艦これすとーりーず ―僕が異世界版艦これの提督になった件について― 作:謎のks
シゲオさんとの決闘の後、加賀さんたちを使った深海金剛の再封印を何とか待ってもらうことが出来た。その間に僕たちがすべきことは…エリの復活のために必要な先代金剛の戦闘データを、深海化した彼女から集めることだ。それでエリが復活すれば……どうにか勝機を見出せるかもしれない。
どうにもエリに負担を掛けてばかりになるけど、彼女がこの状況を見たらどんな無理をしても戦場に行こうとするだろうし何の道である。でもやっぱり迷惑もいいとこだよな…僕らのやろうとすることは寝ている彼女を叩き起こして戦力に組み込もうとしているのだから。まだどうなるか分からないけど、埋め合わせは考えておこう。
話を戻すがどうやって彼女を復活させるのか? と思うだろうがそこはユリウスさんとマサムネさんに任せている。まぁ今更彼らの技術を疑うことはないだろうけど…問題は僕の方にある。
というのも僕はシゲオさんとの戦いで心身共にボロボロになっていて、幾ら艦娘の身体と同程度の造りになっている僕でも休んでいた方が良いと周りが詰め寄って来るのだ。有難いけど休んではいられない、この戦いは僕の我儘なんだから僕が前線に行かないのはおかしい。何より…僕自身もう逃げたくはない、だから行かなければ。
「アンタならそう言うと思ったぜ、んじゃあこれ飲んどけ。艦娘の身体に蓄積した疲労を一気に回復させる「気つけ薬」だ、飲料タイプだからぐいっといっとけ。艦娘以外が飲むと身体がバグっちまうんだが…まぁアンタなら問題ないだろ?」
などと言ってよくある「栄養剤(リ○○タンとかチ○○タとかあの辺り)」を渡してきた望月先生、なんだけど…ボソッと怖いこと言ったなこの子!? いや飲むけど…と思いながら恐るおそる飲んでみると、身体中の疲れが取れて動きが軽くなった気がする。ありがとうもっちー。
体力抜きにしても今の僕が皆の役に立てるか分からないけど…この戦いは僕の意地だから一人だけ逃げる真似をすることは出来ない、だからこそ彼女たちばかりに任せられないので、僕は気つけ薬を飲んだ朝どういう段取りで進めるか詳しく話し合うため、名も無き鎮守府の作戦会議室を目指して廊下を歩いていた。
「時間がないからな…急がなくっちゃ」
僕はまだ疲れの抜け切らない身体に鞭を打ちながら作戦会議室へ向かいひた走る、少し焦ってるみたいだね。この戦いにこの世界の全てが掛かっていると思うと居てもいられなくなっている自分が在るのは確かだ。
──世界を賭けた戦いか。ドラウニーアを倒せば全てが決着するって思っていたから、今も世界のためとか大切なヒトたちのために動いているのって、少し不思議な気分でもある。本当に…この戦いはいつになったら…。
「──拓人さん」
「……っ!」
何となしにこの戦いの顛末について考えながら走っていると──聞き馴染みのある声が聞こえて、思わず立ち止まる。
僕が言われて声のする方に目を向けると…居た。廊下から海の見渡せる窓の枠に、
肩に乗るほどの小さな人形のような彼女、セーラー服を着た少し毒のある喋り方が特徴的な側から見たら「胡散臭い」彼女、クロギリ海域に突入する前から姿を消していた彼女が──今、僕の前に現れた。
「妖精さん……」
妖精と呼ばれた彼女は、確りとした存在感を持ってそこに佇んでいる。一見すれば窓枠に置かれた「置物」のようにも見えるが…彼女の憂いを含んだ表情と僕を見つめる眼差しが、間違いなく「彼女」であると僕に確信させた。
妖精さんは前世から転生した僕をここに呼び寄せた張本人、彼女の目的は世界滅亡を目論むドラウニーアの野望を打ち砕くこと、そのために僕を特異点としてこの世界に招集した。彼女自身の説明ではそうなっている。でも…当のドラウニーアの言い分では。
『貴様は騙されているぞ特異点、ヤツの望んでいるのは俺を排除した先の世界平和などではない。ヤツは自身の願い──
つまり妖精さんは僕を利用して、何らかの手段で世界を破滅に導こうとしているという…言ってしまえば真逆のことを言って僕に嘘を吐いていたことになる。
その手段は終幕特典っていうまるでゲームクリア特典のような権能によって叶えられる訳だけど…どうしてわざわざ僕を使って世界を破壊しようとしているのか、
というか、今の僕の感情は平静を保てていない、内心色んな感情が渦巻いて困っている。あの屑野郎が言っていたことは…悔しいけど”本当”なのは確実だ、ならどうして僕を騙したのか、今更僕に何を吹き込もうとしているのか、言い訳でもしに来たのか? そんな「疑心暗鬼」が大きな渦となって最早タイフーンのようだ。怒りやら困惑やら疑問やらが騒がしく僕に言ってくる「早く何の用か聞け、でなければ魔女裁判だ」…と。
──待て、色崎拓人。とにかく落ち着くんだ。
お前はそうやって直ぐ物事を決めつけて判断しようとする、だから今まで「恨み辛み」が溜まっていって判断が狂ってしまうのだろう?
