艦これすとーりーず ―僕が異世界版艦これの提督になった件について―   作:謎のks

106 / 146
 予想以上に話数が多くなるなこれ…。

 連投するか、前後編続く感じのヤツだし。

 というわけで後編、続きは明日です。お楽しみに~。


三島攻略作戦 ①

 ──その頃、ウォシハマ隊。

 

 ウォースパイトを旗艦とした拓人艦隊の第二部隊の面々は、アンチマナ波動砲から射出されようとする穢れのエネルギーが世界に傷を付けないように、深海棲艦が蠢く中波動砲が設置されている島の内部に流れる広く開けた河川を駆け抜けていた。

 

『■■■■■ーーーッ!!』

 

「招来。…過去を生きし御霊たちよ、その力結集し我が行く手遮る魔物払い給え…!」

 

 早霜が手に持った数珠を翳すと、彼女の後ろから黒い影が現れ巨体の男性の形を取ると、深海棲艦を巨腕で薙ぎ払い一掃する。

 

『■■■■■ーーーッ!?』

 

「──はぁっ!」

「Fire!」

「とりゃーーっ!!」

 

 それに続くように不知火、ウォースパイト、舞風も各々の攻撃で深海棲艦に確実なダメージを与えていき、道を作りながらも波動砲の設置ポイントへ急いだ。

 

「ユリウスさん、あとどのぐらい!?」

 

 舞風が深海棲艦を捌きながら腕に着けた映写型通信機に呼びかける。そこには浅黒い肌の男性とフリルを来た少女が映し出される。

 

『そこからもう少し真っ直ぐ進めば辿り着く、凡そ2~3分ぐらいだろうが皆焦らず落ち着いて行くんだよ? 波動砲は核となっている穢れ玉を壊せば安全に停止させることが出来る…筈だ』

「はず!? はずってどういうこと?!」

 

 舞風が声を張り上げ驚きをオーバーに表すと、ユリウスは申し訳なさそうに呟いた。

 

『すまない、波動砲を設計したのはおそらくマサムネ…仲間の研究員なのだろうが、それの設計図も見たことはないんだ。我々は基本的に相手に自身の研究成果を見せないからなぁ、言い訳でしか無いが…それでも動力源を断てば停止せざるを得ないと考えるよ』

『まぁまぁマイちゃん、要はコアを破壊すればそれでオッケーなんだから』

「だよね〜! ユリウスさんメンゴっ! ちゃちゃっと波動砲破壊してくるからさー?」

『そういう言い方もどうなのかなぁ…?』

 

 舞風を諌めるマユミだったが、舞風は先ほどとは180度変わった楽観的な姿勢を見せる。周りの艦娘は舞風の正直というか無思考というかな変わりように、少しの失笑を覚えた。

 

「こんな時だと言うのに暢気ですね、舞風さんは…」

『そうは言ってもさーはやしー、マイちゃんがアホの子なのはいつものことじゃない?』

「そうだそうだーまゆみんのいうとーり! アタシに非はなぁい!! えっへん!」

「舞風さん、小馬鹿にされてるんですよ…ドヤ顔で威張らないで下さい」

 

 舞風、早霜、マユミのいつものやり取りに、不知火たちは困惑気味だった。

 

「在りし日の綾波より問題があるな、この娘は…」

「不知火? 仲良くしなさいと言いましたよ…そんなこと言わずに受け入れてあげなさい、でないと私は悲しいですよ?」

「承知していますが…はぁ」

「あーーーっ! 今メンドそうなため息したでしょ!? シーラヌイちゃんてばいけずぅ!」

「はっ!? 何ですかその間の抜けたあだ名?! もう少しまともな──」

 

『■■■■■ーーーッ!!』

 

 不知火と舞風の二人が言い争いかける中、深海棲艦の大群の一隻が砲撃を加えて来た。

 砲撃は不知火目掛けて放たれ、彼女の頭を直撃し吹き飛ばさん勢いがあった。敵に意表を突かれた不知火であったが…?

