艦これすとーりーず ―僕が異世界版艦これの提督になった件について― 作:謎のks
ほら、伝説的なアレだよ?
昔むかし、遥か昔…この世界には”魔法”がありました。
生命の根源たる「マナ」の温かな光と、確かな未来を築く術(すべ)がありました…。
万物に宿るマナの加護の下で、自然も、時間も、運命ですら自分にとって良いものとなった時代。
そこでは幸せな人生は当たり前。そこに苦行や、絶望、嫌なことなんてこれっぽっちもありません。正に「希望」に満ち溢れていました。
──でも、人は”欲望”を抱いて生まれてしまったのです。
欲望はどんどん膨れあがり…やがて世界の在り方を変えていきました。
もっと欲しい、もっと幸せになりたい…その穢れた想いは神秘の力である「マナ」には毒でした。
マナの恩恵が徐々に薄れ、魔法が消滅しかけたその時でした…。
──「闇」が世界を覆いつくしたのは──
マナの対となるように、闇は母なる海に現れた。どろどろの、真っ黒な泥のような怪物は、人の欲望が生み出した邪悪そのものでした。
──その名は"海魔"──
海魔は世界を蹂躙し、闇は世界に”破滅”を齎そうとしていました。
人々は恐怖し、困惑し──そして”絶望”しました。
世界は終わりだと…我々には何も残されていないと…。
──そんな暗闇を照らす為、救世の勇者が天から遣わされました。
──その名は、大提督「イソロク」──
イソロクは海魔を打倒すべく戦士を募りました。そこには、愛らしい姿をした「艦娘」と呼ばれる少女達が集まっていました。
彼の号令と共に、海魔を駆逐する少女達。
それは、後に「海魔大戦」と呼ばれる大きな戦争となりました。
…結果は「勝利」、艦娘達が世界に安寧を呼び寄せたのです。
────しかし犠牲は確かにありました。
イソロクは、大戦の最中に「病気」によりこの世を去りました。
人々は、イソロクを讃え、彼の築き上げた文化を更に発展させていった…
──────やがて
世界は──様変わり──していきました。
マナに満ち溢れた世界から──機械仕掛けの「艦娘」たちの世界に。──
・・・・・
「…というのがこの世界の過去の出来事です。まぁ実際はマナは「多少」残されているようですが?」
「テートクぅ~~~♥」
「こ、金剛さん痛い…;」
「…もう一度説明が要りますか? 昼間から抱きついていちゃつく「バカップル」には」
「ちょ!? 誰も好きでバカップルになんて」
「…テートクはワタシの事嫌いデース…? (シュン)」
「!? …だ、大好き…です(素直)」
「テエエエエエエトクウゥゥゥ♥♥♥♥♥」
「いたた、いや、本当に痛い…」
…ああ、もう死んでもいい(臨終)
もうね? まず良い匂いする。香水かな? シャンプーの香り? あと胸が当たってる、あと可愛い。何にしてももう思い残すことは無い、拳を突き立てて天に還れるよ、今の僕。
…ん? 反応がいまいち? これじゃ朴念仁だと?? はっはっは…僕に女性に対してオープンになれと? この万年オタク、女性経験ゼロ、チェリーボーイのこの僕に? 某オリ〇ジのチャラ男じゃないんだから(いやキャラ作ってるのかあの人)。
…と、本懐を遂げたとこで、ここでおさらいを。
まず僕の隣で大胆に抱きついてだいしゅきアピールをしているのが「金剛」そう、あの金剛だ。
金剛型戦艦一番艦、金剛型姉妹の長女、頼れる姉貴分、提督LOVE勢筆頭、etc…艦これにおいて「超」のつく人気を誇るのが彼女です。
僕はそんな彼女に会うために異世界転生してきたようなものですから…喜びもひとしお、もう死んでもいい(大事なことなので二回言いました)…いや死んだから異世界転生したんだけど。
で、彼女がいるこの世界で「提督」になりたい…と彼女に言ったら「All right ! ワタシに任せて下サーイ!」と超乗り気で僕の初期艦兼秘書艦になってくれた、やったぜ。
