艦これすとーりーず ―僕が異世界版艦これの提督になった件について― 作:謎のks
──サイハテ海域、海底
エリ(金剛)が奇跡の復活を遂げ、鬼神たる深海金剛と対等に渡り合えるであろう能力を身に着けて拓人艦隊の下へ舞い戻って来た。それは──【改二丙】、拓人が喪った特異点の能力の一つ「自分に都合の良い展開を引き寄せる」能力を昇華させた「
──だが、彼らの予想を
『──グルゥゥウラアァッ!!』
深海金剛が竜属性によって紫の鱗に包まれた化け物と化すと、エリとの距離を一気に詰めていき強固な鱗に覆われた爪で引き裂こうと腕を振り下ろすも──
「──出来る」
エリは竜爪の軌道を読んだ上で避けながら一歩前に進む、そして──硬い鱗に覆われようとお構いなしに──深海金剛の懐に入ると強烈なカウンターナックルを与える。鱗には罅が入り、それが防御において
『ガァ…クッ、ナラバ!』
飛び退きながら変化を解除した深海金剛が次に取った行動は──死属性で穢れを作り出す戦法、深海金剛を中心に黒い霧が広がっていく、望月もこれによって一時戦闘不能に追い込まれた。対艦娘対策においてこれ以上のものはない──
「はぁっ!」
『グォッ!? ッチ…
誤算、視界と生命を奪うはずの暗黒靄の中を迷うことなく駆け拳を喰らわせようとするエリに、躱しながら驚きを禁じ得ない深海金剛。黒い霧を全身に受けようともお構いなしに殴りかかって来るエリを見て、深海金剛は己の認識が間違っていたのだと驚愕した。
深海金剛には知る由もない、特異点たる拓人と信頼を築いたエリを含む
『ナラバコレハ…ドウダァッ!』
『オオオオオォ………ッ!』
──ズドォンッ!
次に深海金剛は黒炎に覆われた鬼のしゃれこうべ型の
「…出来る!」
対するエリも艤装を呼び出して装着すると、直ぐさま砲撃を放った。弾丸は三式弾だったのか空中で破裂するとエリの前方へ飛び散る、三色の魔弾へ跳んだ無数の弾片は
『──グッ!? ッ…!』
四方へ飛散する三式弾弾片を受け身体中に穴が開く深海金剛、穴自体は大した傷ではないので──深海棲艦の超回復で──忽ち塞がれてしまうが、苦い顔でエリを睨みつけているのが見て取れる。今まで力で全てを捻じ伏せて来た鬼神が、今度はエリの能力の出鱈目な強さに辟易していた…!
「スゲェ、あの深海金剛が手も足も出せてねぇぜ!」
「凡ゆる攻撃に対応
望月と天龍がそう勝利への未来に少しづつ浸っていると、横から拓人が
「──フタリとも、深海金剛が何か仕掛けて来るかもしれないから喜ぶのは程々にね? 彼女はこれまでの戦いで、勝利のために必要な「手」を小出しして来た。追い詰められた彼女がどんな「奥の手」を使って来るのか…警戒しておこう、僕もエリのあの能力は強すぎると思うけどね? はは!」
にこやかに笑いながら落ち着いた態度を崩さない、拓人の
「わ、わりぃ大将。アタシが用心しろ言ったのによぉ? しかしアンタ…どっか変わったかい? 頭ぁ打ったわけじゃねーよな?」
「今までは「流石エリ!」だの言って興奮する場面だろ? そのぐらいはして良いんだぞタクト、遠慮するな」
「な、何でそんなに心配してくれるの? 嬉しいんだけどさ…うぅん、自分では変わらないつもりなんだけど? (
「そりゃあ変わってねー部分もあるが…なんつーか、ビミョーに雰囲気が
「指揮官だから理性的でなくては、そう考えているなら余計な憂いというモノだ。俺たちはお前だから指揮下に入っている、だから…」
「ありがとう天龍、でも──僕はもう変わって行きたいんだ。君たちに守られたり空回りして迷惑かけたり…君たちに甘えてばかりの僕じゃなくて
拓人から出た「成長」というワード、今まで何処か遠くばかり視て現実や周りの変化に疎かった拓人だったが…今の彼なら今までの「欠点」を見据えた上で行動してくれる、そんな確かな「光」が見え隠れしていることが感じられた。天龍と望月はそれを受け取り微笑んでは、拓人の心の成熟に感嘆する。
「そうか! それは済まなかった! タクト…どんなに変わろうとも、これからもお前は俺たちの提督だ!
