艦これすとーりーず ―僕が異世界版艦これの提督になった件について― 作:謎のks
今回から当小説オリジナル海域を中心に、物語が展開していきます。気になる海域名は──
──"サイハテ海域"です。
これからどのようになっていくのか、閲覧者の皆さまも興味の引くことだと思われますが…ここでちょっとしたお知らせ。
前回から遅れた更新ですが…今後2〜3ヶ月の間は、今回のようにお待たせしてしまうことが多くなると予想されます。本当に申し訳ありません。
理由としましては、毎度のことですが仕事がこの時期特に忙しくなり、更に私事で周りがゴタつき始めていて、とてもゆっくり執筆している時間がないからです。
リアルが憎い・・・終盤に差し掛かってこの為体(ていたらく)、本当にすみません。何とか合間を見て書いていきますので、これからも宜しくお願いします。
では本編ヘ、いつもよりかは文量少なめですがその分小難しいことを書いてるので、先の展開を予想しながらお待ち頂ければ。
では行きましょう…どうぞ!
過去の因縁、未だ断ち切れず
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──かつて世界は、暗雲に包まれていた。
海に現れし世を混沌に陥れるモノ、巨大な黒泥の魔物を迎え撃つため、人類は「艦娘」というヒト型兵器を用いて必死の抵抗を続けていた。
だが…状況は未だに拮抗、寧ろ魔物の方が押し返す勢いがあった。このまま行けば…人類は「破滅」するやも知れない。
──そんな中、暗闇が厚い雲となり空を覆い隠す海上にて、一隻の「船」から遥か先を見据える男が一人。眼前は黒に染まってしまった水平線があるだけで、何も見えない筈なのに…その男は確りと目線を合わせ動かさない。
「──元帥閣下!」
ふと元帥と呼ばれた男は、その耳に届いた声の主の方を見やる。ざっと見ても弱冠10〜20代の少年が男の目に映ると、彼はニコリと少年に対して笑みを向けた。
「やぁ。報告かい?」
「はいっ、現在の戦況を把握したのでお伝えします。しかし…あまり良い報せではなく、艦娘はあの怪物たちとの戦いに劣勢を強いられている模様です」
「そうか…」
男はその報告に哀しみに溢れた顔を浮かべる。そして表情を厳しく引き締め直し再び真正面の暗闇に視線を移すと、独り言ちに言葉を投げた。
「哀しいものだな? 私の元居た世界でもこのような血の飛び交う戦争が頻発したものだが…世界が変わろうと人の在り方は変わらないか」
男の悲哀の込もった文言に、隣立つ少年は男の方を確りと見据えて自身の考えを話す。
「そうかも知れませんが、失礼ながら戦争とは相応の利益を求めて、人の理念や価値観を含めて衝突する人間同士の争いと心得ます。ですがこの戦いの相手は…
少年の年にそぐわぬ利発的な言葉に、男は心底嬉しそうな満面の笑みを向けた。
「その通りだ。しかしてその実は似通っている部分もあるだろう? 理由ありきの戦いが戦争であれば、世に存在するモノ全ては「ケダモノ」だと私は思う。我々も含めたそのモノたちは己のため他者を蹂躙しなければならないという「理由」がある、そうしなければ
「閣下…それは「屁理屈」と仰るのでは?」
「ははっ、否定はしないよ? それにもう一つ…あの怪物は人の「負の感情」から生まれたと定義されていると聞くしね」
「っ、魔法学の「精神魔源論」…ですか?」
この世界における普遍的な技術である「魔法」を理論化した「魔法学」、その中で人の体内においてマナを最も活性化させる要素は精神である、そう意義付けた論文こそ「精神魔源論」である。
人とマナには密接な関係がある、故に体内に取り込まれたマナは人間の中に存在する「負の感情」によって汚染され、その過程で人に感化されたような感情や意識を芽生えさせる。
そうした負のエネルギーが「穢れ」となり海の魔物──海魔──を生み出した、それは海魔を逐次観察、実験を繰り返した魔術師によって「海魔はマナの穢れから出来ている」ことを明らかにしたことで見えた事実だった。
