艦これすとーりーず ―僕が異世界版艦これの提督になった件について―   作:謎のks

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 丸々一か月遅れて申し訳ありません、そして明けましておめでとうございます、作者です。
 遅れた理由として深海金剛との戦いをどう描いたものかと悩みながら様々な資料を観ながら見聞を広めてました、具体的には動画視聴です。あとリアルな事情も重なった結果でしょうか? パソコンを買い替えてました、ノーパソから安いデスクパスコン(それでも15万ぐらいした・・・)ですが今ウッキウキです、やっほうぃ!
 新年の挨拶はイベント来たら宿毛泊地冒頭でするだろうから、ここでは短い挨拶に留めます、今年もよろしくお願いします。
 ともあれ深海金剛戦以降は描くのが遅れてしまうかもしれません。すみませんがご了承お願いします、下手に急いで書いてたら見るに堪えないものを出しかねませんので…;

 P.S. 艦これアニメは一話以降を視聴してません。全部出揃ったら見ます。クールを跨いで大変と思いますがアニメ制作陣方に無理をしない程度のエールを送らせて頂きます、がんばれ~!


龍の牙折れ──

 ──天龍が猛攻撃に出た場面。

 

 片手に大刀を、もう片方に居合刀を持って双剣とし、天龍は正に「目にも止まらぬ速さ」で深海金剛に死を与えようと無数の斬撃を繰り出し続ける。

 だが相手はかつての大英雄、隙も何もありはせずどんなに狙い澄ました斬撃も「結晶を纏った拳」で全て遮られた。

 上から頭を斬り割ろうとしても、下から斬り上げようとしても、右から斬ると見せかけて一瞬で左に回って斬り掛かっても、背後から首を狙い斬ろうとしても阻止される、正面など以ての外で不用意に前から斬ろうものなら「カウンターナックル」が飛んで来る。外からは視えないだろうが()()()()()()()()()()()()

 

「(まさかこれ程とは…侮っていた訳ではないが矢張り「桁違い」の強さだな…っ!)」

 

 敵の拳の反撃を何とか凌ぎながら、天龍は深海金剛の「無尽蔵の強さ」に辟易していた。とはいえこうなることは考えなくとも判ることでもあった、言ってしまえば自分は拓人艦隊の中では「最弱」だという自負があるのだから。

 綾波の重力操作、翔鶴のエネルギー生成、野分の深海化による怪力と異常回復力、望月は単純な強さとは別ベクトルの「頭の回転の速さ」が有る。対して自分には常人の限界を超えた「速度」が出せる、それだけだった。語弊のないよう付け加えると瞬速も十分人外の異能である、が前者の能力たちに比べるとどうしても見劣りしていた。

 そうは言ったが天龍もそこまで悲観的に視ているわけでもなく、修練を積んで会得した「次元斬り」や「残像」の技のように、工夫すればまた違う能力として再利用可能な応用の効く個性だと感じている。がそれでもそれは自分自身の「戦闘経験」があればこその「荒技」で、こうも自力の差が明白な相手にそんな小手先は通じないと理解していたし、実際戦って痛感もしていた。

 

「(このまま攻防を続けても埒が明かない、悪戯に体力を消耗するだけだ。幾ら艦娘だろうと全力の勝負を長時間など出来はしないが、相手にその法則が通用しないことを鑑みるに、戦いが長引けば俺は何処かで隙を見せることになる…短期での決着がこの戦いの「最善策」か…っ!)」

 

 天龍はそう思い直すと双剣の柄を持つ両手に力を込め握り直すと、限界まで速度を上げる。極まった能力をぶつけて突破口を捻じ開ける算段だがそれでどう転ぶのかは「博打」もいいところだった、だがやらねばこちらのイノチが潰える、ここで己の全てを出し切らなければならない。その先に待っている結末が「轟沈()」であろうとも…っ!

