艦これすとーりーず ―僕が異世界版艦これの提督になった件について―   作:謎のks

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 四か月以上も空いてしまい申し訳ない、宿毛でも書いたとおり最近の作者の周りの事情が変わりましたので、これからは投稿頻度が少なくなります。とはいえ近いうちに宿毛を終わらせる予定なので、今後はこちらを最優先で書けると思います。ご理解のほどをお願いします。
 しかしちょっと問題が。・・・四か月も空くとね、展開どんなんだったか忘れちゃうんよ。だから深海金剛戦を一から見直して来たヨ! 大丈夫だと思うけど面白く無くなってたらゴメン;


そして、希望の鶴翼捥れし時──①

 望月と野分が挑む深海金剛戦は、遂に終焉を迎えた。

 眩い白光が空間を奔る、視界を遮る光に拓人たちも思わず目を塞ぐ。そして…視界が晴れ、黒い霧の霧散した先に見えた光景に、拓人は絶句する。

 

「…っ、望月…野分…っ!」

 

 それは、司令官への愛に応えるため己の限界を越えて鬼神に挑んだ、千計の智将と麗しの魔人が力無く水面に揺蕩う姿であった…。

 拓人は湧き上がる己の無力感を、自然と震える身体と握り締めた両拳で表す。その感情を何とか心の奥へ押し込むと、打ち震える口で息を整えつつ、努めて冷静に倒れ伏したフタリの状況を確認する。

 どうやら小規模の爆発があったようで、彼女たちの横隣りに渦が逆巻いていたが、綾波の決死の自爆攻撃に比べると威力はそこまでではないようだ。収まりつつある渦の隣で望月と野分が力無く揺蕩っているのが見える。

 望月は言わずもがな穢れに侵された影響で、海面に顔から倒れるように気を失っている、野分も僅かに息はある様子だが苦しい表情を崩していない。

 

 ──だが、どういう訳か深海金剛の姿が見当たらないでいた。

 

「…? おかしいぞ。深海金剛は何処だ? まさか…沈んだの?」

「分からないわ、けど凡その予想は何かの能力で野分の一撃を回避していると思うの、綾波の時も異空間に逃げ込んだ訳だし」

「だろうな、であれば…望月たちを助けに行くなら慎重に行くべきだ。もうまともに動けるのはタクトと翔鶴以外に居ない、フタリが近づいた時に一瞬で姿を見せて寝首を掻いて来ることも十分有り得る。そうなれば本当に全滅だぞ」

 

 翔鶴と天龍の言葉に、拓人は頷いて辺りを慎重に何度も見渡して警戒する。

 …周囲に怪しい気配は無い。躊躇していてはいつ敵が襲って来るか分からないこの状況、早々に望月野分を処置したいところ。特に望月は顔が海面の方を向いているので、肺に水が溜まっている可能性が高い。一刻も早い救助が得策だろう。

 

「──よし、助けよう! 僕が行ってみるから皆はここで待機していて?」

 

 拓人は単独で望月野分を助け出すことを決める、だが翔鶴がそれに待ったをかける。

 

「私も行くわ。次に戦うとしたら私だから」

「翔鶴…分かった。一緒に行こう!」

 

 拓人と翔鶴は頷き合うと、辺りを見回しながら慎重に動き始める。手負の天龍と綾波は警戒しながらもそのまま拓人たちを見送る。

 

 敵の奇襲に用心しながら素早く海面を駆ける。いつ深海金剛に襲われるか、もしかして既に後ろに居るかもしれないと、上下前後左右視界を動かしては鬼神の強襲に備えて警戒を厳にする。

 息も許さぬような緊張が続く中、拓人と翔鶴は倒れ伏したフタリの元に辿り着く。この間──深海金剛が姿を見せることは無かった。

 

「ふぅ…さて、僕は野分を見てみるよ」

「分かったわ、私は望月を」

 

 安堵の息も束の間、拓人たちは波が穏やかになった海面に浮かぶフタリをそれぞれ介抱することにした。野分を抱きかかえると顔を覗き込む拓人だが、頬に刻まれた罅割れが──非常に遅くはあるが──塞がって、傷が小さくなりつつあるのを確認した。少し被弾したか? と心配になるも、辛い表情が徐々に安らかになっていく野分の()()()と寝息を立てる姿を見て、杞憂であると思い至った。

