艦これすとーりーず ―僕が異世界版艦これの提督になった件について― 作:謎のks
綾波の捨て身の活躍で、深海金剛の戦闘データ回収は遂に5割を切った。これの意味することは──着実にエリ(金剛)復活の道が視えて来ていること、困難はあるが後5割をどうにか集めるしかない。でなければこの場の全員はおろか全人類が鬼神の暴力により壊滅する、それを今阻止出来るのは…?
「さぁて…?」
『………』
並び立つ両雄、望月と野分。改二艦でこそないがフタリはそれに匹敵する力を所持している、望月は頭の回転の早さ、野分は深海化による身体能力向上。
しかし天龍の縮地めいた瞬足と綾波の引力や斥力といった重力を操るなど、一芸特化や次元の違う能力を有している訳でなく、それらをそれぞれ全力でぶつけても深海金剛と渡り合えるかは分からない。なのでフタリで共闘することに決めたのだが…?
「…よし、向こうさんはベベが拘束中っと」
深海金剛がベベが変形した手枷を填められたことにより、腕が空中に固定された場面を目に確りと映すと、望月は手首に着けた映写型通信機に手を掛け、鎮守府連合でエリを治療中のユリウス、マサムネに向けて通信を起こす。どうしたんダイ? と片手を動かしながら望月に応答するマサムネに、望月は野分とフタリで深海金剛を相手取る旨を伝える。
「──っつーワケで、アタシらフタリでやらせてもらうが構わねーだろ?」
『ン〜まぁデータも50%集まったからネ、ぼくは別に構わないと思うヨヴェイビー! そうだロウユリウス?』
『うむ、フタリで掛かれば個人の不測の事態に片方が対応出来る。しかしながら…懸念事項としては、フタリがかりでも深海金剛と真面に戦えるかだな。カイニ艦でもやっと数10%動かすことが出来るほどだ、壁は厚いぞ望月?』
「わぁ~ってるよ。…お前さんの見立てじゃどのぐらいだい?」
『ふむ──”5~10%”でも文句は無い、勿論それだけだと展開次第で数値が足りないリスクはあるが、一応50%以上でもデータのインストール自体は可能だ。精神の修復が完全に終えるかが問題であるが』
「お前姐さん殺す気かよ! んまぁ正直そんなものだよなぁ?」
改二艦という人智を超えた力でも、敵に多少の負傷を付けただけ。深海金剛側に「五行廻輪」がある限り傷は付けた傍から全回復されてしまう、だからこそ戦闘データも十全に取れる状況を維持出来ているとも言えるが、それでもデータ収集率は一戦ごとに「20~30%」が限度であるなら、実力として平凡な艦娘より少し上の望月たちだけで挑むのが、如何に絶望的であるか。そういう話である。
『勿論不完全なデータインストールは「最終手段」だ、だが頭に入れていてほしい情報ではある。それは覚えておいてくれ』
「おぅ。…仮にアタシらで「5~10」だとして、残り約40%を翔鶴で行けるか、だよなぁ? 綾波で30%だから十分範囲内だが──」
『──果たしてその数字を出せるかだネェ? 数字というのは絶対だケド、曖昧でもあるンダ。だから試行回数を繰り返した「統計量」が重要になるケド。この一回限りの状況ではそうは言えないよネェ? 従って綾波君の数値が絶対ではナイ以上、君たちや翔鶴君がシぬ気で挑んでも目標の数値を出せるかどうか…?』
頭を抱える望月、ユリウス、マサムネの頭脳チーム。彼らの聡明な知見でも先の見通せない現状、果たしてどう打ち破るのか…?
