艦これすとーりーず ―僕が異世界版艦これの提督になった件について― 作:謎のks
「…っ! えっ、あれって…?」
僕が金剛たちに追いつくと、異様な光景が広がっていた。
彼女たちから少し離れた位置にいる僕、そこから彼女たちとレ級の激闘が文字通り火花を散らしていた。…レ級が黒い大鎌を振り回してる? 綾波がそれと打ち合っている、彼女たちに介入しようとする金剛たちが、ヲ級たちの艦載機の爆撃にさらされている…予想以上の苦戦に僕は言葉が出なかった。
「拓人さん、どうやら不味い状況ですね?」
「え? どういうこと妖精さん?」
「はい、あのレ級は私の予想を上回る力を有しているみたいです。まさかここまでやるとは」
「え!? 妖精さんが用意したんじゃないの?!」
「うーん、難しいですね…とにかく私はそうなると分かっていましたが、この苦しい展開自体は読めませんでした。これはおそらく…」
「…?」
「いえ、それよりも早くあのレ級は止めた方がいいです。でないと……っ! 拓人さん!」
妖精さんが指差す先には、尻尾を立てて今まさに砲撃を喰らわせようとするレ級が……っ!?
「アレ、誰が狙われて…!?」
その砲撃の標的は…翔鶴!? でも砲撃のモーションが遅い、これなら避けられる!
「…拓人さん、助けますか?」
「え?」
「このままじゃ彼女"沈み"ます、確実に」
「っ!?」
僕は妖精さんに言われて翔鶴を見やると、みるみる内に彼女から戦う意志が消えていくのを感じ取れた。
「そんな…どうして!」
「おそらくこの状況そのものが、彼女の本懐なのでしょう」
「え…何でそんな」
「拓人さん…この世界の艦娘たちは傷ついていると言いましたよね? …アレがその傷が表に出た証拠なんですよ」
「え…っ!?」
「貴方に分かりやすく言うと…彼女たちの過去のトラウマの顕れ、いわゆる使命(カルマ)とでも言いますか? とにかく、彼女たちに正しく使命を果たさせることが、貴方の役目ではないでしょうか」
「…あの場合は?」
「"ただの犬死に"でしょうね? 彼女の目にはまだ絶望が色濃く映ってます、それでは彼女のためにならない」
何にしても、彼女を助けなきゃならないってわけか…。
「…どうします? 私は手を貸せませんが、貴方は」
「妖精さん」
…正直、このあとの行動を考えたら今すぐこの場から逃げ出したい気分だ。僕はトラックに轢かれて死んだけど、それとは訳が違う。でも…
──ごめんね…貴方との約束……守れ……なか…った………
「…どうすればいいのか、教えてくれる?」
「っ! …はい!」
・・・・・
…僕は、妖精さんから自分の「特典」の詳細を聞くことにした。要点を挙げると。
・水上を歩ける(滑れる)
・力は強い方(重いものを軽々ってところ)
・体は丈夫(砲撃を受けても平気)
・一応各種艤装を扱える(補正云々で威力は期待できない)
…うん、艦娘の能力っていうより「イメージに沿った」スキルってことかな? でもってこれらから察せられる僕の一連の行動としては。
「よーい…ドン!」
陸上選手ってわけじゃないけど、僕は陸上競技でよくみられるクラウチングスタートのポーズを取り、スタートと同時に一気に走りだした。妖精さんが言うには「力を各部位に一点集中出来る」とのことで、足に力を入れると思いのほか瞬発力が強く、一瞬体勢が崩れそうになったが何とか持ち直した。
「…っく! うぅおおおおおおおお!!!」
全力で海の上を疾走する僕、腕が引きちぎれる位振りぬく、足は確か地面(というか水面?)を蹴る感じがいいって聞いたことがあるけど、思いっきり踏んづけるように走った、フォームはめちゃくちゃだろうけど特典のおかげかもの凄いスピードで走れていた、某フ〇ッシュの如く、マジで。
速さの限界を超えたか顔に当たる風はそれほどでもなく、一瞬で彼女たちの間合いに入る、正に「光速疾走」していた僕の横に、レ級の姿が一瞬で通り過ぎた。
『…ギィ!?』
さしものレ級も何が起こっているのか理解が追いつかず目を真ん丸にしていた。ふふふ、これからまだまだ驚くよ?
「…っ!」
音速でレ級の砲弾をすり抜け、翔鶴の前に立つと僕は両手を広げる、背中で受け止めるワケだけど、悟飯を助けたピッコロさんってこういう感じだったのかな?
──瞬間、僕の背中に隕石でもぶつかったような熱く重い衝撃が、痛い。でも特典のおかげか不思議と”痛み”だけで済んでる、すごいけど後でアザにならないかな…?
向こうで金剛が叫んでるのが聞こえる…ああ、心配しないで、こんなオタクが体張っても「まじキモイ、死んで?」って一蹴されるだけだから…あれ、なんかデジャヴ??
