艦これすとーりーず ―僕が異世界版艦これの提督になった件について―   作:謎のks

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 ※長文になります、すみません。

 前回から何と半年以上掛かっているという現実、マジか・・・嘘でしょ!?
 何故小説を書けないのかは、活動報告の「宿毛泊地の(一旦)終了とこれからについて」に書いてあるので省きますが…そりゃ一月から会社の(また)部署移動で、仕事慣れるのに数か月掛かったし、プライベートも色々…身内にも親族にも色々ごたつきがあって、周りも環境も変わって忙しなかったしで、とても小説に腰を据える状況ではなかったけど! もう誰かに言いたい、こんな状況下で自分はよくやったと! 誰か褒めて下さい!!
 というわけで戻ってまいりました! 長い間更新なくって申しわけありませんでした!! その代わり宿毛は終わらせて参りましたので、これから投稿を再開しますが…私事によるあまりもの執筆長期間停滞により、艦すとの終わりが一年ぐらい伸びました。うん、状況によってはもっと伸びるかも。ハハハ・・・(乾いた笑い)。
 これからなるだけ早いうちに投稿していきたいと思いますが、状況は未だに厳しい感じなのでまた遅れる可能性があります。本当に申し訳ありません…まだ謝りたいのですがこれ以上お待たせしてもなので、取り敢えず本編をご覧ください!


そして、希望の鶴翼捥れし時──③

 翔鶴対深海金剛戦は、正に天地を動かす神々の戦いの一端を見ているような激戦を極めた。だが──ここに来て進退窮まる状況に陥っていた。

 

「見な大将、あのヤロー翔鶴の必殺受けてまるで無傷だ。アレは対消滅のエネルギーを「無に帰した」結果だと推測するぜ、矢張りアイツ…"無属性"をモノにしやがった!」

「む…無属性!? それは…(マサムネさんが使った「凡ゆる事象を無効化するプログラム」みたいなものか?)」

 

 目覚めたばかりの望月から語られる絶望的事実、遠目からでも理解出来る事柄として…翔鶴の「対消滅エネルギーの反射」を受けて尚沈まない深海金剛は、無属性を駆使して膨大なエネルギーを打ち消していたという。

 まさかの事態ではあるが、予想して居ない訳ではなかった。次々と立ち向かう艦娘たちとのイノチ懸けの勝負を制した深海金剛が、簡単に倒れることは無いだろうと。しかし…どう考えても生き残れないだろうと思っていた状況から生還したのは、流石に驚きを隠せない。それを可能にしたのは「無属性」というクロギリでマサムネが使用した事象消去プログラムと似たような力によるものだと言う。

 望月の言葉に、拓人は通信を開いてマサムネに対し超科学と無属性の関連性について尋ねた。

 

『なるほどネェ! 確かに超科学の基礎となったプログラムは「無属性」の再現から来ている、魔法で再現出来なかった事象を科学という別視点からアプローチを掛けたという寸法サ!

 それでもこちらとしては驚きだヨ、超科学でも指先に一瞬が限界だのに、翔鶴君の必殺を耐えるほどの持続性を見せつけられたからネ!』

「そうなんですね、だとしても…どうして深海金剛が無属性を再現出来たのでしょうか。無属性…無いものを再現するというのは、僕にはどうしても簡単に出来るとは思えなくって」

 

 拓人の一般的な感性の疑問、それに対するマサムネの解答は先ず前提を訂正するものだった。

 

『ン~それは語弊があるカナ? 無属性というのは「何も無い」ということでなく「そこに在るもの全てを「無に帰す」事象を指すンダ!』

「…無に帰す?」

『そうだヨ。神々の御業なるもの、自然、果ては宇宙まで! 全ての概念は「無」から生まれたという学説も存在するンダ。無という概念をその他の属性にぶつけることで「全ての属性を無に返還する」ということだネェ!』

 

 無という概念は確かに在ると高らかに告げるマサムネ、だが無に返還とは「属性の無効化」と同義なのか、その辺りが不明瞭であったので、拓人はそれとなく疑問をぶつけ、マサムネから再び回答を得た。