『──ふぅむ、
「──…っ!」
野分の何気ない一言に、望月が人知れず目を見開く中、ユリウスが唸りながら「難しいな」と呟く。
『確かにそうなれば君たちは戦いやすくなるだろうが、そうなるためには向こうを弱体化させるしかない。だが…仮にそれが可能であれ戦闘データ的には「彼女本来の強さ」を測るのが望ましい。本気の彼女でなけれなデータ収集も捗らないと予想出来る』
『そもそも戦闘も大分長引いているしネェ? これまでは慢心が働いていたかもしれないケド、敵も君たちの力を流石に警戒して来る頃合いだと思うヨ。弱体化を施す隙を突けるか怪しいんじゃないカナ?』
『ぐぬぬ…仰るとおり過ぎますね、矢張り正面から戦うしかないか』
「…よぉ野分、ちょいとアタシの話──」
望月が野分に何かを伝えようと口を開いた──その時、肌と鼓膜に衝撃が来る。
『──Grrrrrrrrrrrrrrrrrrruuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuugraaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!!』
『…っ! 望月さん!!』
「あぁ来なすった! …っつ~! 一瞬で耳がキーンで肌も痺れた、この距離でか?! マジで規格外だぜありゃぁ…!」
フタリが目にした光景は、遠く離れた距離の深海金剛が竜化したまま雄叫びを上げて大気を揺らす衝撃のシーン。音はそのまま破壊のエネルギーとなり空間に響き渡ると、ベベが変形していた手錠が粉々に砕け散って行く。竜神は両手が自由になっても尚怒号を叫び続ける。まるで野獣のそれを発しながら深海金剛は、今度は何もない空間に向かって両腕を振り回し始める。腕を一振りする度に波は弾け飛び、爪の軌道は真空となり空を走り、爪撃は海面を抉る。虚空を続けざまに引き裂く様は、怒り狂って我を忘れてしまったようにも見えた。
『Urrrrrrrrrgrrrrrrrrrrraaaaaaaaaaa!!!!!』
『あのお方は何故何もない場所に向かい、竜爪を掻き散らしているのでしょう?』
「コイツは予想だが、竜属性が竜の特性をその身に再現するモンだからって「狂暴性」も再現しちまったんじゃねぇか? 短時間なら理性に影響はないが、大方綾波との戦いで時間を無駄に食っちまって竜の本能を抑えられなくなっちまった感じか?」
『ふむ、敵は大技を扱いきれていないようですね? 五属性以外の属性を使い続けさせれば、隙の一つを見せてくれるでしょうか?』
「それだと相手が属性に慣れるかも分からねぇ、
望月の説明を聞いていた野分は、彼女から受けた提案に「早過ぎる」と目を丸くするも、次に顔を引き締めるとその説明に耳を傾ける。遠くで話し合う彼女たちのやり取りを尻目に掛けながら、深海金剛は──自身の片腕の竜爪をもう片方の腕に突き立てると、竜鱗を貫通しながら自身の肉に食い込ませる。
『Gaaaa!? …ッ! 竜化解除、五行…廻、輪!』
痛みで無理やり理性を呼び起こすと先ず竜化を解く、紫がかった全身を覆う竜鱗が見えなくなると、全身の負傷はそのままに元の青白い肌に戻る。次に指で特定の型を作ると、今まで受けた傷が瞬時に全快した。
『ハァッ……ハァ……ッ!!』
「──おっと、早いな。もう立て直しやがった、まぁそういう訳で…頼むぜ?」
『ウィ! お互い死力を尽くしましょう』
