たちが疑心暗鬼に陥っている間、運命は「その時」を迎えてしまったようだ。敵は迎え撃つでなく「その場を離脱する」ことを選んでいた…!
「
「ちっ!」
「くそぉ、逃がすか!!」
天龍と加古が得物を構えて跳び上がろうと身構える…が、その思惑は阻止されてしまう。
『──ギィイガァアアアアアッ!!』
黒く小さな影が天龍たちに猛進し、砲撃を加えて凶弾を撃つ──死神レ級が一行の前に姿を現した。
天龍たちは難なく砲撃を避けるも、ドラウニーアたちは気付けば彼方へと逃げ果せようとしていた。望月はその方角を見逃さない、方角を定めて彼らの向かう場所を特定する。
「あの方角は…「南木鎮守府」か! ちっ…大将たちに連絡を!!」
望月は舌打ちしながらも、映写型通信機のダイヤルを拓人に回して通信を試みる、しかし──
「…っ!? 何だ…?」
思わず彼女の目が黒いフードを被った敵「レ級」に向けられた、目の前の彼女から…感じたことのない「殺気」を察したからだ。
『──………』
望月は自身が表立った戦闘をしたことがないため理解が無かったが、望月以外の四人はそれに「覚え」があった。
それは…戦場において必ず訪れる「強者との死闘」それにおいて必ず──例え”己のイノチ”を投げ出しても──勝利を掴もうとする「死に物狂い」の闘気だった。
「ヤツめ…俺たち相手に「捨て身」で戦おうとしているのか!」
「へぇ? 面白いがそれがどうしたんだ、ドラウニーアも気になるがどの道こいつらを倒さねぇといけねぇからな…まとめて相手してやるよ!」
「待って! …何か様子が変だよ!」
加古がレ級の意気に応じようと構えると、長良が叫んでそれを制止する。同時にレ級が取り出したのは──黒い液体に満たされた「注射器」であった。
「あれは…?」
「っ! あれはまさか…"穢れ"の!?」
望月の反応を見て、レ級をニヤリと嗤うと注射器を首元にプスリと刺し、中身を体内に流し込んだ。
──瞬間、レ級の身体から「黒雷」が発せられた。
『ギガア”ア”ア”アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!』
レ級から放出される黒い稲妻はヴヴゥ…と鈍い電流音、バチバチと摩擦から生まれる電気同士がぶつかる音を起こす。それは空間で響き合い身体の底から湧き上がる「嫌悪感」を掻き立てた。
電気の不協和音が耳に届く中、レ級の顔や身体に「黒色の紋様」が浮かび上がる。明らかに異常な光景だった──そうしてレ級に「威圧感」に似た悍ましい気配が感じられると、遂に──死神は「覚醒」した。
『──キッヒヒ、キヒャハハハハハハハッ!!』
瞳孔を見開き、様々な感情の織り混ざった狂い嗤いをその貌に浮かべた。
黒雷が彼女を宙へ浮かせるとその右手にいつもの「黒鎌」を呼び出し構える、次に黒鎌を前へ掲げると──空中に鎌の刃に似た「黒い刃」が二つ浮かび上がり、その場で回転し始めると天龍たちに襲いかかって来た。
「っ!」
「はぁっ!」
綾波と天龍はかろうじてそれを弾き返す。それを見たレ級はニヤついた笑いを浮かべると──今度は数十に及ぶ黒刃を空中に発生させる。
『キヒャハハハハハハッ、ハハッ、ハハハッ、アハハハハ、アッハハハハハハハハハハハハッ!!!』
「コイツ…能力を強化したのか!?」
「そのようですね」
「だがアレは「自爆行為」ってヤツだ。さっきの黒い液体はおそらくマナの穢れを含んだ「魔力水」だ、大昔はマナを溶かした魔力水を直接飲んで怪我を治していたと聞いたことがある」
「ならばアレは、魔力水の穢れ版ということか」
天龍の言葉に頷く望月は、そのまま言葉でレ級の行動の穴を突く。
「直接体内に流し込んで力を増強したんだろうが、魔力水は一滴だけでも効力があるだけに使う量にも限度がある。あんな大量の穢れを一気に取り込んじまえば、如何に深海棲艦だろうと長いこと身体を維持出来ねぇぜ!!」
「成る程…文字通り「囮」ってことか、イノチ懸けの。敵ながらやるじゃねぇかよ」
「どうする…望月がドラウニーアたちが「南木鎮守府」に向かったって言ってたみたいだけど?」
「…今はアイツをどうにかするしか道はねぇ、ドラウニーアは大将たちに任せるしかねぇが…ヒッ、大将たちなら何とかしてくれんじゃねぇかって期待しちまってるよ、アタシぁ!」
望月の言葉に、一同は不敵な笑みを見せて肯定する。
「あぁ…タクトを信じよう、何せアイツは…俺の相棒だからな!」
「はい、私は司令官を…皆さんを信じます!」
「へへっ、そうだな! アタシもタクトを信じてるぜ!!」
「うんっ、そうと決まればコイツら倒して早く迎えに行ってあげないと!」
「おうさ、んじゃ戦いは任せるぜ。アタシはあたしに出来ることをやらぁな!」
『キッヒイイイイイャアアアアアアアッ!!!』
『■■■■■-----ッ!!!』
斯くして、天龍隊の目を欺き黒幕は「血戦の地」へと向かう。精強の戦士たちは仲間の絆を信じ「死神」と対峙する…!
