艦これすとーりーず ―僕が異世界版艦これの提督になった件について―   作:謎のks

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 さぁいよいよ佳境になって参りました! 自分で言うのも何ですがとうとうここまで来たかって感じです!!
 ここから駆け足気味で書いていきますが、私も展開に抜かりが無いか心配なので誤字脱字、もしくはこの場面が妙に分からない! などありましたらご一報のほどをお願いします。ちょっと興奮して手を滑らせそうなので・・・;
 では…参りましょうか!


約束の炎は灯り──④

 ──鎮守府連合医療エリア、モニタールーム

 

「──映像ロストしました、これより復旧作業入ります!」

「何て凄まじい力のぶつかり合いだ…艦娘は本当に人智ってのを軽く超えていきやがる!」

 

 モニタールームに緊張の糸が走る。

 深海金剛と加賀の戦いは、海を割り地を削る神々の戦いとなり遂にはST・MTシステムに障害を起こし、映像の映らないモニターにはざあざあと音を立てる灰色の砂嵐が流れているだけだった。

 

「復旧までどれくらいかかる?」

「術式がボロボロになっていますので、一から作り直す必要があります! 大体2〜30分はかかるかと…」

「すまんが10〜15分で頼めるか? 無理を言っているのは承知じゃが…どうかな」

「了解! 元より5分で仕上げる気合いです! 正直私もこの戦いが気になっていますので!!」

「ほっほ! そいつは頼もしいのぉ!!」

 

 シゲオの問いかけに威勢の良い返答を聞かせる作業員、集中して顔こそ向かないが、言いながら両手は機材の入力コ―ドを高速タイピングを見せていた。作業員の横では他の職員がサポートに回り、作業員から指示を受けては忙しなく機材周りを調べているのが見えた。

 作業員たちが慌ただしく動く中、シゲオとマユミはこれからどうなっていくのかを話し合う。

 

「シゲさん、これからどうなると思う? ここで加賀さんが万が一負けちゃったら…!?」

「これ、滅多なことを言うでない。加賀に失礼じゃろう…加賀も、タクトたちも、こうしとる間に決死の覚悟で事に当たっておる。大丈夫じゃ…皆を信じなさい?」

「う、うん。ごめんね…だって戦闘データも大分集まったけど、これ以上入るのかなって…タクトたちがあれだけやって全然だもの」

「言いたいことは分かるがのぉ、実際どうなのか──ユリウス、そっちはどうかね?」

 

 シゲオが映写型通信機で特別治療室でエリの治療に当たっているユリウスに呼び掛ける、しかし──返って来たのはぶつぶつと何かを呟くユリウスの小声であった。

 

「…? ユリウス、どうした? まさか何か異常事態が…!?」

「えぇっ!?」

『──静かに! …バイタルサイン良好、MFS(メンタル・フージョン・システム)接続完了、戦闘データ記憶プログラム構築終了、後は…マサムネ!』

『任せてヨヴェイビー! MFSと記憶プログラムの伝送路チェック、記憶プログラムの転送テスト、MFSの「A値、M値、Z値」表記確認、全て終わってるサ! 戦闘データは…98%! まだまだ伸びるヨー!』

『良しっ! 流石は選ばれし艦娘加賀、深海金剛も実力の出し惜しみは出来なかった! 彼女の本気の瞬間を捉えた…このデータなら!!』

 

 通信機から零れる二人の会話から、戦闘データに関する心配は皆無となったことが伺える。それを聞いて息を吞んで驚くマユミを、シゲオは制止させながら通信機の向こう側のユリウスに語り続ける。

 

「ユリウス! 何となくどうなったか分かるが発言を求める、戦闘データは…金剛は!?」

『もうじきです! もうすぐ…99%を切った?!』

「し、シゲさん…!」

「っ! 行けぇい!! いってしまええええぇっ!!」

『盛り上がっているネェ! では…カウントダウンいくヨ! 5秒前、4、3、2──1!』

 

──データ回収率100%到達! ボディシンクロ──開始っ!!