望月と野分が敵の完治を認めると、連れ立って鬼神の元へ駆け出した。後ろで見守っていた拓人たちも黙って見送る。
「頑張って…望月、野分!」
「──…良し、治療完了よ!」
翔鶴が綾波を懐に抱えて治癒魔法による解毒治療を試みていたが、どうやら成功したようだ。翔鶴の片手から放出していた光が徐々に消えると、同時に眠っていた綾波が目を覚ます。
「…ここは?」
「綾波! 良かった…無事な君が見れて本当に嬉しいよ!」
「司令官? …そうですか、間に合ったようですね。まさか間に合うとは思わなかったので、未だ夢心地です」
そう言いながら綾波はゆっくりと起き上がる、立った瞬間足元がふらついたが経過は概ね良好のようだ。
「大丈夫? 無理しないでね」
「ありがとうございます司令官、ですが──…っ! 深海金剛! 矢張り生き残っていましたか、警戒を…っ!?」
綾波は深海金剛の姿を認めると、大斧が収めてある背中に手を伸ばすも。勿論斧など在るはずなくその手は空を切る、どころか自分で上げた腕の動きに釣られる様に後ろにふらつきだす。
「ちょ、ちょっと本当に大丈夫!?」
「まだ無理はしないで! 人間だったら致死量を大きく超える毒が入ってたのよ、身体の回復には一日じゃ足りないわ」
「っく…しかし」
翔鶴の制止を素直に聞き入れるも、何処か歯痒い表情で下の海面を睨む。生き残っただけでも奇跡的だというのに、その上で更に戦い続ける綾波。彼女の不屈の闘志は結構だが兎に角無茶をしないでほしい一心で止めに入る拓人と翔鶴。
「──…ふっ、成る程。なら俺も…っ!!」
「えっ、ちょ、ちょっと天龍!?」
綾波の頑強かつ健気な姿に感化されたか、拓人の腕で小休止していた天龍はその震える足を再び海面に着ける。瞬間少し顔が苦く歪んでいたが、何とか立ち上がることが出来た。
「ダメだって無茶したら、翔鶴が「骨の再生に時間が掛かる」って言ってたでしょ!?」
深海金剛との第一戦に挑んだ天龍は敗北を喫し四肢の骨が粉々に砕けるも、翔鶴の治癒によって骨自体は再生を始めており、この短い期間で立ち上がれるほどになった。しかし──天龍の立ち姿は今にも崩れそうで、顔も苦痛が露わになっており、とてもではないが万全に戦える状態ではない。
「構わない、どのみち明日も分からない戦いなのだから、お前を守るくらいはやっておきたい」
「ぅう~、素直に嬉しいけどさ。…綾波も休むつもりない?」
「はい…この身体が動く限界まで、貴方たちをっ、お守りしま…っ」
「…ふぅっ! もうここまで来たら防御もないわね? 本当はやり過ぎもよくないけど、もう一度ぐらいフタリに治癒魔法を掛けてみるわ」
「頼むよ翔鶴。ほらフタリとも、後は望月たちに任せて休んでおいで」
「あぁ…済まない」
「後は、お任せします…っ」
満身創痍のフタリはまだ戦う意思を消せず、このまま瀕死の身体で戦うことになればそれこそ沈むことになりかねない。翔鶴は再度フタリに治癒魔法を掛けるべく動く。
防御も成り立たないほどにボロボロになった拓人陣営、意気揚々とこの海域に入って来た数時間前と違い、徐々に、着実に駒が潰され「絶望」が見え始めていた。
だが俯いては居られない、エリを取り戻すため拓人たちは気持ちを一つに鬼神に立ち向かわなければならない。希望が見えなくとも…この「
──拓人たちの様子を振り返りながら見つめると、望月は正面に向き直り野分と共に海面を滑り進み…遂に深海金剛の元へ辿り着く。