 

「はああああぁっ!!」

『手数ガ増エタトコロデッ!!』

 

 天龍の姿が見えなくなる、正確には速すぎて肉眼では捉えられないのだが、極限の速度から繰り出される正に四方八方からの瞬速斬連撃を、深海金剛は難なく拳で捌いて見せる。矢張りこの程度では実力差は埋まらない、それでもこの戦いに仲間の命運を灯す道があるのなら何があろうとも斬り拓いて見せる、何より──

 

「天龍うううぅっ!!」

 

 遠くから愛を叫ぶような張り上げた声が聞こえる、無心になろうとする天龍のココロはこの「声」に応えなければならないと悟る、己がどうなろうとも彼に何かを残せるのならばと心底からの「想い」を込め、自らもまた吼えた。

 

「──うお”お”お”おおおおお!!」

 

 早く、速く、瞬(はや)く、もっと、もっと…まだ足りない。

 天突く龍は壁を突き破らんと獣のように顔を歪ませ、吼え猛りながら牙を研ぎ澄ませた、しかし鬼神を捉えることが未だ叶わない。

 何も出来ずに終わるのだけは嫌だ、必ず一矢報いてみせる。越えられない「壁」を知覚しようと諦めることはしない、それは彼の送る愛情への裏切りに繋がるのだから。それはシより恐ろしいことだから、絶対に背を向けたりはしない…っ。

 天龍は必死の決意で目にも止まらぬ斬撃の数々を振り続ける、気づけば耳に風の巻く音が聞こえる、あまりの速さに気流が荒れているのだ、だが足りない…もっと…もっと疾く…っ!

 

 ──その時、天龍はとある「違和感」に勘づいた。

 

「(っ! 何だ…相手の動きが…鈍くなり始めているのか?)」

 

 それは天龍が深海金剛の前へ出で得物を構えた矢先だった、反撃を繰り出す深海金剛の振るう拳、その速度が若干遅くなっている感覚…否、事象だった。変わらず攻防を続ける両シャだが深海金剛から突き出された拳が目で追えるほどのスピードとなる、天龍は深海金剛のパンチをひらりと躱わすと相手の懐に入り、そのまま胴を斬り抜く。

 

 ──スパッ。

 

『…ッ!?』

「(入った! だが…浅いっ)」

 

 またしても避けられると誰もが思う場面で、何と天龍の斬撃が深海金剛の腹部を斬り裂いてみせた。しかし流石深海金剛、傷が浅いのもあるので瞬く間に斬り口が塞がり、再び高速の攻防が何事も無かったように始まる。

 天龍は攻防を続けながら先ほどの違和感について考える、人は戦場や生死を賭けた場面で感覚が極点に至ると()()()()()()()()()()()()、一秒を長く感じると聞くがおそらくその類ではない。()()()()()()()()()

 傭兵として、戦地に身を置くモノとして「シ」を身近に感じたことは何回もあるし、そういった現象も何度も肌で体感した、だからこそ一瞬をあれだけ長く感じたことは無いと言い切れる。とはいえ先ほどの感覚以外に自身の身体に現状異常は見られない。一体どういうことか? 自分の感覚異変でなければ必然的に敵に理由を見出そうとするが、幾ら実力差があるとはいえまるで攻撃してくれと言わんばかりの大きな隙を敵がこの状況下で見せるだろうか? それは天龍にとって大きな疑問と化し自身の内側に残り続ける。

 

『(アレハ…イエ、ソンナマサカ。ダトシテモ…)』

 

 深海金剛側も先ほどの斬撃に不可解な点が見えていた。

 こんなに長く闘い合ったのは久しくないので、終わらせたくないと力をセーブしているのは事実だが、それでも「手元が狂った」にしてはどうも合点のいかない部分がある。深海金剛視点からして今しがたの天龍の斬撃がいつの間にか腹部を引き裂いているように見えたのだ。自分は天龍の目に見えぬ速さの斬撃を完全に目視していたにも関わらず、あの一撃だけ…()()()()()()()()

 何も分からない訳ではない、心当たりはある。そうだとすれば彼女の戦場における成長の速さは深海金剛をして目を瞠るものがあった、正直程度が知れていると侮っていたかもしれないが、まさか怒涛の猛追が優勢を覆すとでも言うのか?