 

 ──ブゥン! コオオォ…!!

 

 多くの犠牲を払いながらも、遂に辿り着いた「理想への踏み出し」。

 深海金剛との直接対決という一歩間違えれば轟沈確定の死線を潜り抜け、動き出した機械の駆動音に湧き上がる喜悦を隠せない一同。だが──問題はここから、これからの工程についてユリウスが語り始める。

 

『ボディシンクロが始まりました! 集めた戦闘データを記憶プログラムに移行してからMFSへ転送します、これによりエリ君に足りない金剛の精神の欠片を新たに書き込みます!』

「よぉし! ここまで来たら後は一直線じゃ! やってやれぃ!!」

「ま、待って! エリちゃんの手術ってこれからどのくらいかかりそう? 早くしないとタクトたちが…!?」

『今から説明するよマユミ君! MFSは過去の記憶を表すA値、現在の精神の状態を表すM値、未来への感情の起伏を表すZ値を最高値に満たす必要がある、これらが全て上限に達すればエリ君と金剛の精神が完全に同化したということになる! 時間は──M値の破損は軽微だが、それ以外…特にA値が酷い、現在10%とほぼ消えかけている! A値を最優先で修復するとしても数時間はかかる!』

「そ、そんな…加賀さんがどうなっているか分からないし、深海金剛も絶対まだ立ち上がって来るだろうし、タクトたちも満身創痍なのにそれまで持ち堪えられる…!?」

「落ち着け! 他の選ばれし艦娘も向かっておる!! それまで──…ん? 通信か?」

 

 ユリウスの現実をぶつけるもどかしい言葉に困惑するマユミ、シゲオの元に一報が入る。シゲオは映写型通信機のダイヤルを回して映像を開く、映し出されたのは──長門であった。

 

『総帥閣下! 緊急の通信で失礼! ご報告があります!!』

「長門か! 良くやってくれた! お前たちが加賀を説得したおかげで今しがたエリの手術が始まった!! 加賀が居らんかったら戦闘データは回収出来なんだ、本当によく──」

 

『──申し訳ない、現在戦闘中故手短に伝えます! 我々はサイハテ海域の最奥を目指し道程を往っておりますが、多数の姫級及びイロハ深海艦隊に道を阻まれております。タクト君たちの元へ参じるのは今しばらくかかるかと!』

 

「な…なんじゃと!?」

「そんな…加賀さんはタクトのとこへ辿り着けたのに?!」

「単艦特攻と艦隊の違いじゃ、艦隊を組んでおると遠目からでも目立ってしまう上、戦闘でもどうしても複数艦の息を合わせなければならん! 加賀はおそらくじゃが「極力戦闘は避けて」道中を駆け抜けたのじゃろう。これは…不味いのう、もし先ほどの戦いで加賀が重症を受けてしもうたら…!?」

「タクトたちだけで数時間持たせないといけないってこと!? 加賀さんを守りながら、自分たちもボロボロなのに…!!?」

 

 最悪の展開が眼前に広がる、あの深海金剛を前に精疲力尽(せいひりきじん)と成ったタクトたちだけで戦い抜かなければならない状況…マユミはシゲオの通信機から長門に何とかならないかと懇願する。

 

「長門さん、早くタクトたちのとこへ行ってあげて! 今加賀さんが深海金剛と戦っていて、このままじゃどうなるか…!?」

『此方もそうしてやりたいのは山々だが、敵の数が多い! 空母クラスの艦娘が居れば話は早いが…今は4隻の水上艦で道をこじ開けている最中、負けはしないがどうしても時間が──(ズドオォオンッ!!)』

 

 通信の途中で鳴り響く轟音が、長門との通信を強引に終わらせてしまう。長門は敵の爆弾砲撃を受けたのだ…!