『──…ッフゥ~、危ナイトコロデシタ。マサカ特攻紛イノ捨テ鉢ニナルトハ、ソレデモ私ハ倒セナカッタミタイデスネェ?』
綾波の全霊を賭けた攻撃、その全てを受けても立つ深海金剛。したり顔で自ら勝利を讃えるも望月はすぐさま「口撃(こうげき)」を加える。
「その割にゃあさっきまでほぼ死に体だったみてーだがな? 最強の艦娘でも不意打ちは覆せないみたいだぜ、五行廻輪が無けりゃアンタ立つこともままならないんじゃねーのぉ? 鬼神が聞いて呆れるぜ、なぁ野分よぉ?」
見え透いた挑発、野分もそれに黙って頷くも深海金剛は──全く動じていない様子で切り返す。
『運モ実力ノ内デアルナラ、能力ト技術モマタ然リデェス。知ッタヨウナコトヲ喋ルナラ、先ズハ一隻(ひとり)ズツ掛カッテ来ルコトデスネ。マァ~無理ダカラ徒党ヲ組ンデイルノデショウガ? アッハハ!』
「言ってくれるじゃねぇか、鬼神さんよぉ。…ちっ、五大属性以外の属性使いこなせない癖によぉ。威張る前に恰好付けろっつーの」
『も、望月さん。あまり煽り過ぎるのもどうかと、まぁそれは確かにボクも…少しだけ思いましたが」
深海金剛の御しきれない五大属性外の強力な力、それに対する思いを短く言葉にして乱暴に投げつける。
『世界トハ強ク、ソレデイテ広大ナノデス。自然現象ヤ定メラレタ理法ハ本来ナラチッポケナ生命ニ操ル資格ナド持タサレナイ、ソレヲ一朝一夕デものニシロトイウノハ「一晩デ世界中ノ全ノ戦イヲ終ワラセロ」ト言ウノト同義デス。
艦娘トイウ兵器ガ現存スル以上、コノ時代デモ未ダ何千何万トイウ戦イガ各地デ起コッテイルノデショウ? 大ナリ小ナリデモソレヲ一度ニ終ワラセルコトハ「不可能」、流石ノ私ニモ無理難題デェス』
「ぐっ、屁理屈だが通りは良い。人の理で起こしたモン止められねぇヤツに、世界の理をおいそれと御せるとは限らねぇか。しっかし…そりゃあ自分が「弱い」って言ってるモノじゃねぇかよ? テメェは史上最強なんじゃねぇのかい、そんな調子だからまともな勝ち方出来ねぇんじゃあねーかい?」
『フゥン? 何カ勘違イシテイルヨウデェス。私ガ一番強イコトハ否定シマセンガ、戦イノ勝敗ヲ決メルノハ「強サ」デハアリマセェン。決メ手ハ──
弱クトモ勝利ヲ掴ムコトハ可能、私ハソレコソヲ恐レマス。
深海金剛は最高の嗤い貌で勝利に必要なものを説いた。
執念…最後まで立ち上がり続け、生き残り、より勝利を渇望し戦い渡るモノこそ、真の「強者」である。確かにそうだと望月も得心する、しかし──言いたいことは解るがまだ「不足」している、そう感じた望月は彼女の言い分から「足りないもの」を補足し看破しようとする。
「成る程、アタシとアンタで最強の定義が違うと。最終的に勝ったモノが強ぇのは理解出来る、ただ──しょうり、勝利ねぇ。アンタの言いたいこたぁ分かるが、そも戦いっつーのは「手段」でしかねぇ。
今もニンゲンたちが戦争続けてんのは、領土やら食糧やらを求めての蛮行だ。どんなに多くの血や犠牲があろうと手を伸ばさずにはいられねぇぐらいの「美酒」がねーと話も始まりはしない、つまりその先に自分が本当に求めるモンがねぇのなら…ソイツはただただ虚しい「空ッポの勝利」なのさ、勝ちに拘っても目的が無ければ何の意味もねぇのさ?」
勝負とは、勝利とは「願望を果たすため」の過程の一つに過ぎない。目的無き頂点ほど無益なものはない。そう論破する望月であったが…深海金剛は落ち着き払った様子で言葉を返す。