 

「あんどぅ…とりゃあーーーっ!!」

 

 近くに居た舞風は駆け出すと、不知火に向かっていた凶弾に「軽やかなダンスからの回し蹴り」を繰り出しサッカーボールを蹴り上げるように敵砲弾をリリースした。

 

『■■■■■ーーーッ!?』

 

 反撃にまともな動きが出来なかった敵深海艦は、そのまま戻って来た砲撃の餌食となり沈んでいった。

 空中でひらりと回りながら着水する舞風、不知火に対し「どうよ!」と言わんばかりにドヤ顔ピースサインを送る──が。

 

「…ッ!」

 

 不知火は何も言わず険しい顔をして抜剣すると、そのまま舞風に向かって行く…一瞬ギョッとする舞風だったが、彼女の前で飛び上がった不知火を見て、直ぐにその意図を察知した。

 

「──沈めっ!!」

 

 不知火が空中で剣を一振りすると…舞風の背後に迫っていた敵の砲弾が真っ二つに割れる、割れた砲弾が小規模の爆発を起こすと、着水し続けざまに敵に対し砲撃を返す。必発必中か敵の懐に見事に命中した不知火の砲撃に、敵深海艦はまたしても海に没した。

 

「やるじゃなぁい! へーい!!」

 

 舞風は不知火に近づくと嬉しそうに手の平を上に翳す。不知火は意図を察していた様子で特に驚くこともなく応じ、同じく手の平を翳すと二人して「ハイタッチ」をする。

 

「ありがと、えへへ!」

「…全く、これで貸し借りナシですよ?」

 

 微笑みの花咲く舞風と不知火のやり取りを見ていた早霜とウォースパイトは、無意識に頬が緩むのだった。

 

「ふふ、これなら仲良くなれそうですね不知火?」

「ええ姫様、何故だか分かりませんが彼女とは妙な親近感を感じているのです。まるで姉妹のようなそれが…私はこれを嬉しく思っているのです」

「私もだよぉお姉ちゃん!」

「舞風さん、静かに。…私ともそのぐらいの距離感で良いんですよ? し・ら・ぬ・い・さん♪」

 

 早霜は舞風にばかり感ける不知火の背後にスッと近づき、背中から肩を置いた。それだけなのに何故か不知火には薄ら寒い気持ちがあった。

 

「ぅっ、いや…矢張り貴女とはまだ、すみません…自分でも本当に何故なのか分かりませんが」

「…ふぅっ、まぁこれからですから。仲良く…しましょう?」

 

 早霜の何処か不気味な笑み(本人は無自覚)を見て、不知火は助けを求めるようにウォースパイトを一瞥するも…彼女は笑顔の圧で「仲良くしなさい♪」と無言で答えるのだった。

 

「・・・はい」

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 ──それからも一行は道を遮る敵を薙ぎ倒していく。早霜の御霊招来とウォースパイトの砲撃により粗方の敵を吹き飛ばし、端で隙を狙う敵を舞風と不知火が処理していく。四隻(よにん)は会って間もなかったが、拓人という共通の仲間が居ることでお互いに不信感が現れることは無かった。

 拓人たちは今頃南木鎮守府で黒幕と決着を付けている頃合い、無事でいるかは分からないが…それでも彼らが無事であると信じて、自分たちも不意を突かれないように警戒しつつ、必死に前へ突き進んだ。

 

 

 ──そして。

 

 

「…見えた!」

 

 舞風が指差す遠方に巨大な鉄の柱が現れた。鉄柱の上を見上げると丸い穴の開いた設置台に、穢れ玉が何も無い宙に浮いているのが見て取れた。

 

「アレが穢れ玉の射出装置…もといアンチマナ波動砲ですか」

「アレを破壊すれば私たちの任務は終了ですね?」

「まぁ…敵がそれをすんなり行わせるとは思いませんが?」

「どゆこと? …ぅわあ!?」

 

 不知火の指摘に舞風が目を丸くしていると、前方にいつの間にか一行と対峙するように「ヒト」が海上に立っていた。舞風は驚きの声を上げながらもそのヒト影を見やった。

 そこには──青白い肌色に銀髪、青く光る眼が鋭くこちらを睨みつける。セーラー服とブルマのようなパンツを着こなし、左肩に肩当てと両肩から白マントを着用、腰の後ろから八岐大蛇の首のように顔を出す六つの深海砲が、文字通り歯を剥き出しにしてこちらを威嚇していた。