 

『(──ダトシテモ、良イデスネェ! ソウ来ナクテハナリマセーン、蛇ニ噛マレタ次ハ鬼ガ出マスカ、ソレトモ「荒々シイ龍」カ! 楽シマセテモライマァス!)』

 

 それでも自身の絶対の勝利を信じて疑わない鬼神は、意図しない相手の底力を受けて見せると嗤いながら享楽を貪ろうとする。それが己のイノチ綱を切る愚行と知りながら。

 

「(何にしてもあの金剛に一撃を入れたんだ、それを利用しない手はない。今の感覚を思い出せ…今の俺ならば可能な筈だ、出来なければ…沈むぞ)」

 

 天龍は自身に脅しを入れるように己を静かに鼓舞し、先ほどの感覚をもう一度引き出そうと必死に意識へ潜って行く。

 成功すれば生還、出来なければ「死」。幾度となく渡り歩いた戦場の感覚…一瞬の判断に全てを委ねる、余計な思考を排した冷徹な心を思い出す。

 

「(肌の感覚を研ぎ澄ませ、必要最低限の動きで、ココロを凍てつかせ、敵のイノチを──斬る!)」

 

 天龍は一種の「無我の境地」に至りつつ限界まで上げたスピードを更に上げると、空気の壁を突き破ろうとするような感覚、それを引き出すことに成功する。すると──

 

 ──ブゥ……ン

 

 何が起こったのか、あれだけ逆巻いていた空気の擦れる音が…消えた。

 

 それだけではない、天龍が視認する周りの景色がセピア色に褪せ、あらゆる人物、行動、現象の動きが「止まって見える」のだ。…いや、正確には動いているが微動するだけで動いていないも同然だった。あれだけ苛烈だった深海金剛の攻撃も、拳が前に突き出されて止まっているようだ。どうぞ攻撃して下さいと言っているような有り得ない状況が天龍の目の前で起こっていた。

 

「これはまさか…「時の流れが遅くなったのか」!? それとも速さが限界を超えたことで俺の感覚が別の次元を映しているというのか? いや…考えている暇はない! ここだ、ここで何も出来なければ…コイツには一生掛かっても傷一つ付けられん!」

 

 不可解な事象だが、要するに天龍は加速の限界点を越えた「先」を捉え、敵が否が応でも隙を見せる切っ掛けを故意に作ることが可能になったのだ。これで幾らでも攻撃を叩き込むことが出来る──

 

 その上で天龍が最初に取った行動は…相手へ容赦の無い斬撃を繰り出すことだった。出鱈目な軌道で我武者羅に、兎に角多く傷が残るように。

 

「うああああああああっ!!」

 

 十二分に斬り刻んだ後、徐に懐から「小瓶」を取り出して見せる。それは鉄を纏ったなんとも物々しい異様な瓶だった、その瓶の蓋を開けて中身を…深海金剛に向かって投げつける。小瓶から零れた液体は鬼神の顔の前で瓶ごと空中で制止する、どうやら天龍の手から離れると手持ちの物も例外なく通常の時間の流れに戻るようだ。

 

「後は…っ」

 

 仕上げに双剣をバツの字に構えながら、深海金剛の周りを空中で加速移動し続け、そのまま感覚が元に戻るのを待つ。天龍の勘が()()()()()()()()()()()()ことを悟ったうえでの行動、感覚が元の時間の流れを刻み始めた瞬間力を溜めた一撃を鬼神の肉体に叩き込む、これだけ攻撃を加えても致命傷にはならないことは分かりきっている。念には念を入れても卑怯も天罰もないだろう。

 

 ──そして、空間のセピア色が元の色に戻り出した時、天龍の脚が鬼神に向かい空を蹴った。

 

『──ナッ、グガア”ァッ!?』

 

 深海金剛は何をされたかも理解出来ないまま、体中に無数の斬り傷を付けられ顔から全身に透明の液体を掛けられ「皮膚が爛れる痛み」を受け、終いには頭上斜めから強襲する、天龍の双剣の斬撃を避けられず斬り捨てられた。