 

『少し違うカナ? そうだネェ…平たく言うと無を「世界の理(ことわり)」に、属性魔法を「世界の歪み」と定義するとして、その場に()()()()()有り得ない現象を元に正す。そんなところカナ? どうあれ魔法や魔術にとってこれ以上ない「難敵」であるのは間違いないヨヴェイビー!』

 

 これを意訳すると、無属性は世界の均衡そのものでありマナより変えられた「属性」を無に返すことで、魔法は霧散し魔術は論理が崩壊し「元のマナに戻る」という凡そ反則的な表象であった。

 つまり翔鶴のエーテル光子も、無属性によって元のマナにまで分解されてしまった。そんな絶対的な現実があった。

 

「そ、そんなこと……世界の抑止力みたいな力まで味方に付けたってこと? そんなの…有り得ない」

 

 何度目か分からない拓人の絶望感に苛まれる顔を他所に、マサムネは嬉々として語り続ける。

 

『しかしどういう()()なのかはぼくにも分からないカナ? 彼女が扱っているのが魔法だとしたら、無属性は魔法や魔術では再現不可能の筈。彼女はどうやって無属性を取得出来たのだろうネェ』

 

 マサムネが首を捻っては不可思議の解答式を考えていると、横で話を聞いていたシゲオが不意に言葉を零す。

 

『──そういえば、かつてのイソロクさんが金剛の「能力」について零しておった。彼女が扱うのは…()()()()()()()()()()()()とか? なんじゃったか…魔そのものを操るとか』

 

「…っ! そうか…そういうことか!」

 

 シゲオの言葉に、望月はハッと何かに思い至った様子で声を上げた。何事かと拓人が尋ねると程なく望月が話し始める…極々単純な「解答」を。

 

「──…アイツが使っているのは確かに「魔法」だ、でなけりゃアタシが魔力を出せねぇようにした時に「属性が使えなかった」理屈が合わねー。体内のマナを魔力にして魔法を行使するのが一連の流れってヤツだからな。

 長らく無属性を魔法魔術に落とし込むことは出来ねぇとされたのは、世界っつうデカすぎるモン再現するには()()()()()が居るし、魔法でも再現出来る想像の余地を超えてる、魔術なんて理論構築に必要な式が馬鹿みてーに長く広大だ。人智の理解を超えたそれをおいそれと扱うのは難しいとされた。

 だが、それを可能にする至極単純な方法が一つある。それは──体内にそれを再現出来るだけの「()()()()()()()()」が流れていることだ!」

「っ! そうか…全属性の魔法を扱えるのではなく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それが深海金剛の改二艦としての能力か!」

 

 拓人の正にの解答に、その腕に介抱されている望月は首を少し前に倒して肯定した。

 深海金剛の能力は全属性の行使そのものでなく「無尽蔵の魔力」、魔法は自力で会得していたという事実。それを受けてマサムネが感嘆の声を発した。

 

『成る程ネェ! それなら荒唐無稽な式にも説明が着くヨ! 魔法であって魔法でないは言い得て妙だネェ~ミスター・シゲオ!』

『うぅむ、確かに彼女の地頭はその場の誰よりも賢く、一を聞いたら十を覚えておった。五大属性以外の魔法を自力で習得しても不思議はない。じゃが…建造されて封印の要となるあの短い期間で、全ての属性魔法を頭に叩き込んだというのか。いやはや…何年か近くに居ただけでは、彼女の底は知れぬようだわい』

『ヴェイビー! 興味深い結果だネェ~。…ン~しかしこれ以上無駄話をしている余裕はなさそうだ、隣のユリウスがこちらを睨んでいるからネ! ぼくはそろそろデータ復元作業に戻らせてもらうヨ、グッドラック!』

 

 言いたいことだけ言って通信を切ったマサムネ、その場に残ったのは虚しくどうしようもない絶望感だった。

 