「ありがと! …でも良いの? 傭兵としてそんなこと言っても?
「えぇい止めろそんな粗を探すようなことを! 大丈夫だ…特別に俺とお前の契約は「終身雇用」というモノにしとく!!」
「ヒヒッ! モノは言いようさね。アタシは前の大将でも良かったんだが…まぁアンタが選んだんだ! これからも向こうさんの「ニジゲン」話をしてくれるなら、別に構わないぜぇ?」
「もちろん! まぁ──無事に戻れたら、ね」
拓人たちは一頻り歓談し合うと、再びエリと深海金剛の戦いに注力していく。和やかな表情から引き締まる顔になっていく拓人は、誰に対してでもなく心から祈る──どうかエリも、此処に居る皆も、全員無事で生きて帰れますようにと。
──拓人たちが見守る中、自身の攻撃全てが無力化されていく光景に苛立ちを隠せない深海金剛は、それをエリにぶつけていく。
『くそったれガァッ、出来ルデキル五月蠅ェンダヨ! ソノ口ヲ今スグ塞イデヤロウカ!?』
「ん~? それは意味ないと思うけど? 試した訳じゃないけど…
『皮肉ダヨ馬鹿ガ! ッチ…要ハドンナニ撃チ込ンデモ
エリに怒り混じりの軽口を叩きながら、深海金剛は考える。
これまで──数十年前の過去を含めた──どんな強敵たちにも勝る最強の好敵手が目の前に立ち塞がっている。それがよりにもよって自分と瓜二つの存在が、自分には持ち得ない力を使いこなして
『(加賀ガ居ナイダケましダガ、エリハあれ以上ノ”力”ヲ持ッテイルト見テ良イ。マタ能力ヲ封ジラレル可能性モ否定出来ナイ、後方ノ猛者タチノタメ体力ハ温存シタイガ…手応エガマルデ無イ! 全力デブツカラナイト足元ヲ掬ワレルダケダ…! 確カタクトガ肯定ガドウトカ言ッテイタ気ガスルガ、出来ルト思エバソノ通リニナルダト? フザケヤガッテ! 隙アラバ無属性デ相殺──
…イヤ、
そう思い至った深海金剛は頭の奥深くまで瞬時に思索していく──だが、優に千は越えたであろうシミュレートから出てくるのは、
属性攻撃を当てようにも、出来ると思われたら確実に防御される。直接攻撃だけでなく魔弾を撃ち抜き霧散させた時点で
『(出来ルノ汎用性ノ限界ガ見エナイ、試ソウニモ下手ニ動ケバ致命傷ヲ負ウコトニナルノハ確実! 悔シイガ──
「──どうしたの? さっきから攻撃しないで動きが止まっているけど? 負けを認めた…わけじゃないよね?」
エリは先ほどまで苛烈に攻勢をかける深海金剛が、ピタリと行動を止めて何か策に耽るように眉を顰めている、そんな状況に
『──だれガ? だれニ?
…モウイイ、ドウアレコノママデハ此方ガ負ケテシマウノハ明白。オ前ガ世ノ理カラ外レタ”力”ヲ持ツナラ──此方モ道理ヲ外レルマデ!!』
深海金剛はそう憤慨し宣言すると、両手を広げて呼びかけ唱えた。
『──最果テノ海ニ眠ル怨念タチヨ! マダ戦イ足リヌトイウナラ…我ガ肉体ヘ宿リ憑キ、憎キ仇敵ヲ嬲リ殺ス機会ヲ与エヨウ! サァ──私ニ”力”ヲ寄越セェッ!!』
血走る両眼、鼓膜を震わせる怒声、身体から噴出する黒炎、最早拓人たちが最初に会敵した際の
『──ヴゥァア”アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!』
怒号、絶叫──深海金剛を中心に膨れ上がった黒炎は、彼女を呑み込み尚膨張していく。やがてその膨らみが最高潮に達し、風船が割れるように弾けると…中心に居た深海金剛に
『──ハア”アァ…!』
見た目の大きな変化として、先ず肌のあちこちに大きな亀裂が入りそこから「碧」の炎が所々に噴き出している。次に左脚と左腕が黒ずみその真ん中にギョロリとした「目玉」が在る、何処か傷だらけのような、より怪異めいた風貌に変質したような、正に変状した深海金剛は憤怒の様相で威風堂々と立ちあがっている。これは一体何を意味しているのか…?