 天龍はそのまま海面へ着水して敵の様子を窺う。矢張り致命傷ではないが体力を多少削ることには成功したようだ。望月から事前に受け取っていた「薬品」が役立ったようで人知れず胸を撫で下ろしていた。

 深海金剛も堪らず海面へ降りては自分の身に起きた異変を確認する、膝こそ着かないものの、()()()()で全身に夥しい傷を負うとはと面食らう、それだけなら深海棲艦であるため「異常回復力」によって数分もあれば完治出来る…その筈だったが、身体を蝕む痛みがそれを阻んでいた。

 

『(ソウデスカ、矢張リソウイウコトデシタカ。予想通リトハイエ──一ツノ隙デココマデトハ、マルデ「嵐ヤ竜巻」ノヨウナ猛攻…見事デス。コレハ…モウ余裕ハ見セラレマセンネェ?)』

 

 深海金剛は予想が確信に変わるのを感じながら、ここまでの傷をつけた天龍、そして拓人艦隊の実力を目の当たりにし眉を引き締めた。

 

 その様子は遠目から見守る拓人たちにも見えていたが、彼らからしてみれば荒巻く気流で視界が見えず仕舞いで、気が付いたら深海金剛が傷だらけで居る──今までの絶望的な状況からすれば──異様な光景が広がっていた。

 

「深海金剛に…ダメージが入っている!? 天龍がやったの?!」

「ぁあそうだろうぜ? それに…斬り傷がそのまま残っていやがる、天龍のヤロー事前に持たせた「アレ」を使ったみてぇだな? にしてもよくそれを使う隙を作ったモンだぜ」

 

 望月が拓人の横で訳知り顔で含みのある言葉を口にする、拓人はどういう意味かと望月に問うた。すると…彼女は矢張り単純なことだと嗤いながら答えを返す。

 

「天龍は敵を斬り刻んだ後、アタシ特製の「細胞腐食酸」をぶっかけたんだろうぜ? 深海棲艦の強力な自己回復能力は深海細胞あってのモンだともう答えが出てるだろうが、ソイツは細胞そのものに作用して結果的に人体を腐食しちまうんだ」

「それって…深海金剛の身体に酸を掛けたことで、細胞の回復を遅らせているってこと?」

「おうさ。幾らジン体が強化された深海棲艦でも、細胞そのものを溶かしちまえば回復も出来ねぇだろう? 今頃やっこさんの細胞は酸に塗れて溶けまいと肉体を維持するのが精一杯で、表面の傷治す余裕ないだろうぜ?」

「うわぁ…そんなことよく思い付いたね?」

「あぁ、野分の深海化を直すためにちょっとの間実験してたんだが、アレが役に立ったぜ」

「そうだったんだ。にしてもこれは…こうでもしないとなのは解るけど、鬼だねぇ?」

「ヒッ! 敵さんも鬼の神サマみてーなものだろ? 今更だぜ。とは言っても…コイツは所謂時間稼ぎだ、ほっといてもあと数分もすりゃあ酸の侵食を上回るほどに細胞が増殖しちまって元通りだ、早々にケリ着けねぇとやべぇ状況に変わりはねぇ」

「っ、天龍…っ!」

 

 拓人は天龍の安否の不安を零す、最早絶対に守り切ることは叶わないがそれでも天龍の無事を祈らざるを得なかった。自分のために戦ってくれている相棒にしてやれることはこのぐらいしか思い浮かばなかったからだ、それしかしてやれない弱い己にどうにも歯痒い感情があるが。

 拓人がそんな風に願う中敵に動きがないことを確認すると、天龍は素早く深海金剛との距離を詰め大刀を敵の首元に突き立てると勧告する。

 

「これ以上の抵抗をするなら、貴様を本気で斬り捨てる。シにたくなければ隠している全力を出して見ろ…出来るものならな」

『…ッ』

 

 深海金剛はすかさず「奥の手」を使おうと体勢を整える、両手と両指を合わせ中指を人差し指の後ろに回そうとした──その時、一瞬で終わる動作を見抜いた天龍は深海金剛が合わせた両手を蹴り上げる。蹴りの衝撃で敵の構えが解かれると、深海金剛は舌打ちしながら睨みつける。