「ったく、好き放題言いやがって。しっかし…こっからだぜ。ヤツが無属性っつう絶対の力ぁ身に着けた以上…ここからどうなるのか、本当に予測がつかねぇ…っ!」

「っ…(翔鶴…っ!)」

 

 拓人は焦燥感に歪む顔と不安を秘めた眼で翔鶴を見つめる、割れた海の上空で睨み合う鬼神と天翼の希望。まるで天変地異の神話を垣間見ているような場面で、ニヤリと口角を上げ悪魔の微笑みを見せる深海金剛が、これ見よがしに手の平を突き出しながら口を開く。

 

『フッ、コレガ「無属性」。全テノ事象ヲ文字通リ無ニ帰ス属性デスカ、扱イハ難シイガ使イコナセレバ強力ナ"力"トナル、カ。…ッハ、土壇場デ形成逆転ミタイデスネェ。次ハドンナ手ヲ打ッテキマスカ? 何デアレ今ノ私ナラ全テ防ギキッテ見セマァス!』

 

 深海金剛の豪胆な物言いにも、翔鶴は眉一つ動かさず鬼神を見据えると、徐に腕の通信機を顔に近づける。ユリウスに現在のデータ収集率を聞き出そうとしているようだが、結果が分かっているのかその顔には曇りが広がっていた。

 

「…ユリウス? ダメで元々だけど、データはどれだけ集まったの?」

『──…っ、データは…「85%」だ。足りない…まだ、足りないんだ…こんな、馬鹿なことがあるものか! あれだけの猛攻を受けて、猶本気を隠しているだなんて…っ!?』

 

 ユリウスは凡そ信じられない結果に、差し迫った脅威に言葉が上手く紡げない様子だった。そんなユリウスに翔鶴は一喝する。

 

「しっかりしなさい! データは「85%も」集まったのでしょう? なら後はぶっつけ本番で行くしかないわ」

『しかし…君以外の艦娘たちはもう真面に戦えない、君も…こんなことハッキリと言いたくないんだが…』

「分かっている、私と彼女では──()()()()()。それは肌で感じているわ」

 

 翔鶴の言う「相性」とは、片や想いをエネルギーに変換、片や全属性使用可能という違いはあるものの、魔法を使用している時点で「ほぼ同じ戦法」を取らざるを得ない。

 魔法のぶつかり合いではどうしても「多様な攻撃手段」が勝ってしまう、翔鶴の一撃の全てを深海金剛は全属性を用いて防ぎ切っている、その上で「無属性」という逆転の一手を打たれた以上、次に待っている展開は…どう足掻いても「一方的な殺戮」しか思い浮かばなかった。

 

「それでもやるしかないのよ。ここで私が退いてしまったら…ダレがタクトたちを守れるの!?」

『っ! …それでも行くというんだね。解った…君にだけ重荷を背負わせはしない、私も残りの不足データを何かで補えないか、調べてみよう!!』

「えぇ、お願い。その間に私が──っ!?」

 

 翔鶴がユリウスとの通信を切ろうとする、その一瞬…ふと深海金剛の方へ眼を向けると、今まで遠目から見えていた彼の鬼神の姿が()()()()()。一体何処へ──

 

 ──そう周りに目を張り巡らせた翔鶴、その後方から…悍ましく寒気立つ「殺気」を感じた。

 

「──っ!!?」

 

『ハッハァ!! 油断シマシタネェッ!!』

 

 翔鶴の背後に現れた深海金剛は、そのまま勢いよく腕を伸ばす──その手が掴んだのは、翔鶴の「翼」。エーテル光子で形作られた蒼く輝く翼を…一瞬の間に弾き飛ばした。

 

「しまっ──きゃああっ!?」

 

 翼を捥ぎ取られた翔鶴はバランスを失いそのまま落下、右肩から海面に落ちては全身を捻り、落下の反動から自身を回転させながら身体を激しく打ち続けた。

 深海金剛が翔鶴から離れた位置に悠々と降り立つと、翔鶴は投げ捨てられたボロ雑巾のような体を震わせてうつ伏せの態勢から、上体を両腕を支えにして敵を見上げた。翔鶴の身体はずぶ濡れになり、海面に倒れ込んだ身体を起こすだけでやっとだった。

