艦これすとーりーず ―僕が異世界版艦これの提督になった件について―   作:謎のks

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 あぁ~何だろう、最近早く話の続きが書きたくってしょうがない気持ちと、ゆっくりじっくり休みながら書きたい気持ちがせめぎ合っている気がする…でもここで焦りたくない!!
 まぁそんな感じですので、気長にお待ちいただければと思います! 私も最後まで書ききりたい気持ちは本当ですので…!


奇跡が煌めく──①

 ──サイハテ海域、海底

 

 遂に始まった一大決戦、拓人艦隊は加賀の「改二護」の能力により全快し、鬼神たる深海金剛との決戦に駆けつける。

 だが…恐ろしいのは深海金剛の勝利への執念、加賀に凡ゆる回復手段(チートスキル)を潰され体力も消耗して尚悠然と海底に立ち、更に闇属性魔法により「影」を操り拓人たちを闇の彼方へ葬り去ろうとしている。追い詰めている筈だがどこまで行っても底が見えない正に絶対無敗の強敵だろう。

 それでもやっと見えた光明の先を目指し邁進する拓人艦隊の艦娘たちは、先ほどの死にかけだった身体は何処へ消えたのか影たちに捕まらないよう上手く立ち回る、飛んで跳ねて縦横無尽に動き回っては敵の急所を突いての活躍を見せていた。だが…有象無象の敵の波も無数に湧いて尽きない。

 斬撃、砲撃、打撃、刺突、魔法攻撃を受けた影たちは霧散して掻き消えるも、瞬く間に暗闇から現れ出でて数が補充される。どころか補填のスピードも速く、人型であろうと何周りも大きい「影の巨人」であったり獣のような姿の影も生成され始めた。

 粒揃いの艦娘たちには数の暴力があろうと、単調な物理攻撃しか出来ない影の大群をものともしないが、逆にそれがどちらも譲らない「膠着状態」を生み出していた…!

 

 そんな中拓人は加賀を護りながらこれからの展開を予測する。

 

「(遠目からでも分かる巨大な光の柱、その後の爆発音と目前に拡がる瀑布と焦げた海底、深海金剛と加賀さんの激突は文字通りの「死闘」だったんだろう。翔鶴のバリアーが無かったら余波だけで身体が消し飛んでいたかも知れない…それだけの力の激突があったのは間違いない!

 だのに未だにまともな傷が見当たらず健在のあの()()()は、幾ら僕らが全員復活出来たにしろ()()()()()()倒せるとはとても思えない! 肩から息していたみたいだから、体力は削られているみたいだけど…あの緑の炎の影響か? どっちにしろ今までがいままでだからな、ここで驕りを見せるのは命取りだ!

 エリの手術は始まったみたいだから一先ず安心だけど…加賀さんを喪っては此処に来た意味がない! ここだ色崎拓人…僕だって戦えるんだ、僕はこの場で加賀さんを絶対に守って見せる! 他の選ばれし艦娘たちが来るまでの間、加賀さんに降りかかる攻撃を防ぎ切って見せる!!)」

 

 加賀の前で盾を構えながら、拓人は心の中で加賀を護り切る覚悟を固める。

 この戦いの主目的は深海金剛から戦闘データを収集し、エリ(金剛)の精神を元に戻すこと。深海金剛自体も脅威に違いないので出来れば打倒したかったのだが…戦闘データを集めるだけでも死線ギリギリの戦いを繰り広げた拓人たちとしては、時間を稼いで選ばれし艦娘たちが到着後共に戦線離脱して体勢を立て直すのが望ましい。仮に敵の体力が削られているとしても、手負いの加賀を守りながら戦うのはどの道現実的ではない。

 その立て直しも満足に果たせるか怪しい状況ではあるが…それでも主目的である戦闘データ収集は果たしたと見て良いだろう、ユリウスたちに確認の連絡を取ろうにも今は乱戦の途中なので無理な相談であるが──そう考えを広げる最中、迫り来る「影」が急速接近して来ていることに拓人は気が付いていなかった!

 

『──ギアァッ!!』

 

「タクト君! 影が近づいて来てるわ!」

「っ! ぅうおおおおおお!!」

 

 加賀の声にハッとして敵を認識する拓人。滑るように距離を急に詰めて来る影に、拓人は確りと盾を握り締めては影の腕振り下ろしを防御する。重い金属の音が響く中──拓人は密着した敵を力を込めた盾越しの体当たりで跳ね除けた!

