艦これすとーりーず ―僕が異世界版艦これの提督になった件について― 作:謎のks
…まさかとは思ったが、奴らこの海域にまで…あの男の仕業か?
…まぁいい、折角の機会だ、試したいこともある。
特異点…お前はあの平穏という名の檻の中で、何も知らぬままでいた方が良かったと後悔するだろう…私は。
──その絶望に染まる刻が楽しみだ、フフフ…
・・・・・
暴走する天龍を助けるため、僕らは深海共の群れとレ級の包囲網を崩すため全力で戦う。
深海の群れに突っ込んだ天龍はもっちーたちがなんとかするとして、僕は金剛、翔鶴とレ級を足止めする…って言いたいんだけど?
「やぁあーーー!!」
金剛の艦砲射撃、迸る爆火と轟音を連続射出する。
「…はっ!」
翔鶴の航空隊発艦、放たれた矢は数多の艦載機に変わり、鉄の雨が敵に降り注いだ。
『イギャ!? イギギギィ?!!』
金剛や翔鶴の連携に翻弄するレ級。
「…これ、すぐ終わるんじゃない…?」
僕はそんなことを呟く、まぁ金剛は「あの」形態? があるし更にトドメにと翔鶴が加わり最強に見える(ブロ語)。
「僕らが戦っても足手まといだし、金剛は翔鶴に任せてみる? …………ん、妖精さん?」
妖精さんは危機を見据えた眼差しで一点を見つめていた……つられて僕も見る。
「…っ!?」
金剛たちが戦いを繰り広げる、その後ろ……レ級の後方に誰かいる!?
「……ふむ」
どこから現れたんだ? 気配も何もなかった……でも確かに存在している、海の上に…立っている!?
そして一言だけでも解る、アレは「男」だ。低く唸るような掠れ声…残念ながら顔はボロボロなマントのフードで見えないけど?
「…! ワッツ?!」
「っな! どこから?!」
金剛たちも気づき男を驚愕の表情で見据えた。相変わらずニヤついた顔のレ級の後ろから、男は呟く。
「…ここまで来るとは予想外だったぞ。然しながら好都合ではある、これはこの場で特異点を抹殺せよという天啓…か?」
顔は暗がりで分からないけど、声色からアイツが嗤っているのは解った…そしてアイツがレ級たちを差し向けた「敵」だということも!
「…お前は誰だ! どうして僕が特異点だって解る?!」
「ほぉ、自身の運命を勘付いたか? ただの木偶の棒というわけではなさそうだな?」
「ぅ、うるさい! 僕だって鎮守府連合の提督だ! お前は…ここで捕まえてやる!」
「フッ! 生意気な…」
鼻で一蹴すると、謎の男は金剛と翔鶴を見つめた。
「……さて? 実験といこうか」
そう言うと、男は懐から何かを取り出す…アレは、ネックレス? 先っぽに何かついてる……赤い…石?
「…! 皆さん、今すぐここから退避してください!」
妖精さんが警告を発した。一体何が……僕らが思うより先に、男は呪詛を唱え始める。
「眠りし憎悪を呼び起せ……希望の魂は冥闇に…『堕落』せよ!」
その言葉の後、響くような鉄を打ちつける音と共に赤い石は不気味に紅く輝く…その光を見た二人は。
「……ッグ?! …っう、っぁあああアアアアア!!」
翔鶴が狂った咆哮を上げた、目を剥き出しギザギザの歯を見せつけ…怒りに滾る獣のような変貌を遂げた。
「!? ショーカク!! しっかりして下サイ!?」
金剛は何ともないようだ、驚きながらも反転してしまった翔鶴を心配する。男は…その結果を「残念がった」ようだ。
「…むぅ、やはりまだ完全ではないか……まぁいい、思わぬ収穫はあった。ここまで憎しみを刻まれた艦娘がいたとは?」
「お、お前…翔鶴に何を!?」
「フハハハ! …案ずるな、私は何もしていない。彼女に眠る憎しみを解き放っただけ」
「っな!?」
憎しみを解き放った? …まさかあの石が!?
「…経過は視認した、これ以上お前の前にいることは得策ではないか? …残念ながら私はまだ道半ば、心惜しいが今宵はここまでとしよう」
レ級が男の背中に抱きつくと、男はその場を立ち去ろうとする。
「っ待て!」
僕が追いかけて行こうとすると、豹変した翔鶴が目の前に立ち塞がる。
「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」
「!!?」
なんか呪いの言葉呟いてる!? 目が…ひぃ!? 目がひん剥いてる! チョー怖!!?
「テートク!」
「金剛! …良かった、君は何ともないみたいだね?」
「ハイ! でも…」
辺りを見回すが、ヤツらは何処にもいない…影も形もないって感じ。
完全に逃げられた、くっそー…一体アイツは何がしたいんだ!?
「…翔鶴のあの状態は、もしかして連合の艦娘たちがどうにかなっちゃったのも?」
「定かではありませんが、無関係とは思えませんねえ? …とにかく彼女を元に戻すには、彼女と戦うより他ありません!」
うぅ…まさかこんな事態になるなんて…あのスキュラの時といい、僕になんの恨みがあるの!?
「ショーカク! 待ってて下サイ! 必ず助けます!!」
「うあああぁああああ!!!」
異例の展開になった艦娘同士の戦い…金剛対翔鶴、果たして翔鶴は助かるのか…?
