艦これすとーりーず ―僕が異世界版艦これの提督になった件について―   作:謎のks

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天穿つ龍は何を視た?

 天龍に呼び出された僕は、彼女と一緒に鎮守府裏の人気のない海岸に来ていた、何故か妖精さんが居なくなってたけど? (どうせすぐ戻ってくるだろうと思うけど?)

 

「どうしたの、天龍?」

 

 天龍は海の向こうの水平線を眺めながら黙っている、どう伝えればいいか考えてるみたいだ。やがて彼女は…静かに語り出した。

 

「…金剛と俺たちがレ級と戦ったとき」

「うん…?」

「アイツは金剛を狙っていた」

「!? …それって、レ級が?」

「ああ、だがそれだけではない。レ級は…「特異点」と呟いた、俺は始めは金剛が特異点だと考えた。だが…あの提督の話を聞く限り、どうやら違うようだ」

「………」

「特異点たるお前と…どういうわけか金剛が狙われている。レ級やその後ろの思惑は見えないが、お前が異世界から来たことを知っている人物は…俺たちやあの提督の他にも「いる」…つまり、これからもお前は狙われ続ける、金剛もな」

「そんな…」

 

 僕が項垂れると、天龍はこっちに向き直り力強く宣言する。

 

「心配するな、お前は俺が守る。ただあまり遠くに行かれても困るからな? なるだけ俺の側にいろ」

「僕を助けてくれるから、わざわざ忠告してくれたってこと? …ありがとう!」

 

 僕が素直にお礼を言うと、天龍はまた海の方に視線を逸らした。

 

「…羨ましいな、俺も…お前のように」

「……?」

「いいや。…お前は金剛を見てやれ? アレにもまだ謎が残っているが、何にしても…お前が守ってやれ?」

 

 天龍は海を眺めながら、僕らを案じてか彼女は凪のように、穏やかで優しい声色で諭した。

 

「天龍、何から何まで本当にありがとう。最初から君は僕を気にかけてくれて…どうしてそんなに親身になってくれるの?」

 

 僕は当然の疑問を本人にぶつける……でも、少し長い沈黙が続いた。

 

「………さあ、な? 昔の俺に…似ているのかもしれん」

「…?」

「…もういいだろ、早く行け」

 

 ぶっきらぼうに告げると、それ以上声を掛けても反応がなくなった天龍。僕は彼女の方を振り返りながら、その場を後にしようとした。

 

「……龍田、俺は………」

 

 最後に振り返った時、彼女は携えた剣を握りしめている気がした…。

 

 

 

 

 

・・・・・

 

「──何を影から見ている、加賀?」

「(…ガサッ)…天龍」

「…金剛の事か? 案ずるな……契約は守る」

「…貴女には、酷なことを頼んでいる、それでも…」

「何…汚れ仕事が俺の使命だ」

「………」

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 そうして…出航の日が来た。

 加賀さんに見送られながら、僕らはまっすぐ百門要塞へ舵を取る。野分と綾波が先頭で見張りをしながら、艦娘たちと一緒に水上を滑る僕。

 …あ、そうそう大事なこと言い忘れてた。金剛含めた艦娘たちは「改」のようだ、改二じゃなくて。艦娘は練度(レベル)が上がると改装っていう強化を受けられる。その強化は二段階あるんだけど…とりあえず(ごく一部を除いて)その二段階目(改二)が最強になれるんだ…いや一概に言えないけど、ゲームシステム的に。

 とにかくまだ強さとしては第一段階目で、これから幾らでも強くなれる! …って言いたいんだけど?

 

「カイニ…? なんだか美味しそうな名前デース!」

 

 それカニだからね? …これは僕が「改二まであとなんレベ?」と金剛に聞いて返って来たセリフ。まさか…この世界には「改二」の概念がない!?

 

 

「正解です〜! でもそれはそれでいいと思いますが〜?」

「良くないよ! …はぁ、金剛改二が見れないじゃないか」

 

 僕はぶつくさと文句を垂れ流した。当の妖精さんは「うふふ〜☆」とか言ってすんごく楽しそうにしてた……ちくしょーまた殺意が沸いてくるぜ…!