 

「コンバート改装「改二」! 艦載機発艦、タクト君の援護を!!」

 

 ──ゴオオォッ!

 

轟音と共に紅い炎に包まれた加賀は、改二に戻ると左膝を支えにした体勢のまま大弓から矢を放ち艦載機を発艦させる。燃える矢から変化した艦載機からの機銃掃射に、ハチの巣にされた影はそのまま消え果てた。

 

「加賀さん、無茶しないで!」

「心配要らないわ、もう炎を出すほどの魔力はないけど…艦載機を発艦させるぐらいの魔力は残されているわ!」

「気持ちはすごく有り難いのですが、逃げる時のための体力も残しておいてくださいね!」

「ふふっ! そうだったわね、流石に気分が高揚してきたかしら? まさかあの金剛に一泡吹かせられたなんて、自分でも内心驚いているのよ!」

「普段より饒舌になってますもんね! いやだからって本当に止めて下さいね、貴女は深海金剛に力の全てを使い果たした後なんですから! だから…僕を頼ってください、貴女が力の限りを出したように、僕も貴女を護るために全力を尽くします!」

「分かっているわ、金剛を止めるまで私はまだシねない、絶対に無茶はしないわ! 今はひとまず…共にこの窮地を脱しましょう、タクト君!」

「はい! (ホントは「死亡フラグ」だから止めてねって言いたいんだけど…そんなこと言っている場合じゃないよね!)」

 

 拓人と加賀はお互いに好転し始めた状況を駆け抜けようと励まし合う。そこには未だ拭いきれない絶望的現状に灯された「光」が見え隠れしていた。

 

 ──だが、目前の暗闇は未だ晴れることは無い。影と艦娘たちの乱戦から離れた位置で、拓人と加賀の何処か朗らかな顔色を遠巻きから垣間見て、深海金剛は憤りと焦燥感を隠せなかった。

 

『(モウ勝ッタ気デイルトハ…良イ気ニナリヤガッテ! 頭ノ焦リト失態ノ連続(イージーミス)サエナケレバ、コンナ展開許サナカッタ!

 アノ女…悉ク私ノ考エノ一歩先ヲ行クトハ、戦闘力モ私トホボ互角デ戦術思考ハ私ヲ上回ルトハ…イヤ、アノ女ト昔ノ私ハ旧知ノ仲ダト聞キマシタカラ、思考ヲ読マレルホド仲ガ良カッタカ…友トシテ私ヲ止メルト言イマシタネ? デスガ──()()()()()()()()()()()()()()!! 今ノ私ニトッテ勝利コソ全テ! やつラヲ取リ逃ガセバ勝チヲ許シタコトニナル、ソンナコト絶対ニ許スモノカ! ドウスレバ良イ…ドウスレバ()()()()()()()()()()()()()()ガ…?)』

 

 鬼神にとって勝者とは「生き残った者」、敗者とは「沈んで亡くなる者」であることが窺える。つまり一度でも拳を交えたモノたちの戦闘離脱を許せば、それだけでも深海金剛にとって「敗北」なのだ。ましてや相手は勝利以外の明確な目的があり、それを今しがた達成してさっさと逃げ果せようとしている。誇り高き堕英雄にとって──それは「侮辱」以外の何モノでもない、完璧な勝利のため鬼神は煮え滾る頭を回す、彼らの支柱を折りどうにか戦力を削ぐには…?

 現状として深海金剛は緑炎が纏わりつき体力を奪われ続けている、それでも気力でどうにでもなるが時間が掛かればかかるほど此方が不利になるのは明白。更に今まで倒したはずの艦娘たちが蘇り立ち塞がっている、自分に緑炎の呪いを念じた張本ニンは防御する邪魔者の後ろに居て手が出せない。ここに来ている以上「拓人(アレ)」も相応の手練れと見ているので、体力を消耗した今の身体では身構えている盾を破壊出来るのか、はたまた盾と押し合いになっても押し返せるのか──そんな風に状況を羅列していた時だった。

 

『──待テヨ?』

 