 

『コレデ逃ゲ場ハアリマセンヨ? マタ翼ヲ広ゲヨウモノナラ容赦ナク潰シマス、マァソウデナクトモ──貴女ノ顔ガ絶望ニ歪ムマデ嬲リ続ケマスガネ。サァ…覚悟ハ良イデスネ、翔鶴?』

 

 そう言い放ちながらニヤリと嗤う深海金剛、最早翔鶴にこの暴力に抗う術はない。──それでも、鶴が希望を喪うことは無かった。

 

「そう、どうぞご勝手に! 私がどうなっても…1%でも戦闘データが回収出来れば、それで構わないから!!」

『フン、イツマデソノ減ラズ口ガ言エルカ見物デェスネェ〜? デハ…行キマスヨ!!』

 

 深海金剛が宣言するや否や、闇炎に包まれた六つの骸骨頭を召喚、黒のオーラを煌々と燃え盛らせる巨大なしゃれこうべたちには、既に開けた口内に黒火球を装填されていた。

 

『全砲門たーげっと! 燃エ尽キナサァイ──Fire!!』

『オオォォ………!』

 

 深海金剛の号令の後、黒のしゃれこうべたちは更に口を大きく開くと──その力を解き放った。

 

 

 ──バッシャアアアンッ!!

 

 

 六つの黒炎砲弾が真っ直ぐ翔鶴にむかって着弾、余剰火力による巨大な水柱が建つ。この砲撃を真面に受ければ艦娘でもただでは済まないだろう…が。

 

 ──ブゥウウン…ドゴオオォォオンッ!!

 

『…ッ!? ッチ! 無駄ナ足掻キヲ…!』

 

 深海金剛に向けられた爆弾は、盛大に爆破しては鬼神の顔に傷を付ける。鬱陶しそうに視線を向けるその先に──距離を取り弓を構え、矢を番える翔鶴の姿があった。

 

「このぐらいの抵抗はさせてもらうわよ、何もしないでやられるなんで冗談じゃない! 1%でも…私は戦闘データを回収してみせる!!」

『ソレヲ無駄ト言ッテイル。…マァ良イデェス! 嬲ルト宣ッタノハ私デス、ジックリト…絶望ヲ叩キ込ンデアゲマショウ!』

 

 最期まで反抗の意思を見せる翔鶴に対し、深海金剛は間合いを詰めようと動き始める。

 敵を寄せ付けまいと翔鶴は弓を引き絞り蒼色の矢を放つと、それを魔導航空隊に変化させる…一直線に深海金剛に向かう蒼炎に包まれた戦闘機群は、高度を上げて鬼神の真上に着くとそこから魔導爆弾を振るうように落とした。

 

 ──コオォ……!

 

 光の粒は瞬時に周囲を凍てつかせる「吹雪」に転じて、深海金剛の足元を凍らせた。野分の時と同じ身動きを封じる算段かと、深海金剛は嘲笑を浮かべた顔で挑発しようとする。

 

『ハッ! 時間稼ギノツモリデスカァ? ソンナモノデ──ッ!?』

 

 深海金剛が凍った両足を野分戦時宜しく力づくで振り解くと、すかさず翔鶴側からニの手が上がる。新たな戦闘機群が敵目掛けて飛んで行く…攻勢を緩めない翔鶴に思わず動きが止まる深海金剛、だが…真に彼女を驚かせたのは──

 

 ──ゴオオッ!!