そうだ、普段なら人や物事を疑う僕は転生したあの日、そういうものだと勝手に理解した気になってそのまま彼女の話を鵜呑みにしただろう? それで全てが上手く行くと錯覚した自分が悪いのだろう。もっと彼女の話に疑いを持っていれば…彼女の”本音”を聞けたかもしれない、何かの事情とか考えがあったかもしれないだろう? そうしたら本当の意味での「信頼関係」が築けたはずだ。
僕は彼女を許すつもりはない、でも…何となくだけど彼女が理由なく他人を騙すとは思えないんだ。
だからこれからその理由を「探ろう」と思う、そうしないと僕も前に進めない気がするから。だからお前も…相手の立場に立ってモノを考えろ、僕にとって理不尽な行動の裏には…相応の動機が隠されている筈だから。
…そうして心を落ち着けてから、僕は改めて妖精さんに問いかけた。
「妖精さん…君は今ここに居る意味が解っている、そう解釈して良いね?」
「……はい」
「そう…なら先ずは一つ尋ねるよ、
彼女を信頼するからこそ、僕は直球で彼女の真意を尋ねた。果たして彼女は僕に対してどんな考えを持って接していたのか…?
僕の問いかけに、妖精さんは沈痛な面持ちで目を閉じては息を一つ吐いた、そして…意を決したように目を開けると重い口を開いた。
「…言えません。言えませんが……貴方の質問の意図は理解しています、私は貴方を騙していたのか? それについて
「っ、何で……?」
「話を最後まで聞いて下さい。…貴方を騙ったこと謝って済むとは思ってません、どれだけ貴方を傷つけたか計り知れませんので。ですがこれは
私はこの世界で今起こっている事態を把握した上で発言していますが、特異点としての権能の一つを喪った以上…このまま戦えば貴方は無事では済まない、最悪貴方の命も尽きてしまう、それでは困るんです。この窮地はどんな手段を用いても収めることが出来れば…貴方の役目は果たされたことになるから、貴方が死地に行く必要は無いんです」
どんな重大な情報が飛び出すかと身構えていた僕だったが、妖精さんは全てを語らずただ淡々と「この先に行くな」と言うだけだった。話の流れ的に
そう簡単に口を割らないか、分かりきっていたしその提案は受け入れられないけど、それよりも分からない疑問があった。
もし…仮に今の彼女を信じたとして、僕は果たして「五体満足」で役目を果たすことが出来るのか? 彼女の目的が世界破滅だとしたら、僕は…どうなってしまうだろう。終末特典を使った時点で用済みとなるなら「排除」される可能性も…。
「……っ」
僕がこの選択の先に起こり得るアクシデントを疑っていると、妖精さんの肩がビクッと跳ね上がった。見ると顔は青ざめているようにも見える。
…そういえば彼女は僕の心が読めるのだった、僕には彼女の考えは知り得ないが…そのアクションは他人を騙したことへの「罪悪感」によるものなのは間違いないだろう。そうか…ならやっぱり君にも後ろめたい気持ちがあるんだね? それを知れたことは素直に嬉しいよ。僕のためのという言葉も…真実なのだろう。
「──でもごめん、これは僕の手でやり切らないといけないんだ」
そうハッキリ断りを入れてから、僕は彼女に背を向けて会議室へを歩みを進める。
「っ!? 駄目…お願い、待って……”拓人”!!」
慌てた様子で自分の名前を呼ばれ、僕は一旦足を止める。
妖精さんが僕をさん抜きで呼ぶなんて、とも思ったけど…どうしてだろう。彼女の言葉の端々に「懐かしさ」を感じてしまうのは。何回かこんな違和感はあった、思わず彼女の言うことを聞いてしまいたくなるような…そんな魅惑の声だ。
「…ごめん、僕は自分自身の気持ちと…
僕は覚えたての意志の強さで彼女の誘惑を振り切ると、再び歩き出してそのまま妖精さんと別れを告げる。