「…っ! 貴方、どうして…!?」
翔鶴は驚きを隠せないといった具合に、目を見開いて瞳の中に湛えた絶望を見せつける。そこからさらに罵声を浴びせる。
「何故助けたの!? 何故生きているの!!? 貴方馬鹿なのっ?! 私は沈みたいの! 戦いの中で!! 何のつもりか知らないけど、同情程度でこんな」
「…っああ、もううるさいなぁ!!」
「…っ!?」
僕は彼女と向かい合う形で怒声を浴びせ返す。服はボロボロで息も絶え絶えだったが、自分にこんな大声出せるんだと内心驚きつつ、いつもの悪い癖を露見する。
「君の意見なんて知らないよ! 僕だってなんでこんなことしたか分からないよっ! でも放っとけるわけないじゃん! 誰にも沈んでほしくないんだよ僕は!!」
「…っ、綺麗事言わないで! そうやってニンゲンは平気で嘘をつく! 本心じゃない癖に、自分本位の癖にっ!!」
「勝手に言ってろ! それでも僕はっ! もう二度と見たくないんだ!! 命が零れ落ちる瞬間を、僕の目の前でみたくないだけなんだよ…!!」
「…っ!!」
「綺麗事だからなんだよ! 命もらったら生きろよ普通に!! 君に何があったか知らないけど、僕についてくる気があるなら、二度とこんなマネするな!!」
肩で息をしながら、僕は頭の片隅で今の言葉を復唱した。…”僕についてくるなら”か、我ながららしくないなぁ…。そんなことを考える僕の前で、翔鶴はまるで重みに耐えかねたように声を潰したように泣く。
『…ト』
「…? 何?」
ふと、後ろのレ級が何かを呟いた気がしたので振り返る。
『ト、クイ…テ、ン…!』
「…!?」
悍ましい笑みを浮かべながらレ級は僕を見据えた。…”特異点”って言ったのか?
『トクイテン、トクイテン! トクイテンッ!! キヒッ! キヒヒッ!!』
狂喜乱舞と言わんばかりにレ級はくるくるグルグル激しく動きながら…。
『…キヒャァ!!!』
再び尻尾をおっ立てて深海砲撃の構えを取る、あっヤベ。と思っていたら一瞬で火球が僕の目の前に迫ってくる。
「うわあぁ!?」
普通に驚きながら思わず体をすくめてしまった僕。今度こそ終わった…と思ったら。
「フンッ!」
金剛が僕の目の前に立ち塞がり、目前の凶弾を「素手」で殴り飛ばした。す、すげぇ…金剛パリィだ、アニメで見たやつ。
「金剛!」
「テートク! ケガはない?! …あぁ、服も体もボロボロ…」
「あぁうん、このぐらい平気だよ? えへへ」
僕はこの後の金剛のセリフは「ハッハッハー! 流石ワタシのテートクネー!」とか竹が割れたような笑いで返ってくると思っていた…でも。
「…っ! 馬鹿!!」
ぺしっ! っと僕の頬を叩く金剛、目には綺麗な一粒の涙が…。
「死んじゃったらどうするの! 貴方は私の大切な人なのよ!? 危ないことしないで!!」
「え…? あ、ごめんなさぃ…」
僕が小声になりながらも謝ると、金剛は感極まったように僕を抱き寄せた。
「…っ! よかった…貴方が無事で……よかった…っ!!」
「金剛…」
彼女は僕のために大粒の涙を流してくれている。僕は嬉しい反面加賀さんの言葉を思い出した。
「──彼女はもうここには…」
…あぁ、この”違和感”がそうなんだろう。だとしても僕は…。
「…ありがとう、金剛」
「っ! …ふふ、少し痛かったデスか?」
「ううん、君に殴られるなら全然大丈夫だよ?」
「うふふ! テートクは優しいデース♪」
『…ッキヒ! トクイテン、ケス! トクイテン、ツブス!!』
僕らのやり取りをよそに、レ級は殺意マシマシで僕らに牙を向けた。
「…許さない」
金剛はレ級に向き直ると、こみ上げる怒りと共に宣戦布告する。
「潰せるものなら潰してみなさい! 私は金剛…テートクへの愛は、誰にも砕けません!!」
『キヒャァ!!!』
レ級は大鎌を振り上げながら飛び上がり、凶刃で金剛を切り裂いた…ように見えた。
「っ! 金剛!! ……ん?」
レ級は大鎌を力いっぱい振り下ろした状態で…空中に止まっていた。それもそのはず、金剛によって「鎌の切っ先を」片手の指で押さえられていて、身動きが取れていなかった。
『ギ!?』
「…っふ!!」
そのまま金剛は、もう片方の手で見事なボディーブローをかます、レ級は口から体液をまき散らしながら衝撃に悶えた。
『ギ、ブグゥア!!?』
「はあぁ!!!」
更に回し蹴りをくらわせる金剛、レ級耐え切れず吹っ飛ぶ。
『ギギャアアアアア!!?!?』
「…さぁ、反撃開始ネ!」
…ここから、金剛は僕らの予想をはるかに上回る強さを見せつけるんだけど…言葉だけで片づけるのもアレだから、次回に続く。
…僕の嫁、強すぎない?