 

 魔導航空隊から放たれた魚雷が、燃え盛る紅の豪炎火球となり襲い掛かって来る光景。それ自体は深海金剛にとって取るに足らない攻撃であったが…違和感が沸き起こる。

 

『(足ヲ動ケナクシテカラ一撃ヲ加エル。マサカ──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()? イヤ…対消滅ヲ利用シタ策ヲ咄嗟ニ思イツクホドノ頭ノ回転ノ速サ、彼女ハソレヲ持ッテイル。ナラバコレハ──明ラカナ陽動(ブラフ)…!)』

 

 違和感が確信に変わった瞬間──それが確たるものとして深海金剛の前に掲示される、火球の流星が海面一帯に降り注ぐと…立ちどころに「霧」が視界を覆った。

 霧は冷たくなった海面(陸なら地面)に暖かな空気が流れ込むことで発生する、海面に氷塊を造り直ぐに火球をぶつけたことで急激な温度変化をやってのけた翔鶴は、霧に紛れてその姿を消した…!

 

『成ル程、コレガ狙イデスカ! シカシ…ソノ程度デ私ヲ討チ取レルト思エテイルナラ大間違イデェス!! コンナ霧ナド──吹キ飛バセバ良イダケノコト!! …ハァッ!

 

 白い濃霧に包まれる中、深海金剛は自身の周囲に風を巻き起こすと巨大な竜巻旋風を引き起こす。激しい気流が辺りに立ち込めた霧を吹き飛ばし視界を晴らしていく、やがて竜巻も収まると辺りは静寂に包まれ──

 

 ──そして気づく、()()()()()()…!

 

『何処ヘ消エタ…マサカ宙カ!?』

 

 深海金剛が急いで視点を上に移すも、そこには紅い空が広がっているのみで何処に視線を移そうとも翔鶴らしき影は影も形も無かった。

 

 ──だが、海面下から迫る青白い光が悠然と行方を知らせていた…!

 

『ッ! Shit…本当ニ型ニ入ラナイ…ッ!?』

 

 そう、翔鶴は空母型の艦娘であるにも関わらず水中に身を潜めていた。霧による目眩しで視界を防いだ後海中に潜り不意の一撃を加えようとしている、短時間で練ったであろう策は功を奏し、いよいよ深海金剛に着弾しようとしていた──

 

『──フン、馬鹿デスネェ? ソノ程度ノ付ケ焼刃デ…無属性ノ「理」ハ覆セナイ!!』

 

 だが、深海金剛の無敵の所以…全属性魔法の汎用の高さ、その真骨頂たる「無属性」の前にはどんな強力な魔法も無効化される運命。鬼神は海中から来る攻撃に対し、右手を掲げて無属性を発動させんと構えた。

 

 ──その一瞬、海中から大量の光の粒子が素早く飛び出したかと思うと、深海金剛は後背に違和感を感じる…何かが光を射しているのだ、直感した──翔鶴だ!

 

「油断したわね! 背中には無属性は向けられないでしょうっ!」

『ッ! 小娘ェ…!!』

 

 そう、翔鶴は海中に潜った深海金剛の後方へ後瞬間移動したのだ。何故海中から空中へ瞬(す)ぐさま移動が出来たのか? それは──自身を細胞レベルまで「エーテル光子」へ分解し、光速に動ける素粒子となり空中へ移動、翔鶴の「形」に再構築したのだ。

 今まで光の翼で宙を舞い、光速で動いた試しの無かった翔鶴。ぶっつけ本番の行動が結実し、見事鬼神の裏を掻くことに成功した!

 

『チョコマカト…本当ニ考エガ読メマセンネェ!』

「残念だったわね、私は貴女みたいに策を講じる頭はないから。臨機応変…なるように成る、よ!」

 

 翔鶴はそう言い切ると、構えた蒼光の弓から番えた矢を離す。

 深海金剛の正面海中から飛び出さんと迫る光の束、後方空中からは翔鶴の魔導航空隊。一方を防いだとしてももう一方の攻撃を躱すのは困難、挟み撃ちで挑む深海金剛戦は遂に大詰めを迎える。

 

 ──ドゴオォォオオンッ!!