 

『…フフ』

 

「戦艦タ級ですか…今までの敵に比べたらといった具合ですが、油断は出来ませんね?」

「うんうん、楽勝らくしょー!」

 

 不知火は剣を構えると敵と同じように鋭い視線で送り返す、その隣に舞風も立っていつでも飛び回れるように簡単なストレッチをしている。

 

「姫様、ここは我々で食い止めますので姫様は早霜を連れて波動砲を破壊して下さい」

「不知火、しかしそれでは貴方たちに負担が…!」

 

 ウォースパイトは如何に雑兵的戦力であれ、戦艦級であるタ級に駆逐艦二隻はどうなるか分からないのでは? と考えている様子だった。しかし彼女の意見に舞風は同意しつつ付け加えた。

 

「んーそう言われるとキツイかもだけど、あんな高い場所にある穢れ玉アタシたちの砲撃じゃ届かないだろうし、やっぱりウォー様とはやしーが行くべきじゃない? 二人なら戦艦の砲撃とかしょーらいとか撃ち込めばどうにでもなると思うんだ!」

「そういうことです、行ってください。少しの間の相手なら私たちだけでも出来ます」

「うんうん、蝶のように舞って蜂のように刺す~ってするから、大丈夫!」

 

 舞風と不知火の頼もしい言葉に、ウォースパイトも少し安堵したように溜息を吐いた。

 

「…All right. 行きましょう早霜さん?」

「ええ。任せましたよ不知火さん、それと舞風さん。私たちが戻ってくる間に無茶をしないこと。良いですね?」

「もうはやしーは心配性だなぁ! …頑張って!」

 

 舞風はいつものように返事する、そんな彼女に微笑むとウォースパイトと共に波動砲の破壊に向かう早霜。

 

『…ッ!』

『──◾️◾️◾️◾️◾️ーーーッ!!』

 

 戦艦タ級は向かって来る二人に対し「敵性護衛駆逐隊」を喚び出し、先に行かせないと意志を示しつつ臨戦態勢を取る。敵の数が増えた光景を見てウォースパイトは敵の殺意に心配の色を見せる。

 

「っ! 敵随伴艦が潜んでましたか、少しだけ加勢をした方が…」

「ウォースパイトさん、心配無用ですよ。あれを…」

 

 早霜はウォースパイトの横に追随する「不知火」を指差す。ウォースパイトの横から躍り出た不知火の殺気に気づくと、タ級はハッとしたようにそちらを向く。

 

「姫様に近づくなら、私は相討つ覚悟で貴様の首を取る。忘れるな…貴様の相手は私たちだ!」

『…ッ!』

『◾️◾️◾️◾️◾️ーーーッ!!』

 

 不知火の口上に一睨みすると、そんな脅しは通用しないと言うのかタ級は深海駆逐隊と共に早霜たちに対し砲撃を仕掛けようとする──

 

「させるかぁ!」

 

 舞風は風に乗るようにふわりと跳んで見せると、タ級まで距離を詰めて着水際に水に足を引っ掛けて掬い上げるように振り回すと、水飛沫が飛び散りタ級並びに深海駆逐隊の目に入ると視界を遮る。

 

『ッ…!?』

「今です、早く波動砲へ!」

 

 不知火はそう叫ぶと剣を構えてタ級に突撃する。不知火と舞風の──会って間もないというのに──絶妙な連携を目にして、ウォースパイトは安堵の息を零した。

 

「ふぅ…っ、あれなら心配ないようですね?」

「えぇ…行きましょう?」

「OK!」

 

 タ級を不知火たちに任せ、その隙にウォースパイトたちは波動砲へ向かって行く。その後ろ姿を一瞥して見届ける不知火は、次に舞風に目配せする。舞風もそれに頷くとタ級撃退に努める姿勢を整えた。

 

