艦これすとーりーず ―僕が異世界版艦これの提督になった件について―   作:謎のks

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 色々あって創作活動を停止してましたが、戻って参りました!
 ご心配されてた方は申し訳ありません、僕は大丈夫です。周りが変わっても自分は変わらないんだって思えたので、そんな自分とこれからゆっくり向き合えて行けたらなと思います!
 ご挨拶はこの辺りにして、サイハテ海域編の決着を見て行って下さい!

 ※展開早め、注意です!


剛き心は金色の星となり、輝き極まる ②

 ──サイハテ海域、海底

 

 

 

 

 

 ドンッ!!

 

 

 

 ドンッ!!!

 

 

 

 ドゴァッ!!!!!

 

 

 

 

 

 耳を劈く轟音、爆裂する力のぶつかり合いは突風となり空間中に吹き荒れ渡る。全てを飛ばさんと狂う風はまるで台風のような自然災害を目の当たりにしているようだ。

 

「──っ! エリ…!」

 

 腹に響き続ける打撃轟音の余波に、拓人たちは顔を歪ませながら力の奔流の中心点を見つめ続ける。長きに渡る戦いの決着を見届けるために…!

 

 

 

「はあああああああああああああっ!!」

 

 

 

『ウルアアアアアアアアアアアアッ!!』

 

 

 

 衝突する二つの力を生み出すのは金剛(エリ)と深海金剛、双方共に獣の咆哮を上げながら握り締めた両拳で鉄拳連撃の打ち合いを演じ、向かい合う敵を沈めようと闘志を燃やす。

 連続で繰り出される互いの拳を紙一重で躱し、一つひとつが必殺の弾丸を撃発させながら、狙撃手のように敵の頭を()()()()()と眼光を爛々と光らせる。一方は壊れゆく身体から執念を吐き出しながら、一方は身に宿した星の光で敵の「本質」を()()()()()()

 

「──はぁっ!」

 

『ッ! ダラァッ!!』

 

 正に竜虎相搏つ様相だが、ここでエリは力強い拳を振るい勝負に出る。ここ一番の速度ではあったが深海金剛も対して繰り出した撃拳に威力を相殺される…!

 

「…っ! ……うん」

 

 だが──ここで流れが変わる。

 両雄の拳骨が触れ合った一瞬、エリは納得したように一つ頷くと体勢を仰け反ってそのまま距離を取る。深海金剛が尚も詰め寄ろうとするも、エリは右手の平を突き出して制止する。

 

「──改めて聞きたいことがあるの。と言ってもそっちも時間がないだろうから簡潔に言うね? 私の頭の中で今も晴れない()…貴女が必ず戦う前に相手に質す言葉、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 最初は貴女なりに相手の戦う意思を見極めようとしているのだと思った、でも違う…直感だけど拳を交えて分かったことがある。それは──貴女は()()()()()

 

『…ッ!』

 

 エリのズバリの解答に、深海金剛は一瞬肩を震わせる。それは…その答えに余程の意味があることを如実に表していた。

 

「図星みたいだね? 貴女は自分でも分からないんだ、自分が今どうして戦っているのか! ()()()()()()()()()()()()()()()()!! 勝利するその意味を…忘れてしまったんだ、深海棲艦になって在り方が歪められてしまったんだ! だから…戦う覚悟を問うことで、それを思い出そうとしていたんだ。無意識にやってたことなんだろうけども、勝利に対して非情な態度の貴女が何故そんな行動を取るのかは、それで辻褄が取れる」

 

『──…ダッタラ、ナンダト言ウンダ? コノ胸ノ奥デ燻ブル感情ノ波ハ! キット貴様ラヲ全テ下スコトデ治マル!! ソレダケノ話ダ…これニ何ラカノ意味ガアロウト、私ハ勝利ヲ掴ム! ソレダケダッ!!』

 

 そう言って退けると深海金剛は突進し拳をエリに向けて放つ、エリもそれを手の平を突き出して受け止めるも、口を動かし続ける。

 

「だったら尚のこと考えて! この勝利にどんな意味があるのか? その勝利は誰に向けられたものだったのか! その意味を考えることは貴女にとってとても大事なこと、ただ悪戯に暴力を振るっても意味が解ることは無い! 虚しさが胸に留まり続けるだけなんだ! 私たちを倒しても貴女が欲しがっていたモノが手に入ることは──」

 

 

 

 

 

『──知ッタ風ナ”口”聞クンジャネェ!! コノあほんだらアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァッ!!!』

 

 

 

 

 

 エリが間違いを訴え続けるが、深海金剛はそれを一喝し止められた拳を腕の力だけで力任せに押し退ける。そして…感情が爆発したのか狂気的な身振り手振りを混ぜて自身の胸中を吐露していく…!