 

 瞬光、視界を遮るほどの眩い閃光が深海金剛の前で炸裂すると爆風が翔鶴に襲い掛かる。翔鶴は片腕で目を抑えて迫る強風を凌ぐ…そして、目を開くと鬼神の様子を窺う。その胸の内には「これなら多少でも本気を出さざるを得ないだろう」という確信があった。

 

 だが──そこに拡がっていたのは、頭の隅に追いやった筈の理解出来ていた「絶望」…一縷の希望すら奪う光景だった。

 

「…ッ! そんな──()()()()!?」

 

 翔鶴の目の前に在ったのは、深海障壁を展開させて五体満足を見せる深海金剛の姿──その右手は深海障壁の内側に触れていた──であった。

 

『矢張リデスカ…コノ右手ニ宿ル無属性ハ魔法ナドノ有リ得ナイ現象ヲ無ニ返スモノ、逆ヲ言エバ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ナラバ…私ガ深海ニ堕シタカラコソ使エルコノ「障壁」、本来ナラバ貴女ノえーてる光子ヲ防グニハ至リマセンガ…無属性ヲ宿シタ右手ガ触レルコトデ、()()()()()()()()()()()()

 ツマリ──コノ深海障壁ハ前後左右縦横全テ、凡ユル角度カラノ魔法ヲ霧散スル、強力ナばりやート化シタヨウデスネェ! フゥム…コレハ使エル、興味深イデェス!』

 

 つまり、魔法などの不可思議を模倣したものを無力化する「無属性」であるが、魔法由来ではない深海棲艦独自の力である「深海障壁」は取り消すことは出来ず、それ故に内側から無属性を触れさせることで「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()」──という、翔鶴にとって都合の悪い出来過ぎた真実がそこにあった。勿論彼女は叫んだ──理不尽を。

 

「何で…何でよっ!? 無属性にそういう特性があることは私も知っている、でも… 全容が分からない無属性の特性を一か八かで試して、その通りに機能するなんて…有り得ない…っ! そんな…そんなの、出鱈目よっ!」

『デスガコレガ「事実」ナノデェス、翔鶴。ソレデモ私ハ「見事」ト賛辞ヲ送リマショウ! 貴女ノ持ツ能力ハ私ニ匹敵スル強サヲ秘メテイル、誇リナサイ…ダガ不幸ダッタノハ私ガ貴女ヲ「上回ッタ」、ソレダケノ話ナノデェス』

 

 翔鶴は完全に相手の不意を突いた筈だった、それは翔鶴の「勝負所」が魅せた業であった。それを軽々と越えて来た深海金剛は…天運を味方に付けている、そうとしか思えない翔鶴にとっての悪運の強さの持ち主だった。

 彼女は無属性の「応用」を示しただけ、とても本気を見せているとは思えない以上データ収集も見込めない、それは──翔鶴に「絶望」を垣間見せるに十分だった。

 

「…っぐ、何で…なんで、届かないのよ…っ!」

 

 翔鶴は希望になり切れない己の不甲斐なさと、データを1%も動かせない力不足への怒りに顔を歪ませ、歯を強く噛みしめた。

 それを見た深海金剛は──敵に塩を送る形で激励を言い放ち、嗤って見せる。

 

『フン、ヤット()()シマシタネェ? ダガ恥ジルコトハナイデショウ、貴女ハ私ニ対シ十二分ニ「力」ヲ見セタト言ッテ良イデショウ! 貴女ハ強イ…敗北ガ貴女ヲ更ニ押シ上ゲテクレルデショウ、マァ──私ハソノ機会ヲ与エルツモリハナイデスガネェ?

 

 そう最後に言ってのけると、深海金剛は跳躍して上空に居る翔鶴の背後に接近──抵抗することのない翔鶴の頭部を後ろから右手で掴むと、そのまま急降下し翔鶴を頭から海面に叩きつける。激しい水飛沫の上がる中、深海金剛に背中から頭を押さえつけられて海面に伏す翔鶴という、凡そ信じ難い光景が広がる。

 

「──そ、そんな…翔鶴まで…っ!」

 

 拓人はそう心の折れた言葉を零す、幾度となく立ち塞がった鬼神に対し果敢に立ち向かった拓人艦隊は──ここに()()の運命を辿ろうとしていた…!