彼女はこの世界で「フリー(無所属)」の艦娘として各地の海を転々としていたようだ。傭兵…とはまた違うらしい、傭兵はその日暮らしの雇われの身だが彼女の場合は「絶賛着任希望募集中(?)」らしい、言い方がアレになるけど「根無し草」だったと。
無人島の良さげな建物(今いる場所)で休んでいたら、浜辺に打ち上げられた僕を見かけたので、慌ててここへ運んでくれた…と。
因みに上半身に巻かれた包帯は彼女が巻いてくれたらしい、可愛くて強い上に応急処置もできる、僕の嫁が最高過ぎる件について。
正に「都合のいい展開」となったワケですが、僕はここの世界について何も知らない、金剛に聞いても「I don't know ! (!?)」と返答、お馬鹿わいい。じゃなくて、じゃあ妖精さん(神様)に聞いてみよう、という事で冒頭のアレを聞いていたという次第です。
あれはこの世界の「創世神話」的な伝説で、深海棲艦の元になったモノと艦娘たちの戦いを描いている…と。しかし、外野だから言えるのですがイマドキ「海魔」とは…何て言うか”陳腐”と申しますか。
更に驚いたのは「イソロク」って! あの「山本五十六様」ですか!? 僕たちの世界で「連合艦隊司令長官」だったあの!? …おかしいなぁ、五十六様って向こうで戦死したはずじゃ…? こっちのイソロク様なのか、あっちから五十六様がやってきたのか…何にしても現状では分からないことだらけ。
考えても仕方ない、と僕は気を取り直し「この世界」について考える。
「艦これ”RPG”…か」
艦これRPGとは、運営鎮守府考案の「テーブルトークロールプレイングゲーム(TRPG)」である、クトゥルフが有名だね? 内容はプレイヤーが艦娘になりきり、様々な任務や日常をこなしていき、深海棲艦を打倒していく…というモノ。
でも色々カオスっているらしい、僕はやったことは無いけど「艦娘が提督」とか「レズ全面展開有り」とか聞いた覚えが…でもこういうのって、ノリで楽しけりゃいいんだよね! (適当)
そして今僕が立っている、見ているこの世界がそのRPG世界なんだけど…実際言うと「ピンとこない」というのが素直な感想になります、というのも。
「…金剛、この辺は何て言う場所だっけ?」
「? ”ハジマリ海域”デース!」
ハジマリ海域…するとこれは「出撃ノ書(ルールブックのようなもの)」に収録されているキャンペーンシナリオ…「徹底海峡、再び」!
内容は…ネタバレになるから置いといて、だとしたらこの状況は「不可解」だ。このシナリオの冒頭は「嵐に襲われ、孤島に流れ着いた艦娘たちが、謎の黒い霧によって脱出不可能となった」という筋書き、しかし…。
「…そいや!」
バンッ! と開け放たれた窓から外を見やると…天気は「快晴」、黒い霧など何処にも影も形も無かった。
「シナリオとの相違…何かある!」
と、僕のゲームで培われた推理脳が直感で何かを告げていたが…?
「あぁ〜、そこは私が"魔改造"しただけなので〜! 拓人さんの身に何かあってもいけないので、世界観だけお借りしたと思って頂ければ〜?」
「…妖精さん、それは世に言うネタバレというヤツですよ? 言っちゃダメなのだから!?」
「てへぇ〜☆」
「マカイゾー?」
「金剛は知らなくていいから!」
「ハーイ! ヽ(・∀・)」
「カワイイ! 許せる!!」
「拓人さんは、気色悪いですね〜?」
「うるさいよ!?」
…長々と失礼しました、ここで漸く本題。
今僕たちがいるのは、かつて鎮守府があった場所。少し古びているが、掃除すれば何とかなる程度で全然キレイだった。僕の提督人生幕開けに相応しい場所、ということですな。
秘書艦は金剛で良し、後は他の艦娘を建造して、大淀明石間宮さんを呼んで、色々な海域に行って…くぅ、オラわくわくすっぞー!
「ところがどすこい!」
「!? なに妖精さん? ってかさっきから人の心読まないでね??」
「拓人さん…今のままでは貴方は」
──提督には「なれません」!
「…え」
何それイミワカンナイ。