彼女と話して明らかになったことは、彼女が故意に世界を破滅させようとする意志は無いことと、だから僕が彼女と共謀して世界を滅ぼす最悪の未来は現状「有り得ない」こと。これだけ分かれば十分だ…今はこの状況を何とかしなくちゃ。
「──…どうして……っ」
僕が決意を新たにする中、妖精さんは苦渋に満ちた顔で僕の背中をただ見つめるのだった…。
・・・・・
──シズマリ海域、霧エリア前。
一通りの段取りを済ませた僕らは、時間も惜しいので名も無き鎮守府から急いでサイハテ海域への唯一の入り口であるシズマリ海域の「ボウレイ海域」前まで出航していた。前にも説明があったけどここに来た時の望月の解説に出ていた「ヤベー海域」が、僕らが今向かおうとしているサイハテ海域だったようだ。
…今更だけどラストダンジョン的な海域があの時すぐ近くにあっただなんて、しかもあそこでユリウスさん探して結構駆け回ったよね?! 迷い込んでたらどうなってたことか…そう思うと背筋がぞっとする。
気を取り直して…目的地に着いたので僕は映写型通信機でユリウスさんたちに呼びかけた。
「こちら拓人、ユリウスさんそちらはどんな感じですか?」
『──こちらユリウス、ああ問題無い。我々は現在鎮守府連合本部の医療エリア、エリ君の眠る病室で作業中だ。彼女に必要な機材を繋げている最中だが…先ほどから看護師の視線が痛いよ』
「仕方ありませんよ、カイトさんも僕らの作戦に乗ってくれたとはいえ、医療スタッフの監察下じゃないとエリにどのぐらい無理がさせられるか分からないのですから。彼女にもしものことがあれば…僕らのしていることは意味がない」
『理解しているよ。さて…今一度確認しよう、先ずはエリ君を復活させる手順として、君たちに事前に渡した首輪型の「計測器」を着けたまま深海金剛と交戦してほしい。戦闘中に計測した彼女のデータは自動でこちらに転送するよう設定してある、それを基にエリ君の精神から欠如した金剛の精神を再プログラミングする。言うは簡単だが相手はあの「金剛」だ、死ぬ気でやらねば本気すら出さないだろうが…本当に死んでくれるなよ?』
「分かっている、俺たちも無事に済むとは思っていないが…死なないよう尽力するつもりだ」
ユリウスさんの言葉に、天龍は深く頷いて深海金剛との戦いへの意気込みを語った。
僕らのやり取りがひと段落すると、映写型通信機から映されたユリウスさんの映像が乱れ始めた。どうやら誰かが彼の腕から通信機を取り外したみたいだ、その誰かとは…シゲオさんのようだった。彼は画面いっぱいに顔を近づけて更に詳しい確認をする。
『良いかタクト、霧の中には既に加賀たちを配備させて居る。彼女たちの案内でサイハテ海域の入り口に向かうのじゃ、そして十分に近づいたら望月の造った「灼光弾改」でサイハテ海域の穢れを無効化するのだ』
「分かりました、ですが…それでも急がないといけないんでしたよね?」
『うむ、サイハテ海域は深海棲艦の巣窟じゃ。故に海域周りの穢れの濃度も濃い、無効化したとして数時間が限度じゃろう。お前たちはその間に深海金剛からデータを集めエリを復活させるために行動するのじゃ、それが現状一番の解決策なのだろう』
「ありがとうございますシゲオさん、貴方からその言葉が聞けて嬉しいです。絶対に…エリを眠りから目覚めさせます、世界のために、何より…僕たちのために」
『期待させてもらおう。…では行けぃ! かつての古戦場、この世界の最果てへ!! お主らの幸運を祈るぞ!』
「了解!」
シゲオさんの激励を受けながら、僕らはサイハテ海域へと向かうため霧の中を進んで行く。
◇
──目前の霧が深くなって来た頃、急に視界が晴れた気がして辺りを見回すと…見慣れた「彼女たち」が出迎えてくれた。