つまり生命の源が人の悪感情により汚染され、それが体外に
「そう。であれば…あの化け物たちが元は人から生まれたというなら、ある意味ではこの戦いは、我々の負の感情が生み出した我々自身との戦争だ、人間同士の戦いに相違無いだろう。それにね…故意では無いにしろ人の身勝手によって生まれた半身を「怪物」と見做すのは、少々早計ではないかな?」
「…確かな弁解ですね、申し訳ありませんでした。貴方の思慮深さに気付かない失言でした…お許し下さい」
「何、君はまだ若いからな? 血気盛んなことは良いことだよ、行動に迷いが無くなるからね。とはいえただ動くだけでなく「慎重かつ大胆な行動力」の均衡を保つことが望ましいが、そこは経験を重ねればどうとでもなる…おっと、若き艦隊指揮官殿に言うべきことではなかったな?」
「いえ、ご助言感謝致します。連合司令長官たる貴方のこれまでの聡明なご判断により、戦況は覆ったと言っても過言ではありませんので。第一…貴方にとって異世界の学問である魔法学を説かれたことで、自分の力不足を今一度認識出来ます。閣下にはいつも頭が下がる思いです」
「ははっ、世辞が上手いなぁ君は。しかし…フフ、魔法か。本当に異世界に飛ばされてしまったようだな、私は」
男は顔こそ笑っていたが、頭を俯いたその表情には確かな「哀しみ」が浮かんでいた。少年はそれをただ見ているだけしか出来なかった。
「閣下…」
少年の眼差しに心配の色を見た男は、何でもないよと微笑みながら少年に向き合う。そんなやり取りを経て二人は次にどうすべきかを話し合う。
「さてどうするか…このまま戦ってもジリ貧であることは確実、今のうちに手を打たなければ。例えば艦娘をサポート出来るような兵器を新たに製作することは可能かな?」
「はっ、私もそう考え至ったので装備開発部隊に新兵装を造らせるよう手配しました。どうやら獣の狩猟本能を活かした動物型自立兵器と成る模様です」
「流石だ。しかし…獣か、ちゃんと首輪を着けて貰わねばな。冗談でなく暴走の危険性もある」
「分かりました、緊急停止措置を取れるように開発部隊に伝えます」
「頼むよ。しかし…それだけで足りるとはどうしても思えない、もっと確実な方法で殲滅出来ないものか? 艦娘の建造スピードも落ちて来ているようだしね」
「そうですね、敵も各海域拠点の「工廠」を狙っているモノも出始めていますので、復旧にも時間が掛かるかと」
「…やれやれ、後手に回らないよう上手く行動に移さなくてはならないが、前世のことがどうしても引っ掛かる。急いては事を仕損じるとも言うしな? こういう危機的状況こそ落ち着いて周りを見て行く必要がある…もっとヤツらを一網打尽に出来る方法はないものか?」
男が考えあぐねていると、少年は少し戸惑いの色を見せつつ話を切り出す。
「元帥閣下、意見具申を申請したく」
「ほぉ…許可する、言ってみなさい?」
少年の迷いを払拭するように柔らかな笑みを浮かべ、優しい声色でそれを肯定する。男の温かな配慮を受け取った少年は…それに気付くとフッと微笑みを返すと、顔を引き締め直して本題に入った。
「魔法学の中のとある「魔術」を行使すれば、或いは…海魔を退けることが可能やも知れません」
「成る程。先ほどはああ言ったが私はその辺りは疎いからな、詳しく聞かせてほしい」
少年の提案に興味を示した男は、疑心を持つどころか間を入れずに詳細を少年に促した。少年は彼の「寛大さ」に心底感服しつつもある魔術について語った。
「それは──」
少年は男に、海魔たちを退けるための「秘策」を伝える。全ての内容を把握した男は──「おぉ」と感嘆を漏らすのだった。
「それが本当なら、確かに妙案だろう。だが…出来るのか?」
「それは…失礼ながら絶対の保証は出来ません、しかし海魔の発生地点の大まかな位置は掴んでおります。そしてそれら反応が一時的に多くなる場所も同様に」
「何? ヤツらにも「拠点」があるということか?」