「──っ! 不味い、”壊”だ! ”壊”になった!!」
「…カイ? カイニとは違うのかい大将?」
望月が何処か訝しげに尋ねるも、拓人は変わらず焦りを隠さず答える。深海金剛のあの状態の意図を…!
「改とか改二は「あらためる」とも呼ぶでしょう? 装備を新調することで力を増していくのが艦娘だけど…深海棲艦の場合は違う、壊は「こわれる」と読む…つまり一見自分から窮地に追い込まれているように見えるけど、
「っ!? ってこたぁアレは…深海金剛の
「待て! 深海棲艦にとって顔や体に罅が入るのは身体が崩壊しかけているということだろう、それだけ追い詰めたということにはならないのか?」
「天龍の言うとおり、アレは後が無くなって火事場の馬鹿力を解き放っている謂わば「背水の陣」! これまで彼女がアレを使わなかったのは
拓人の口から語られる深海金剛の強化形態【壊】の様相は、どちらにしろ鬼神を追い詰めたことに変わりはないが、どうやら敵は己がどうなろうともエリを敗北に追い込もうと必死なのだと言う。自らを進退窮まる立場に置いた深海金剛【壊】、その実力とは…?
『──ガアァッ!!』
「っ! 出来──」
不気味な変異を遂げた深海金剛が唸りながら迫る、エリはたじろぎながら
「ぁあ! エリっ!!」
「っぐ!?」
『コノ形態ハ──追イ詰メラレタ深海ノ姫ガ、自身ノりみったーヲ解除スルタメニ至ル姿。一度解除スレバ二度ト元ニ戻ルコトハナイ、ソシテ
勝利への執念が、鬼神の強さを限界まで押し上げては無理やり壁を破る──それは堕英雄を怪異へと成り果てさせた。
今エリの目前に居るのは立ちはだかる脅威でなく、寧ろエリを脅威と認めてシに物狂いで勝利を求めようとする、イノチ知らずのような
「──流石だね、私たちの力を合わせても…貴女は越えさせまいと迫って来る、本当に一瞬の気の緩みで負けてしまいそう。でも──でも! 私たちだって!! 何度も苦しい戦いを乗り越えて来たんだからっ!!」
エリはそう言って深海金剛の腹部に力強い蹴りを入れる、嗚咽を呻いて衝撃を受けると後方へ後ずさる深海金剛へ、立ち上がったエリは再度自分の決意を語る!
「拓人たちはここに来るまで、貴女を含めた数々の壁を──
『コレダケノ「力」ノ極致ヲ見テ、マダソンナ甘サデものヲ言ウカ! 貴様ァ…反吐ガ出ルンダヨソノ温イ言葉ノ数々ガァッ!! 直グニ現実ヲ叩キツケ、口カラ緩イ言葉ヲ吐ケナクシテヤルッ!!!』
「──だったら今言ってあげるわ!! 私は
・・・・・
──・・・・・?
「・・・っ!!?」
闘争の熱が最高潮に高まった上で発せられた、エリの「拓人至上主義宣言」。言った本人も顔を紅潮させ羞恥を表す中、まさか
「(天龍)・・・何を、言っているんだ?」
「(望月)ちょ、姐さんwww! 今それをw、言うのかww、ヒヒヒwww」
「(綾波)私も司令官が望むなら、
『(野分)にこやかな顔で何と言うことを言うのですか綾波さん!!?!!?』
「(翔鶴)わ、私だって! パンツくらいなら見せてあげても・・・///」
「(天龍)待て・・・まて!」
それぞれの「許容範囲」を聞いて、拓人は更に頭が真っ白になり身体も白に塗りたくられていく。喧噪極まる中で拓人の盾の裏で光凛(妖精さん) が「・・・バカ」と言っている声が耳に入ったような気がした。
『──ッ! 頭沸イテンノカ、コノ淫猥ガアアァッ!! ドコマデモ私ヲ虚仮ニシヤガッテ…! ソンナニやりテーンナラッ!