「加賀さん!」
加賀さんを含めた加古、長良、時雨、長門の五隻(ごにん)…選ばれし艦娘たちが僕たちの前に佇んでいた。
「よく来たわねタクト君、それと…私たちを生かすため頑張ってくれたと聞いたわ。ありがとうね?」
「いえ、僕に出来ることをしようと考え直したまでです。加賀さん…あの時は酷いことを言ってしまい、すみませんでした」
僕が深々と頭を下げると、加賀さんは温和な笑みを浮かべていた。
「我々はあくまで兵器よ、どう使われようとも文句を言えない立場だから。それに私も貴方に非道いことをしたわ、病室に居た貴方を召集したのは、エリのことで思い悩んでた貴方を配慮しないことだった。許して下さいね?」
「そんな、それこそ仕方ない事情ですし。でも…ありがとうございます」
「ええ。それとカイト提督も改めて謝罪していたわ、彼は「君に全てを任せようとしたのは君の気持ちを汲み取らない浅はかな愚考だった」と猛省していたわ。あんなに委縮した彼を見たのは初めてかもね…ふふっ」
加賀さんは何処か意地悪な表情を浮かべて微笑んでいた。
カイトさんには事前に作戦を伝えに行った時に顔合わせして、その時に僕も彼も互いに謝るべきところを詫び合っていたけど…そこまで思い悩んでたのか。何だか申し訳ないな…菓子折りでも持って謝るべきだったな、今は時間が無いけどこれがもし成功したら…。
「…って、これじゃ「死亡フラグ」みたいじゃないか? 止めようやめよう…っ」
「どうかしたの?」
「い、いいえ! カイトさんの下に後で改めて伺おうと思って、ですが先ずは…」
「そうね、この先の…サイハテ海域までの案内だったわね? 一応言及すると私たちは何があっても良いように入り口付近で待機を命じられてます、だから貴方たちと共に戦うことは出来ません…ごめんなさいね?」
「分かっています、それでも一緒に来てくれるだけでも心強いです。…行きましょう!」
僕たちは会話を切り上げると、そのまま加賀さんたちに先導される形で霧の中を進んでいく。
──霧中を波の上を掻き分けながら滑って暫くした時、選ばれし艦娘たちは懐かしむように言葉を紡いでいった。
「こうして五隻で並んでると、海魔大戦ん時を嫌でも思い出しちまうよな」
「…そうだね、あの時って金剛が封印の要になるって解ってたから、何だか暗くなっちゃってたよね?」
「うん。封印のことは彼女本人の意志だったけど…僕は嫌だったよ? 彼女の明るさに救われたこともあったからさ」
「そうだな、ここに居る皆同じ想いだろうが…その金剛が人類の敵となるとは未だに信じられん、彼女が深海棲艦になることもな。何をしても沈まない鋼の乙女だった故に殊更にな」
「そうですね。詳しい状況は海域内に入らないと何とも、それでも嘘であってほしいですね…彼女は多くのニンゲンの期待を一身に受けながら戦い続けていましたから、どんな理由があれ彼女にはもう何も背負うことなく眠ってほしいものです」
加古、長良、時雨、長門さん、加賀さんの順で当時の状況と先代金剛について語っていく。
かつての英雄、か。人類だけでなく共に戦った艦娘からも慕われてたんだな? 彼女の身を捧げた行動は確かに哀しいものだったろう、でもそれが…誰も傷つけないで世界を守る方法で、彼女はそれを迷うことなく実践した。
自分のイノチすら厭わない自己犠牲…僕も見習うべきだね、今僕はどんな結果になろうともエリや艦娘たちのために戦うと決めたのだから。まぁ…犠牲を出さないためにこの作戦を行う手前いい加減なのかもだけど、犠牲が出ないとは正直思えないから、その時は僕の全てを賭けて状況を変えたいと考えてるよ。
でも…本当に出来るだろうか、自分がどうなろうとも他人や人のために動くことなんて、そんな大それたこと僕に出来るのか…?
