艦これすとーりーず ―僕が異世界版艦これの提督になった件について― 作:謎のks
…あ、皆さまご機嫌よう、拓人です。
前回の嫁と仲間との修羅場をなんとか潜り抜けた僕です……はぁ、ホントに怖かった。なんかまだ鋭い雰囲気だし、そんなんじゃないって言っても金剛も天龍も無言だし…ってもっちーニヤニヤしない! 面白くなって来たねぇ〜じゃないから!?
さて、ここで僕らの任務をおさらいしておこうと思います。(大分間が空いたから分からない人もいるかもだし…)っうぉっほん!
まず僕らが現在居る場所は「トモシビ海域」かつて海魔大戦の戦場の一つになった場所、天候が不安定で時々嵐や大雨が降っている。
そんなトモシビ海域に建てられた「百門要塞」文字通り百門の大砲と島を天高く覆う城壁が特徴らしい(加賀さん証言)。
そんなトモシビ海域の百門要塞付近で、艦娘が人を襲う…という事件が発生している、しかもそれが鎮守府連合から派遣された艦娘だからさぁ大変。
まぁ、何らかの原因があるのでしょうが、僕らはその原因を探りに来た…という次第で?
もしかしたらあの「ローブの男」と何か関係があるかもしれないけど、まだなんとも言えない…原因調査の傍らにアイツの正体が分かれば良いけど?
さて、加古たちの情報と合わせると…例の艦娘たちは、最近の異変調査…深海共がうじゃうじゃ湧き出る現象の調査をしていた艦娘たち、望月と同じだね? 彼女たちが忽然と姿を消して、気づいたら人を襲っていた、と?
そして、近くで漁を営んでいた要塞の住人たちにも被害が及んだ、か。…うん、文章だけじゃ実感しづらいよね?
というわけで、僕らはとりあえず要塞まで近づいてみる。金剛を中心に輪形陣…僕は金剛の後についていく。皆僕を守るためにしてくれてるけど…なんか、情け無くなっちゃうなぁ?
「拓人さんは、情け無いが服を着て歩いているような人なので〜何も恥ずかしがる必要はありません〜」
「もうそういうことでいいよ…人が本気で悩んでるのに」
あ、加古たちは今別行動中だからこの艦隊には居ないよ? アタシらが行ったらややこしいからなー、とかなんとか? わけがわからないよ(QB)。
…と言ってたら百門要塞の前まで来たよ。ぐるりと巨大な壁に囲まれた城みたいな建物がお出迎え。巨人…いやなんでもない。
…えっと? 島がすっぽり中に入ってる感じかな? 地面らしきものが見当たらない、海の上に城壁がある感じ。そこから…あった、水門みたいな入り口を見つけた、おそらくアレが正門だ。
そこ以外にそれらしいものはない。城壁に開けられたいやに目につく無数の穴は、大砲の発射口を置くのだろう…「百門」か、なんか数倍くらい多い気がするけど、オソロシッ!
「…ここからどうしようか?」
僕らが立ち往生していると、スピーカーの音が聞こえる。ピーという耳障りな音と共に野太い声が流れる、男…要塞の人かな?
『──あーあー、こちら百門要塞よりヤマザキ、ヤマザキである! そこの艦娘たち、この百門要塞に近づくとは何事だ!』
ヤマザキと名乗る男は僕らに尊大な態度で語りかけてきた。なんかもう…カイトさんならまだしも、ヤマザキなんて異世界感台無しだよ!? 因みに僕は"ヤマザキ"と言われて某学級王が浮かんだよ!
「…あ、あのー! 僕たちは鎮守府連合よりこの辺りの異変を調査しに来た者です! 最近この辺りで変わったことがありませんでしたか!!」
僕が事情を叫ぶと、ヤマザキさんは「ぬっ!?」と言いながら声を荒げ始めた。
『鎮守府連合!? っくぁー! 彼奴らのお陰でこちらは夜も寝られん日々を送っているのだぞ! 貴様ら連合の使いか!? よくもあんな"悍ましい"奴らを寄越しよったな!!』
「っ! あ、あのその話を詳しく聞かせてもらえたら」
『喧しい! 我々は艦娘は全面的に信用しておらん! その上鎮守府連合だと!? 話すことなぞ何もないわ!!』
聞く耳持たないとはこのことか? ヤマザキさんは捲し立てるように言葉を繋ぎ怒りをぶつけてくる。理不尽にさえ感じるその対応に僕は…。
「…っ!」
少し「悪い癖」が出そうになる。僕だけならまだしもなんで金剛たちまで…!