 

「おっと…五行廻輪だったか? 見た限り指を特定の型にしなければ発動しないようだな、出なければ俺の付けた傷は既に消えているだろうからな。言っておくが今度それをしようとすれば貴様の両手を”斬り落とす”、そんな掠り傷を直さずとも貴様の本気を出す支障にはならんだろう?」

 

 天龍の冷たい刃のような鋭く研いだ声に、深海金剛は──焦燥を感じさせる表情から一変し、動揺も激怒もせず、ただ波風に頬を打たれながら真顔で居た。

 

『マサカココマデ私ヲ追イ詰メルトハ…想定外デシタ。シカシ…良イデスネ、矢張リソウデナクテハイケマセン。認メマショウ荒天ノ龍ヨ、貴女ハ私ノ…本気ヲ見セルニ相応シイ相手デス』

 

 今までの嘲笑とヒトを子馬鹿にした態度が嘘のように消え失せ、深海金剛は天龍に向かい身体を射貫くような殺意を目に宿して見つめる。天龍もまた神をも恐れぬ闘志を込めた瞳で深海金剛を見つめ返す。

 両シャの間に流れる剣呑な雰囲気、それはその場を沈黙に包むには十分すぎるほど重いものだ。黙しながら互いに殺気をぶつけ合うこと数分…酸によりボロボロの衣服と身体と成った深海金剛は重い口を開いて問いかける。

 

『…ソコマデシテ、私ノ本気ヲ引キ出ソウトスルノハ、先ホド貴女ガタノ司令塔ノ言ッテイタ「エリ」ヲ蘇ラセルタメデスカ?

 蘇生ノ方法ヲ聞イテイルノデハアリマセン、ソコマデシテ貴女ガイノチヲ張ル「理由」ヲ知リタイノデス。今ノ状態ノ私ナラ…貴女デアレバ不意ヲ突クコトデ今度コソ致命傷ヲ与エルコトガ出来ルデショウ。

 コノママ私ガ全力ノ一片デモ見セルト…貴女ニ勝チ目ハナクナルト断言シマス、自ラ勝機ヲ逃シテマデ…本当ニソコマデシテ「エリ」トヤラヲ蘇ラセル必要ハアリマスカ?』

「何だ、同情のつもりか? 先ほどまで破壊の権化のような戦いぶりをしたモノが言うセリフとは思えんな?」

『ハン、ドノ道コチラノ勝チハ絶対デスノデ。ソレヲ分カラナイ貴女デモナイノデショウ? 少シ戦イ確信シマシタ、貴女ハ聡明ナ知見ト観察眼、ソシテ豊富ナ戦闘経験ノ持チ主。ソノ貴女ガ勝チ馬ニ乗レナイ戦イニ自ラ身ヲ投ジルトハ…ドウイウ了見デコノ戦イヲ観テイルノデス?』

 

 深海金剛のたった一つの疑問に対し、天龍は「決まっているだろう」と前置きを置いて答えた。

 

「俺は金剛…いや、エリが貴様を必ず倒すと信じているからだ。貴様を倒すこと自体は…前途多難だが可能性はあるのだろう、だが…ただ貴様を倒すだけでは「眠り姫」は目覚めない。倒せなければ世界はどうなるか分かったものでは無い…リスクがあり過ぎることも承知している、しかしだな深海の金剛──仲間を犠牲に得た平和など虚しいものだぞ? それこそリスキーだと俺は判断した迄、深い意味は無い」

『ソレガ…絶対ニ叶ワナイコトダトシテモ? 幾千幾万ノ絶望ヲ乗リ越エタ先ノ夢幻ダトシテモ、貴女ハヤリ遂ゲルトハッキリ言エマスカ?』

「それがもう取り戻せないのなら諦めるしかないが、仲間を助けられる可能性が極小でも残されているのなら、それを行うのが「生を受けたモノの性質(エゴイズム)」というものだ。俺は…そんな一見悪性に見える人間臭さこそ尊いと信じている、自分ヒトリだけ犠牲になって世界と民草を救った貴様には理解出来んかもしれんがな?」