 

『鬱陶シインダヨォッ! 説教ノツモリカヨ何様ダてめぇッ!! 言葉ノ端々カラ漂ウ世間知ラズノ温室育チ! ソンナてめぇニハ!! 戦場ヲ渡リ歩イタ私ノ気持チナゾ解ルマイッ!!!

 戦士ハ戦イコソ生キ様! 死地コソ誉レダト嘯クものモ居ルガ、生キ残ッタカラコソ価値ガアルノダ!! ダカラ──勝ツ! 勝ッテ生キ残ル!! 勝利ガナケレバ私ニ価値ナド皆無! ()()()()()()コソ私ノ理想ナノダッ! ソレヲ考エ直セダトゥ? フッザケンジャネェヨッ!!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!!

 オ前ハ()()()()()()()()ヲ感ジタコトハアルカ? 一瞬ノ気ノ緩ミデ全テヲ根コソギ奪ワレル感覚ヲ味ワッタコトハ? 私ハアル!! 残酷ト言ウ文字デハ生温イ、全テヲ犠牲ニシナケレバ到底生ヲ得ラレナイ環境…ソンナいのちヲ奪イ合ウ海ヲ、私ハ死ヌ気デ駆ケ抜ケタ! ()()()()()()()()()()()モ犠牲ニシテ生キ長ラエテ来タ! 今更ソレヲ変エラレルモノカァッ!!』

 

「そう──生き方、()()()()()()()()()。仲間と共に生き抜いてでも、望んだ未来が在ったはずなんだよ! それをよく考えてっ!!

 私は確かに艦娘としては未熟だけど、戦争を知らない訳じゃない。大切なモノが奪い奪われる世界は()()()()()()()()()()()()、身近なところで息を潜め、ある日突然奪われ…喪って行くんだ。

 それでも──だからこそ残されたヒトは奪われた痛みを知っている、喪ったからこそ他ニンに優しく在ろうと出来るし、守りたいと思えるんだ! 貴女もきっと… 勝利しないと生きられないこの過酷な世界で()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!」

 

『黙レェ! 知ッタ風ニ語ルナト言ッテイル!! モウ良イ──聞キ入レナイナラバ貴様ハココデ! 沈メッ!!』

 

 

 

 ──ボオゥッ!! ズズズズズ…ッ!!

 

 

 

 深海金剛がそう言い放ち腰を落とすと、右手周りに一瞬にして悍ましい死の気配漂う紫色のエネルギー球体が出来上がる。それは──リミッターを外した影響か──先ほど打ったモノと比べ一回り大きく、より色深く、死の気配を濃く匂わせる。大気が震え、稲妻が激しく打ち鳴り、低く唸るような何かが渦巻く音まで聞こえて来る。過剰威力の風圧暴力に、エリも腕を交差させて旋風を防ぐ。

 

「っく…!」

 

『シズメ…シズメシズメシズメシズメシズメシズメシズメシズメシズメシズメエェェェェェッ!!』

 

 当たれば即死、どころか世界に悪影響を与えかねない鬼神の一撃。どうすればこの窮地を脱することが出来るのか…?

 エリの絶体絶命の場面を、離れた場所から観ている拓人たちも思案する。だが──()()()()()()()()()()()()

 

「…っ! 望月…策を考えてくれ! お前ならこの状況を逆転出来る筈だろう!?」

 

 拓人たちの元にも届いた吹き荒ぶ嵐に耐えながら、天龍は一縷の望みを託して望月に尋ねる。しかし…それだけ行き詰った状態であるのか、奇策に関して一家言有る望月ですら苦し気に唸りながら頭を掻いていた。

 

(やっこ)さんの魔力に限界が無い以上、どっかからそれに比肩するエネルギーを持って来て相殺するしか…いや、()()()()。幾ら姐さんが思い通りになる能力持ってるからって想像にも限度がある、()()()()()()()()()()調()()()()()()()…!」

 

「──…! そうか!!」

 

 望月のぼやきを隣で聞いていた拓人は、突然何かを閃いた様子で翔鶴に呼び掛ける!