 ここから()()が推察出来るのは、野分はどうやら薬の効果が切れて深海細胞の力で傷を癒すことに成功しているという事実だ。回復力自体は下がっている様子だが、ひとまずの崩壊と轟沈の心配はなさそうだ。…そんな事実を知らず、拓人は眠る野分にホッと胸を撫で下ろす。

 

「良かった…野分はあれだけの戦闘だったのに、そこまで酷い怪我はしていないみたいだ。流石に深海の身体は頑丈だ…そっちはどう翔鶴?」

 

 拓人が野分を抱えながら翔鶴に問いかけ振り返ると、翔鶴は望月の胸に手を乗せて青い光を当てていた。すると少しして望月が咳、次にえずき始め、最後に何かを吐き出す。それは青い光に包まれた肺に溜まったであろう海水だった。空中に静止したまま、星のような輝きを放つ蒼光の中の海水は、丸い形も相まってまるで宝石のような煌びやかさだった。

 蒼光が消えると共に、中の海水はそのまま足元の海中と一つに溶けていった。望月は静かな吐息を立てて眠っているようだった。

 

「…良し、これで大丈夫かしら。こっちも何とかなりそう、穢れで停止していた身体機能も、私の魔力を分けたから直に正常に戻るはずよ」

「望月の治療に加えて、肺の海水を取り出すことを同時に出来るなんて…やっぱり翔鶴は頼りになるね?」

「ほ、褒めても何も出ないわよ! もう…とにかく早くここを離れた方が良いわ、何が起こるか──」

 

 拓人と翔鶴が望月たちと一緒にこの場から離脱するため動こうとしていた…その時、ふと辺りを見回した翔鶴の目には、海中で鈍く光る「紫の光」が映っていた。

 

「…タクト、野分と望月をお願い」

「え…──っ!? 翔鶴…っ」

 

 翔鶴の声色の変化に気づいた拓人は、彼女の視線の先を見て何事が起きていることを悟った。それ故に翔鶴がヒトリで脅威に立ち向かおうとしていることにも気づき、思わず不安な声が出る。拓人に振り返る翔鶴はフッ…と笑うと小突く調子で何でもないと言ってのけた。

 

「何よその顔、心配要らないわ。私は貴方の「希望」よ、簡単にやられてやるもんですか」

「…分かった、気をつけてね?」

「えぇ、ありがとう。…さぁ!」

 

 翔鶴から望月を差し出された拓人は、右肩に望月、左肩に野分の身体を抱き寄せて両腕でフタリの身体を支える。そうして出来るだけフタリに負担が掛からないようゆっくりと、かつ素早く…早歩きの要領でその場を後にした。

 

「──コンバート」

 

 翔鶴は拓人を見送ると、敵の居る方向に向き直ると「コンバート改装(改二甲から改二へ)」で攻撃態勢を整えると、蒼光で弓と背の飛行翼を形作る。臨戦態勢の中…海中の紫の光は遂に海上に姿を現した。

 それは赤紫色に妖しく光る「海魔石」であった、空中に固定されたそれは光を一層輝かせると、海中の瘴気を吸い上げて吸収しているようだった。

 

「今度はどんな屁理屈ぶつけてくるのやら。…ユリウス聞こえる? 戦闘データはどのくらい集まったの?」

 

 目の前の不可思議に皮肉を零す翔鶴は、腕の通信機に向かって話しかけユリウスに進捗状況を促す。対してユリウスは何処か申し訳なさそうに状況を簡潔に伝える。

 

『…済まない、現在の戦闘データは「65%」ほどだ。想像以上に属性封印の影響が出たようだな…君に負担を掛けるが、どうにかして「残り35%」を何とかしてほしい』

「それは…不味い感じなの?」

『いや、事前に望月たちと話し合って出した「最低限の値」の10%はクリアーしているが…正直敵の規格外の強さに参ってしまってな。特に魔力を通さずに属性使用だなどと言ったのは、完全に想定外だ』

「そうね、シゲオが艦娘だった頃の彼女は魔術の天才って言っていたけど、属性の特性を完璧に理解しているわね。そんな天才に「全属性」だなんて…ホントに「鬼に金棒」って言うのかしら?」