 

「…!? 長門さん、長門さん?!」

「落ち着けマユミちゃん、長門は敵の砲撃ごときで簡単に沈みやせん! それより…弱ったのぉ、ここに来て問題が多数発生とは…分かり切っていたことだが、同時に重なるとは」

「どうしよう…シゲさん!?」

 

 現状を整理すると、エリと同化した金剛の精神を治療する準備は整った。だが治療完了には数時間かかること、そして加賀以外の選ばれし艦娘たちの到着が遅れること。それ故に拓人たちだけで深海金剛を相手取らなければならないが、先の戦いで消耗した状態でどこまで保てるか分からない。つまり──光明(きぼう)の先に見えた暗闇(ぜつぼう)、運命がその先には行かせまいと、まるで足首に手を掴んで離さないでいるようだ。

 

「──ST・MTシステム復旧完了しました! 映像入ります!!」

 

 だが考える間もなく事態は尚も駆け巡る、システム復旧を告げる作業員と、その横で疲れ果てた様子で椅子に全身をもたれる数人の作業員の姿を見て、マユミとシゲオはその先に待つ絶望(くらやみ)を脳裏で視ながらも、希望(きせき)を信じてモニター前に再び見やる。

 

「今は…見守るしかあるまい! だが…ここまで来れただけ信じられん幸運なのだ、何かあった時は…腹を括るのだぞ」

「…っ(タクト…皆…っ!)」

 

 モニター画面の砂嵐に色彩が映り始める、彼らが観るのは破滅か、それとも──

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 ──サイハテ海域、海底

 

 絶対勝利の鬼神たる深海金剛、そして人類守護の女傑加賀の決戦は天を衝いて絶頂を迎えた。

 双方が繰り出した必殺は巨大なエネルギー奔流を生み出し、海底の底に更なる穴を開け迫っていた海の壁をも押し退けてしまう。彼方で滝のように流れる海水とその瀑声、中心が窪んで黒く焼け焦げた大地、そして蒸発した海水が視界を塞ぐ濃霧を生み出している。たった二隻(ふたり)の戦士の激発がここまで戦場の風景を変えてしまった…!

 

 ──そんな緊迫する戦況の最中、濃霧の中から一つの影が蠢く。それは紛れもなく──深海金剛、まだ緑炎は身体に燃え盛ったいるものの五体満足の状態であった。

 連戦無敗の鬼神は遂に不敗を貫いた。同時に人類にとって「絶望」の瞬間であった…!

 

『ハァ…ハァ…ハァッ! 何処ダ…マダ油断出来ナイ!』

 

 肩から息を荒く吐き出しながら、深海金剛は注意深く周囲を見回す。

 自身をここまで追い込んだ史上最大の敵…加賀、彼女が付与した緑炎は未だ消えてはいない。能力の解除条件として術者が気絶又は絶命すればその場で解除されるもの、つまり()()()()()()()()()()()()()のだ、濃霧のせいで視界不良となったこの状況…必ず何か仕掛けて来る。そう確信して辺りを血眼で探しては敵の出方を窺う…!

 

 

 

 

 

 ──ピシュ

 

 

 

 

 

『…ッ! 来ルカ!?』

 

 遠くから細く小さく聞こえた何かが空気を切り裂く音、それは間違いなく…()()()()()()! 深海金剛は矢を叩き落とすために咄嗟に構えを取る。…しかし。

 

『…? 何…?』

 

 濃霧から突き出た矢は深海金剛の横を通り過ぎ、そのまま音もなく消えていった。

 濃霧だから視界が見えずに狙いを外した、とは()()()()()()()()()()()()()にあるとはとても思えなかった。どういうことかと矢が飛んできた方向へ目を凝らす、少しして霧が散っていくと…その全容が明らかになると同時に、深海金剛は喜悦に浸ることとなる。

 

「──…っ」

 

 何と、加賀の左足が「炭」と化していた

 それでも一矢報いようとしたのか、左膝を支えに右足で重心を据え、立ち上がり様で大弓を構えては鬼神を睨む。顔は痛みに耐えかねるように苦い表情を湛えている。

 体中に血が滴り落ち、服装も大弓も艤装も所々焼け焦げてボロボロとなっている、正に──満身創痍、全力の討ち合いによって加賀は力負けしてしまったのだ…!