『…ッ!!』

 

 タ級は怒りを露にすると、自身の深海艤装である六つ首砲を舞風に向ける。爆砲が放たれるも舞風はその場からひらりと躱して距離を取る、不知火はタ級の死角へ回り込むと砲撃を加える。

 

『ギャッ!? …ッ!』

『◾️◾️◾️◾️◾️ーーーッ!!』

 

 タ級は六つ首砲を不知火へ、深海駆逐隊は舞風へ砲口を向けるとそれぞれへ砲撃を撃ち込んだ。

 二人の視界には深海群の凶弾が迫っている。不知火は素早い剣裁きでそれを往なすと弾道を逸らされた砲弾は不知火から後方の水面へ着弾すると爆発する。

 

「…うわっ!?」

 

 しかし…先ほどと同じように踊るように凶弾を回避しようとする舞風は、弾を避けきれずに艤装に被弾してしまう、小破であった…!

 

「舞風!」

 

 不知火が舞風に向かい叫ぶ、仲間を傷つけられた騎士は鬼のような形相で剣を構えてタ級へ迫った。

 

「うおおっ!」

『…ッ!』

 

 タ級が六つ首砲を構えるも、それより先に不知火が威嚇を込めた砲撃をタ級の周囲の水面へ撃ち込む。またしてもタ級の視界を水柱が遮る、タ級は腕でそれを払うもそこに不知火は居なかった。

 不知火の姿を見失ったタ級は視線を彷徨わせる、しかし…砲を構える音がする。タ級が「真上」を向くと──不知火が既に至近距離で砲を構えていた。

 

「沈めぇっ!」

 

 ──ズドォン!

 

 タ級と不知火の間い赤い炎の花が咲いた、轟音と共に花開いた赤と灰色の花びらが戦場を彩った。

 不知火は爆風を利用して舞風の隣へ飛んで、空中で身を捻って上手く着水する、舞風は内心──あまりの鮮やかな攻撃に──感動すら覚えるも、その気持ちは隅に置いて不知火に対し怒って見せた。

 

「も、もう! 無茶しすぎだよう」

「大丈夫ですよ、伊達に騎士はやっておりませんから。もし何かあっても貴女がカバーしてくれると思ってますので」

「あ、信頼してくれてるんだ?」

「まぁ…仲間、ですからね?」

 

 不知火が薄っすらと笑みを浮かべると、舞風も気持ちを返すようにニコリと笑った。

 二人の気持ちが通じ合う最中──中破したタ級は怒りに口元を歪めると、深海駆逐隊を突撃先行させる。駆逐隊との戦闘の隙を突いて強力な砲撃を喰らわせようという魂胆か?

 

「向こうもやる気みたいだね? じゃあ行ってみようか! 二人でアイツらを撹乱して時間を稼ごう!」

「えぇ、ですが貴女はあまり無茶はしないように?」

「ふふん、ダイジョーブ! アタシも頼りにしているから…”ぬいぬい”?」

「…ぬいぬい、フッ。さっきのよりは可愛いから良しとしますか」

「気に入ってもらえて嬉しいよ! …んじゃ、行こうか!」

「了解、やってみせましょう」

 

 不知火と舞風は、二人並んでタ級と敵駆逐隊を見据えると一気に駆け出す、その胸にはお互いに何故か湧き上がる──隣に姉妹が居るような──「信頼」を感じていた。

 

「野分…アタシも頑張るから、ちゃんと帰って来てね!」

 

 舞風はここに居ない「想い人」に対し、密かなエールを送るのだった。

 

 

 

 

・・・・・

 

 ──その頃、ササナプ隊。

 

 サラトガ率いるササナプ隊もまた、広い河川の水上を滑りながらアンチマナ波動砲の設置場所へと赴いていた。しかし──

 

「ぴゃあ! 敵さんズラリ〜!」

 