「…タクト」
僕が前のめりになると、天龍が手でそれを遮る。…十分だ、帰ろう。そう彼女が言うと他の娘も背を向けて滑り出す。
諦めの表情といった、見ようによっては疲れたような呆れたような顔になって、彼女たちと僕は一旦その場を離れる。
『ッフン! 逃げ果せるがいい!! だが二度とこちらに近づくなよ! 呪われし乙女共めが、ハハハ!!!』
…僕は悔しくて、無意識に歯を食いしばっていた。
・・・・・
「なんで何も言い返さないの!?」
僕は金剛たちに改めて尋ねた…というか頭ごなしに怒鳴るに近いかな? ゴメンよ…でもこんなの納得出来ないよ。
「…言ってもねぇ?」
望月の言葉に艦娘たちは押し黙る。俯くモノ、眉をひそめるモノ、虚空を見つめるモノなど、様々な反応をみせる。
「…タクト、お前には不思議に思うかもしれないが…あれがこの世界の人々の艦娘に対する考え方だ」
「え?」
僕が疑問に思うと、妖精さんが説明を加える。
「拓人さん? この世界は誰のお陰で、海魔から救われました?」
「そんなの…艦娘たちに決まってる、だったら尚更!」
「そう…しかし、この世界が彼女たちを受け入れてしまったため、望まぬ戦いが続いてしまった…そういった考えがあるのも事実なのですよ」
「っ!? なんで…」
次に天龍が説明する。
「俺たちは海魔大戦の後、平和な世に放たれた…そう話したな?」
「…うん」
「艦娘は、言わば兵器と同等の…いや、それ以上の力を有している。なら…その艦娘たちが国や国民のいざこざに介入すれば…どうなる?」
「…っ!?」
最悪のシナリオが思い浮かぶ、天龍は肯定するように頷く。
「そう、様々な理由があれ艦娘たちは、ヒトに求められるままにその力を奮った。だが…そのせいで終わるはずだった戦いや紛争が、更に悪化していき…終いには「国に艦娘が一人でも居れば永久の平和が約束される」とまで言われるようになり、国や反乱分子はこぞって
「そんな…なんでそんなこと! 断ればいいのに!?」
「それが仕事であれ私情であれ、俺たちには「それしか無かった」のだろうな…兵器として生きてきた俺たちに、今更違った生き方など考えられない。足を止めれば何かが壊れていく、そんな錯覚さえ感じる」
天龍の言葉に、艦娘たちは無言で頷く。
「テートク…幻滅しちゃうカモだけど、これがワタシたちの置かれている現状デース…」
「金剛…」
「っひ! 自分たちから力を求めといて、ヤバくなったらお前たちのせいだって! やぁ〜身勝手だねぇニンゲンってヤツぁ!!」
ヒヒヒ! と望月は皮肉笑いを浮かべた。他の娘も少し寂しいような表情を浮かべる、翔鶴は「殺してやりたい」という殺意さえ垣間見えた。
元は艦娘たちが悪いのかもしれない…でもだからって…!
人間の邪悪な部分が、海魔を、深海共を呼び起こしたかもしれないというのに…邪悪の根源である確証がなければ、人は争い続けるのか? 分からない…でも。
「(間違っている…こんなの「違う」よ!)」
僕は確かな…炎のように焼きつくような思いを胸に灯すのであった…。
「…さて、それは置いておくとして。これからどうする?」
天龍が気持ちを切り替えるように促す。今は考えても仕方ない…僕らは現状を整理する。
「あの様子だと…この辺りで何かあったのは確かだよね?」
「ああ、確実に「居る」…だが確証がほしい」
「要塞をパトロールしますカ?」
「んー? やめといた方がいいぜ? あのオヤジはおそらく見張り員…当番制だろうから四六時中周りを監視してるだろうし? あのオヤジの反応を見るにアタシらがあんまりウロウロしない方が良い」
余計な不安を抱かせないように、か…。それが一番だろうけどさ…。
「…ならば、中に潜入し様子を窺う…というのはいかがでしょう?」
野分が珍しく…って言ったらアレだけど? とにかく建設的な意見を出した。
「え? でも身元が割れてるし…?」
「拓人さん、彼女たちは艤装さえ着けていなければ、普通の少女と変わりありません。あのヤマザキさんも遠目から見た艤装で判別していたようですし、おそらく大丈夫かと?」
「な、なるほど……? んー?」
そう言われてもなぁ…コスプレした少女、まぁそんな感覚か? でも…それでも目立つんじゃないか?