「…タクト君、一つだけお節介を言わせて下さい」
僕が悩んでいると、後ろを振り向いて様子を窺っていた加賀さんが速度を落として僕の方へ寄って来た。何か言いたいことがあるようだけど?
「金剛がやった世界を救う方法…自己犠牲は確かに気高く慈悲のある、そして誰にでも真似できるものではありません。ですが…それを望んだモノは誰一人として居ないのです。私や長門たち、総帥に…そしてイソロク様も」
「…っ!」
加賀さんは僕が何を考えていたのかお見通しのようだった、彼女は表情を変えることなく少し目を細めると、彼女の本音を呟いた。
「本当は彼女にも生きてほしかった、私たちと共に世界を支える抑止力として現代まで…そう願ってももう彼女は居ないと諦めていました。それがあの時の最善であったと…思い込むことで胸の寂しさを紛らわせて来ました」
「加賀さん…」
「あの時は世界の命運が掛かっていました、今回もそれに変わりありません。ですが…この戦いは誰も犠牲を出してはならない、そういう戦いなのだと思っています。本当は貴方にも…戦ってほしくない、それでも行くというのなら…
彼女は僕の眼を確りと見つめると、彼女自身の願いを込めて言葉を投げた。
…そうだ、絶望的な戦いではあるが死ぬ覚悟をしてもそれで何かが変わることはない、寧ろ志半ばで倒れてもエリも生き返らないしこの世界の現状も覆ることはない。
だから…勝たなくちゃ。そのために僕たちは深海金剛の待つ海域の最深部へ向かうんだ、そうだ…死んでも何も変わらないんだ、なら僕は何が何でも「生き抜いて」やる。
「…そうだった、喪わないために動いているのに僕が犠牲になってもいい、なんて甘えでしたね? 支えてくれる皆のためにも生きていかなくちゃ」
「そうですよ、貴方を慕うヒトたちを悲しませないように…必ず生きて下さい」
「はい、ありがとうございます加賀さん。僕に出来ることは限られているかもしれないけど…絶対生き残ってみせます!」
僕が迷いを振り払い決意を新たにすると、先頭の加古たちが止まり始めた。…どうやら目的地に辿り着いたようだ。
「ここだぜ、奥の方から嫌な雰囲気を全身に感じるぜ? 懐かしいねぇこの背筋の張る感じ! ぁあ〜やだヤダ」
「そうね加古、なら私たちはここまでね…タクト君?」
「…よし。じゃあ皆事前に渡したサングラスを」
僕はサングラスをそれぞれ着け始める皆に、手順を一つずつ説明していく。
望月の作った灼光弾改は強烈な熱を帯びた光を生成する魔導弾の一種。その光に目が潰れないように撃つ前にサングラスを着ける必要があるけど…その効果はクロギリ海域の黒い霧を一瞬で霧散させたので折り紙付きだ。
「サングラスを着けたら次は…もっちー、翔鶴、準備は良い?」
「私はいつでも良いわよ!」
「アタシも同義だぜ。それにしても…また御入用になるたぁな? 予備作っといて正解だったぜ」
「あら、そうだったの。そんなことしなくても
翔鶴が改二になり得た異能は「想いを力に換える」能力、彼女の中の闘志や信念と言った精神力を、この世界のあらゆるエネルギーに変換出来るんだ。初めてこの力に目覚めた時は「エーテル光子」というマナ系統の中で最も高密度の魔力を用いていた…んだけど、改めて言うとチート過ぎるな;
「おっ、そういやそうだったな。マナもいけるのかい?」
「えぇ。でもあまり多様しない方が良いわね、この能力って私にとっても未知数だし限界が見えないもの」
「そりゃそうだな。研究の余地ありだが…まぁアタシは興味ねーからやめとくわ、どっかのうるせ〜ヤツがやりたそうだしよぉ、席譲るわ」