『ホゥ…確カニ一理アリマス。勝負トハ白黒ツケルダケデハナイ、成シ遂ゲルベキ目的ガアリ、ソノ上デ勝利シナイト意味ハアリマセェン。デアレバ…ソコマデ言ウナラ貴女タチニモ立派ナ「目的」ガアルハズ。聞カセテモライマァス…貴女タチハコノ戦イニ何ヲ求メルノデェス?』
望月の皮肉の効いた言葉に対し、深海金剛は納得した上で望月たちの戦う理由について聞いてきた。自然な会話の切り返しだが望月は僅かな「違和感」を感じつつ頭を働かせる。
「(コイツ…さっきまでの天龍や綾波が戦っている最中にも、何やら話し込んでいる様子だったが。似たようなことを聞き回ってやがったな? 戦う目的か…戦闘を止めてまで態々問うことなのか、っつー疑問はある。何が目的かは分からねーが…これ以上いびってものらりくらり躱されそうだぜ)」
先ずは少しでも精神的苦痛を与えることで、先の戦いを有利にさせる狙いがあってこその罵り口であった。だが望月の
先ほどの暴悪的な力を振るう様と打って変わり、酷く落ち着いた姿勢と機知の富んだ地頭の良さが滲み出ていた。力だけでなく智慧まで備えているとは…どうやら一筋縄ではいかないようだ、最強の名は伊達では無かった、こういう手合いが一番やり辛ぇと内心舌を巻く望月。
これ以上の心理戦に持ち込むことは此方が不利になる可能性が高い。
望月はそう思い至ると、隣の野分にアイコンタクトで合図を送る。野分も状況を察して黙って頷くと、望月と共に目前の鬼神に向き直った。
「何を求めるって、アタシらはただテメェ倒せるように姐さんを蘇らせようとしてんのさ」
『ウィ、我々の目的はエリさん…我々が良く知る「金剛」の復活です。そのためにはマドモアゼル、貴女には「踏み台」になって頂きたい』
揃って口にする「金剛(エリ)の復活」、望月と野分の言葉に深海金剛は──矢張りゲラゲラと嗤って「無駄なこと」と諭した。
『アッハハハハ!! 天龍モ言ッテイタ「エリ」デスネ! ソノ彼女ガ私ヲ倒シテクレルト? ソレハソレハ…下ラナイデスネェ! ドレダケノ実力カハ知リマセンガ、ソレデ私ニ勝テルト本気デオ思イデスカァ?』
「へっ! アンタは姐さんの実力を知らないからそう言うのさ、今までもカイニ艦と肩を並べて戦ってたんだ。姐さんがカイニになりゃあアンタは…」
『ソレガ事実デアロウトモ、貴女ガタガ「エリノ蘇生」トイウ目的ヲ果タシタトシテモ、
「…っ!」
望月が強気に出ようとするも、深海金剛は本質を突くことでその勢いを相殺する。
痛いところを突かれた。確かに金剛(エリ)が復活したとしても、その上で改二に成れるかもそもそも分からないし、仮に至れたとして深海金剛と対等に戦えるのか? その二つの巨大な疑問を解消出来る証拠を、今の望月たちは持ち合わせていなかった。
歯噛みする望月を畳みかけるように、深海金剛は望月と野分にそれぞれ問いかける。
『望月…デシタカ? 貴女ハ良ク頭ガ回ルヨウデスガ、ソンナ貴女ガ今ノ状況ガ絶望的デアルコトヲ理解シテイナイ筈ハナイ。ソウデナクトモ賢イ貴女ハ「博打」ニ出ルコト自体「馬鹿ラシイ」ト思イマセンカ?』
「っ、そりゃあ……」
『ソシテ野分、我ガ同胞ヨ。貴女ハ深海ニ沈マナイ自身ノ精神ノ支柱ヲ、「司令塔ヘノ愛」ト言イ表シマシタ、貴女ハソノ気ニナレバ私ノ相手ヲ「少シノ間」保タセルコトガ出来ルデショウ。ソノ短イ時間デ、綾波ガソウシタヨウニ私ヲ道連レニスレバ良イ話デハナイデェス? 態々「エリ」ノ起死回生ヲ狙ワズトモ、ソノ方ガ貴女ノ愛シイ人ガ生キ残ル確率ガアルトハ思イマセンカァ?』