 酒匂が指差す前方に佇んでいたのは──右半分の顔を長い前髪と甲殻のようなヘッドギアで隠した少女と、その傍らに侍る深海駆逐隊であった。

 少女はノースリーブのミニワンピース、脚を物々しい装甲で覆っており、首周りに「歯」が並んでいるようなフェイスマスク、その下からスカーフが靡いていた。

 サラトガたちの存在に気づいたそれは、ゆっくりと目を開くと徐々に敵意を露にするように眉間に皺を寄せていく。彼女の背中から生えた深海艤装──双頭の蛇のような主砲がこちらを威嚇するように歯を見せてその砲塔を向けていた。

 

「重巡ネ級か…相手にとって不足無し」

 

 長門はネ級からサラトガたちを守るため自ら前に進み出て戦闘態勢を取る、サラトガもネ級との戦闘を予期して弓を構えるも、長門はそれを制止する。

 

「サラ、ここは構うな。君たちは波動砲の破壊に努めてくれ、ネ級は私が相手をする」

「そんな…それでは長門が!」

 

 サラトガは囮を買って出た長門に心配の声を上げた、しかし長門の意思は変わることは無かった。

 

「この程度の相手なら造作もない、私は君たちを守るためにここに居るんだ、君たちならあの波動砲を破壊出来る。私が道を開ける故…その隙に波動砲へ」

「…そうですね。分かりました」

 

 長門の使命感を帯びた言葉、長門がこういう時は大概自分が折れなければならない。それを知っているサラトガは仕方がないと思い至ると顔を伏せる。

 ネ級の後方に見えるはまるで巨大な塔のように聳え立つ波動砲、そしてその内部に設置された穢れ玉だが、サラトガの航空爆撃があれば──穢れ玉を狙い撃ちして──機能を停止させることは可能である、それが解っているからこそ一歩身を引こうとしている。

 本当は長門にはヒトリで無茶などして欲しくないサラトガだったが、時間もない以上是非も無い。彼女の異能力故か石のように硬く頑固な決意を前に、サラトガに躊躇いはあったが仕方ないことだと諦めている。

 

 ──しかし、ここで意外なところから待ったを掛ける声が。

 

「ちょぉおっと待ったー!」

 

「っ! ユージン? どうしたの?」

 

 オイゲンが突然声を張り上げて二人のやり取りに割って入る、オイゲンは長門に向き直ると「説得」を始めた。

 

「長門、ここは私たちに任せてくれないかな! 貴女はお願いだからシスターと一緒に居てあげて! ユリウスさんもさっき通信で教えてくれたじゃない、波動砲のコアの穢れ玉を破壊しなきゃって。あんな高いとこにあるのに私たちの砲撃じゃ絶対届かないよ!」

「しかしサラが深海棲艦に狙われる可能性もある、君たちにはそれの露払いをと考えていたのだが。それに…君たちはサラにとって大事な存在だ。君たちに何かあれば私も目が当てられない、サラの庇護下に居てくれる方が安全なんだぞ?」

 

 長門がそう言葉を返すもプリンツは引き下がらない、理路整然と考論を捻り出しながら、焦る頭を冷静に保つと自身の気持ちを込めて言葉を紡いだ。

 

「それはそうかもしれない、でも時間が迫っている以上私たちが行くよりもシスターと貴女で直ぐに波動砲のコアを破壊した方が良いんじゃないかなっ? 少しの間だけなら私たちだけで何とかするし、何より今は波動砲を少しでも早く止めるのが先決でしょ! 私の言ってること間違ってるかな?!」

「だ、だか…」

 

 プリンツのあまりの勢いよく発せられる言葉の数々に、長門の返す口が止まった。そこから堰を切ったように言葉が溢れだすプリンツは、困り顔の長門の返答を遮り、自身の思いを正直に伝えた。

 

「だって同じだもん! あの時…私たちを守るためにヒトリで立ち向かった瑞鶴が、沈んだ時と一緒だもんっ! 貴女とシスターは顔見知りなんでしょ? 貴女に何かあれば…またシスターを、翔鶴を悲しませることになる!」

「っ、言いたいことは解るが…落ち着くんだプリンツ。私なら心配は要らん、私は一人でも…」

 

 プリンツが泣きそうな顔で訴えるも矢張りそう簡単に頷かない長門、戦力的には数の差はあれど選ばれし艦娘である長門が後れを取るとは思えない。言うなればプリンツが「我儘」を言っている現状であった。

