艦これすとーりーず ―僕が異世界版艦これの提督になった件について― 作:謎のks
「…んー、この辺りだと思うんだが?」
海を滑りながら周囲を見回す望月。
僕と望月、そして野分と綾波は、望月が発見した「海魔石の元」を探すべく、トモシビ海域の百門要塞、その辺りから少し遠くの位置にあるポイントに来ていた。
金剛たちの情報収集の成果で、なんでもこのポイントはかつての採掘場があった無人島があるらしい。もしそこに海魔石…元だから魔鉱石か? それが残っていたら大変なことになるらしい(海魔石への加工自体は簡単なものみたい)ので、とりあえず見つけたらぶっ潰しておいた方が良い。と望月の意見を聞いて、僕らはかつての採掘場へと向かっていた。
…それで、どうして金剛たちが居ないのかというと…?
・・・・・
「そんなのあとあと! 今ウチが満員御礼だからさ、金剛ちゃんと翔鶴ちゃん貸しといてよ!」
…またもマユミ氏の発言であった。
いや、確かにあれだけ閑散としていた店内は、ものすごい喧騒と賑わいに満ちていた。
「お昼だから?」
「そうに決まってるでしょ! これでも少なくなった方だけど、店員は私一人じゃない? だからヤバイの!?」
「わ、分かったよ…二人もそれでいい?」
「うぅ〜どうしても駄目デスかー?」
「金剛ちゃんお客さん人気高いんだよ、明るいし面白いし、ここって短気な人多いから、貴女がいなかったら暴れだすよ!?」
「オーバーだなぁ…」
「私は別に居なくても良いのでは?」
「翔鶴ちゃん、知らないだろうけど男の人人気ダントツだよ。そういう人から「あの蔑んだ目がイイ!」って、ご指名だよ。お客様は神さまオーケィ!?」
「マユミちゃん、テンションおかしいよ?」
「忙しいからに決まってるでしよぉがーーい!!!」
このセリフをcv早見で聴けるんだぜ…プライスレス。
「いんじゃね? もし戦いになっても逃げりゃいいし、アタシはあくまで魔鉱石が破壊出来りゃいいとは思うからよ」
「んー…じゃあそうしようか」
「ごめんなサイ、テートク…」
「良いんだよ、その代わりお仕事頑張りなよ?」
「…ハイ!」
「全く…まぁあまり無茶はしないように」
「分かった、翔鶴は…マユミちゃんをよろしく」
「伊良湖ちゃーん! チャーハン一つね! あ、はやしーアレをあそこのお客様に……なあぁ!? マイちゃん急に踊るなあああああ!!?」
「…了解したわ、流石にアレは見るに耐えかねるわ」
「お願い…あ、天龍は?」
「俺はもう少し情報を集めておこう。後は任せたぞ」
「うん…あれ、妖精さん? ……いないか」
ここ最近妖精さんを見ない気がする。なんでだろ?
「…まぁいっか? じゃあ行こうか」
「あぁ。…しかし大将、当たり前みたいに付いてくるけど、ここにいていいんだぜ?」
「あはは…でもちょっと鍛えてみたから、自分の力を少し試してみたいんだ」
「…フッ(自信に満ちた笑みを浮かべる天龍)」
「そうかい? …ッヒヒ、好きにしな!」
・・・・・
と、いう感じ…しかし関係ないけど、ここで僕にささやかな疑問が。
「…もっちー、君たちの艤装って「どこから出してるの」?」
僕らはアキちゃんたちに頼んで、商船をカモフラージュにして要塞の外に出た。万が一艤装が見られたら艦娘だってバレちゃうし?
その時、望月たちが「いつの間にか」艤装を出していることに気づいた。目を離したら一瞬で、艤装装着が完了していた。
「大将、アタシらはマナで出来てるワケじゃん?」
「うん?」
「要は艤装も「アタシらと同じ」っつう感じ? 念じればいつでも隠せるし、いつでも出せるよ」
「…あぁ! スタ○ドみたいな?」
「なんじゃそりゃ??」
「あはは…え、艤装にダメージが出来たら?」
「しばらく出さないようにしないと、ずっと大破したまんまだな? マナを高速で蓄えりゃ話は別だが?」
「…バケツ、はないよね?」
「あ? マナがバケツ一杯ってか? んなこと出来りゃそれこそ魔法さ」
まーそうですよねー…出来てたんですけどねぇ…ねぇ?
