艦これすとーりーず ―僕が異世界版艦これの提督になった件について― 作:謎のks
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──夢を、見ていた。
海の、水底に沈む夢。
永遠に這い上がれない。
永久に戻れない。
永い時間、一瞬のような時を過ごす。
…そんな折、僕は人魚を見た。
慈愛に満ちた目で僕を見つめ
もう大丈夫、と言いたげに僕を抱きかかえ
僕を水上へ引き戻してくれる、光。
でも、あぁ、そんな、バカな。
こんな時も僕は、なんて暢気なんだろう。
彼女は、僕の…──
・・・・・
──ん?
あれ…何だ…?
僕は一体……ここは…天国?
「…きて」
ん? これは…
「…てく……い」
…っは! この展開は…まさか「転生」!?
事故とか病気とかで死んだ主人公が、目を覚ますとそこに広がるのは「異世界」、死んだことで異世界転生した主人公は、そこで第二の人生を歩む的な!?
ま、まさか…(モア)
…おお勇者よしんでしまうとは情けない、なんて言うとでも思ったか!? ぅおっしゃああい! 僕の「ゼ○から始める異世界生活」の、はじまr
「──あ、起きました?」
「………」
寝ていた僕の顔を覗き込んでいるのは「二頭身」の少女…少女、というか僕の手程の大きさなので「妖精」と言う方が正しいか? ただこの妖精はどこかで……あっ!?
「通信エラーが発生しました!? (がばっ)」
「ブラウザの再読み込みをお願いします〜」
ぁあ最悪だよね?! 特にイベントの日にやられた時にゃね!? え、f5? ゆ"る"ざん"!
「…ってあなたエラー妖精さんでは?」
エラー妖精、艦これはブラウザゲームなので通信が不安定になると即「落ちる」。その時に通信エラーの表示と共に画面に出てくるのが「エラー妖精」。容姿は女子制服に帽子、そして猫、何故か目の前に吊るしている(抱くんじゃなくて両足を持ってる、動物愛護団体〜?)ついたあだ名は「妖怪猫吊るし」。
実際はこの娘は「初代」なので、2代目に代替わりした今は見る機会は少ない、筈だが…?
「何故か僕の目の前にいるという」
「覚えてませんか? 貴方は死んで「転生」してこの世界に来たんですよ?」
「…What’s ?」
この猫吊るし(流石に猫は居ないが)何をほざきやがった? 僕はトラックに轢かれて……それで…!
そうか、思い出した! 何か白い空間にいつの間にか立っていると思ったら、妖精が出てきて「ワタシ神様貴方の願い叶えマース」とか言ってきて…それで。
・・・・・
「艦これの提督になりたいです!」
「了解しました〜、世界観は如何しますかぁ?」
「ホワッツ??」
「艦これ…に限らず異世界転生は「人が妄想する程」あります。それこそ艦これはモノがものだけに星の数ほど、無限に存在します〜!」
え、何それ怖い。
つまり自分の妄想を実現した世界で第二の人生を過ごすのか。うーむ…?
──異世界に興味ある?
…よし、それじゃあ折角だから。
「過去のしがらみがない、超ファンタジーチックな「ザ・異世界」で! あ、ちゃんと艦これ要素を取り入れて下さいね? 秘書艦は金剛で!」
「ややや? 少し複雑ですねぇ?」
「あぁ…まぁそうですよね? ごめんなさい今のな」
「でもわっかりましたぁ! 少々お待ちを〜」
「え」
妖精は指先でちょんと空間をつつくと、そこからワームホール的な穴が出現…すげぇ、次元の穴なんて初めて見た。
そして妖精はなんか…カタログ? のようなものを見ているようだ。
「ん〜? あ、これは良いかもですねえ? …では、チチンプイプイヒラケゴマー!」
…ありきたりな呪文を唱えると、次元の穴の色が変わる。
「さて、これで完了です! 後は向こうの世界で逞しく生きて下さい〜!」
「えちょ」
次元の穴からバキューム的な吸引力抜群の風が…あ、これは。
「吸い込まれる…っておいいいい!? まだ心の準備が?!」
「…? ややや? これは…」
「え何? 何?? 何なんです?! 説明、説明ぷりいいぃぃぃいいず!!!」
・・・・・
「…で海に投げ出されたって思ったら溺れて、そのまま気を失って、気がついたらここに」
「おやおや、泳ぎが苦手でしたか?」
「いや苦手というか…下手というか(平泳ぎが犬かきになるレベル)」
「それを広義の意味で「苦手」というのでは〜?」
「ああもう、いいよそれで! …で、ここは?」
周りを見回すと、そこは誰かの部屋のようだ。
左右の壁いっぱいに大きな本棚が置かれて、その中にみっちりと本が敷き詰められている。
洋風の絨毯の上に「布団」が敷かれ、僕はそこで寝ていた…洋テイストの部屋に和の象徴の布団。とは何ともミスマッチだが?
…そして僕の身体を見やる、上半身裸、その上に包帯が巻かれていた。つまり…「誰か」が僕をここに運んだ?
「ここは貴方の執務室、そして鎮守府…予定地ですよぉ?」
「はぃ?」
「言ったではないですかぁ、艦これ世界の提督になりたいと? ここはお望みどおりの世界…「のはず」でしたが」
「え?」
「すみません〜。「過去のしがらみ」という部分だけがどうしても取り除けなくて…そもそもそんな世界は例え異世界だろうと存在しないというか…」
「えぇまじか、歴史は繰り返すみたいな? というかそれ知ってたら止めてくれたらいいのに」
「イケると思って…私一応神さまですし?」
「…出来てないじゃん」
「すみません…反省してまぁす」
それ反省してないヤツの台詞だから(真顔)。
「…という事は、ここも過去に大きな戦いがあったワケですか」
「ですです」
「…ん? ここって異世界なんだよね? ちゃんとファンタジーチックな?」
「はい~」
「それでいて艦これ世界、か…まさか何でもありな世界じゃ? 何て…」
「仰る通りです〜」
…え
「何でも、は言い過ぎかも知れませんが…貴方が知ってる艦これとは「絶対違う」と断言出来ますぅ」
「えっ!? 何それ聞いて無いんだけど!!?」
「その方がファンタジーっぽいと思って…?」
「いやいやいや! もうクーリングオフだよ! てかなんなのその世界って!?」
「ご存知ないですか? ここは…」
「! テートク!」
その愛らしい声に目を見開き、思わず力強く振り向く、そこにいたのは…。
黄金色に輝くカチューシャ。
巫女風制服。
そして意地らしく立つアホ毛。
「…金剛?」
「! テートクぅ!!」
僕を見た途端いきなり抱きつく少女…彼女は「金剛」、僕の……。
「よかったデース! もう死んじゃったかと思いましタ!」
「あららぁ? とても積極的ですねぇ? まぁ金剛さんですし? ね、拓人さん?」
「………」
「あらぁ?」
その時、僕の時は止まった。頭は真っ白で何も考えられないけど…仕方ないよね?
「テートク…? (きょとん)」
彼女に逢う事が、僕にとって最大の喜びだから…!
「…これならクーリングオフは心配なさそうです〜、でもいいのですか? ここは…」
──…「艦これPRG」の世界なんですよぉ? …ってあれ? 聞いてます〜? もしもぉし??
・・・・・
これは、始まりの航海。
青年は漕ぎ出したのだ。新たな異世界で、大いなる海原への航路を…。
だが…これは青年にとって、長いながい旅を示唆していたのだった。