 

 だが、そんなプリンツの強い想いに同意するモノが居た。

 

「──ぴゃ、酒匂も大丈夫だと思うー! 酒匂とプリンちゃんでぴゃひゃ〜っとやっちゃうから、二人は早く波動砲へ行ってきなよ!」

「なっ!? さ、酒匂まで…」

「……ウフフッ、はぁ…本当ならそんな我儘を、と言いたいのですが確かにネ級を酒匂たちに任せて私たちで波動砲を破壊しに行く方が、効率的な気がします」

「お、おいサラ…っ!」

 

 酒匂もプリンツと共に戦うことに乗り気になり、サラトガも呆れたように同意を呟くと、長門は二人の方を交互に向いてまたも困惑顔を見せる。

 先ほどとは打って変わった状況と揺れ動く長門の決意、そんな長門にトドメを刺すように映写型通信機にある人物が浮かび上がった。

 

『──ほほっ、これは貴女の敗けですなぁ長門殿?』

 

「っ!? ナベシマ指揮官…貴方もか?!」

 

 長門が腕に着けた映写型通信機に目をやると、年配の指揮官であるナベシマが穏やかな笑みを浮かべていた。

 

『ここまで意見が一致しているなら何も問題ありますまい、それに彼女たちの言っていることに間違いはありませぬ。誰も犠牲になる可能性を放っておけないでしょう、悲しみを広げたくないでしょう、確実に任務を遂げる方法を取りたいのでしょう、効率も大事でしょう。しかし一番は──長門殿、誰も貴女をもうヒトリにさせたくないのですよ。彼女たちは大切な仲間をヒトリにしてしまったから故に喪ってしまったのです』

「っ、それは…」

『もう時間もありません、彼女たちの意見を汲んであげて下され。貴女の彼女たちを護りたい気持ちも痛いほど分かります、ですが私も…もうあんなことは沢山なのです』

 

 ナベシマの憂いを感じる言葉に、長門は俯いて少しの間を置いて考える…そして顔を上げ意を決した様子で答えを口にする。

 

「…解った、だが決して油断するなよ? 何かあれば直ぐに連絡してくれ、時間が無いのかもしれんが…私も君たちが心配なのだ、通信で異常を伝えて貰えば後は私が何とかする。だから…絶対に無茶はするな、良いな?」

「ぴゃ、分かった!」

「ありがとう長門、それと…良かったね、シスター!」

「えぇ、ありがとう二人とも。長門も言いましたがくれぐれも気を付けてね?」

「うん!」

「ぴゃあ!」

 

『──……ッ』

 

 全員の話が纏まり掛けたその時──長門は前方に殺気を感じそちらを向くと、ネ級が深海艤装の双頭の蛇砲を動かし狙いを定め今にも凶弾を放とうとする姿が見えた。

 

『…ッ!』

「っく!」

 

 ネ級から轟く砲撃音、砲火を突き破り砲弾がサラトガたち目掛けて向かっていたが、長門が前に出ると両腕を交差して防御の構えを取る、腕からは「鉱石」が生えているのが確認できた。着弾と同時に爆炎が広がるも長門と、彼女の後ろのサラトガたちもケガはしていなかった。

 

「長門! 大丈夫ですか?」

「あぁ。サラ…今から敵に砲撃を喰らわせる、その隙に波動砲へ向かうぞ」

「了解です、では私も航空隊で援護します!」

「頼んだ、プリンツと酒匂は敵を我らに近づけさせないように注意を引いてくれ。やると言ったからには…遠慮なくやってもらうぞ?」

 

 長門がそう脅し気味にプリンツたちに言葉を投げるも、酒匂もプリンツも意を決した様子で強く頷いた。

 それに対し口角を上げてニヤリと笑う長門は、次にネ級に向き直ると自身の艤装である三連装砲で砲撃する。身体の芯を揺さぶるような振動と爆炎と共に射出された砲弾がネ級に着弾しようとする…が、ネ級は被弾を感知するとその場から素早く動いて回避する、長門の砲撃によって建てられた巨大な水柱を横切り、長門たちに迫るネ級とそれに追随する深海駆逐隊。