 そんな感情を露わにしていると、ふと僕はある光景に釘付けになる。

 

「………うん?」

「ヘイ、提督? どうしまシタ?」

「…アレ」

 

 僕が指差す方向には、望月…オン・ザ・ゴーレム。

 ゴーレムが波を掻き分けながら滑る光景、さながら「一般車両に紛れて走る痛車」の如き圧倒的違和感。

 

「ワォ! モッチーのゴーレムは便利デース! 正に歩く艤装デスねー?」

「ニヒヒ、いいっしょー? 姐さんでもコイツは渡せないよ? アタシ特製のゴーレムだからねん♪」

 

 望月がゴーレムの突き出た平たい背中部分に腰掛けながら「楽チン♪」と言いたげな顔で涼んでいた。

 

「…ねえ、ふと思ったんだけど? そのゴーレム? に名前はあるの?」

「あ〜? ……んーそういや考えてなかったな? めんどいから大将付けてくれよ?」

 

 望月に言われ考える僕。と言っても候補はあるのだが…?

 

「じゃあ…「べべ」って名前は?」

「べべ…? 面白いセンスだねえ? ニヒ、いいよぉ今日からお前はべべだ」

 

 望月がゴーレム…べべの頭を撫でると少しだけ頭を揺らす、嬉しそう? こんなのでも喜んでくれて良かった。

 

「テートク? その名前はなにか意味があるのデスか?」

「ん? ググれば分かるよ「DQM」辺りで?」

「…テートクの言ってることはよく分からないデース?」

 

 まぁ、そうなるな? いや分かってたまるかという事だろうけど?

 そうこうしていると、僕らの目の前には…「仄暗い空」が広がっていく。

 

「…! これは」

 

 嵐の前兆にみられる、大きくうねる波と吹き荒ぶ風、ほんのりと雨の匂いがする、もう間もなく時化てくる…。

 

「このルートは嵐になりやすい、だがこの道が一番に要塞に近づける、このまま行くぞ」

 

 僕の側で警戒していた天龍が呼びかける、でも…?

 

「どうしてこのルートなの? 迂回した方が良いんじゃ?」

「…ふむ、知らない者はそう言うだろう。だが…この海域は海魔大戦の跡地でもある、他のルートには海魔も潜んでいたそうだ……つまり」

「海魔撃退用の「機雷」が今も野ざらしのまま…ということですねぇ〜?」

「…そうだ、艦娘だけならまだしも今はお前がいる、少し酷かも知れんが万が一は避けるに限る……そら」

 

 そう言いながら、天龍はレインコートを僕に手渡す。

 

「…なんか、ごめんね? 僕のせいで」

「気に病むな、お前は見ていればいい……無理はするな」

 

 自分に言い聞かせるように、天龍は声を落として呟いた…何故だろう、悔しさが見えるような…これは「後悔」?

 

「…行くぞ、気を締めてゆけ」

 

 天龍の言葉が合図のように、嵐は眼前に迫っていた…。

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 激しく鳴り響く雷鳴、暴風と強烈な雨、雨粒がレインコートの顔の隙間から叩きつけるように入って来る。

 

「…っう!?」

「テートク! 無理しちゃダメデース!」

「掴まれ!」

 

 風に飛ばされそうになる僕を、天龍が右手を伸ばして僕の腕を無理やり掴む、力強い彼女の握力は心細い思いでいた僕にとっては有難い。

 

「…ありがとう、天龍!」

「礼はいい、早くここを抜けるぞ!」

 

 僕は天龍に引っ張ってもらう形で荒れる海上を進んでいると、横から何やら音が聞こえる気がする。

 

「…! 皆さん回避を! 右舷より敵襲!!」

 

 野分の叫び声、怒声にも似たそれは風、雨、雷鳴の轟きにほとんど掻き消される。なんとか聞き取れたけど…敵襲!? 一体誰が……?

 

「っく!?」

 

 敵の砲撃が艦隊の周辺に着弾、そこかしこに建てられた水柱は僕らに焦燥をもたらす。

 

 そして搔きわけるように現れたのは…?

 

『キッヒヒヒ! 特異点コロス! 特異点消ス!!』

 

 …なんとなく分かってたけど、やっぱそうなるよねー()

 

 まさかのレ級が単体で僕らに攻撃を仕掛ける。この身動きが取りづらい状況を利用して、身軽な彼女は一人ずつ僕たちを始末する気だろうか?

 

「こんな時に!」

「狼狽えるな! …ヤツは一人か、なら嵐を過ぎればこちらが有利だ、それまでは決して近づけさせるな!!」

 

 天龍の言葉に、艦娘たちは威嚇射撃でレ級との境界線を敷く。嵐も相まってさしものレ級も近づけないか?

 

『キッヒヒヒ!』

「なんでこんな時に笑ってるんだ…?」

「…アタシゃどーも嫌な予感がするんだよね?」

 

 望月が呟く、それフラグって言うんだよもっちー?