 

 天龍は淀みなく自身の胸の内に燃える熱い思いを語る。普段から戦闘を合理的に観る天龍だが、言動の節々に見られる彼女の「想い」は義侠を重んじる彼女の本音を感じ取ることが出来る。

 その胸に灯った魂の言葉、それを聞き届けた深海金剛は自身の解釈で天龍を評価した。

 

『成ル程、確カニ無謀トハ思イマスガ。友ノタメイノチヲ賭ケルトイウ心情ハ測レマス、ガ…貴女ノ場合ソレダケトハ思エマセンガ?』

「ふっ、鋭いな。そうだな…敢えて言うと、俺の愛した「相棒」のためでもある、かな?」

 

 少し照れ臭そうな微笑んだ表情を零すと、天龍は後方へ目をやる仕草で「想いビト」がすぐ後ろに控えていることを知らせる。その様子に深海金剛は今度こそ得心行った様子を見せた。

 

『納得シマシタヨ、貴女ニソコマデ言ワセル「エリ」ト「相棒」トヤラノ度量ハ素晴ラシイヨウデス。デスガ──後悔シナイコトデス、私ニ本気ヲ出サセルコトハ…貴女ヲ完膚ナキマデ「壊シ尽クス」トイウコトデスカラ』

「構わない、それでエリが戻るなら、アイツが望んだ未来が手に入るなら。もちろん俺もただでやられるつもりはない、貴様から少しでも戦闘データを引き出すため全霊を持って抗わせてもらう」

 

 天龍は例え沈むことになろうとも、自らの愛に殉じることが出来ればそれで本望だと言ってのけた。その並々ならぬ覚悟に深海金剛もニヤリとほくそ笑むと、その身からオーラのように迸る黒い戦意を纏う、天龍もまた双剣を構え直して臨戦態勢を整えた。

 双方とも瞬時に相手の首を取らんとする気概を形作る、張り詰める緊迫の糸はどちらが最初に引き千切るのか、先の見えない闇夜の道を早く駆け抜けるのはどちらか──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──パシャッ。

 

「(──今だ!)」

 

 正面から睨み合うフタリだったが、一時の静寂の間に響いた波しぶきを合図に先に動いたのは「天龍」だった。天龍は先ほどの要領で力を溜めこんだ足で波を蹴ると次元を超え「セピア色」の空間に再び辿り着いた。深海金剛の動きが限界まで遅くなりまるで止まったようになると、天龍は真っ直ぐ敵の首を取りに行く。

 

「(呆気ないものだが…これで、終わりだ!)」

 

 天龍が双剣を再びバツの字に構えて敵に引導を渡そうとする、これでもし今の時点で深海金剛を倒してしまえば、データ不足でエリ復活は遠のいてしまうが…元より全力でやらなければならない相手であるので、それで勝ちが付いても「そういう運命というものだ」と納得するつもりで居た。

 

 ──だが、それがほんの一瞬の「慢心」であると気づいた時には、全てが終わっていた。

 

『──舐メルナ、小娘。二度モ同ジ手ヲ喰イハシナイ』

 

「…っ!?」

 

 

 ──グシャァッ!!

 

 

 深海金剛のドスの効いた声を耳にした瞬間、空間に聞こえてきたのは空気を斬り裂く音でなく、肉を潰したような嫌に生々しい音だった。それは──天龍の身体の四肢が一瞬で「破壊された」残酷な残響だった。

 

「──な、にぃ…っ!?」

 

『コレガ──私ノ"本気"デス』

 

「っ!? 天龍っ!!」

 

 拓人の悲痛な叫びも虚しく、両脚両腕の関節を砕かれたことで海に立つことも、得物を握ることも叶わず無様に海面に倒れ込む。天龍から離れた双剣は揺蕩う波に浮かび、無情な現実を知らしめていた。天を突かんとする龍の牙は──今、完全に折られた。

 

 天龍は己を突然襲った出来事を分析しようとする。自分は確かにあのセピア色の次元にまで辿り着いた筈、だのにいつの間にか周りは元の赤い空と海を映し、自分はいつの間にか深海金剛の攻撃を真面に喰らっていた。