 

「航空隊、発艦してください!」

 

 サラトガが弓を構え矢を放ち、彼女の航空隊がふわりと宙を舞う。ネ級と深海駆逐隊に向かって機銃掃射を乱れ撃つ、深海駆逐隊はそれぞれ回避行動を取ろうとし思わず隊列を乱す、ネ級は行き場を失い航空隊から逃げるようにヒトリ距離を取り始める。

 

「──今だ!」

 

 ──ズドオォオンッ!!

 

 敵が隙を見せた──長門は腹の底から号令を叫ぶと再び三連装砲を構え発射、ネ級と長門たちの間に巨大な水柱が建つと、長門とサラトガはそれに合わせて水上を駆け始める。

 

『…ッ!』

 

 ネ級は波動砲へ向かおうとする長門たちを捉えるも、自身に狙いを定めた砲弾の風切り音を聞き取ると、後方へ下がりそれを回避した。

 

「そうはさせないよ! …長門、シスターを守ってあげてね!!」

「ぴゃあ、シスターも長門ちゃんを助けてあげてね~!」

 

 プリンツと酒匂は支援砲撃で敵を妨害しながらそう言うと、ネ級たちと対峙する。

 長門とサラトガは心配そうに後方のプリンツたちを見やるも、直ぐに前に向き直り後は振り返らずにそのまま波動砲へ駆け抜けていく。ネ級はプリンツたちの砲撃を避けるので精一杯で長門たちを通らせていた。

 

『ッ!』

「行くよぉ酒匂!」

「ぴゃあ!」

 

 プリンツと酒匂は眼前のネ級に臨戦態勢を取ると、砲撃で牽制しつつ長門たちが波動砲へ向かう時間を稼ぐ。サラトガは巣立った鳥の雛を見る気持ちで二人の勇姿を胸に刻んだ。

 

「ふぅ…すみません長門、ユージンや私の我儘に付き合わせてしまって。私たちはもう…誰ヒトリとして欠けてほしくなかったのです」

 

 波動砲へ向かう道中サラトガが頭を下げて謝罪の言葉を述べると、長門はサラトガの方を向いては薄っすらと穏やかな笑みを浮かべると、自身の考えを告げた。

 

「いや、私に対してそんな風に言ってくれるとは思わなくてな。少し…嬉しかったよ、こちらこそ済まなかったな。君たちの意見を一蹴しようとしてしまった…駄目だな、あの時もそうだったと言うに…どうにも頭が固いな、私は」

「そんなことないですよ、本来は戦場で全員無事を考えることは甘いのでしょう。それでも…どんなに甘くても厳しくても、それは皆のイノチを想ってこそです。そこに変わりはないのですから」

「サラ…」

「…フフ、私も自分のイノチすら惜しくなってきました。彼が…タクトさんがこの海に来てからというもの、翔鶴は己の過去を克服して、酒匂やユージンも彼らに影響されて随分逞しくなって。本当に…不思議な人」

「そうだな、彼が我々の何かを変えたのは確かだ。だからこそ…彼の考えに、全員無事という甘い理想論に賭けてみたい。そう思えたのかもな?」

 

 長門がそう感慨深げに呟きながら視線を前に移すと、目前に海上を滑る敵艦隊が見える。深海戦艦ル級率いる敵性戦隊だ。

 

『◾️◾️◾️◾️◾️ーーーッ!!』

 

「そうですね…さぁ、早く波動砲を破壊して酒匂たちに合流しないと!」

「あぁ…行くぞ!」

 

 長門が気合を入れるように両手拳を脇に構え、サラトガも弓を引いて矢を番える。行く手を遮る敵あれど二人の希望を見据える眼は変わらなかった。

 

「翔鶴、そして…瑞鶴も、見ていて下さいね? この戦いを乗り越えて…私たちは今度こそ前へ進むんです!」

 

 サラトガの啖呵に、長門は同意を込めて大きく頷いた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。