「タクト、それはさしたる問題ではない。問題は…如何にして中に入るか、だ」
「あ…」
確かに、正門は見張られているし、裏口もないし…参ったな、行き詰まったか?
「んー…? 待てよ?」
僕はあることを思いつく。
「どうしました、テートク?」
「…ねぇ? こういうのは?」
僕は艦娘たちにひそひそと耳打ちをする。
「…おぉ」
誰となく溢れた言葉、その手があったか! そう言いたげな表情だ。
「拓人さんにしては、凄く良いアイデアですねぇ〜」
「ほっといてよ!?」
…さて、どのような内容かと言うと?
・・・・・
──百門要塞、正門。
「…すいませぇーん! 俺らしがない商人なんスけどー! 良いアイテム卸したんで如何っすかーっ?」
『…ム? 商船か? 何がある?』
「食べ物、服、後は…お役立ちアイテムってヤツでさぁ!」
『ほほぉ、良いな! 最近は忌々しい艦娘たちの所為で外からの客もめっきり減ってな。…良し、今開ける!』
そう言うと、大きな鉄格子のような正門は、キリキリと音を立てながらゆっくりと上がっていく。
「ありがとうございまぁーす!」
商船はそれを確認し、悠々と中に入っていく。
「…もう大丈夫だよ?」
小さな女の子が、アイテムがあるであろう布が被さった一角に向かい話しかける。
「ばさっ)…ふぅ」
その布の中から出てきた僕ら。
そう、
「あっちー…」
「ひやひやしたケド、上手くいったネ?」
「まぁ、これからだがな…」
「アキちゃんありがとう、僕たちの無茶に付き合ってくれて」
「ううん、お父さんを助けてくれたお礼もしたかったし、お父さんも貴方たちにまた会えて嬉しかったみたいで…なんかこういうのカッコいいな! だって…うふ、子供みたいでしょ?」
「アキー! 聞こえてるぞー!!」
「っもぉー! お父さんの地獄耳ー!!」
操舵室から怒鳴り声、今いる倉庫からアキちゃんの意地らしい声が木霊する。よく通った声からしっかりした印象が強くなる。流石船乗りの娘だ、僕なんかよりよっぽどしっかりしてる。いや当たり前かHAHAHA! (皮肉)
「さて、ここからどうするかな?」
「とりあえず、拓人さんは着替えないとです〜、その格好は流石に不味いですから〜!」
確かに…僕の格好は白い海軍の制服だった。一瞬で正体がバレる。
「後でそれっぽい服をお渡ししますので〜」
「ありがとう妖精さん」
「…よし、先ずは中に潜入し情報収集だ。この数ヶ月で何が起こったか、出来れば内部の様子も見ておきたい」
「わっかりまシター!」
天龍の的確な指示に頷く僕たち。さぁ…いよいよ本格的に任務開始だ!
「タクト」
「ん? どうしたの天龍?」
「…見事な判断だった、お前にはいざという時の機転が利くようだ」
「えっ? あはは…い、いやぁ頭は良い方かな〜とは」
「ははっ、この調子で頼むぞ「提督」?」
「! 天龍…っ!」
「…っほら行くぞ」
ぶっきらぼうに言い捨てると、天龍は支度を始める。
…よーし! この調子でどんどん行くぞー! 目指せ、元帥!! …なんてね!
「……(そう簡単に行きますかねぇ?)」
・・・・・
この時、僕は知らなかった。
この世界における人と艦娘の関係は…。
──言葉では言い表わせないほど"複雑化"していることを…。