艦これすとーりーず ―僕が異世界版艦これの提督になった件について―   作:謎のks

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目覚めよ、その魂! (それっぽい言い方)

「………」

『gruuuuuu………』

 

 金剛対、謎の怪物「スキュラ」の戦いは平行線のままであった。何故か? 答えは単純。金剛が「ヒットアンドアウェイ」に徹していたから。

 

『Voooooo!!!』

 

 雷電迸る五つの鉄鞭をしならせ、スキュラは金剛を捉えられる絶妙な間合いから攻撃を仕掛けた。しかし…?

 

「……!」

 

 攻撃を当てた瞬間、まるで陽炎を見ていたように金剛の輪郭がぼやけ、かと思えばスキュラの死角から艦砲射撃をぶちかます。これまた絶妙な間合いからの射撃は、致命傷こそないもののスキュラには衝撃的だった。

 

『……gruuuu』

 

 自身の攻撃を避け、更に反撃に転じる様を、怪物は視認出来ずにいた。サーモグラフィー装置に支障なし、ロックオンシステムも正常…見逃すはずはない「しかして」見逃したのだ。

 

「…どうしまシタ? さっきの電気ムチを当ててから、ワタシに一発も喰らわせていないデハないデスか?」

『……!!』

「所詮はただの殺戮機械…この程度でしたり顔とは、笑わせるネ?」

 

 先ほどとはまるで別人のような嘲笑をする金剛、おそらく実力の十分の一も出していないことが窺えた。故に怪物は理解した…計算では測れないこの女は「危険」だと。

 そして金剛のこの変わりようは、果たして何を意味するのか…現時点では解明は不可能であった、しかし。

 

 

 ──待たれよ!

 

 

「…!?」

 

 しかして状況は、刻一刻と変化しつつあった。

 

「ノワッキー…?」

 

 まるで不敵な表情となっていた金剛は、仲間の野分を認識した瞬間に元の穏やかな顔となった。

 野分はスキュラの前に立つと、その滑舌と雄弁を活かし自身の欲望を語る。

 

「我が名は野分、又の名をノワツスキー。我が使命はこの美貌の輝きを高め、存分に堪能してもらうこと。そう、美しさは罪であると同時に、人々を魅了する癒しでもある。ボクは世界中の人々にこの光輝(しあわせ)を届けたい! それこそが! 天がボクに与えた試練であると信じている! ボクは万民を照らす太陽であり、夜空を瞬く星であり、澄み渡る蒼海であると! さぁ、醜き孤狼よ! キミはボクに何を感じる? その醜悪な瞳は、果たして血まみれの獲物を映す、そんな哀しいだけのモノではないはずだ! 君の中にある清き魂に、ボクのきらめきが届いてくれると嬉しい!!」

 

 野分は長々と思いを綴る、オーバージェスチャーと相まって彼女を中心とした、独特の世界観の表現に成功している…つまるところ。

 

『Voooooooo!!!』

 

 異形の狩人に標的変更(ターゲッティング)されるには申し分なかった。

 

「さぁ来たまえ! 共に美しさを高めようじゃないか!」

 

 野分は変わらず顔をキラキラさせながら、スキュラを呼び寄せる、スキュラはそれに掛かる形で野分を追いかける。

 

「…えぇ」

 

 金剛は「開いた口が塞がらない」と言わんばかりに顎が自然に全開になった…。

 

 

 

 

・・・・・

 

「…来た!」

 

 野分の誘導により、あの狼の化け物は僕らの前に姿を見せる。

 えっと、確か首の下だっけ? 走ってるだけでチラチラとそれらしい球体が見え隠れしてるけど、中々難しい位置だなぁ…遠吠えの瞬間を突けばなんとか行けそうな感じだけど、それでも一瞬、一回限りだろう。

 

「コマンダン! この野分、任務を完了いたしました!」

「あ、ありがとう…まさか本当に成功するなんて」

「…さて、ここからどう動く?」

「とにかく動きを封じるんだよ!」

 

 望月が叫ぶと、すぐさま全員戦闘態勢に入る、先ずは試しに翔鶴の例の足止めでいってみよう!

 

「あの大きさでは無理があると思いますが?」

「そんな嫌そうにしないでよ…」

「無駄なことをしたくないだけです」

「…提督命令」

「なんですかそれ? …はぁ、分かりましたよ」

 

 ため息をつきながら翔鶴は艦載機発艦準備する。天龍が耳打ち。

 

「お前、いつの間にアイツと仲良くなった?」

「いやぁ色々あって?」

「…大した奴だ」

 

 天龍がひどく冷たい流し目で僕を見ていた、それ褒めてないよね? このタラシが! とか言ってない? 養豚場のブタを見る目だよ?