 ふと、深海金剛はある事実に辿り着く。それは己の内で燃え猛る憤怒の炎を鎮火する程であった。

 治まっていく激情、冷静になる頭の巡りにより「一つの事実」が見えた。それは──()()()()

 

『(アノ「たくと」トカイウ男、単ナル艦隊ノ指揮官…作戦ノ要グライニ思ッテイマシタガ、()()()()()()()()ガアルノカモシレナイ)』

 

 拓人の及ぼす周囲への求心力、そこに疑問を持ったのは──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()? そんな小さな問いからだった。

 深海金剛が朧げながら覚えている戦場の記憶として、指揮全般も作戦実行も全て艦娘に任せた上で指揮官は後方の安全な場所に陣を張り、作戦の概要を前線の兵に伝えるのが通常であり、前線で共に戦うなど──新時代の戦力である自身に言わせれば──古い考えそのものであった。ましてあれから何年もの時が流れていると推察出来る以上、通信技術の発達したであろう現代において、そうまでして表に出る何かがあるのか?

 

『(天龍タチハ「えり」トイウ女ヲ生キ返ラセルタメニ私ニ挑ンデイルト言ッタ、同時ニ「たくとノ為」トモ。艦娘全員ガ”えり”ト”たくと”ヲ中心ニ作戦遂行ヲ続ケテイル、やつハ士気向上ノタメ表ニ出テイルト見テ良イ…愛、愛デスカ)』

 

 一つの点への懐疑より思惟を巡らせる深海金剛は、拓人がこの場に居ることを「愛のため」と結論付ける。

 戦果を上げる隊の多くは、気心が知れた仲間内でのコミュニティが確りと構築されている。愛とはそれの最上位と言っても過言ではない、何故なら指揮官と部下が愛の間柄で結ばれたなら、彼の者のためなら死も恐れないと覚悟が容易に固められるからだ。愛の前には何モノでも霞んで見えるのだ。

 拓人はそんな一種の「カリスマ」を武器に戦う男、そして艦娘たちは彼への愛に応えるため各々の力を奮う。この戦いはそれが上手く嵌ったことで流れが変わった、それが深海金剛の見解である。

 

『(ツマリあれサエ居ナクナレバ、本当ニ艦隊ノ柱ガ瓦解シ、逆転出来ル可能性ガ…アル。

 話カラ察スルニ”たくと”ハ”えり”ヲ愛シテイテ、死ノ淵ヲ彷徨ウえりノいのちヲ繋グタメ私ニ戦イヲ挑ンダ。私ト戦ウコトデ何ラカノ蘇ラセル材料…戦闘でーたトヤラカ? ヲ採取シテイテ、ソシテたくとト加賀ノ様子カラ今正ニソレハ完了シテイル。

 仮ニソノ「材料」ヲ奪イ返シタトシテモ逃ゲラレレバソコデ「終ワル」、影ガ抑エテイル間ニ艦娘タチヲ倒スノモ()()ダガ、体力ヲ削ラレタ今ノ私デハ…一隻(ひとり)グライナラ沈メラレマスガソレ以上ハ、間違イナク「力敗ケ」シテシマウ。…()()()()()()()()()()()()()! やつガ消エレバ艦娘タチニ少ナカラズ影響ガアル筈…!!

 カト言ッテ真正面カラあれノいのちヲ刈リ取ロウモノナラ、天龍タチガ黙ッテハ居ナイ。加賀モ居ル以上のろのろシテイラレナイ。だれモ反応出来ナイ速度デ、確実ニカツ一瞬デアノ男ノ懐ニ入ル必要ガアル…カ)』

 

 そうして事態を整理し、盤上を覆す策を練る深海金剛は、深く沈む思索の中で──静かに浮かび上がった「打開策」に目を見開いた。

 

『(ソウカ! イヤ、シカシ…ソレデモ、一カ八カ!)』

 

 破れかぶれか、深海金剛は身体に闇を纏うと意識を集中させる。

 頭の中に浮かぶ周囲の風景、負傷した加賀、その前で盾を構える拓人、拓人たちの視線の先の影と艦娘たちの乱戦模様…全てが白黒基調の世界、その中で影以外の人物たちの胸の辺りに浮かぶ「闇火」。黒い炎はどれも薄い黒色で弱々しく燈る種火だった──ただ一つを除いて。

 

『──フ、ハハハ! 矢張リ! 愛ヲ喪イカケテこころニ闇ヲ抱エタカ! たくと…オ前ノこころに不安ト恐レノ「邪心」ガ見エルゾ!!』

 

 深海金剛が垣間見たものは、紅い色の混ざる漆黒の焔が拓人の胸に煌々と燃え盛る光景であった。拓人の中に未だ燻ぶる闇を鬼神は覗き見る──()()()()()()によって…!