 

「翔鶴! 一瞬で良いから()()()()()()()()()()()()()()! エリには通信機が無いから、この爆音が飛び交う中で意見を伝えるには、それしかない!」

「えぇっ!? 危ない…って言って聞く訳ないわよね、分かったわ!」

 

 拓人の考えを承諾すると、翔鶴は言うや否や拓人を両腕で抱きかかえて()()()()()()()()()()()()()()()()でエリの近くへ瞬時に移動した。どうやら身体を密着させることで他者と共に移動することも可能のようだ。

 

「…っ! タクト!? どうして…危ないよ!」

「エリ、時間が無いからよく聞いて! 深海金剛は()()()に蓄積された負の感情を媒介に限界突破した、だったら──()()()()()()()()()()()()! この海に在るのは…絶望だけじゃない筈だよ!!」

 

 拓人の言葉に強く頷く翔鶴。フタリの姿を垣間見たエリは──突破口を自身の(なか)に想起した!

 

「──そうか! 分かったよタクト、翔鶴も…フタリともありがとう!」

「うん、こんな窮地…()()()()()()()()()()()()()()()!」

「頑張って!」

「うん! 良し──やってやる!!」

 

 拓人たちが言いたいことを終えて光になってその場を立ち去る中、エリは右手に意識を高めるため腰を深く落とし、右腕を後方へ引っ込める。そして──頭を空っぽにして()()()()

 

「(この海に残された希望の光…かつてこの地に集まりし勇者たち、大切な人を守る戦いにイノチを燃やし尽くした戦士の魂たちよ! お願い…私の声が届いているなら、貴女たちの力を──貸して!!)」

 

 

 ──コオォ……ッ!

 

 

 エリが頭の中で念じ祈りを唱えると、その願いが通じたのか──エリの右手に()()()()()()()()()()()()()()()。エリの周りには小さなちいさな丸く黄金(こがね)に輝くエネルギーが無数に浮き始める…!

 

『ナッ!? クソ…!』

 

 深海金剛がその異変を察知して更に力を蓄えようとするも、球体は僅かに震えと歪みが出来るだけで()()()()()()()()()()()()()()()

 

『マサカ…コレガ、限界ダト?! …ッ! ゥウウヲオオオオオオオオオオオオッ!!』

 

 深海金剛が吼え猛るも、現実は()()()()()()()()

 エリの右手に溜まりゆくエネルギーはやがて山吹色の球体となり、静かに、色鮮やかに、生の暖かさすら感じるそれは、完全に深海金剛の()()()()()とは対となる()()()()()()と相成った。

 

「──ありがとう、皆。さぁ…これが()()()()()!! 私の──バァーーーニングッ!! ラァーーーーアブッ!!!

 

『ッ~~!! クッソガアアアアアアアアアアアアァッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──ズドオンッ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは──巨大な力同士がぶっつけ合う爆心地となった。

 

 双方の右手に溜め切り高まったエネルギーを、真正面から、全く同じ角度から拳を繰り出す要領で叩き込む。これが人型であれ兵器と謳われた少女たちから繰り出される()()()()()()()()()()()高密度エナジーの衝突…その二つの力は均衡を保ち、右拳を打ち合わせながら相手に()()()()()()()()を突き当てようと尚力を込めるエリと深海金剛。しかし──それが簡単に破られることは無く、過剰威力によるエネルギーの波を耐えながら両ユウともその「時」を待つ。

 

「ぐうぅ…! (届いて…もう少しだから…!)」

『グルゥゥ…ッ!!』

 

 歯を食い縛りながら自身や海の戦士たちに尚祈りを捧げるエリ、必死の形相で勝利を守らんとする深海金剛。激烈に衝突しながらも水と油のように綺麗に別たれて未だ混ざり合わない黄金と紫の()()のパワーバランスは、善と悪、正義と悪徳のような表裏一体の関係に見える。

 

 それこそが──この戦いの漸くの終着を意味するのか…?!

 

 

「──行けえええええええええええええええええ!!!」

 

 

 拓人が、他の艦娘たちが叫ぶ! エリの最後の一押しに成らんことを願い叫んだ!!

 

 

「──…っ! 届けえええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!

 

 

『──…ッ!』

 

 

 

 ──ズゴアッ!!

