艦これすとーりーず ―僕が異世界版艦これの提督になった件について―   作:謎のks

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シゲさんのカジノ

「…心拍数、徐々に低下しています…この子はもう……」

「そうか…直ぐにご家族をお呼びして、最期の別れになるだろう…」

 

 ──ガラッ

 

「…っ!」

 

「む? なんだね君は、ここは関係者以外…っおい!?」

「先生! この子…いつも彼女とお話ししていた…!」

「っ! …そうか」

 

「…どうして」

 

「どうしてこうなるの!?」

 

「言ったよね? 一緒に知らない世界を見に行こうって…なのに……なのにっ!」

 

「何で君がこんな目に合わなきゃならないんだ! …こんなの…あんまりだよぉ!!」

 

「…っ! 嫌だよ…君の居ない世界なんて…生きていたって……そんなの……意味ないよ…っ!」

 

 

 

 

『────ぃ』

 

「…!」

 

「先生、彼女の意識が…!」

 

『ご、めん……な…さい。貴方との…約そ、く……守れ…な……かった』

「駄目だ…そんなこと言わないで……君が居なくなるなんて…僕は…!」

『…(ニコッ) 大丈夫…私はいつも……貴方と一緒………貴方の思い出の中で…いつも……貴方を…見守っ…て………』

「…っ!」

 

 

 

 

 

 ──pi-------………

 

 

 

 

 

・・・・・

 

「…い、おい、タクト?」

 

「…ん?」

 

 …目覚めるとそこは、木造の部屋。僕は…そこのベッドの上で眠っていた……夢を見ていた。

 

 非道い悪夢みたいなヤツだったけど、その悪夢から目を覚まさせてくれたのは、天龍だった。

 

「…あれ、僕は…?」

「覚えていないか? ここはマーミヤンの二階の休憩個室で、俺たちはそれぞれの割り当てで床に就いたのだ」

 

 …思い出した。一緒に事件を解決するんだったら一緒に居た方がいいでしょ? 私たちも楽だし! …と、マユミ氏の手伝わせる気満々の発言によってこのマーミヤンの個室を借りて生活することにしたのだ。

 一応アキちゃんたちには連絡しておいたけど…不満があるとすれば「男だから」という理由で、金剛と一緒の部屋にさせて貰えなかったこと。プライバシーがあるから! とまたもマユミ氏の鶴の一声により問答無用で部屋を割り当てられた。

 金剛も猛反対したが「時間と場所を弁えないと、男に嫌われるわよ?」とコバヤシ氏の一言で渋々受け入れた。でもまぁ…確かに四六時中くっついているのも……うん。

 

「…で、どうしたの天龍? 何か事件に進展が?」

「いや、大分暇を持て余すだろうと思ったのでな? お前を鍛える時間に回そうと考えたワケだ」

「…えっ」

「前にお前が言っただろう? 「やると言ったことをやる描写を入れないと、シチョーシャは納得しない」…とな?」

「えー…言った……かもしれないけどさ……;」

「よし、早速腹ごしらえ前の運動だ。…そうだな、この要塞内を何周かしてみるか?」

「え〜先にご飯食べようよぉ、それに何周するか決めとかないと」

「そんな理屈は戦場では通用せん。いつ如何なる状況にも対応出来るよう身体を作り変えなければ、な?」

 

 お、鬼教官…天龍幼稚園のくせに!

 

「何か言ったな? (むにゅー)」

「い、いっへないれす…ごへんなはい……」

 

 ひとしきり僕の頰を揉みしだくと、満足気に口角を上げながら教官はヒヨッコを連れて外へ出ていった…。

 

「(妖精さん)私は大人しくしてますね~? いってらっしゃ~い!」

 

 

 

 

 

・・・・・

 

「ぜぇ………ぜぇ……っふ、ぅ………!」

 

 あれから小一時間は経つだろうか、朝の人気のない要塞の内部を、これでもかと走り回った。おかげで僕は体力が…いやあるけど。

 この身体は持続力自体はあるけど、天龍曰く、僕の走り方とかがなっていないみたいで、余計な体力消耗に繋がっているみたい。

 