『あぁ、敵の異常な強さを考慮していなかったわけではないが…天龍君と綾波君の戦いがスムーズであっただけに、多少数値が足りなくとも何とでもなるだろうと、我々の見立てにも「慢心」が出てしまったようだ。望月たちに実力差がある以上どの道どうしようもないことかもしれなかったが…君の手を煩わせることになってしまい、本当に済まない』

「仕方ないわよ、後悔してもしょうがないし悲観するほどでもないわ…私が何とかすれば良いだけだもの!」

『っ! …ぁあ、期待しているよ!』

 

 ユリウスとの通信を終えて、翔鶴は目の前の不可思議の現象を睨んでは蒼光弓を構えて、いつでも艦載機部隊を発艦出来るよう準備を整える。

 

「出て来なさい──深海金剛!」

 

 翔鶴の声に応えるように、海魔石は取り込んだ穢れを纏うと、黒い闇の炎のようにゆらゆらと灯る火の玉となり、それは徐々に大きく拡がると人の形を取る。やがて──黒炎が鎮まるとそこには、ニヤついた嗤い顔を浮かべる無傷の深海金剛が立っていた。

 

『フゥ~~~…ヤラレマシタ、マサカ「対消滅(ついしょうめつ)」ニ巻キ込マレルトハ……!』

 

 どうやら深海金剛は一時は完全に肉体が消滅していたようだったが、またも属性の力を借りて復活を遂げた様子だ。それが何の属性かは先ほどの()()()()()()で大体の察しは付くが…翔鶴は深海金剛が呟いた何気ない一言を聞き逃さなかった。

 

「対消滅…プラスとマイナスのエネルギーがぶつかり合うことで、強大なエネルギーを発生させる現象のことね?」

『ホゥ、詳シイデェスネ? いぐざくとりー! 先ホド野分ハ私ノ腹ニ剣ヲ刺シ、ソノママ熱えねるぎーヲ膨張サセテ「ドテッパラ」ニ風穴ヲ開ケヨウトシマシタ、ソノ時ニ冷気ガ刀身ニ伝ワリ、剣ノ熱ト冷気ガ混ザリアイ…結果トシテ対消滅現象ニヨルえねるぎー発生ガ起キタ、トイウコトデショウ? 狙ッタ訳デハナイトイウノガ、マタ面白イ話デェスネ。マァ私モソノ可能性ヲ失念シテイマシタガ、オカゲデ逃ゲ遅レテシマイマシタヨ。ハッハッハ! Shit! 千慮一失トハコノコトデェ~ス!』

 

 ケラケラ高嗤う深海金剛だが、対消滅のエネルギーは高密度でありそれを正面から受けたモノは、例外なく肉体の全てが消し飛ぶことを翔鶴は知っていた。であれば深海金剛は先ほど完全に倒されて(轟沈して)居たということで、そんな状態から五体満足まで復活を遂げた。この事実が表すことは──敵は身体がどんなに砕かれようとも、海魔石(しんぞう)が無事なら()()()()()()という絶望的な観測結果であった。身体に傷を付けるだけでも一苦労であるのに、圧倒的な回復力に加え攻撃、防御、肉体強化に敵への状態異常付与など、どれをとっても一ミリの隙も無い。

 これは果たして、金剛(エリ)が戻って来たとして、改二で今まで以上の実力を得たとしても深海金剛を打ち破ることが出来るのか…胸をジリジリと焼く深く黒い「絶望」が、翔鶴を襲った。

 

 ──それを敵に見せまいと顔色を引き締めて凛とした態度で、弓の構えを少しだけ下ろすと翔鶴は深海金剛との対話に臨む。

 

「それだけ追い込まれていたってこと? そんなこと言って良いのかしら。私…自分で言うのは恥ずかしいけど、結構強いわよ?」

『ソノヨウデスネェ、ソノ証拠ニ先ホドカラ見ルニ貴女ノ蒼ノ光…えーてる光子。発現スルコトハだれニモ不可能ト言ワレテイルニモ関ワラズ、容易ク扱ウソノ技量。ソシテ時間ガ経ッテモ少シモ乱レルコトノナイ完璧ナ操作。えーてる光子ヲ変化サセタ背中ノ翼、得物ノ弓矢モ、並大抵ノ技術デハ成シ得ナイ。()()()()()()()()()()()()デェス。ソレヲ汗一ツ見セズニ制御出来テイル時点デ、貴女ノ魔法ノ才能一点デ言エバ、私以上デショウネ?』