望月が言ってるうるせーヤツって…もしかしなくても「ヴェイビー!」って言う人だよね? 確かにエネルギー問題がどうとか言ってたし。
望月の意図を察したのか、翔鶴は途端に苦い表情を浮かべた。
「……げぇ。別に構わないけど、昔のことを抜きにしてもアイツは苦手なのよね」
「そこはお二人さんで話し合ってもらわにゃあいかんけどよ、まぁ…悪気のあるヤツじゃないんじゃねーか? 少し話をしたがああいう気楽そうなニンゲンが才能も研究者としての気質もあるだろうし」
「あの望月さん、話長くなりますかね??」
「おっと、悪りぃな大将。…んじゃいってやれー翔鶴!」
「了解! …艦載機発進! 相応の距離を稼いだら灼光弾改を投下せよ!!」
翔鶴は何も無い所から弓の形をした青い炎を生成すると、矢筒にある灼光弾改入りの矢を番え…そのまま虚空に向けて射た。
──ブウウゥ……ン!
霧で見えないけど確かに風邪を切る音が聞こえる、艦載機が具現化したようだ。そのまましばらく待っていると──
──…カッ!
…一瞬で視界が真っ白になっていく、音も無く広がる白一色の世界は徐々に色を取り戻していく。
──そこに視界を遮る霧は無く、在るのは紅く染まった広大な海、そして鼻が曲がりそうな「死んだ魚の臭い」だった。
「これが…サイハテ海域っ!」
「此処が海魔と艦娘たちの古戦場か…野分どうだ? 気分は優れているか?」
『問題ありません、今のボクならどんな地獄の鬼が誘惑しようと、コマンダンをお守りする気高い意志を汚すことは出来ません!』
サイハテ海域は深海棲艦の巣窟と聞くから、幾らマナの穢れが無効化したとはいえどんな影響があるか…と少し心配していたが、やっぱり杞憂だったみたいだ。野分はクロギリでの戦いで完全に深海化しちゃったけど…彼女の精神は何とか死守することが出来た。この調子ならいきなり暴走することも無さそうだね!
「良し、じゃあ…これより作戦を決行する、目的地は深海金剛の鎮座するサイハテ海域最奥! そこで彼女と戦闘を開始次第…エリ復活に必要な戦闘データを出来る限り多く集めて! 可能なら…深海金剛の"無力化"もやっておこう!」
「了承、では…参りましょう!」
僕が作戦目標を述べると綾波は号令をかける、僕たちはそれぞれ頷くと…いよいよサイハテ海域の赤い海に足を入れた…!
「行ってきます、加賀さん!」
「行ってらっしゃい。貴方がたに…イソロク様の加護がありますように」
僕らは加賀さんたちに見送られながら、深海金剛の待つサイハテ海域最奥へと進んでいった…。
「…行ったか、早くも心配になって来たぜ。どうなっちまうんだ〜一体よぉ!?」
「大丈夫かな、タクトたち」
「彼らは今まで困難な場面を乗り越えて来た、でも今回ばかりは…どうなるか分からないよ」
「信じるしかあるまい、彼らの意志がこの圧倒的な絶望を覆すと…」
「………」
──選ばれし艦娘たちは若き英雄とそれを支える兵器たちの行く末を案じる……或いは、彼らが世界を救うことを願って。
……また或いは、それでも止まぬかつての友を止めんとする「覚悟」を隠して──
うわあい、本家で夏イベ始まっちゃったヨーしかも久しぶりの大規模!? どういうことですか運営!!?
まぁやりますけど、自分で言うのもアレだけどめっちゃ盛り上がるとこで切るなんて…今回ばかりは出来るか自信ない;
というわけで宿毛に注力しつつコッチの執筆も…出来たら良いなぁって勝手に考えてますが。そうしたら宿毛が遅れると思いますが…お許しください!