 

 

 

 エリは拓人たちに背中を押されて、魂の叫びを放つ。その時再びの()()が起こり──エリの右手の神気が()()()と均衡を破り、黄金の波動が深海金剛を呑み込んでいく…!

 

『(──…アァ…敗けルノカ、私ハ。でモ…何と、心地良い…!)』

 

 勝利に執着した鬼神は、初めて味わう圧倒的な敗北感に──寧ろ清々しささえ宿すほどココロから満たされていくのであった…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 ──そうして、激しい戦いが在った地に何度目かの静寂が訪れる。

 

 死闘を演じた二隻(フタリ)の周りには──穴ぼこだらけになった水底で──エネルギーの強大さを物語るように、広く大きく抉られたようなクレーターが出来上がっていた。その中心では…服も肌も、何もかもボロボロとなった()()()、肩から息をして立ち尽くすエリ(金剛)と、相対するも平伏すように膝を折る深海金剛の姿が。そんな鬼神たる深海金剛の右腕は──()()()()()()()()()()有る筈の部位が見当たらなかった…!

 

「あれでは()()()()は使えないだろう、全快する手段が無くなったと言うことは…!」

 

 ──()()()、だが()()()()()()

 

 天龍の現状を鑑みての言葉、言い切らないが何を意図するモノかは解るし、ダレしもがそう考える、だが──数々の激戦を乗り越えたモノたちは訝しむ。何故なら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と容易に思い至れたからだ。

 果たしてここからどんな戦術で這い上がって来るのか、警戒を解かない艦娘たちだが…彼女たちの指揮官の考えは違うようであった。

 

「──エリ!」

 

 走り出す。それは()()()()()()()からこそ出来る()()()、拓人の一手に緊張で動けない艦娘たちはそれを送り出す形になってしまう。

 

「タクト戻れ! …っ、くそ!」

「司令官! お待ちください!」

 

 拓人を追いかけて駆けだそうとする天龍と綾波、であったが──次の瞬間、拓人の考えが間違いで無いことを否応なく知ることとなる。

 

 

 ──ボロ…ッ!

 

 

 何かが崩れる音が響く、それは──深海金剛の角がひび割れ、欠片が叩きつけられるように地に落とされた瞬間を意味している。

 

「あれは…()()()()()()()! 幾ら深海金剛でも、カイ状態から元に戻るこたぁ無理だったんだぜ!!」

「っ! 危ない!」

 

 望月の歓喜にも似た声で紡がれた()()()()()()()()()に対し、何と──それに気づいたエリは()()()()()()()()()()()()()。それはつまり──エリの能力「出来ると思えば何でも実現する」力で、滅びゆく深海金剛をも助けようとする意思表示であった…!

 

『ウゥラッラァッ!? エリさんは一体何を?! まさか彼女を助けようと…?!!』

「やめなさいエリ! 深海金剛を助けたとしても、貴女の話を聞くとは思えない!!」

「救うって決めたの! 我儘だとしても私はワタシの意思を貫き通す! 貴女は…生きて…っ!!」

 

 野分の戸惑いと翔鶴の制止を振り切り、エリは轟沈()へ向かうモノへ手を差し伸べる。自分には()()()()()()と…悪を倒し正義が勝つなどというありきたりな結末を認めはしないと、傲慢に似た感情に突き動かされる。だが──

 

 ──ガシッ!

 

 エリの突き出した腕が、何モノかの手に掴まれ止められる。それは──他ならぬ深海金剛であった。無くなった右腕とは反対の左腕でエリの手首を握っていた。

 

『──余計なことはしないの、ワタシは…()()()()()()()

 

「…!」

 

 それは──先刻激情のまま己を語ったモノから出たとは思えない、穏やかで柔らかい声色であった。

 手首を強く掴み取られているエリは、その言葉から深海金剛から毒気が抜けて、戦闘継続する意思も勝利への渇望も()()()()()()()ことに気が付いた。呆気に取られた一瞬、拓人がエリの下へ駆けつけ声を掛ける。

 

「エリ! 大丈夫!?」

「…タクト」

『……あぁ、丁度良い。遺言がてら聞いてほしいことがあります、良いですか…次代の海の守護者たち?』

 

 深海金剛の先ほどとは違う温和な態度に、何事かが起こったと悟った拓人は彼女の意思を組んで頷く。拓人がエリの背中を優しく叩いて無言で諭すと、エリはそれに従い伸ばした手を力無く降ろす。