「はい、海魔はどんなに数多く倒しても直ぐに戦力が補充されキリがありませんが、これだけの大群が押し寄せて来るのは…そこに「大元」が居るからに違いありません、一時的に探知される多くの反応は大元から「分裂」した各個体だと推測出来ます」
「では…先ほどの方法でその大元を退けることが出来れば」
「そうです、海魔は新しい個体を生み出せなくなり…後は残存勢力を叩くことが出来れば、この戦いに終止符は打たれます…っ!」
少年は確信を持って大戦の終結を宣言した、男もそれに異論は無かった…だが「懸念点」はあった。
「
男は爽やかな声色を崩さずかつ何処か威圧めいた言葉の重圧を、少年に向けて言い放っていた。それは少年の考えの全てを「見抜いた上で」の言動だった。
「っ、それは……」
少年はその先を言い淀んでいた、それは確かに残酷な判断であり危険な賭けでもあったが、それでも「彼女」ならば期待以上の成果を出してくれる筈…と絶対の自信に近い「信頼」がある。しかして現状彼女に「甘えている」ことも然りであった。
男も甘えるな、と言いたいのではない。追い詰められた戦況を鑑みればそれに頼らざるを得ないのは明白、それを否定する所以も無し…だがそれは彼女を「犠牲にして」戦いへの勝利と平和を掴み取ろうというもの、戦場は許そうとも「人心の観点」からは許されなかった。
「本当にそれで良いのかい? 確か君は彼女に…」
「いえ。それこそ関係ありません、私も若輩ながら軍人の端くれ。彼女への好意は……否定はしません、それでも私は…彼女に「死んでくれ」と宣います。それが世界の平和……罪無き民を救うことに、なるなら…っ!」
自身の非情な言葉に思わず打ち震え出す少年の肩、男はその肩にそっと手を添えると、諭すような口調で自身の考えを話す。
「怖いだろう、愛する者たちを犠牲にしなければならないということは。かつての私が生きた世界では、それが当たり前だったんだよ。だが…私は一度死んだ折に世界の叡智を垣間見て来た、だからこそ発展に犠牲は付き物だと悟ったし、だからこそ…それがどんなに「虚しい」ものか、理解したんだよ…やっとね?」
「閣下…ですが私は」
「かつての私なら、戦争に勝つためなら如何に犠牲を払おうとも、敵の中枢を叩くべきだと言ったことだろう。しかし今は、君のような若く次代を背負う者の負担を、少しでも無くすことが出来まいか、そう思っているのだ…遅すぎたぐらいだがね?」
「っ…有り難き御言葉…で、す。く……っ!」
少年は男の言葉に涙が止まらなくなる、肩で息をする少年に対し男は黙って微笑んでは好きなだけ泣かせていた。
犠牲は少なくかつ戦争にも勝利する、そんな都合の良い「夢絵空事」のような願いは現実に通ずる筈は無い。
それでも人はそれに向かい近づくため──徒労と知りながらも──尽力しなければならない、叶わないと疑いながらもその先の「夢ある未来」のために。
男は彼女を犠牲にしない方法を模索しようと少年に告げると、少年も俯きながら「はい…」と涙を滴り落としながら言ってそれに同意する。
──だがしかし、それは所詮彼らの意思…
「……」
男たちの後ろから足音が響く、二人がそちらへ振り向くと…そこには件の「彼女」が居た。
「…っ! 聞いていたのか?」
少年の問いかけに彼女は軽く頷くと、続いて男の方を見遣った。その真っ直ぐな視線には「行かせてほしい」と、彼女自身の「意志」が見て取れた。
「…そうか、ならば……我々には口出しする権利は無いな、残念だが…本当に感謝しかないよ」
「…っ、すまない……君を頼りにしてばかりだったのに、こんな…
男は彼女の自己犠牲に心からの謝意を表し、少年は再び涙を流しては彼女に対して謝罪を繰り返した。彼女は少年に「泣かないで」という気持ちを込めた微笑みを向ける。
「改めて命令させて頂く、本日より艦隊は機を窺い次第敵中枢へ突撃、敵の大元を見つけることを優先されたし。海魔の大元を発見した後君はそれを──己に代えても排除してくれ。責任は私が取る、この戦いで…世界の命運が決まるだろう。…どうか君に幸運を、死なないでほしいと言えない愚かな私を許してくれ」