 

「…! 雨の勢いが弱まった!!」

「よし、このまま……っ!?」

 

 天龍の目前には「軍勢」という言葉がしっくりくるほどの深海棲艦の大群。レ級との挟み討ちの形…罠に嵌められた?

 

『キッヒャハハハ!!』

「あちゃーやっぱそうなるかぁ」

「オゥマイガー!?」

「どうする天龍…?」

「………」

「…天龍?」

 

 雨風が勢いを落とす中、天龍は目の前の深海群を無言で見つめていた…その表情は「怒り」或いは「恐怖」か…?

 

「…またなのか、また…っ! ──」

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 ──彼女の脳裏に焼き付いている事柄は「後悔」。

 

 鉄砲玉のような人生だったと自負する彼女は、無理難題と思われるような依頼も勢いでこなし、事実として達成して来た。…なので、今回もそうだと思っていた。

 

 …だが、彼女は自分の全力を尽くしても、その状況を変えることが出来なかった。

 

 四方八方から突きつけられる敵の砲塔、抗う術など…何処にもなかった。

 

『……馬鹿ねぇ? でも……私はそんな天龍ちゃんが………好き…だな……ぁ…?』

 

 

 

 ──それは必然であっただろうか………

 

 

 

 

 

・・・・・

 

「──…っ! うぅおおおおおお!!!」

 

 いきなりだった。二本の得物を構え哮り声を上げて猛進する天龍、それまで冷静な判断をしていた彼女からは考えられない「愚行」。

 

「!? 天龍!!」

「テンリュー! 戻って下サーイ!?」

 

 僕らの声は届かず、天龍は二刀を振り抜き敵を次々と薙ぎ倒していく。敵が砲撃をするとその場から跳び退き、後ろの敵にダメージを擦りつける。かと思ったらそのまま回転して敵に全力斬撃をお見舞いする。…正に縦横無尽だ。

 

「俺はもう…あの時の俺ではない! 俺は強い、強く…なったんだああああああ!!!」

 

 狂ったように叫ぶ天龍、司令塔がいきなり発狂するなんて…聞いてないんだけど!?

 …って言ってる場合じゃない! 幾ら天龍でもこの数は絶対に捌ききれない!

 

『…キッヒヒヒ!』

「! 不味い! 大将あっちも相手しろよ!」

 

 望月が黒い大鎌を構えたレ級を指差しながら叫ぶ。仕方ない、僕が直接命令するしかない!

 

「レ級は金剛と僕が見てる! だから…皆は天龍を助けて!!」

「!? 大将ソイツは人員割きすぎじゃないかい? アレの強さは大将も分かってんだろ?!」

「でも、このままじゃ天龍が…!」

 

 僕らが言い合っていると、その間に割って入る影……翔鶴だ。

 

「…私が金剛と一緒にレ級を引きつける、それなら文句ないでしょう?」

「いやしかしだな…」

「今言い争いしてる場合? さっさと行きなさい!」

 

 翔鶴の喝に望月も渋々と天龍救出に向かう…「アタシゃ労働はタイプじゃないんだけど」とぼやきながら。

 

「ありがとう、翔鶴」

「…金剛の強さなら確かにレ級を倒せる、でもまた"暴走"をしてしまう危険もあるのよ?」

「その時は僕が止めるよ? 今は天龍が大事だ」

「…はぁ、バカね? まぁいいわ、提督命令でしょ? 今は付き合ってあげる」

 

 翔鶴はそう言うと、金剛の背後に回り弓を構えた。

 あんな言い草だけど、彼女の優しさは伝わっている…後でまたお礼言わないと?

 

「…天龍」

 

 なんでいきなり暴走したのか分からないけど、彼女を失うわけにはいかない…!

 

「絶対助ける…今度は僕らが…!!」

 

 

 

 

 

・・・・・

 

「………んー?」

「どしたの?」

「アレ、提督の言ってた新人たちじゃね?」

「…あ、ホントだ」

「どする? 助ける?」

「……んー、まだ様子見てよ? あの娘たちの実力も確認したいし?」

「そだなー? この程度で音を上げたら、この任務できねーし?」

「そうそ、いざとなったら助けなきゃだけど?」

「えー一人で行ってよぉ、もう眠くてたまらん………zzz」

「いや寝てるじゃん。ダメだよまた怒られるよ〜?」

「…ふふふ、お前たちの実力をとくと見せて貰おう………zzz」

「寝言!?」

 

 

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