 

『──…クッ! ククククク…ハハッ、ハハハッハハハハッハハハハハハッ! アァーッハッハッハッハァッ!!』

 

 勝利…深海金剛の脳裏に思わずそんな言葉が浮かんだ。

 自身の勝利を渡さぬと、拓人艦隊と激闘を繰り広げた深海金剛。彼らとの戦いに限りが見えたかと思った矢先に挑んで来たのが加賀、その一線を画す圧倒的な実力と自身との相性の差、それを埋めるために躊躇いなく全力を出した甲斐があった。そう…漸く手に美酒を掴み余韻に浸ることが出来る、もう自分を止められるモノは居ない筈だ、それ故の「驕り」と高笑いなのだ…!

 

『無様…オット失礼、全力ヲ出シタ相手ニハ敬意ヲ表サネバ! ココマデ追イ込マレルトハ思ッテモミナカッタ、加賀…貴女ハ私ヲ十二分ニ愉シマセテクレタ! ダカラ…オ前ハヒト思イニこころヲ砕イテクレル!! 胸ヲ抉リ艦鉱石(しんのぞう)を破壊スレバ、私ノ勝利ハモ~ゥ揺ルガナイ! ダガ…ココマデ来テ恨ミ節モ言ワズ消サレルノモ辛イデショウ? 時間ヲアゲマショウ…泣キ叫ブノカ呪イヲ吐クノカ、貴女ハドチラナノカ…ソレトモ意表ヲ突イテ許シヲ乞ウテミマスカァ~?! ハハハハハッ!!』

 

 確定した未来に対する余裕か、加賀に自身に怒髪を向けるか伏し拝んで嘆願する猶予を与える深海金剛。鬼が嗤い見世物を待つ中…万事休すの英傑はどう打って出るのか?

 

「──…フ、フフ…フフフ!」

 

 その答えは──弓の構えを解いて力無く笑う姿、慟哭も流涙もない…疲れが出た、そう見受けられる様相の加賀。

 

『敗北ヲ認メテ笑ウシカナイヨウデスネェ? ドウアレオ前ハモウ助カラ──…ン!?』

 

 加賀の変わり果てた姿に失笑していた深海金剛。だが──()()()()()()()、そう気づいて加賀の()()()()()()()()()()()を見やる。

 あれだけ全力の戦いをやってのけたので、当然衣装や艤装同様甲板もボロボロ…の筈が、何故か「()()()()()()()」であり、細部も通常見かける空母の飛行甲板とものと違っていた。注意深く見なければ気付かない「変化」に、()()()()()()()()()()()…土壇場でのやらかしを悟り見る見るうちに青ざめる深海金剛。

 形態換装は翔鶴ので見慣れていて()()()()()()()()()()()()()、装飾や武装に僅かな変化はあれど一見すると違いも分からない、霧で視界が覆われていつの間にか換装していると気付かなかった、など──()()()()の原因は多く見受けられるが、一番の要因は間違いなく深海金剛自身の「焦燥感」によるものだろう。

 

 加賀は──()()()()()()()()()()

 

『マサカ──!?』

「結局…私では貴女には勝てなかった、数十年のブランクを物ともせず私を追い抜いてしまう…それでこそですが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

『貴様ァ…濃霧ニ紛レテ放ッタアノ「矢」ニ、何カ細工シタナ!?』

「そうですとも…私は言わば「老兵」、今のこの世界を護るのは「彼ら」の役割! それでも貴女を止めるため願わくばと張り切りましたが…まぁ、あれだけ暴れたのですから相応の成果を期待しておきましょうか?」

『ドコマデモ私ヲ愚弄シテクレテ…ソンナニ死ニ急ギマスカッ!!