 何故か…矢張り理解が及ばなかった、深海金剛が加速した自分に追いついたとしか思えないが、彼女の操る五属性でそんな芸当が出来るとは思えない。雷を纏えば出来なくはないが「その程度」の速度なら自分が反応出来ない訳ではない、何が起こったか分からないまま気づいたらやられていたのだ。

 一体何が起こったのか…身動きが取れなくなった天龍が海面に叩きつけられると、深海金剛が種を明かす。

 

『荒天ノ龍、貴女ハ今時間ノ流レヲ「加速」シマシタネ? 限界マデ加速シタ「極致」デ私ニ攻撃ヲ与エタコトデマルデ一気ニ攻撃シタヨウニ見エタ。貴女ハ能力ヲ最大マデ出力シタコトデ”時ノ概念”ヲ越エタノデス、ソウ…「時」ヲ。ナラバ貴女ヲ打破スルノハ難シイコトデハアリマセン』

「…どういう、ことだ? お前も「加速」したとでも言うのか?」

 

『イイエ、モット単純デスヨ。貴女ガタハ私ノ操ル能力ガ「五大属性ノミ」ト考エテイタヨウデスガ、ソレハ(ノー)デス。私ハ…元々有ッタ魔術ノ才能ヲ「カイニ」トナッタコトデ昇華サセルコトニ成功シマシタ。

 ツマリ──()()()、私ハ単語尾ニ属性ト名ノ付ク全テノ概念ヲ操ルコトガ出来マス。五大属性ニ加エソレノ類似属性、光、闇、生ト死、空間、ソシテ…”時”。先ホド加速シタ時ノ流レデ貴女ヲ認識シタノハソウイウ理屈デス。

 尤モ…私自身カイニニナッタノハ艦娘トシテノ最期ニナッタアノ戦イガ最初デシタノデ、五属性以外ハ未知ノ領域。オイソレト使ウコトモママナリマセンデシタガ…貴女ノ覚悟ニ応エナイホド私モ堕チテハイマセン、貴女ガ加速シテ極致ニ辿リ着イタタイミングデ、時ノ流レソノモノヲ「止メサセテ」モライマシタ』

 

 まさか、深海金剛は信じられないような言葉を口にする。彼女は現状属性と呼ばれる全ての事象をその手で管理出来ると言うのだ。

 一口に属性と言ってもその種類は多岐に渡るが、それを…その全てを「操る」と宣ったのだ、出鱈目という話ではない。とんでもなく果ての無い「絶望」を見せつけられ天龍は内心愕然とする。

 

 ──だが、同時に「しめた」とニタリ笑う。

 

「…成る程、矢張り化け物だなお前は。だが…それでもエリならお前の全てを越えて行くだろう、アイツは…タクトが最も愛した艦娘、だからな…ははっ」

 

 満身創痍となった自身、それでも元よりエリに託すつもりで死地に赴いたのだ、寧ろ敵の本気の一片を引き出せたと安堵の笑いすら見せた。

 狂気にも似たその「覚悟」と「信頼」に、深海金剛は静かに息を吐くと徐に両手指を絡ませて印を作る。

 

 五行廻輪──そう呟くと同時に深海金剛の傷は一瞬にして癒える、完全に形勢が逆転した…海面に横たわる天龍を見下ろしながら、深海金剛は彼女の生き様を賛美した。

 

『私ハ貴女ヲ讃エマショウ()()、絶望ヲ前ニシテモ希望ヲ見据エルソノ煌メク精神、素直ニ感服シマス。ナノデ…貴女ハ確実ニ「仕留メマス」。勝利コソガ…私ガ私タル所以デスノデ』

「ぁあ…やってみろ」

 

 天龍が力なくそう答えると、深海金剛は右拳を力一杯握り締めると…そのまま振り上げ天龍の脳天をかち割ろうとする。

 深海金剛の本気の一部を引き出すことに成功した天龍は、今正に命運尽きようとしていた──が、誰もが諦めるこの場面も、()()は引き下がることは無かった。

 

 

 ──ギュォオオッ!!