深海金剛がエリの心からの叫びを汚らしく貶しながら、猛進しエリに絶望という鉄拳を喰らわせようとする。だが──エリの顔に拳が当たろうとする刹那…拳骨はエリの手の平で
『ッ!? ク…!』
「どうだろうね。私って独占欲強いから──拓人が許してくれるなら
そう惚気を昂然と宣うと、エリは空いているもう片方の拳でカウンターを狙う! 深海金剛は頬にエリの拳を受けながら、ニヤリと嗤うと隙間に滑り込ませるように残った腕に「雷属性」を纏わせたアッパーカットを喰らわせる。
「う”…っ!」
『オラ”ァッ! ソノ綺麗顔ニ一発! モット…汚ネェ顔ニシテヤルヨオオォッ!!』
「っ良いね! コッチも全開で──やってやる!」
仰け反ったエリに勝ち誇る深海金剛、口汚く罵る彼女に対しエリも負けじと精神を発奮させ、攻勢を仕掛ける深海金剛を迎え撃つ。
距離を取り相対する双つの”極”。黒い雷を手に纏わせる深海金剛に対し、エリは黄金色に輝く炎を両手に点けると、両シャ
『オラアアアアアアアアッ!!』
「うおああああああああっ!!」
──ドガッ! ボグァッ!! ゴッガッグォッ!!!
拳を合わせ、殴られればナグり返し、互いに高速の体捌きで相手の攻撃の流れを往なしながら、双方の固い頭を
『ヘイヘイヘイヘイヘイヘエエエエエエエエエエエエエエエエエエエイッ!!』
「だぁらららららららららああああああああああああああああああああっ!!」
──ゴオォッ!!
「…す、凄い…っ! これは…」
拳の応酬は風圧を生み、暴風が土煙を立たせ空間を揺るがせる。エリと深海金剛の拳速は遠目からだとどういう動きをしているのか
それを見守る外野の艦娘たちは誰もが呆気を零して各々理解した、あの鬼神は自分たちでは絶対に打倒出来なかったのだと。というのは深海金剛が今まで勝てそうでかてない領域に居たのは、それだけの実力差という目に見えない
エリの復活を諦め自分たちで深海金剛を倒そうとした場合、
「──エリぃいいいいいい!! 頑張れええええええええええええ!!!」
艦娘たちがもしもに対して冷や汗を流す中、拓人はエリにエールを送り続ける。自分は此処に居て君の心を援ける、そんな彼なりの覚悟を込めた声援であった。
「…! タクト!! 絶対勝つから、見ててね!!」
「うん! 勝って!! 僕たちの
「テートク命令…かな?!」
「っ! ──そう! 命令だエリ…いいや金剛! 昔の自分を打ち負かして、その先の──暁の水平線に、勝利を刻むんだ!!」
「──イェッサーッ!!」
拓人の
「っ、エリ! やってしまえぇっ!!」
「姐さん! 薬が必要なら言ってくれよな!!」
「エリさん、ご武運を!」
『エリさん! 貴女の美しき愛満ち溢れる心を! ぶつけて下さい!!』
「負けたら承知しないわよ、エリっ!!」
拓人の鼓舞に釣られて、拓人艦隊の艦娘たちは全てを今一度エリに託し、声を嗄らし叱咤激励を送る。そんな大いに湧き上がる拓人たちに対し、深海金剛に人知れず訪れる
『──…ッ! (ナンダ…胸ガ、
拓人とエリのやり取りを垣間見た深海金剛は、加賀との戦いから続くココロの痛み、訴えに戸惑いながら…それでも短期決戦に臨む。崩壊する身体と尚疼くココロの傷は──戦いの終焉が近いことを意味していた。