「も、もう無理…目眩がしてきた……あれぇ? 僕転生したんだよね?」

「精神の問題だ。肉体の強化に脆弱な精神が付いていけていないのだ、もっと自分を信じてみろ」

「そ、そんなことで解決出来るかなぁ…;」

「やる前から挫けてどうする。もっと気合いを入れろ、お前なら出来る」

 

 そんな修◯みたいな熱血理論で…;

 

 …嘆いても仕方ない。僕は目を閉じて自分を信じるように念じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──ごめんなさい……。

 

 

「…っ!」

 

 ふとした瞬間、足が止まる。

 

 失ったという虚穴、何もしてあげられなかった無能な自分……そんな自分に()()()()()()()()? …僕の中の何モノかが囁いた。

 立ち止まり、全身を駆け巡る悪寒を鎮めるように、自ら身体を摩る。恐怖に歪んだその顔は、何があったのか語らずとも彼女には伝わったようだ。

 

「…無理にやる必要はない。先ずは基礎から学び、それを自らのコントロールに活かせばいい」

「………うん」

 

 ボクらがそう話し合っていると、向こうから誰かがこっちにやって来るのが見えた。

 

「…ん? なんじゃお主、こんなところで吐こうというのか?」

 

 白髪のご老人が僕らに話しかけて来た。

 ヤマザキさんより見た感じは歳を重ねている印象、だけど向こうが頑固爺さんなら、目の前の人は好々爺(こうこうや)然とした感じ。

 アロハシャツっぽい薄着と腹巻が特徴的なおじいさんは「カカ」と笑いながら僕らを見ていた。

 

「あ、いえ…大丈夫です、お気遣いなく」

「なぁにを畏まっとるか! 若いモンはもう少し横柄でも許されるのじゃぞ? ワシらは死神サマの手が肩にかかっとるから、そんなことしよったら即あの世逝きじゃがな! カーッカッカ!!」

「(言ってることと態度がちぐはぐのような…;)」

「タクト、こういう輩にはあまり関わらない方が良い。行くぞ」

 

 天龍がそう言って僕の手を掴もうとすると…?

 

「…っ!?」

「んん〜〜お主良く引き締まった尻しとるのぉ〜? よい、よいぞぉ? ワシ好みじゃ〜」

 

 いつの間にか後ろに回り込んだおじいさんが、天龍の…お尻を触っている。

 

「っ! この!!」

「! ダメだ天龍!!」

 

 不用意に危害を加えたら、後で住民に何を言われるか分からない。僕は天龍に止めるように言うが。

 

「っほ!」

 

 天龍の拳骨をひらりと躱すと、僕らの真上を軽々と飛んでいくおじいさん……で、出来る! (一回言ってみたかった言葉)

 

「(スタッ)…ふぅ危ないあぶない。もう少し早ければワシの眉間にストライクじゃったな? いやいや老体は労らんと、バチ当たりめぇ? カーッカッカ!」

 

 絵に描いたような師匠キャラだなぁ…ちょっとうるさいけど?

 

「あの…貴方は?」

「ん? ワシか? ワシは只の隠居生活のクソジジイじゃよ?」

「自分で言うんだ…;」

「カッカッカ! …時にお主」

「…!」

 

 これはまさか…「中々見込みがあるの、ワシの下で修行せんか?」というパワーアップイベント!?

 

「…随分ひょろっちぃのぉ? ちゃんとメシ食っとるか?」

「何なのこのおじいさん!? さっきから失礼すぎだろ! …あ」

「カッカッカ! よいよい、若いモンはそうでなくてはな!」

「うぅ…調子狂うなぁ…;」

「…ふむ、もし良ければワシのとこでメシ食ってくか? 先程の非礼も詫びねばな」

「えっ…」

 

 僕は大丈夫だけど…天龍があからさまに嫌そうな顔してるな?

 

「何ならそこの少年だけでも良いぞ? ワシは男だろうが「食っちまう」から、あんまりおススメ出来んがなぁ?」

「いぃ!? (見境なし!? どれだけ寂しい人生だったの!!?)」

「…ッチ、いいだろう。何のつもりか知らんが、タクトに何かあれば貴様もタダでは済まさん」

「おぉw こわいこわいww …冗談はさておき、さてと! んじゃしっかりついて来いよぉ!」

 

 おじいさんは僕らに背を向けると、そのまま飛び上がり建物を飛び移りながら…って早い!? もうあんなところに!!?