 

 あの深海金剛が認めるほどの業(わざ)を見せる翔鶴、その翔鶴は眉一つ動かさず率直な疑問をぶつける。

 

「嘘でしょ。貴女が禁術を含めた全属性を操れるというなら、死属性の対となる「生属性」…つまりマナの生成も容易のはずよ? マナの上位種たるエーテル光子も操作範疇ではないの。その下手な法螺は私を油断させたいのかしら」

『ホゥ、遠目カラダトイウノニ私ガ何ヲシテイタカ見抜イテイタノデ? 益々才覚ノアルコト』

「それはそうよ、私…見ての通り「エルフの適合体」だから。この言葉の意味は多く語らなくても分かるでしょ?」

 

 翔鶴は首を傾けて長い耳を見せては、自身の素性を明かしていく。

 適合体…その言葉に深海金剛も納得がいったように真顔になると、エーテル光子を操れない理由を話していく。

 

『確カニ魔力ノ源流タル”まな”ヲ「生属性」トシテ操レハシマスガ、ソレヲ原子れべるカラ融合スルノハトテモ難題。ソモソモエーテル光子カラシテ「神ノ領域ヲ構成スル物質」ト定義サレテイマスカラ、コノ世界ノ外ニ位置スル要素ヲ「属性」ト呼ブコトハ出来マセェン』

「…ふん、口が上手いわね。今から貴女と戦わないとだから、その言葉に惑わされないよう気をつけないとね?」

『事実ナノデスガ、疑リ深イデスネェ。──サテ、貴女ハ私ト戦ウト言ッテマスガ、ソノ前ニ()()()()()()()()()()()()

 

 証を()()()()…その違和感ある言い回しに、翔鶴は思わず眉を顰める。そして──何かに気づいた様子でハッと目を見開くと、その意図を回答する。

 

「…まさかとは思うけど、天龍たちと睨み合って何かを話していたのは」

『イェ〜ス! ソノマサカ。私ハ彼女タチニ私ト戦ウ資格ガアルカ試シテイマシタ、タダノ小娘ト戦ウツモリハアリマセンノデ。貴女ニモコノ問イヲ投ゲサセテモライマショウ、貴女ハ…何故私ト戦ウノデスカ? 自ラガ確実ニ「沈ム」コトニナロウトモ…貴女ハ私ニ立チ向カウノデスカ』

 

 深海金剛が対峙する戦士たちに唐突に問い掛ける、彼女にとっては最早当然の図式。翔鶴には「藪から棒」な話であるため、いきなり戦う理由を問われてもしっかりとした解答は持ち合わせていないのが心情である。

 更に深海金剛が翔鶴側の油断を誘うために突拍子もないことを言っているのではないかと、疑念すら持ち始める翔鶴。ダレであれこう言われれば戸惑うであろうが──それでも翔鶴は、ココロを落ち着けるため深呼吸を一つすると、素直に受け止めては言葉を紡ぎながら、覚悟を形作っていく。

 

「──昔の私なら、嫌だったでしょうね。瑞鶴を喪ったあの時から…シに場所を求めて戦場を彷徨って、結局シにきれなくって。瑞鶴に会いたいっていうキモチと、まだシにたくないっていうキモチがせめぎ合って…瑞鶴が沈んだのをニンゲンのせいにして、そんなニンゲンたちのために沈むなんて…冗談じゃないって。逆に生き残ってやるって逃げ回ってたでしょうね」

『ホゥ…面白イ話デスネ、話ノ仔細ハ分カリマセンガ。貴女ハカツテにんげんヲ憎ンデイテ、にんげんノタメニ戦ウ艦娘トシテノ存在意義ヲ全否定シテイタ。ソンナ貴女ガ…自ラ全テヲ賭ケテ死地ニ追イ込ムナド、余程ノ価値観ノ大転換ガアッタノデショウ。ソレデ…何ヲモッテ「覚悟」トシタノデスカ?』