・・・・・
そんなこんなで、僕らは件の無人島周辺にたどり着いた。
「…っ! コマンダン、敵深海勢力発見!」
野分の叫びと共に、悍ましい唸り声を発しながら駆けてくる駆逐イ級の大群。
『■■■■■■■■■■■■■ーーーッ!!!』
「…全員、合戦準備」
「お? …はいよ!」
僕の号令より、素早く戦闘態勢を整える艦隊。
「
「おう……って、は?!」
望月の驚きをよそに、僕はイ級の大群に向かって駆けだす。
大地を踏みしめるように、それでいて海面を軽やかに滑るように…僕は大量のイ級の中心部へ躍り出た。
「やぁ!」
イ級の一匹に蹴りを喰らわす。威力自体は大したことないけど、イ級たちの標的は僕に向けられる。
「はっ!」
イ級の全方位射撃が着弾する瞬間…僕は飛び上がり、一匹のイ級が、無惨にも僕の身代わりになってくれた。
『■■■■■■■■■■■■ーーーッ!!?』
その後、流れ弾により三分の一のイ級たちに損壊が出た。混乱が生じている…今がチャンス。
「今だ、撃てぇ!」
望月たちも僕の考えを察したのか、すぐさま砲撃に移り、哀れイ級たちは全滅となった。
「…ふぅ」
息を深く吸い、長く吐き出す。
やっぱり、シゲさんとの特訓の成果が出ているみたいだ。以前の僕なら出来なかったアクロバティックな動きが可能になった。…本当は転生直後に使えなくちゃいけないんだけどね?
「すげーな大将、アンタいつの間にそこまで強くなった!?」
駆け寄る望月に、僕は微笑みながら答えた。
「あはは…ちょっと能力をコントロール出来るようにしてね?」
「そうか! いやぁアンタといると退屈しないわー! 今度アンタ用の艤装造ってやるよ!」
望月は嬉しそうに僕の成長を喜ぶ。でも…。
「…こんな感じだったんだね」
「…え?」
「あ、いや。人ってこうやって飛び跳ねるような活躍が出来るのが夢なんだろうな、って」
「大将は違うのかい?」
「ううん。でも…見てる分にはカッコいいって思えたけど、いざ自分がなったら…こんなに虚しい気持ちになるんだね」
「…虚しい、か」
「何でも簡単にできるって、化け物になるってことだったんだね。…こんな力を求めて、人は争っていたんだね」
「…なぁ大将、アタシは姐さんや天龍みたいな甲斐性はないからズバリ言わせてもらうが。…そいつは力のない人間の言い訳にしか聞こえねえよ?」
「望月…?」
珍しく望月が思うところがあったようで、僕に対して「力」について彼女なりの助言をくれる。
「アンタは贅沢過ぎんだよ。アタシらの提督であり、アンタ自身にも戦う力がある。こんなに恵まれた環境にいて虚しいって、そりゃ夢見すぎだろ」
「…そうだね」
「あぁそうとも。だから…そいつに意味を持たせるのが、今のアンタがやるべきことじゃないのかい? バカでけぇ力を振り回すぐらいその辺の猿でも出来る。アンタは…そうじゃないだろ?」
望月は小さく微笑む、僕に信頼の眼を向けてくれる。…少し前の僕なら、適当に茶化して終わりだった。それは僕に他人の真心を受け取る自信がなかったから。…でも、今は違う…と思いたい、約束したしね?
「…ありがとう、望月」
「…へっ、柄にもないこと言っちまったか?」
照れくさそうに笑う彼女に、僕も微笑みを返す。
「そんなことないよ? 君がそう言ってくれることが、僕には嬉しいんだ」
「こんなので良けりゃ、幾らでも言ってやるよ? あ、姐さんたちみたいな甘い言葉は期待すんなよ?」
「ストイックだね…;」
「ヒヒッ、どんなものも叩いて強くしてやんねぇとな?」
そんなことを言い合いながら、僕らは例の無人島へと足を踏み入れた。
・・・・・
砂浜に足をつけながら、僕らは雑木林を抜けて奥の鉱山入り口を目指す。
…あった、草が茫々と生えて見えづらくしているけど…断崖に作られた大きな穴が僕らを出迎えた。枠組みが木でできている「よくある人工の採掘場」だと理解できた。
「ここか…」
「ウィ。何か物々しい雰囲気がしますね」
「確かに…何か「出る」かも」
「っ! コ、コマンダン…お戯れは止してください、ははは…」
「…ん? 野分って幽霊とか怖いの?」
「い、いえ。醜い存在に吐き気と震えが止まらないだけですよ…;」
「…野分の霊的存在への恐怖値、80%オーバー…」
「マドモアゼルアヤナミ!?」
「毎日深海棲艦と戦っているんだから…このぐらいどうってことないでしょ?」
「コマンダン、理性と本能は別なのですよ…」
「本当に何か出るかもな? …見な」
望月が指し示した方向には、粉々に砕かれた木片。…「立ち入り禁止」って書かれてたみたいだ。
「コイツぁいよいよきなくせぇ。鎮守府連合の立てた看板をここまでバラすとは…よっぽどの憎しみがあっての犯行、ってやつだな?」
「…この中に誰かいる事は明白だね」
「あぁ、慎重に進むぞ」
僕らは頷き合うと、そのまま恐る恐ると中へと入っていった…。しかし望月は僕らを先に行かせ、後ろで何かしているようだ。
「…んじゃよろしくな?」
何かを飛ばした…? 彼女の頭上では、確かに何かが飛んで行っている。早すぎて視認できなかったけど?