『…っ』
『ホラホラァ、ソノ程度ノ浅知恵デハ理論ノ穴ニ足ヲ取ラレル、希望的観測ガ多過ギマス。ソレハ最早策デハナク「愚行」デェス。貴女タチガソコマデシテ戦ウ理由ナドナイ、ソレダケデ私ニ歯向カウナド理解不能、懐疑的
またしても、天龍や綾波に問うたように今度は望月たちに対しても「覚悟」を問い質す深海金剛。その問いが彼女にとって何を意味するのかは分からない、だが──それでも答えなければならない。それぞれの胸に秘めた──答えを。
「──悔しいがアンタの言う通りさ、アタシらがこの場を切り抜け、沈まずに離脱出来る確率は…今のところ「0」だ。奇跡でも起きねぇ限り覆らない事実だろうぜ、だがなぁ──アタシらは最初から全部承知の上なんだよ。姐さんが蘇らねぇかもしれないことも、沈むかもしれねぇこともな。
ここに来る前から頭で何千何万と予測立てても、結局アンタって言う「化け物」見て現実叩きつけられてよぉ、全部無駄だってこと理解しちまう自分が居るのさ。ヒッ! 笑えるだろここまで来たらよぉ?
だがなぁ…アタシのこの頭の良さは「自前」じゃねぇ、取って付けられたモンだ。だからこそこの「どうしようもねー思考」は切り捨て、やれるだけやってやるって決めたのさぁ。どんなにビリビリに破かれた「策」も、一通り試してやるさ。そこに一欠片の「勝利への解答」がある限りな?
何故かってアタシは──
『ボクは…コマンダンに生きていてほしい、今の醜いボクに「それでも美しく在れる」と教えてくれたから。そのコマンダンは──エリさん、ボクたち、更にこの世界全ての人々の「生存無事」を望んでいる。ならばボクが為すべき行動は、もう決まっている。
どんなに深く醜い絶望が、煌びやかな未来を遮ったとしても。ボクが…ボクたちがそれを打ち破って見せる。コマンダンがそれを諦めないと仰るなら…ボクは最期まで、彼の美しい心を具現し、障害から守り切って見せる。
美しきを助け、醜きを正す。「美助醜正(びじょしゅうせい)」こそが、ボクの
それぞれの言葉で形にする想いは、共通して「未来」を見据えるモノ。それぞれの未来のため最期まで抗って見せるという、信念が現れたモノだった。
『──理性ダケデ完結サセナイ意志ノ硬サ、愛スルものノ意思ヲ真ニ果タソウトスル気高イ矜持。…アッハハ、見事デス。望月ト野分、貴女ガタノ一隻ノ力ハ貧弱デアロウト、二隻デアレバ…ソノだれヨリモ輝ク意志デ道ヲ切リ開クノデアレバ、絶望ヲ切リ裂クコトハ可能…カモシレマセン。ソレガドレホドノ切レ味ナノカ、興味ガ湧イテ来マシタッ!
良イデショウ、合格デェス。ココカラガ本番! 貴女タチノ鋭ク砥ガレタ「克己心」ヲ、私ガ圧シ折ッテアゲマァス!!』
深海金剛は彼女たちの精神力を認め、改めて壊し砕くべく両拳を握り締め構える。望月と野分もそれに応じて臨戦態勢、望月の前に野分が進み出てレイピアを構える。後ろの望月も深海金剛の隙を伺うように、力強く眼を見開いては策を練り始める。
──無論、望月が既に一手策を講じていることを、深海金剛は知る由は無いのだが。
「(頼むぜ野分…こっから正念場だ!)」
『(必ず生き残る…コマンダンたちと共に、美しい
睨み合う両組、改二艦ではない望月と野分は深海金剛という