 

 深海金剛の興味深げな催促に、翔鶴は真っ直ぐ鬼神を見つめては言ってのける。

 

「簡単な話よ。何故私が今までこんな気持ちになったのかを、()()()()()()()()()()()一つずつ紐解いていったのよ。

 瑞鶴を喪ったあの夜に何があったのか、関係あるモノたちにヒトリずつ聞いて回って、そのヒトがどんな行動をして、何でそんなことをするに至ったのか、少しずつ理解していったのよ。そんな短いようで長い旅を続けていくうちに…私がどれだけ短絡的で浅はかな考えだったかを、思い知らされたのよ。

 ニンゲンってね…どんなに他ニンから「悪」に見えても、本当の理由を知らない限りその行動を非難することは、ダレにも許されることではなかったのよ。ダレも好きで一見理不尽に見える立ち振る舞いをしているわけじゃない、皆がみんな──それが一番「良い」んだって信じていただけなのよ」

 

 それでも、結局どう見るかを決めるのは他人だし、悪と決めつけられてもそう見せた方にも非はある…かもね? そう翔鶴は静かに、何処か嬉しそうに微笑んでいた。対峙する深海金剛は真摯な態度を崩さずに翔鶴の話を黙って聞き入っていた。

 その様子を見て翔鶴は、何処かおかしそうにまた笑った。

 

「ふふ、貴女にもあるのね? そうやって戦う理由を聞く動機というものが。さっきまでのヒトを食ったような態度はどうしたの?」

『ソノ話ガ貴女ノ覚悟ノ一端デアルナラ、最後マデ聞キ入レルマデ。貴女ノ言ウトオリソレヲ途中デ茶化スノハ、礼節ヲ欠ク愚行デアルト思イマシテネ。気ニ障リマシタカ?』

「いえ、意外だなと思っただけよ。…兎に角、ヒトの考えや価値観、行動の裏に隠された想いに触れて、私は「変わらないといけない」と考えを改めたの。そして今は──私をその考えまで導いてくれた「彼」のため、力を尽くしたいと思っているわ」

 

 翔鶴の言葉を一言一句聞き終えた深海金剛は──僅かな言葉を、翔鶴の覚悟を揺るがす「核心」を突く言葉を言い放つ。

 

『フゥン、シカシ──貴女ガドンナニ身ヲ捧ゲヨウト、ソノ「彼」ハ別ノ女ヲ見テイルノデハ?』

 

「っ! …ちょっと、茶化さないんじゃないの?」

『貴女ノ覚悟ハモウ理解シマシタ、愚カダッタ自ラヲ変エテクレタ彼ニ応エタイ。麗シイ愛情デェスネ? タダ…彼モ貴女ノ仲間タチモ、「エリ」トイウ存在ヲ蘇ラセヨウト必死デス。ソレハ本当ニ深イ「愛」ガ無ケレバ、中々行動ニ移セナイモノデショウ。

 デハ…彼ノ視線ノ先ニ居ルノガ貴女デナイ別ノ女デアロウトモ、貴女ハ彼ノタメニ全テヲ捧ゲマスカ? 嫉妬ニ狂ワナイト断言出来ル所以ハ何デスカ? モシ答エガ出ナイノナラ、ソンナ曖昧ナ覚悟デ私ニ向カウコトハ止メテオキナサイ。半端モノノ相手ヲスルホド私モ暇デハアリマセェンノデ』

 

 煽るように翔鶴の覚悟を追求する深海金剛。問われた翔鶴は精神の支柱となる感情を深堀していく。

 何故…確かに自分だけを見てほしいと考える時はある。ただその「行き過ぎた気持ち」で随分と問題を起こして来た身としては、線を引いて一歩後ろに下がるぐらいの気持ちでも、彼の確かな愛情を感じられるなら…それで良いと思った。

 だが…エリという彼が真に愛情を向ける相手を、羨ましいと思わないとは言えない。寧ろ彼女さえ居なければと…であれば彼女を助ける義理は自分には──

 

「──…なんて、言う訳ないでしょ」

 

 一瞬頭に思い浮かべた「呪いの言葉」をココロの奥に仕舞い込むと、翔鶴は自身に満ち溢れた顔で深海金剛を見つめながら、口調を強めて言い切った。

 

「仲間だからよ。彼女…エリも私にとって大切な仲間。強くて優しくて…私たち艦娘には無い「心の輝き」を持った、かけがえのない娘よ!