「望月ー?」
「…ワリィ、今行くわ」
望月が追いついたところで、僕らは鉱山の中へ足を踏み入れた。
・・・・・
不気味な静けさに満ちた、暗闇の洞窟内を進んでいく。RPGっぽいなあ、明かりが松明じゃなくて探照灯なのがちょっと残念だけど…?
「…ん?」
望月が何かに気づき駆け寄る。何かを手に取った…石?
「…ふむ」
地面に卵の殻を割るように叩きつけると、中から光が漏れ出す。
「白い光…?」
「コイツが魔鉱石さ、ここから魔術で印を刻むと、様々な魔石に変化する」
「Beau…美しいです」
「……」
僕らがその命の輝きのような光に見惚れていると、望月が次の行動を確認する。
「何年も使われていなかったせいか土に埋もれてたみたいだが、魔鉱石が欠片でも残ってるんならここは爆破するに限る」
「…そうだね」
「…ん?」
野分が何かに気づき奥に入っていくが、僕らは望月の話に集中していた。
「とりあえずインスタント爆弾作っといたから、適当に壁に取り付けて、全員外に出たら爆破しよう」
「スイッチ式なんだ、望月って本当に何でも作れるね」
「ふふん、天才だし当然」
鼻を鳴らして得意げに望月が話していると、野分が戻ってきた。
「コマンダン! こちらに来て下さい!」
「…?」
何事かと思い彼女が指差す曲がり角の先を見てみると…?
「!? …これは」
洞窟の奥に光が見えている。小走りになりながら近づくとその光は徐々に大きくなっていき…。
「…っ!?」
光が漏れ出す穴の先には、果てしない空間が広がっていた。…その中央には「岩のような魔鉱石」が…!
「なんだこれ…!」
「…人為的なものであることは確かだねえ? あのバカデケェ魔鉱石の下に固定用のプレートがある、あそこだけ床が鉄板、こりゃヤベェわ」
「うん…どんな目的か分からないけど、これも破壊しなきゃ」
「違えよ。それもあるんだが…後ろ」
僕らは望月の言うことの意図が分からず、首を傾げながら後ろを振り返る。
──ミ タ ナ ?
「…!?」
そこには…二足歩行でこちらに近づいて来る何モノかがあった。
「…ロボット?」
僕の言葉を肯定するように、ロボットは機関部から蒸気を発する。
黒塗りの装甲と青い瞳を爛々と光らせ、機械人形はこちらに敵意を向けていた。
『ココヲシラレタカラニハ…キサマラヲ……ハイジョスル…』
「…!」
ロボットの音声に聞き覚えがあった。この声は…あの時の!
「お前は…翔鶴をおかしくしたローブの男」
「っ! 確かか?」
「声がそう感じるけど、中身が機械だったとは思えない。ローブから出ていた手は人間のものだった」
「…すると、コイツは"ダミー"の可能性が高いな? ケッ、リモートコントロールで自分は高みの見物ってか?」
『ナントデモイエ…キサマラハ……ドウセココデシヌ』
ロボットは腕の腕輪の切れ目から光の刃を出して、手前に構える。
「一対多数ってのは、賢い選択じゃないんじゃねえかい?」
僕らは望月の言葉に応えて、それぞれの得物を構えた。
『ハタシテ…ソウカナ?』
ロボットがそう言うと、上から降って来た複数の影。
『キヒヒ!』
やっぱりアイツがいるから、レ級はセットか…ん?
「……」
「あれって「鳥海」…!」
「鳥海、吹雪、五月雨、漣か…こりゃまぁ例の消息を絶った調査隊だなぁ?」
望月の言葉に、言葉を失いただ目を見開く僕。そして…怒りを抑えきれず眉を吊り上げる。
「…お前が調査隊の皆を!」
『ダトシタラ、ドウダトイウノダ…?』
僕がロボットを睨むと、望月が状況説明する。
「大将、おそらく例の海魔石のせいだぜ。アレはマナの力を一時的に中和出来るんだ。その間に言いなりにさせる魔術でもかけられたんだろう」
「…魔術って?」
「魔鉱石を海魔石に加工出来るっつうことは、アイツは「魔術」の使い手だ、まだ推測の域だがな」
「っ! 魔法使いってこの世界にまだいるの?」
「説明が難しいが…簡潔に言うと「ほぼ絶滅」してんだ。マナが魔術行使出来ねぇほど失われちまって、魔術師って役職もお役御免だったんだが…」
「アイツは魔術を使っている…って?」
「石を加工するぐらいなら少量のマナでも出来ないことはないが…まだ居たんだな、今じゃ飛ぶことも火を出すことも不可能だってによ」
…どうやら、敵は魔術師の可能性が出てきた。でも…それだけじゃない気がする。
早合点は危険だ。…僕がそう思っていると、ロボットは勝ち誇ったように事実を並べた。
『コレデタスウトタスウ、サラニカズハコチラガウエ。…ケイセイギャクテンダ』
「っは! アタシは…結果が出るまで諦めねーよ!」
…こうして僕らは、謎のロボットと操られた艦娘たちと戦う。
一体、この巨大な魔鉱石に何が隠されているんだ…?
──To be continued …