 

 

『…ッ!』

 

 深海金剛の後方より回転音を響かせるナニカが近づいて来る、気配に気づいた鬼神が振り向くと、其処には高速回転する巨大な刃が在った。

 だが一直線に向かって来るそれを避けられない訳ではない、身体を少し捻って難なく巨大刃をやり過ごす。しかし…その奥から巨大刃に隠れるようにして、深海金剛に突撃していく「人影」があった。

 

「──あ”あ”あ”あああああぁっ!!」

 

『…ナニッ!? グッ…?!』

 

 意表を突かれた深海金剛は、そのまま猛突進する人影と衝突する。吹き飛ばされる鬼神を一瞥しながら「拓人」は身動き出来ない天龍を抱え上げると、そのまま後方へ向かって走り去っていく。あまりの鮮やかな逃走にそのまま拓人たちを見逃す深海金剛…というよりも、こちらも下手に動けない状況になったと言うべきだろうか?

 

『…フッ、貴方ガタノ覚悟モ本物ノヨウデスネ? 危険ヲ顧ミズ希望ヲ繋ゲヨウトスルソノ姿勢ハ見上ゲタモノデス。デハ…今度ハ貴女ガ私ノ相手ヲシテ下サルノデ?』

 

 深海金剛が呆れたような笑みを浮かべる、その視線の先には──回転しながら戻ってくる巨大刃を柄に収めて「巨大戦斧」とする少女騎士の姿が見えた。

 

「──大英雄金剛が相手なら、私も出し惜しみはしません。我が全てを賭して…貴女を沈めます。艦娘騎士団がヒトリ「綾波」…推して参ります」

 

 綾波の凍えるような闘志を前に、深海金剛はニヤリと嗤いながら右手の甲を下にして人差し指を動かして挑発する。

 天を衝く龍は敗れた、次に鬼神に挑むは優しき信念掲げし女騎士。果たして勝算は…?

 




 〇お気に入り100達成ありがとう小話

 ※ここから下はシリアスに似つかわしくないギャク風味空間です、嫌じゃと言う方はブラウザバック推奨。





拓人「お気に入り登録100達成、圧倒的感謝のコーナー!」

金剛「イエェーーーエイ!」

天龍「ほぉ?」

望月「ありゃ、予想外だねぇ?」

綾波「感謝、ですね。…ふふっ」

野分『遂に美しさの極みまで…ブラーヴァ! 皆さんにも感謝を表明致します!』

翔鶴「・・・嘘でしょ?」

拓人「ホントだって! いやぁ良かったよね~そんなの出来るわけないっ! って内心思ってたし?」

金剛「でもそれだけ多くの人に観てもらっているってことだよね! 皆本当にありがとう!」

望月「アタシゃてっきり99~97を行ったり来たりと思ってたんだがねぇ? 全く予想外だぜw」

翔鶴「私も。・・・この話を見てすぐ登録解除されたりして?」

拓人「やめてよ! そんな縁起でもない!! 皆絶対興味本位に外さないでよ!? お気に入り―10とか冗談だからね?!!」

綾波「司令官、それはいつも言っている「オスナヨー精神論」ですか?」

拓人「フリじゃないってヴぁ!?」

天龍「落ち着けタクト。…まぁ本編? だったか、今頃俺の無様な姿が晒されているだろうが、そんな為体で良ければ楽しんでくれ。道化を演じて見せよう」

拓人「天龍…若干皮肉入ってるよね;」

野分『これから更なる絶望が我々を襲うでしょう、しかしご安心をエツランシャの諸君! 必ずや希望を繋げ絶望を乗り越えた先の大団円をお見せしましょう!!』

拓人「そうだね、僕らは絶対に諦めない…エリを復活させて皆で一緒に平和を勝ち取るんだ! だから…最後まで見届けてくれると、僕も皆も嬉しいです!」

金剛「皆、絶対戻ってくるからそれまで待っててね!」


妖精さん「果たして皆さんは無事に戻ることができるのでしょうか~? その答えは──待て、次回! です~♪」

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