 翔鶴が航空隊を発艦させ、航空隊から魔導爆弾が投下される。まずスキュラの足元に冷気魔導弾、巨大な狼を中心に氷の枷が海面に広がる。

 

「…っふ!」

 

 続いて、第二次航空隊による爆撃。今度は…。

 

『(バチバチッ!!)Voooooooo!?』

 

 電気だ! 電気魔導弾によって怪物の周りに稲妻が走る。ショートさせようとしてるってこと? なる(納得)。身動きが取れない状態であんなの食らわされたら流石に怯んだでしょ!! と息巻いていた矢先。

 

『Vooooooo!!!』

 

 ただの遠吠え一つで、氷が割れ稲光が掻き消えた。気合いで吹き飛ばすアレだね? 衝撃が空間を伝わり、突風となって吹きつける。

 

「うわぁ」

「だから言ったじゃないですか」

「いんや耳なが! いいとこ突くぜホント、首がガラ空きだ! やれ天龍!」

 

 天龍はすでに走り出しており、彼女の斬撃の範囲内に入った瞬間、二振りの刀をバツの字に切り裂いた…!

 

『…! Vooooooo!!!』

 

 すると、スキュラのたてがみの部分から五つの鉄鞭が!? いやそんなのアリ!!? 天龍の斬撃を無惨に相殺した。

 

「…綾波!」

 

 天龍が声を上げ合図を送ると、スキュラの死角からタイミングよく綾波が突撃する。了承、と呟くと同時に自慢の大斧が振り下ろされた…のだが。

 

『Gruaaaaaa!!!』

 

 えっっ!? 綾波に向けて口から「レーザー光線」!? 今更だけどもう何でもアリだな。

 

「…っく!」

 

 掠ったみたいだけど、なんとか避けた綾波は小さく呻くとスキュラとの距離を取る。まさかの事態に僕は慌ててしまう!?

 

「あ、綾波大丈夫!!?」

「…軽傷。戦闘行動に支障なし」

 

 ほっよかった、大丈夫らしい。くっそーよくも僕の艦娘を! こうなったら…特典の力、あの超速の勢いをつけたタックルをお見舞いしてやる!!

 

「拓人さん、いけません!」

「止めないで妖精さん! ここでやらなきゃ提督がすたる!!」

 

「そうではなくて、あのスピードは助走をつけないと出せませんよぉ?」

 

「…え、つまりこっからタックルしても駄目ってこと!? どのくらいならいいの?」

「ここからずーーーっと遠くに離れて、そこから走らなければ何ともなりません〜」

「…えぇ」

「え、マジか。大将アンタホント使えねーな?」

「ぐっさぁ!!?」

「本当のことは、あまり言わないであげて下さい〜?」

「…うぅ、悪かったな役立たずで!」

 

 僕らがあれこれやりとりしていると、スキュラの追撃。

 

『…Vooooooo!!』

 

 スキュラの鉄鞭…あ、これ電気流れてない? 電気ムチとかとんだSMプレイ! なんて思ってたら。

 

「(バチィ!)痛ぁ!!?」

「あぁ!?」

 

 僕をはじめ艦娘たちも電気ムチの餌食に…ムチの迸る電流により艦娘たちの柔肌が……晒され………。

 

「拓人さん? こんな時になに考えてるんですか?」

「!? シッーー!! 童貞にアレは毒だよ…」

「…っち。不味いな? このままいけば全員沈むぞ?」

 

 スキュラはまるで嗤うように歯を見せつけながら呻く。囮もダメだった、電気ムチにまさかのゲロビーム。対海魔殲滅兵器は伊達じゃないってことか。

 

「拓人さん、ピンチ!」

「妖精さん人ごとすぎィ!!」

「ここまでか…」

 

 僕らが一巻の終わりを悟った…その時。

 

「ウェーーーィト!!」

 

 どこからともなく降り注ぐ砲撃…これは!

 

「金剛!」

「テートク! 皆! ……っ!?」

 

 僕らの下に駆けつけた金剛。彼女は青ざめた表情で僕らを見ていた。

 

「これは…」

「金剛ー! 君だけでも逃げてー!!」

「姐さん! コイツは強敵だ! 加賀に連絡してくれー! 連合から応援が来るはずだー! それまではなんとかアタシらだけで!!」

「………」

「…金剛?」

 

 金剛は俯き、歯を噛み殺していた。噴火寸前の怒りを抑え込むので精いっぱいって感じだ。

 

「…さない」

「え?」

 

 

「──許 さ な い !

 

 

 金剛が怒りに猛ると、空間が震える…そして、姿こそ金剛のままだが、雰囲気が”変わった”…!

 

『…!?』

 

 スキュラが彼女の変容を察知したのか、子犬のように怯えたじろいだ。何が起きたんだ…?

 

「──ふぅん? そうデスか? そうなりますカ?」

 

 不敵に笑いながら、金剛はスキュラを見据える。威圧感が半端ない、息が苦しい、立っているだけで意識が飛びそうだ。でも金剛が心配だ、彼女の変化を見逃すわけには…!

 

「オォオウケェェェェエイ! いいでショウ。行儀の悪い野良犬は…躾が必要デエエエェエス!!」

 

 雰囲気の変わった金剛が構えると、その場の緊張が一気に高まる…僕と他の艦娘たちも見守る、いや、磔にされて動けないっていうとこかな?

 

 果たして彼女は…そして僕らは、どうなってしまうのか?

 

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