 

『ハッハッハッハァ!! コレデ私ヲ阻ムものハ居ナイッ! 貴女タチモ非凡ナ強サデアッタコトハ認メマショウ…ダガ! 私ニハ勝テナカッタ!! 最強ハ…コノ私ナノデェスッ!!

 

「──っ、ち、くしょ……くっそおおおおおおおおおおおっ!!

 

 自分に言い聞かせるように宣う深海金剛の勝利宣言、対し翔鶴は完全敗北を認める慟哭を叫ぶ。それに満足したのか鬼神は更に高らかに嗤った。

 

『ハーーーッハッハッハァ! 良~イ声デ喚キマスネェ? デハ──最強デアル「証」ヲ立テマショウ! 敗者ニハ「死」ヲ…貴女ヲ殺ッタラ次ハ貴女ノ司令塔ト死ニゾコナイドモヲ、貴女ノ元ニ送リマショウ! 安心シテ沈ミナサァイ!!』

 

 深海金剛はそう言うと早く、後方に闇炎の髑髏頭を召喚。翔鶴を完全に滅すために最大火力を叩きこもうとしていた…!

 

「やめろ──止めろおおおおおおおおぉっ!!」

 

 拓人は叫んだ、叶うことのない懇願をただただ叫んだ。しかしてそれは──虚空に響いて搔き消されていった。

 

『コレデ──終ワリデェス!!』

 

 深海金剛の艤装である髑髏頭から、闇炎の砲撃が放たれようとしていた。

 

 ()()()()()──最早この状況を覆せるモノは、ダレヒトリとして居ない……──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──ドゴオォォオオンッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──…なっ!?」

「あ、有り得ねー…どっから出て来たんだい!?」

「あ…あの御方は!?」

『まさか…!?』

「…っ! ぁあ…どうして? 貴女が此処に…居るはず…でも、ありがとう…!」

 

 拓人たちはダレも予想し得ない光景を目の当たりにしていた、それは──深海金剛の砲撃に待ったを掛ける()()()()()が、深海金剛と彼女の艤装に直撃し…吹き飛ばされた深海金剛と翔鶴の間を割って現れた、歴戦の弓士の姿だった──

 

『何ィ、マダ戦力ガ──ッ! 貴女ハ…?』

 

「──本当に、化け物になってしまったのですね。魔性に取り憑かれるなど最強の名が聞いて呆れます、全く──頭に来ました

 

 深海金剛はその姿を見るなり、思考を放棄したような面持ちになり固まっていた。

 

 翔鶴を庇うように彼女の前に躍り出たのは──選ばれし艦娘がヒトリ「加賀」であった…!




〇無属性

 全19種ある属性魔法、その20番目に位置する幻の属性となる無属性。これは平たく言えば「世界の理」そのもので、全ての概念の根源とされている「無」に属性魔法により造られた「その場には有り得ない自然現象及び概念」を返還する…それ等を操ることを前提とした魔法魔術にとってこれ以上ない天敵だね?
 そんな無属性の欠点を挙げるとすれば、その場に在ると確証されている事象…体内から溢れ出る人由来の精神エネルギー(気など)は取り消したり返還されることは無い。本編で描写された「深海障壁は無属性によって消されない」はこれに該当すると振り分けられたようだ。
 人や個人から発せられた力を取り消すことは出来ないということだが、反面魔法魔術には無類の強さを誇る。翔鶴はその隙を突かれた形となるね…相性による敗北、結果は残念だったがまだ勝負は終わって居ないよ?

 拓人君たちにとって最後の救いたる選ばれし艦娘…加賀が深海金剛の前に立ち塞がった。さぁお待ちかねだよ諸君、彼女たちがどのような戦いを繰り広げるのか…楽しみに待っていようじゃないか?

 ──ん? 今の加賀で深海金剛に勝てる筈ないと? フフ…それはどうかな? ここだけの話だが──加賀にはまだ「奥の手」が隠されている、と言ったら?
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