 

『幾ラ強ガッテイテモ所詮にんげん! こころノ闇ヲ消ソウト足掻ケバあがクホドソレハ広ガッテイク一方、だれニモッ! ソレハ止メラレナイ! ナラバ──()()()()()()ッ!!』

 

 深海金剛はしたり顔で嗤いながら宣うと、拓人に向かって闇の炎を点けた右手を翳す。すると──()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ── ズ ル リ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何と──拓人の胸に小さな黒い穴が開いたかと思った矢先、()()()()()()()()()()()()()()()

 

「…っ!」

 

「な…っ!?」

 

  そして驚く拓人と加賀を余所に、影は()()()()()()()()()()()…すると()()()()()()()()()()()()()()()!?

 

 

 

 ──ゴオオォッ!!

 

 

 

「──っ!! ぅうあああああああああああああああああ!!?」

 

「タクト君!? これは…金剛っ!」

 

 正に青天の霹靂であった。突然の出来事に対処が出来なかった拓人と加賀、心から発せられた黒色の火の()()に叫びを上げる拓人、加賀は深海金剛の名を叫ぶと、そこには揚々と嗤いながら自らの勝利を確信する鬼神が居た…!

 

『ハハハハハッ! モウ遅イ!! たくと…貴様ガ艦隊ノ中心デアルナラ! 貴様ガ居ナクナレバ艦娘タチノ支エハ無クナルッ! ソノ黒イ炎ハオ前自身ノ闇ダ! オ前ガ今マデ抱イテキタ闇ヲ私ノ”力”デ増幅サセタ!! 炎ハオ前ヲ呑ミ込ミ、オ前ノ「闇」ガ具現化シタ世界ヘ誘ウ! 其処デ悶エ苦シミ…己ノ所業ヲ悔イ続ケルガイイ! アーーッハッハッハッハァッ!!』

 

「っ…ぐ、くっそ! まさか僕に仕掛けて来るなんて…!」

 

「タクト君、っく! どうにかしてこの炎を…っ!? タクト君…!」

 

「…っ」

 

 加賀が動揺する中、拓人はそれを右腕を広げて制止する。それから深海金剛に向かって一歩、また一歩と歩き始めた。その印象的な場面は乱戦で戦う艦娘たちの目にも届く。

 

「…っ!? タクト!! 深海金剛…あの野郎!! …ぐっ、退け!!」

 

 天龍が何とか加勢しようと動くも、物量に勝る影たちがその行動を阻止する。苦虫を嚙み潰したような顔で怒る天龍だが、現実は甘くは無かった…!

 

「ぃい!? どうなってんだい! 大将! 大将っ!!」

 

「司令官!? っく! 斧さえ有れば…!」

 

『そんな…コマンダン!!』

 

「…っ!? 嘘…タクト! タクトぉーーーっ!!」

 

 他の艦娘たちも何とか拓人の下に辿り着こうと藻掻くも、巨人の影を含めた無数に湧く影たちが壁となり立ち塞がっている、切羽詰まる状況でこれはどうしても足踏みしてしまう。

 そんな中、深海金剛まで声が届く位置まで移動した拓人は──お前の思い通りにはさせない、残念だったなとと言わんばかりに笑っては、強がりながら啖呵を切る。

 

「そう…頭が切れるとは思ってたけど、まさかこんな手を使って来るとはね? それだけ僕たちが君を追い詰められたってことなのかな…!

 でもね──この程度じゃもう君の「敗北」は覆せないよ! 僕にはもう…運命を変える力は残っていない、それでも…彼女たちなら未来を変えてくれるって信じてる! だって彼女たちは…自分の未来を切り開いて見せたんだから!!