 

「これは…一体何が?」

「これも()()ってぇヤツかい? まぁ良い…警戒しながら様子を見るとしようぜ」

「了承。しかしこれは…あの深海金剛が、何と柔らかな顔を」

「きっと──エリや拓人の願いが通じたのよ、見えない何かが…それを叶えてくれた、のかも?」

『ウィ…そう思いたいです。シに際であろうと彼女が何モノであるか()()()()()のなら』

 

 ──何かが違うと察した他の艦娘たちが見守る中、拓人とエリが並んで深海金剛…否、()()()()の前に立つ形を取ると、先代金剛は満足した様子で話し始める。

 

『エリ…貴女の言うとおりです。ワタシは今まで戦う意義を見失っていた、見えなくとも…突き動かされるワタシの気持ちが、戦い勝てと唸るワタシの執着が、ワタシを鬼の神として存在させていたようです。勝つことこそワタシの存在意義だと──自分を、忘れ失くしていました。

 でも──()()()()()()()。ワタシは()()()()()()()()()()()! 愛するヒトビトを、艦娘の仲間を、そして…未来に生きるモノたちを、()()()()()。決して自己のために力を揮っていた訳ではないと、得心しました。有り難う…全ては貴女が、私の全力を受け止めてくれたからこそ!』

 

 小刻みに震える度に崩れる身体、それでも微笑みは絶やさず感謝を伝える先代金剛。しかし──御礼を言われた当のエリは、悲しそうに呟く。

 

「…本当に良いの? 貴女は今までヒトに尽くして来た、それが…こんな結末なんて…!」

『良いんです、満足してます。戦って理解したと思いますがワタシの「力」は──この世界で生きるには制御が難しい、ワタシが生き残ることで愛するモノたちを逆に傷つけてしまうかもしれない。だったら──彼ら彼女らのためにイノチを懸ける、こんなに気持ちの良い退場は無い。それで…良いんです』

 

 エリの言葉に、信念のこもった優しい表現と満面の笑みを浮かべる先代金剛。それを眼にしたエリも「英雄斯く在りき」を痛感し、何も言い返せなかった。

 

『貴女たちが止めてくれなかったら、ワタシは間違った道を歩み続けることだったでしょう。感謝しています…天龍、綾波、望月、野分、翔鶴、そして──エリ。本当に有り難う…どうあれ最強の艦娘を自負していたワタシを見事押し止めた貴女たちこそ──次代の守護シャに相応しい! だから…この世界を、貴女がたに託します!』

 

「…そっか! 分かった! こちらこそありがとう。貴女が守り抜いたこの世界を、今度は私たちで守るよ! 安シンして…ね!」

 

 先代金剛の言葉とそこに込められた覚悟を受け止め、エリは拓人艦隊を代表して使命を果たすと返す。先代金剛はそれをにこやかに聞き入れるも、直後晴れない曇り顔を晒す。

 

『──…あぁ、出来れば。昔の仲間とお別れしたかったのですが、贅沢ですよね?』

 

「それは──」

 

 

「──はっ! そうだ…!」

 

 

 先代金剛の小さな我儘にエリが言い淀んでいると、拓人は何かに気付いた様子で腕に着けた「映写型通信機」のダイヤルを回していた。

 

「タクト…?」

「昔の仲間って言葉で思い出したことがあって! 本当は加賀さんたちに連絡したいけど…時間が無い! えっと…金剛さん? ぁあ()()()()()()()()()()! 確認ですけど、()()()という名前に覚えは?」

『…! シ、ゲ? シゲとは良く話した仲だけど…何故?』

「そうですか、良かった。実は彼は今も存命していて、変わり果てた貴女を討伐することに最後まで執着していた。自分が幕を引いて上げないとって…彼は、()()()()()()()()()()! 彼もまた貴女の顛末に納得していなかった! だからいつまでも想い続けて…心の鎖で雁字搦めになってしまったんだ!」

『っ! シゲ…』

「こんな状態の貴女を見せられてもでしょうが、それでも──行き成りですみませんが()()()()()()()()()()()()()()! …良し繋がった、シゲさん!!」

 

『──タクトか! どうじゃったそっちの様子は、また例の如くST・MTシステムが吹き飛んでの、映像が…む!?