・・・・・
金剛と翔鶴の対立は、離れた場所で天龍救出に向かった望月たちにも伝わっていた、それは彼女たちの砲撃、爆撃の撃ち合いによる轟音が耳に響いたのだ。
「…!? おいおいおいおい、こりゃ不味いんじゃないか?」
望月の言葉に、野分と綾波も彼女の向く方向を見やる。
「…ふむ、どういった状況でしょうかこれは?」
「知らねえよ…とにかくアタシらもさっさとこれ片して向こうを見に行かなきゃ」
「…暴走」
綾波が呟きながら天龍を見る、彼女はボロボロになりながらも未だに戦いを続いていた。
とはいえ艤装も中破し、足もふくらはぎの部分まで水に浸かってしまっている……後何分保つか怪しい。
「あぁだけどよ…天龍の周りに深海共がうじゃうじゃと来た、これじゃ近づけん」
「ウィ、しかしながらここで鑑賞に洒落込む訳にはいきません」
「あぁ…っくっそー、これじゃ航空爆撃しても同じかぁ?」
彼女たちは機を狙っていた、一瞬でも深海群に隙が出来ればいいが、数の暴力と言わんばかりの密集した黒い怪物たちには、隙など微塵もなかった。
広範囲に及ぶ威力を誇る航空爆撃であっても、流石に本家本元に劣る望月のモノではこの状況は覆せない。レ級さえいなければ翔鶴を無理矢理にでも引っ張って来たのにと後悔する。
…その彼女の思考が停止したのは、天龍の方向を何となしに向いた時だった。
「……ん? あれは……っ!? 天龍避けろ!!」
望月が何かを発見し叫ぶ、言われて天龍が後ろを振り返ると、今にも深海艤装から砲撃を放とうとする重巡リ級の姿が。
『■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ーーーッ!!!』
「!?」
「天龍!!」
自分でも不甲斐ないほどの虚しい叫び、望月の願いは無惨に裏切られ、深海砲撃は天龍目掛けて撃ち込まれた。
「………ッ!」
天龍は死を覚悟する、これだけのことをやらかして負けたのであれば世話ないな? と皮肉笑い。
「すまないタクト、金剛………龍田」
天龍が力なく項垂れ目を伏せたその時……バチバチと何かが迸る力強い「異音」が、耳に響いたような気がした。
「…ふぁ……ねみぃ」
・・・・・
翔鶴の研ぎ澄まされた練度は、憎悪に飲まれようとも健在だった……だって金剛の砲撃全然当たらないし、避け様に艦載機発艦して僕らに攻撃するし、おまけに空から降り注ぐ爆弾の雨のお陰で動きが制限されちゃうし……なんなの? 無窮の武練? バサスロさんなの??
「…っく!?」
「金剛! 大丈夫?」
「ダイジョブだから…提督、私から離れたら…駄目よ!」
金剛は僕を守るように、艦載機からの航空爆撃を捌いていた…素手で殴り飛ばしたと思うと対空砲火で一気に爆弾を消し飛ばす。
「…きゃ?!」
でも…それでも防ぎきれていない、爆弾が金剛の肌を直撃する。幸い小破だけど…これ以上長引いたらどうなるか分からない。
「金剛!?」
「だ、大丈夫…絶対、貴方を守るから…!」
「金剛…」
僕のせいだ…彼女が全力で戦えないのも…僕がいなかったら、ここまで防戦一方になることもなかったのに…!
「…提督、私怖いの」
「…え?」
突然の告白に、一瞬頭が追い付かなかった。
「私…考えていたの。あの時…スキュラと対峙した時にみたいに…怒りに負けて、自分を見失って、貴方たちに何かあったらと思うと…すごく怖い」
「………」
「だから…私はあんな自分になりたくない、貴方を守れる「私」がワタシだって言えるようになりたい。だから…貴方が私の隣に居てくれる限り、何があっても私は自分を見失わないって決めたの」
「金剛…」
彼女の優しさは、むしろ僕の心を締め付けた。不甲斐ないよ…艦娘だからって、こんな純真な少女に戦いを任せるなんて…。
「…ぅぁあああああああああ!!!!!」
翔鶴の鼓膜を劈く叫びと共に、渾身の一撃と言わんばかりの航空爆撃が投下された…狙い、スピード、そして恐らくは威力も段違いだ。…これを喰らえば「終わる」と容易に想像がついた。
「…っ! 提督!!」
金剛が僕を抱き締め、そのまま庇うように爆弾に背を差し出す。
「金剛!?」
僕の叫びに返ってくる言葉は無く、代わりに僕を抱き締める腕に一層の力がこもる。
──…終わった、何もかも。
転生までして金剛に会いに来たというのに…その彼女に戦わせ、何も出来ないまま終わる。
…………そんなの!
「嫌だあああああああああ!!!」
──…なら、助けなくちゃね?
「…!?」
…風?
僕らの後方から一迅のつむじ風が走ると、そのまま爆弾もろとも艦載機を切り裂く「空気の刃」と化した。
「…っ!?」
遠目からの一瞬の出来事だから、判別が難しいけど……いつの間にか現れた「誰か」が翔鶴の懐に飛び込み、そのまま腹部に勢いそのままの飛び蹴りを一発お見舞いする。
「っが!!?」
その威力が凄まじい、まるで弾丸のような蹴りを入れた瞬間、空間が震え、翔鶴の背中から余剰威力の顕れであろう突風が舞い踊る。正に体全体に衝撃が走ったみたいだった。
流石の翔鶴もひとたまりもなく、そのまま崩れるように倒れた…「彼女」は、そのまま翔鶴を抱きかかえる。
「…え?」
一瞬にして決着が付いてしまった…僕は圧倒的な力を有した彼女を見やる。
黒髪サイドテールに鉢巻き、身軽なその恰好は僕には見覚えがあった。…唯一の違いは「首に巻いたマフラー」だろうか?
「…ふぅ、よしよし」
翔鶴を片手で抱え、もう片方の手で額を拭う動作。彼女は…?
「”長良”…?」