 私が自分の「身勝手」に向き合うよう、敢えて真正面からぶつかってくれた時があった。シスターとの演習で私に自分の気持ちを伝えるよう促してくれた時もあった。提督に再会した時には、タクトと一緒に私を「仲間だ」って言ってくれたわ!

 …最初はね、彼女のことが良く分からなかった。死んだはずの金剛って名前の艦娘で、出鱈目な強さで、何かあれば「デース!」って言って高笑いして…でも、一緒に任務をこなす内に彼女の人となりも見えて来た。私にはちょっとしか分からないけど…例えニセモノであったとしても、罪を犯していたとしても、彼女は次代の「金剛」として十分すぎる活躍をして来た。そんな彼女が──幸せになれないなんて、どう考えてもおかしい。だから私はあの娘を生き返らせて、お帰りって言ってやるの。

 その後はエリとタクトが…大好きな人たち同士が結ばれるのを間近で見てやるんだから! どう? これが私の戦う理由よ。世間サマが頭おかしいって言っても、私にはそれで充分よ!」

 

『ソレハ貴女ガ抱ク本当ノ気持チナノデスカ? 周リニ合ワセテ本音ヲ隠シタ嘘デハアリマセンカァ? 貴女ノヨウナ我ノ強イ女性ガソウ簡単ニ──』

 

「──そうよ。本当はダレよりもタクトに愛されたい、私は…私がココロ惹かれた相手に自分の全てを捧げたいと思っているわ。盲目だとか気持ち悪いだとか思うならどうぞ?」

 

『──…ッ!?』

 

 深海金剛の焚き付けを意に返さない翔鶴の返答、クロギリ海域での一連の出来事で培った精神的な強さは、鬼神の嘲笑いを跳ね除けるほど強靭となった。

 翔鶴の我の強さの脆い点を突いたはずの深海金剛は、その臆すことのない精神の頑強さに思わず目を瞠る。翔鶴はそんな彼女に「変えられない自分」を語る。

 

「私はヒトが思うほど善ニンじゃない。どんなに自分を変えようとしても未だ至らない気持ちもあるわ。それでも──私は「私」として生きていくって決めたんだから! この愛がどんなに叶わないものだとしても…もう自分を着飾るのも、我慢して傷づいて、爆発して傷つけてを繰り返したくないの。

 だからこれで良い、私は…それでも、こんなに歪な私を愛してくれるヒトたちの気持ちに応えたい。例え──そこに「轟沈()」が待っていても、自分が満足しているのだもの、後悔は無いわ!」

 

『…驚キマシタ。貴女ハ内ニ秘メタ負ノ感情スラ「芯ノ強サ」ニ変エテシマウノデスカ? ソレガ貴女ノ覚悟ニナルトハ…ッ!?』

 

「そうね。付け加えるなら…ヒトの聞かれたくない部分まで根掘り葉掘りして、したり顔で否定する貴女は()()()()()()()。絶対に許さない…今から貴女に「希望」の力を見せてあげるわ!!」

 

『…ホゥ? 希望ゥ? ハッハァッ! 調子ニ乗ルナヨ小娘ガ! ナラバ此方ハ貴女ノ芯ヲ砕キ折リ、ソノ生意気ナ厚顔ヲ「絶望」ニ染メテアゲマショウ!』

 

 互いに罵り合いという挨拶を済ませると、翔鶴は蒼光弓を、深海金剛は握り両拳をそれぞれ構え臨戦態勢になる。

 

 ──ここに、拓人艦隊最後の一隻となった翔鶴の、深海金剛戦が始動する。果たして…翔鶴は見事深海金剛から戦闘データを掠め取り、エリを復活する切っ掛けを作り出せるだろうか…?

 

『来ナサァイ、翔鶴ゥ!!』

 

「言われなくったってやってやるわ。行くわよ──全航空隊、発艦始めっ!」

 

 蒼銀の希望と無彩色の絶望がぶつかる…この戦いの先に、どんな結末が待ち受けているのか──

 

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