 

 ──ゴオォッ!!

 

 加賀の「してやったり」のニヤリと歪めた口元を見て、一瞬で頭に血が上り怒りの限界を迎える深海金剛。その身を包む緑炎の上から黒炎を纏うと殺意を放ちながら、怒りを足に乗せ踏み付けながら進んで行く。

 重い足音が加賀に近づいて来る…緑炎に体力が奪われようと知ったことではないと、轟々と憤怒を燃え上がらせ「シ」が来たる、だが加賀は左足が動かせる状態にない。絶体絶命か──だと言うのに何故か涼しい表情を崩さない加賀は、先ほどの「矢」について種明かししていく。

 

「もう気付いていると思いますが、この形態は()()()()()()()()()。名付けるとすれば…紅炎操るは「改二」、緑炎操るは「改二戊」、そしてこの姿こそ──「改二護」。蒼炎を操る第三の派生改装です」

『モウイイ…喋ルナ、ソノ生意気ナ口ヲ聞コエナクシテクレル』

「いいえ黙りません。何故ならこれは「忠告」だから! 先ほどから見事に術中に嵌まってくれたようで…()()()()()()()()()()()()?」

 

『──…ッ!?』

 

 加賀の言葉に何か引っかかりを覚えた深海金剛、まさか…と驚きながら振り返ると、そこには──()()()()()()()()()()()()()()()()()形姿(なりかたち)が…!?

 

「──ハァッ!」

『何、ゥォオッ!?』

 

 天龍の振るう剣先を間一髪で躱して距離を取る深海金剛、混乱する頭を冷やすため辺りを見回すと…天龍は勿論、翔鶴、綾波、望月、野分らが()()()()()()()()()()()()()()それぞれの得物──綾波は斧紛失のためニ連装砲──を構えて臨戦態勢、そして加賀の下には彼女を護るために彼女の前に立ち上がる我らが拓人の勇姿が…!

 

「遅れてすみません、加賀さん!」

「大丈夫です、グッドタイミングですよタクト君」

『嘘ダ…何故艦娘ドモガぴんぴんシテイル!? 私ガソレゾレ致命傷ヲ与エタ筈…?!!』

 

「簡単な話です、改二護の蒼炎には「他者の傷や疲れ、致命傷を()()()()()()()()()()()」効力がある。戦闘向きではない支援向けの能力ですが…上手く事が運んでくれて良かった、最後の一矢のフリをしてタクト君たちへ救援に向かわせる、なんて…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ここに来て加賀の逆転の一手(ファインプレー)、極限の戦いを逆手に取り、目聡い深海金剛の一瞬の隙を突いて拓人艦隊の救援に成功した! 傷が癒えた拓人たちは急いで加賀の下へ馳せ参じたということであろう。

 

「いやぁビックリしたぜ~? ()()()()()()()()()がこっち来やがると思ったら、いきなり青白い火ぃ落としてくんだものなぁ」

「敵の爆撃かと思い警戒しましたが…司令官が待ったを掛けて様子を窺うを仰った時は、流石に肝が冷えましたね」

「タクトのことだから考えがあるんだとは思ったけどね? それがここまで好転するとは思いつかないわよ」

『ウィ、蒼炎に見舞われたボクらの身体は、まるで暖かな暖炉の熱気に包まれるような心地となり、気が付いたら…今までの戦いで受けた傷が治っていただなどと! 未だに信じられません!!』

「ふ…これも特異点の力か、なぁタクト?」

 

「違うよ。僕にはもう運命を動かす力は残されていない、これは──皆で掴んだ、千載一遇の好機だよ!」

 