 

「っく! タクト、掴まれ!」

「えっ? (ガシッ)…うわぁ!?」

 

 天龍は僕の手を掴みながら飛び上がり、おじいさんの後を追いかける。…いや普通に落ちそうなんだけど!? ひいいぃぃ〜〜!!?

 

 

 

 

 

・・・・・

 

「ようこそ! 我がカジノ「シゲハウス」へ!」

 

 無理やり気味に連れてこられた僕らは、目の前の「ほったて小屋」をカジノと言い張るおじいさんに目を丸くしていた。

 

「…ん? シゲハウス?? ……っあ!」

「どうした?」

「思い出した! ここって"シゲさんのカジノ"だよ! 確か…どこだったかは忘れちゃったけど、シゲさんっていう人の所に艦娘たちが赴く、ってそういうプチイベントがあったんだよ!」

「なに? では…目の前のこのエロジジイは」

 

 僕らの言葉に、ニヤリと笑うおじいさん。

 

「如何にも! ワシは「シゲオ」というモンじゃが、皆からはシゲさんと呼ばれておる。なんならシゲちゃんでもいいのよ☆」

「えぇ…;」

「お主らが何故ワシを知っておるのか、それは聞かんといてやる。遠目から見てもワケありじゃというのは分かるからのぉ?」

「! …最初からここに連れて来るのが目的だったのか?」

「まぁのぉ? まぁそう警戒するな? …先ずは腹が減っておるじゃろ? とりあえずメシにするぞ!」

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 そう言われて、居間に通された僕らは、シゲさんの作った料理に舌鼓をうつ。美味しいけど…味つけが濃いし、量も多いなぁ…。

 

「なんじゃ! まだ食っとらんのか! 食べねば大きくならんぞ! ほれ、ワシの分もやろう!」

「え!? いや、え…こんなに食べれないよぉ〜」

「カッカッカ! 我慢せずに食え、食え!」

「タクト…意外に美味いぞ……遠慮なく食っておけ(もぐもぐ)」

「えぇいやいや…天龍馴染みすぎ;」

「カッカッカ! …さぁて、腹が張った次はカジノらしいことするかのぉ?」

 

 

 

 

 

・・・・・

 

「(カランッ)さぁ、丁か半か!」

「ち、丁!」

「…半」

 

 シゲさんが手に持ったお碗を掲げると…畳の上にサイコロが二つ、出目は「1」と「4」。

 

「半じゃ! …カッカッカ! お嬢ちゃんが一枚上手じゃの?」

「くぅ…!」

「…やれやれ、何の茶番だ?」

「なぁに、ゲームでもしてリラックスと思ってな? 賭けるモンもないから楽しいじゃろ?」

「はい! 最近ゲーム出来なかったから、こういうのでもすごい楽しい!」

「カッカッカ! そうじゃろう! よーし次は……ババ抜きやる人ー?」

「はーいっ!」

「(やれやれ…タクトもすっかり絆されたな?)」

 

 

 

 

 

・・・・・

 

「はーっ! 楽しかったー!」

 

 畳の上に転がり、満足気にため息を吐く僕。

 

 最近は張り詰めた空気だったから、リラックス出来たと思う。シゲさんのおかげだな? この人の人柄はどんな些細な遊びも面白おかしくする…お陰で楽しかった、こんなに遊んだのは本当に久しぶりだ。

 

「…どうじゃ少年? リラックス出来たか?」

「はい、最高にリラックス出来ました。ありがとうございます!」

「うむ。…んじゃ次はジャンケンでもせんか?」

「良いですよ! 負けませんから!」

「…?」

 

 天龍が訝しむが、とりあえず様子を見てくれている。僕とシゲさんは立ち上がり、遠めに向かい合いジャンケンの構えをとる。

 

「最初は…グー……ジャン、ケン…!」

 

「──…ほいっ!!」

 

 シゲさんの眼光がギラリと光ると、そのままの姿勢で瞬時に僕との間合いを詰める(縮地法って言うのかな?)そして…僕の目に向かってチョキで「目つぶし」を狙う。

 

「! タクトっ!!」

「え…うわぁ!!?」

 

 僕は驚くしかなく、防御として手を前にかざす。そんなことしてもダメだって分かってるんだけど……。

 