──
男が哀しい眼で彼女の決死を宣言すると、その視線の先──巫女服に袖を通した美女は、一つ頷いて了承した。
「YES、マスター。このイノチは…貴方と世界のために」
死の覚悟を湛えた瞳で男を見つめては忠誠を見せる彼女は、次に暗闇で境界の見えない水平線をしっかり見据えると、闇の中に潜む「敵」を静かに燃ゆる闘志の宿る眼で睨み付けた。
今こそ決戦の時、彼女は今──愛するモノたちのため、世界を害する怨敵と対峙する。
・・・・・
──現代、鎮守府連合最上階の一室。
かつての大戦から数十年の時が経ち、記憶を反芻していた人物は晴れ渡る空の遠く彼方を、大きく開けた窓から見つめていた。
「……」
その顔の表情としては、思い返して懐かしいだとか、あの時「彼女」を止められなくて悲しいだとか、感傷に浸るものでなく──あくまでも顔を引き締めこれから起こる戦いに臨む「使命感」を湛える、険しくも勇ましいものだった。
──コン、コン。
「…入りなさい」
来訪者がドアをノックすると、嗄れた声で入室を促した。しかし直ぐに扉が開くことはなく…暗がりの部屋が開け放たれるには少しの間を置いた。
ドアの向こうから顔を出したのは──青い袴の美女「加賀」である。加賀は薄暗い部屋の中央に佇む背中を見て、驚きを隠さない。
「っ! …総帥、閣下…貴方が私たちの前に姿を見せるなんて」
「ワシがここに居ては不味いのか?」
「い、いえ! 申し訳ありません…失言でした」
「なあに、誰にでも口から先にモノを言う時はある。…ほれ、報告があるのじゃろう?」
鋭く低い声色を崩さず来訪者に用事を促す人物──白髪の老人は背を向けたまま顔を少しだけ振り向いては、同じように刃物のようなギラついた視線で加賀の居る方を見遣った。
催促された加賀もいつも通り…でなく、少し緊張した面持ちで伝言を伝える。
「カイト提督が呼ばれております、至急彼の執務室へいらして下さい。緊急事態の発生に伴い作戦会議を開きたいと」
「分かった、伺おう。元よりワシは
「…報告は以上です、失礼します」
加賀はそれだけ言うと外側から扉を閉めて、そそくさとその場を後にする。老人の含みのある言葉が引っ掛かりはしたが、今はそれを是正する暇もないので要件だけ伝えるに留めた。
再び部屋に薄暗い影が広がるも、残された老人は何かを思案する様子で微動だにしない。彼がその重い腰を上げた時こそ…事態が大きく動くのだ。
「さあて…役割を果たすとするかの」
老人は何処か悲しく、そしてどこか嬉しく思いながら独り言ちに呟いた。
・・・・・
「……」
廊下を小走りに駆ける加賀は、ふと立ち止まると総帥と呼ぶ老人の思惑を考えていた。
あの戦いの「真実」を知るのは当時の戦争に身を置いていた者たちでも一握りしか居ない。それは総帥は勿論として海魔の大元と対峙した加賀や残りの「選ばれし艦娘」、後は当時の連合幹部とその子孫辺りぐらいだった。
今直面している緊急事態は、その真実に触れる出来事であった。それを踏まえても今まで姿を見せなかった総帥の出現は、ひた隠していた大戦の見えざる事実を「口外する」…そんな覚悟が見て取れた。
──それでも「とても良いタイミング」過ぎると思うのも、仕方ないことだった。
鎮守府連合結束以降、その姿を現すことは無かった総帥だったが…まるで見計らったように現れた先ほどの場面を思い返すと、加賀には何か嫌な予感が過ってしまっていた。
総帥は何かを隠している、それも──大戦の秘密を知る自分たちにも解らない、根幹を揺さぶるような秘密を。そんな良からぬ考えがどうしても拭えない。
「…イソロク様、今が…その時だと言うの?」
加賀は右手人差し指に嵌めた「指輪」を見つめては、問いかけるように言葉を溢した。
「いえ…今は考えても何も得ない、急ぎましょう」
そう言って加賀は再び走り出すと、次にこの現在世界の抑止力たる「彼」の元へ向かう。
──果たして、今
今更だけど皆大好き「どシリアスタイム」は~じま~るよ~!