 加賀の隠し玉である「改二護」の能力により体力や怪我を全回復することに成功した拓人たち、対する深海金剛は、未だに緑炎を纏ったままなので体力は奪われ続け、それを五行廻輪で治すことも無属性で消し飛ばすことも出来ない。つまり──形勢逆転、都合の良い展開が続いたまぐれのように思えるが、実際そうではないと補足する。

 

 何故なら! 拓人たちは今まで絶望という底無しの大穴の上を綱渡りで歩くような、誰もが恐怖してたじろぐ状況を見事やり切った! だからこその「結果」…特異点の運命誘引力で軽々と手に入った結果を、遠回りに、慎重に、そして着実に、手順を一つずつこなしてやっと手に獲ることが出来た! だからこそ──拓人と仲間たちはこの結果を胸に抱き寄せ、喜びを分かち合えるのだ!!

 

 ──絶望(くらやみ)の中に確りと希望(きせき)の灯火は点いた、後は…光の先に見える理想へ駆け抜けるのみ!

 

『──認メナイ、コンナ結果ナゾ! 唯ノ偶然ニ過ギナイ!! 最強ハァッ、コノ私ダアアアアアアアアァッ!!』

 

 それでも深海金剛は決して諦めない、全身の黒炎を全開で燃え盛らせると…それに呼応して地面の至る所から「黒い穴」が現れ、それらから不気味な人型黒色の化け物の大群が這い出てきた。

 

『…ァ…ガ…ギァ!』

 

『コレデ数ハ私ノ方ガ上! ソチラノ方ガ特記戦力ガ揃ッテイルノハ認メマスガ、闇ノ彼方ニ閉ジ込メテシマエバ、ドウ足掻コウト無駄ナ抵抗ヨ! 光ノ届カナイ深海ヘ──送ッテクレル!!』

 

「ヒッ! 闇属性の高等捕縛魔法かい? あの影に捕まったら暗闇の檻にご招待…なんだけどねぇ、無尽蔵の魔力だからって何体も影使役してよぉ、相当追い込まれてるねぇ? どー見ても真面に操作出来る状態じゃねぇ、単調な動きしか出来ねーだろうぜ!」

「油断しては駄目よ望月、此方も()()()()()()()()()()()()()()()()下手に動くことは出来ないわ。因みに…ぅ、っ! 改二護の能力には、多大な魔力を浪費してしまうの、おいそれと使うことは…少なくとも、この戦いでもう一度行使することは不可能、ね…!」

「だ、大丈夫ですか加賀さん? ふらついてます…?」

「全力を出し切った後に改二護の能力行使、流石に堪えるわ。…ごめんなさいね、足が負傷してさえ居なければ、ここから脱出も出来たでしょうに」

「いいえ。貴女が居なければここまで来ることはなかった! 本当に…ありがとうございます加賀さん!!」

「…ふふっ、そう言ってくれると死ぬ気でやった甲斐がありますね。聞いてタクト君…ユリウスが言うにはエリの手術には相応の時間が掛かるみたいなの、あれだけ派手に戦ったのだからおそらくもう始まっていると思うのですが…その間にあの分からず屋を足止めする必要がある、長門たちがもうじき到着する筈ですので、先ずはそれまで持ち堪えましょう! 手術が完了次第一旦この場を離れる算段を、お願いしますね…!」

 

「──了解! 皆! ここが正念場だ…エリのために、勝つよ!!」

 

 

 

 

 

「──応っ!!」

 

 

 

 

 

 拓人の声に一斉に答える艦娘たち、それを睨み拓人艦隊の勝利を阻む鬼神たる深海金剛。

 

 ──此処に、未来の命運を賭けた「世紀の一戦」が幕を開ける…!

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 ──そう、それが貴方の選択なんだね? 拓人。

 

 選択が行動を、行動が結果を生んだ。貴方たちは…望む未来のため、本当によく頑張ったんだね? それが…夜明けの道に繋がると信じて。

 

 …艦娘(かのじょ)たちの愛に報いる…貴方が言ったんだよ。

 

 だったら、私も──

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