 

 拓人が声を掛ける、腕の小型通信機に映される人影は…老いてこそあれ、その立ち姿に懐かしき情景を思い起こす。先代金剛は──友、或いは恋人と再会したかのように喜悦が溢れ言葉を零す。

 

『──……ぁあ、シゲ…!』

 

『おぉ、おぉ……おおおぉっ! こ、金剛…! お前…そんなボロボロになって、そうか…ワシの名を呼んだのは…()()()()()()()()()、ぁぁ…良かったっ!!』

 

 先代金剛に名を呼ばれたシゲオは、皺の入った頬に滝のような勢いの涙を流して喜んだ。

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 それからフタリは、時間が許す限り会話を続ける。

 

 先代金剛は──記憶を失くして暴れてしまい申し訳ないと謝罪し、次代の艦娘たちが身を挺して止めてくれたことを誇りに思うと吐露する、そして「貴方は余計な貫禄が付いた、前の方が可愛げが在った」とはにかんで笑った。

 

 シゲオは──暴れてしまったのは仕方がないと諫め、次代の艦娘も提督も自分が育てたようなものだと鼻高々に言ってのける。そして「誰だって歳を取ればこうなる!」と余計な貫禄云々に対し自論で言い返す。

 

 それは、フタリが喪い二度と元に戻らないと諦めた…遠い日の温かな時間。確かな安らぎが其処には在った。シゲオが執着しこびりついた汚れのように取れなかった愛情(それ)は確りと落ちていき、後には清涼な匂いが届く。

 

 

 ──そして、愛を込めて別れの言葉を告げる。

 

 

『──有り難う、愛してる。…しっかりね!

 

 

 ──ピシッ

 

 

 互いに笑顔を浮かべたまま、眼を見つめたまま佇む。間もなく──片方は形を保つ限界の軋みを鳴らすと、そのまま崩れ去り塵は風に乗って消えていった…。

 

 ──世界(うみ)を護りし大英雄、逝く…。

 

『……ッ』

「シゲさん…ごめんなさい、このまま何も言わずに旅立つなんて、貴方にとって酷なことだと判断しました。こんなことを考えた僕を()()()()()()()()()()

「タクト…」

『いや…良いんじゃ。有り難うなぁタクトよ、おかげですっきりしたわい。そして──深海金剛の轟沈(しょうめつ)をこの眼で、確り見届けた! ようやった…無謀な作戦ではあったがお前たちは見事にやり遂げた! この戦いは…後に語り継がれる伝説となるじゃろう』

 

 涙を腕で拭き取りながら、シゲオは作戦完遂を改めて告げる。それを聞いた拓人たちが取った行動は──

 

「作戦、成功…はぁっ!」

「す、すごく…疲れた!」

 

 ()()()()()()、全ての力を出し切り世の安寧を取り戻した拓人とエリは、土肌を背に脱力し紅い空を見上げる。何事かと駆け寄る天龍たちが拓人に尋ねると…?

 

「せ、成功…したん、だって。作戦…」

 

「──はあぁ…!」

 

 拓人の言葉を皮切りに、ドミノ倒しのように倒れる艦娘たち。長い…永い戦いの連続を乗り越えて、漸く望みを叶えたと知覚した。もう気力もないと大の字になって寝そべる──少しだらしのない──拓人艦隊。

 

『ほほっ、そりゃあそうなるじゃろうなぁ。良いよい、長門たちがもうすぐ其方に辿り着くはずじゃ。運んでもらえぃ! もうドラウニーア一派も深海金剛も居らん、世界は──()()()()()()()()

 

 そう──世界は救われた。

 世の秩序安寧の転覆を狙う傲岸不遜の男、それに付き従う小さな死神と幾重にも渡って戦い続け、その度に成長し、決着を着けた直ぐ後にまさかの「闇落ちしたかつての大英雄」と戦わされ…行きつく暇もない死線の連続、それを()()()()()…! これは正に偉業と言わず何とするのか…!

 それでも…彼らは変わらない。生き残れた安堵に包まれては朗らかに笑う、そうして日常に戻っていくのだ。

 

「そうだ、エリ──おかえり!

 

「っ! …うん──ただいま!

 

 そう、死線の中で零れ落としてしまった慈愛の聖女も、また元に戻って来てくれたのだ!

 

 ──これは、正真正銘()()()()()()()()()()であった…!

 




 ──もうちょっとだけ続くんじゃ。
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