 ──しかし、不可思議なことが起こる。

 

「…え?」

 

 結果的には…僕は彼の攻撃を「防御した」中指の間を起用に使って、二本の凶器の指を止めたのだ。

 

「何だと…!?」

 

 天龍も驚愕していたが、一番驚いたのは僕だ。僕が何が起こったか分からず呆けていると、シゲさんが口を開いた。

 

「…ふむ、やはり只者ではなかったようだのぉ、お主は?」

「え…?」

「じゃが惜しいのぉ? ちぃとばかし制御がなっとらんの?」

「どういうことだ…?」

 

 僕と天龍が状況を纏めきれないでいると、シゲさんは説明してくれた。

 

「少年よ、お主には類稀なる潜在能力が眠っておる。じゃが…そういうものは体がカチ強張っとると出せるものも出せんものじゃよ?」

「(先ほどからタクトを遊ばせていたのは、実力を引き出すため…っ!?)」

 

 短いが言わんとしていることを理解した僕だが、優しく接してくれているシゲさんに対し、何処か不貞腐れたような態度になる。

 

「…僕が、自分を信じないのが原因と?」

「そこまで言うとらんよ? じゃが、心と体は表裏一体と言う、お主がそう思うならそうなのじゃろうなぁ?」

「そうか…でも、仕方ないですよ。僕は…彼女を助けられなかった。そんな僕が…今更」

 

 僕がネガティブになっていると、シゲさんはすかさずデコピン。

 

「(バチィンッ!!)痛った!? 凄い音した?!!」

「若いモンが何をほざきよるか。…そんなことでへこたれてどうする? お主も男ならいつまでもクヨクヨするでない。今のお主を見て、その彼女とやらが喜ぶかの?」

「…っ! それは…」

「やり直したいだの、もう思い出したくないだの、そんなもんは誰にでもある、じゃから…」

「前を向いて歩け、ですか? そんな言葉…」

 

()()()()()()()()()()()

 

「えっ!?」

「後ろ向きでも、それが自分らしいと思うなら、それで良い! 大事なのは「今の自分を受け入れる」ことじゃ。否定ばかりしとるから力もお主に馴染まんのだ」

「…受け入れる?」

 

 僕がそう呟くと、天龍が僕に言い聞かせるように言った。

 

「タクト、俺はお前が提督として大成出来ると信じている。だから…自分が信じられないなら、俺たちを信じてほしい」

「…っ! 天龍…」

「カッカッカ! ほれ、逃げ場がなくなったぞ! お嬢ちゃんのためにも、しゃっきりせんかい!」

 

 シゲさんは僕に笑いかける。初めて出会った僕らにここまでしてくれた、誰に真似出来るものじゃないだろう。

 この人は…凄いな、こんな風に…僕も他人に対して優しくなれるだろうか?

 天龍、シゲさん、今まで出会った全ての人たちの「思いやり」…温かい気持ちが、僕の中に流れ込んでくる。

 

「──分かったよ、天龍。僕ももう少し…自分を信じてみるよ」

「…そうか」

 

 天龍は優しく微笑み、僕を祝福してくれた。

 

「カッカッカ! 漸くその気になったかの?」

「はい。ありがとうございますシゲさん、僕は…間違っていたんですね」

「うむ、間違いなぞ誰にでもある。それすら受け入れて進めばいいだけのこと」

「…はは、敵わないな? 貴方の言葉はどうしてか素直に受け入れられる」

「そうかそうか。…これからも何かあればいつでも来なさい? 何ならワシが少しばかり稽古をつけてやろう?」

「え、結局修行イベントだったの…?」

「カッカッカ! ほれほれ、早速外へ出るぞ? ワシも久しぶりにうずうずして来たのぉ?」

「か、勘弁して…;」

「…ふふ」

 

 …こうして、僕らの前に現れた不思議なおじいさん「シゲさん」の協力もあり、僕は転生特典の力を遺憾なく発揮できるようになった。

 でも…何故だかシゲさんは、最初から僕らをここに連れて来たがっていた感じがする……どういうことだろう?

 

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 ──やはりこの少年が特異点のようじゃのぅ?

 

 遂にこの時が来たのだな……あぁ、分かっとる。アンタとの約束は必ず守るとも。

 

「…なぁ、”イソロクさん”よ……」

 

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