・・・・・
──南木鎮守府、作戦指令室。
ユリウスさんは現在の状況を事細かに教えてくれた。
『三島及びデイジー島に深海棲艦の大群が押し寄せている、特にシルシウム島が酷いな…矢張り最大戦力を集めて正解だったが、その中で強大な反応が見つかった』
「姫級と天龍たちが、対峙しているということですか?」
『そこまでは分からない、だが──…っ!? 待ってくれ、これは…南木鎮守府の近辺に反応が二つ確認された。凄いスピードだ…君たちの居る南木鎮守府に向けて何モノかが向かっている!』
「えっ!?」
つまり誰かは分からないけど、僕らの方に敵が向かっているのか?! 一体誰が…?
『──十中八九「ドラウ」だネヴェイビー!』
「っ! マサムネさん…?」
僕らに敵の正体を教えてくれたマサムネさんは、緊急事態だというのに朗らかな態度を崩さずに回答する。
『どうやら混乱に乗じて抜け出して来たようだネェ、流石にどうやって移動しているのかまでは解らないけどネ!』
「こっちに向かっているって…まさか、ゼロ号砲を起動させようとしているんじゃ!?」
僕の推察に、ユリウスさんは頷いて肯定した。
『有り得ない話ではない。何か仕掛けてくるとは思っていたが…しかしながら疑問は残るところだ、南木鎮守府に我々が居ることは向こうも承知しているはず。反応が二つなのは確かだから護衛を付けている…おそらくレ級か港湾棲姫を連れているだろうが、それでも実力差は目に見えて明らかだ。ヤツが何も考えずにこちらに来るとは思えない』
ユリウスさんの意見は的を射ていた、確かに今まで姿すら見せなかった男だ。アイツは慎重かつ大胆な方法でこれまでの連合の捜索や追撃を振り切って来た、そんなアイツが…こんな下手したら「自ら捕まりに行く」ような行為をするとは思えなかった。
僕らが悩んでいると、マサムネさんが自身の予測を示した。
『ぼくとしてはもっと有力な理由があると思うヨヴェイビー! アイツの性格を考えた上での行動がネ!』
『何…?』
「理由って…?」
マサムネさんは僕の疑問符を見て、僕の方へ人差し指を向ける。…って、それって?!