 それに──”闇”って言ったね? 上等じゃないか! 確かに今まで自分のことで逃げてばっかりだったけど…今の「僕」は昔とは絶対に違う! 必ず乗り越えて見せる…それが出来たらそんな馬鹿みたいな術を掛けてまで勝とうとする()()()()()()()()()()!! 覚悟してろよ…深海金剛っ!!」

 

『ッ! …はん! 口ダケハ達者ナヨウデスネェ! 出来ルモノナラ…ヤッテミヤガレ鼠輩(そはい)風情ガァッ!!』

 

 一頻り言い終えると、拓人は今度は無数の影たちと戦う艦娘たちに向けて声を張って言い放った!

 

皆っ!! ごめんちょっと失敗したみたい!! でも…必ず戻って来るから!! それまで…待っていてねっ!!

 

「──っ! あぁ!!」

 

「テキトーに片づけて戻ってきなよ!」

 

「いつまでも…お待ちしています!」

 

『コマンダン…貴方のその輝きを信じます!』

 

「そう! なら…こっちもやってやらないとね!!」

 

 艦娘たちの声を聞き届け、安堵して穏やかな笑みを浮かべると──拓人は纏わりつく闇の炎に呑まれて、消えた…!

 

「っ! タクト君…っ!!」

 

 今、戦士たちの道標の「星」が堕ちた。

 加賀はその事実に…絶句しながらも、再び夜空に星の光が瞬くと信じ表情を引き締めると、弓矢を握り鬼神に構える。怒気を孕んだその顔色に、深海金剛はニヤリと嗤い邪な愉悦を見せ返す。

 

 ──鬼から出でた闇は、拓人や艦娘たちにどのような試練を与えるのか…?

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 ──夢の狭間

 

 その頃、エリの精神と観測者は海面に映る映像から現在の状況を観ていた。

 拓人が立ち直りエリを蘇らせるため奮起してから、ずっと拓人たちの行動を見守っていたエリ。彼女は拓人たちが深海金剛と戦っている間、片時も眼を離すことなく艦娘たちの戦いを黙して見つめていた。加賀が戦闘データを集めきって自身の手術が始まることを知ると…自分が生き返るかもしれないという喜びより、拓人たちがやってきたことへの成果が実を結んだことに対する「安堵」の感情が勝り、穏やかな表情を見せたのも束の間──今度は拓人が闇の彼方に消え去る場面が映し出され、嬉々とした表情は一気に蒼白になり虚脱感が身体を覆うと膝から崩れ落ちた。

 

「──う、そ…? 拓人が、闇に…そんなの…っ!!」

 

「だが事実だ、深海金剛の放ったあの黒い炎は「闇属性」の精神汚染の魔法だ。人の心には必ず「負の感情」が備わっている、それが正感情と上手くバランスを保てれば心は揺るぎないモノとなる。闇属性はその負の感情を強制的に肥大化させ被術者の精神を崩壊させる、まぁ…()()()()()()()()()()()()()()()()()()? そう問われたら私は「否」と答えるがね」

 

 エリの横で冷静に状況を俯瞰した上で解答する観測者の言葉に、エリは疑問の顔色を浮かべると「何故?」と問う。その答えは至極単純であると観測者は言葉を続ける。

 

「”七転び八起き”ということわざもあるように、人は諦めずに生を謳歌しようと奮闘するものなのだよ。加えて拓人君は塞ぎ込んでいた自身の「気持ち」とつい最近向き合ったじゃないか? …この狭間の世界と、現実とでね? これは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と捉えることも可能だ。何モノにも傷つけられない鎧を身に纏ったと考えると…希望が持てる、そう感じないかい?」

 

「…ん! 確かに私が不安になったって仕方ないよね! タクトは強いもん、自分の闇にだって負けない! そうなんだけど…衝撃が強すぎてちょっと弱気になっちゃってた、ごめん!」

 

「何、アレを観れば誰だろうと動揺するさ。さて──()()()()()?」

 

「え? 何が──っ!?」

 

 観測者がエリを宥めていると──エリの目の前、海岸の波打ち際に()()()()()()()()()()()()…!

 白く光る何かが形を整えると輪郭を帯びて…それは今のエリの容姿と瓜二つの姿を取った。全体的に青白く光り所々ノイズのような歪みが見え隠れしているも、エリを確りと見つめているその女性は…?

 

「も、もしかして()()()()()()()()()()()?」

 

 エリが直感で頭に浮かんだ言葉を並べると、観測者も「そうだろう」という意思で力強く頷いた。

 

「手術が始まった故に姿形を取れるまでになったか、なんとも喜ばしいことだが…どうやら君に用事のようだよ、エリ君?」

「え? どうしたのかな??」

 

『──…た……と………つに…!

 

 データ金剛から何か言葉が発せられたが、それは「聞くに堪えない電子音」に掻き消されてしまっていた。これでは意思疎通が出来ない…!

 

「な、何て言っているの?」

「ふむ、要するに君と一つになりたいそうだよ? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、とね?」

「解るの!? いやそれは良いんだけど…本当にそう?」

 

 観測者の翻訳で間違いはないのか? そう問いかけるエリにデータ金剛は軽い頷きを一つ返した。

 

「え…でも、そんなことしたら私や金剛はどうなるの? 金剛が私になるって意味? 元から一つになっているんじゃ??」

 

「おそらくだがデータとなった艦娘の魂から間接的に力を引き出しているのが、今までの君たちなんだろう。それを一体とすることで直接繋がっているので()()()()()()力を取り出すことが出来るようになる、こういうことじゃないかな?

 そしてデータとなった艦娘の魂が肉体と元の魂を乗っ取る、()()()()()()()()()()()()()()()。あくまで主人格はエリ君自身で、今の金剛はかつての金剛の能力や力の再現なのだから」

 

 つまりデータ金剛の言う「融合」とは、分かれていた魂を一つに合体させることで力をより引き出しやすくなるようにする。勿論その力の主導権はエリに一任するというものだった、が…エリは一つの疑問を口にした。

 

「それって…貴女は私の中から消えちゃうんじゃ?」

……ぶ、わ………で……ら! そ……………

「自分はエリ君の中で生き続けると、それに…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()? と言っている。ふむ…どういう意味かな?」

 

わた………とで、しゅ…………で……!

 

「…! ほぅ…そんなことが可能なのか? 成程…これはやって損はないよエリ君、君にも拓人君たちにもメリットとなる話だ」

「ど、どういうこと?」

 

 観測者は今しがたデータ金剛から伝え聞いた「秘策」を、エリに伝える。それを聞いたエリは…目を輝かせて喜びを露わにする。

 

「それが本当なら願ってもないよ! でも…どうしてそこまでして私と一つになりたいの? 貴女も金剛なら深海化した貴女を止めたいんじゃ…?」

 

 エリが述べたいこととして、()()()()()が全力でその力を振るう場合エリの身体に「先代の金剛の精神」が表面化する場合がある。なので()()()()()()()()()()()()()()()だ、と考えていたのだと。しかし──データ金剛の答えは()()()()()()()()であった。

 

…しは、も………から。この……のは…ネ!

 …だ……とりの……を……めて……がい!

「自分はもうあそこには居ないモノで、現代の守り手は間違いなく君たちだ。だから…私の代わりに彼女を止めてほしい…と」

「そっか…貴女がそこまで言うなら、私も受け入れないとね!」

 

 エリが金剛の覚悟を察知してそう言い終えた直後、データ金剛はエリに手を差し伸べた。おそらくこの手を握ると「融合」が始まるのだろう。

 

「…ふぅ! じゃあやろっか! 拓人のためにも…貴女と一つになってみせる!!」

「ふふっ! 勇ましいことだ、では征くが良い! 融合が始まれば君は目覚めるだろう、ここでお別れだ。私は引き続き君たちの動向を観測するとしよう」

「今までありがとう! じゃあ…行ってくるね!」

 

 エリはそう観測者と最後の言葉を交わすと、データ金剛から差し出された手を──握り返した。

 

 

 ──カッ!

 

 

 すると──狭間の世界に瞬く間に光が奔り、その中心に居た二人の少女の姿が忽然と消えていた…!

 

「達者でな。…では、私も少し手を貸すとしよう。何、少しばかりのサービスだ。君たちの行く末に──武運長久在らんことを」

 

 波が涼やかな音を立てる中、観測者は独り言ちに笑いながら世界を護るため戦う「生きとし生ける者」たちに祈りを送るのであった…!

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