「僕が…理由?」
『そうサ! 君たちはドラウの前に現れてはその野望を悉く打ち砕いてきたんだロウ? 今まで嘘のように計画が上手く行っていたアイツにとっては「腸(はらわた)が煮えくり返る」思いだったはずサ。だからこそここまで追い詰めた君たち──いや、タクト君と決着を向けようとこっちに向かっているんだヨ!』
『待て、何故タクト君がこの場に居ることが判る? まさか我々の作戦が聞かれていたのか?』
ユリウスさんの疑問に、マサムネさんは「甘いネ」と笑いながら種を明かす。
『君も知ってるだロウ、ドラウが擬似死で神の領域へ至ったことをネ。憶測だけど彼はあの時点で「未来に起こる出来事」を視ていたのではないカナ? でなければ僕らに特異点のことやこの世界が破滅に向かっていることについて、僕たちに教えられる筈がないヨヴェイビー!』
「そうか…僕は何となくしか分からないけど、アイツはアカシックレコードの知識を十分に吸収したんだ。これからの出来事を…ある程度「予見」したからこそ、自分好みの未来に変えようと動いたのか」
「そう、それなら納得がいくわ。私たちがこの場所に居るのも…アイツは予見してたってことね」
僕と翔鶴が同意見の見解を示すと、ユリウスさんはまだ不透明な部分を話した。
『お前が正しいだろうマサムネ。確かにドラウなら自身のプライドを逆撫でした者に容赦しないだろう。今までだってそうだったからな、だが…目前の世界滅亡を諦めてまでタクト君たちと決着を付けようなどと、幾らアイツでもそこまで固執するだろうか? ドラウにとって世界再創造こそが悲願である以上、爪痕を残そうと藻掻くならまだしも…』
マサムネさんの言葉にユリウスさんが反論をぶつけると──マサムネさんはゆっくりと首を振ってそれを否定した。
『違うヨヴェイビー、これはおそらくドラウの「存在意義」に掛かることだと思うヨ。ドラウは「イソロク」の能力を絶対視していた、そんな誰よりもイソロクを理解しようとした彼よりも、タクト君が特異点として選ばれたことが許せないのサ! ぼくもアイツの傍で共同研究をしてきたから、アイツの考えはそこそこ理解はあるつもりだヨヴェイビー!』
マサムネさんの一見感情論でしかない意見だが、恐らくそれは「的を射ている」だろう。僕の「能力」がその感情を肯定している。
トモシビ海域での「あのお方」と呼ぶ人物がイソロク様だったとしたら、ユリウスさんから聞いたドラウニーアの過去と照らし合わせても、そう思っても「不思議じゃない」と言った「理解」があった。それは誰あろうユリウスさんも同じ考えに至っていた。
『…そうか、確かに私はドラウと距離を置いていた部分はあったな。だからこそアイツを決めつけて理解不足を無意識に隠していたのかもしれないな、我々は許されない所まで行ってしまったが…翔鶴君のようにアイツを理解しようとしていたなら、止められただろうか』
「ユリウス…」
ユリウスさんの後悔の念の言葉に、翔鶴は憂わしげな表情で彼を見つめる。
なるほど、文字どおりアイツは「追い詰められた鼠」と言った具合か。だからこそ最後に一矢報いようとしているのか……よく分かったよ。
「そうですか、アイツは僕と戦いたいと思っているのか…なら、望むところだよ。僕は今度こそアイツと決着を付ける…!」
「タクト、私たちを忘れないでね!」
「ウィ、コマンダンの背中は…この野分が守ります!!」
「タクト…貴方なら出来るわ! 必ずドラウニーアを倒して、世界を救いましょう!」
金剛、野分、翔鶴の言葉に胸が満たされる感覚に包まれると…僕は彼女たちに力強く頷いた。
『タクト君、こんなことを言う義理はないけど…どうか最後まで彼の相手をしてあげてくれたマエ。今のドラウニーアを止められるのは…間違いなく君たちだヨ!』
『私からも頼む、アイツのことは何一つ理解出来なかったが…それがきっとアイツを凶行に走らせた切っ掛けになったのだと思う、理解しようとしなかった我々にも責任がある。君に任せるのは不甲斐ないが…私たちの代わりに、ドラウを止めてくれ!』
「もちろんです、では…行ってきます!」
マサムネさんとユリウスさんの言葉に、僕は頷くと出立を宣言した。
僕はアイツを止める…そう決意を固めると、翔鶴たちを連れて作戦指令室を後にした。
・・・・・
──南木鎮守府、屋上。
そして、南木鎮守府の屋上へと足を踏み込む。
僕たちの上に広がる曇天の空、眼前に待ち受けていたのは巨大な機械装置と、それに嵌めこまれた緑色に妖しく光る「巨大零鉱石」だった…おそらくこれが「ゼロ号砲」。
──そのゼロ号砲の前で、僕たちの行手を塞ぐ二つの「影」が見えた。
『………!』
一人は港湾棲姫、相変わらず虚ろな眼をしてこちらを見つめている。
「──…来たカ、特異点」
もう一人は──何回と聞いた忌々しい声、そして僕に対して殺意を向ける貌だった。
「…来てやったよ、ドラウニーア。今度こそ…お前と決着を付けるために!」
「…フン!」
僕がそう言い放つと、ドラウニーアは禍々しい憤慨の貌を向けて鼻で嗤った。
次は宿毛が終わってから。
がっつり書きたいから、投稿遅れるかも知れませぬ。