艦これすとーりーず ―僕が異世界版艦これの提督になった件について― 作:謎のks
僕たちの前に現れた謎のロボットは、廃坑に隠された巨大な魔鉱石を隠しており、それを見た僕らを証拠隠滅のために襲いかかって来た…!
このロボットはおそらくあのローブの男の身代わり…その証拠に、男と一緒にいたレ級と、更に行方不明になっていた調査隊の艦娘たちも…!
「っく!」
僕は考える、これは最悪じゃないか?
僕らの任務は、調査隊の行方の捜査、並びにこの海域で起こった事件の真相を暴くこと。…彼女たちが出てきたということは、僕らはかなり「近づいた」と思っていいだろう。
でも、アイツが艦娘を操っているということは…彼女たちを「盾に出来る」という事実。
もし彼女たちを傷つけてしまったら…それこそ本末転倒、これじゃまともに動けない…!
「…ふむ」
望月はべべ(ゴーレム)に、彼女たちを指差し「攻撃」するように命じた。
『ゴアァ!』
僕は一瞬焦ったけど、明らかに大振りな一撃は操られた艦娘たちに避ける余裕を与えた。
彼女たちが飛び退いた瞬間に、ゴーレムの目から出た光が艦娘たちの体を走る……あれって、何かをスキャンしてる?
望月が手を振り上げると、ゴーレムは「キューブ」になりながら望月の手元に戻ってくる。
望月がキューブに映し出されたデジタル情報に目を通す…なるほど、と零しながら望月は不敵に笑う。
「やっぱりな? 大将アイツらの首回りをよく見てみ?」
「え…?」
言われて僕は艦娘たちの首を見る、すると…シャツに隠れていたけど、襟ぐりに何やら異物が。
「アレはコアの元になる、加工した魔鉱石を張り付けたものだ。マナが中和された艦娘は意志が無くなった人形だ、そこにコアを張り付けりゃ操り人形の一丁上がりって寸法さ」
「!? あの石が…?」
「そうさ、だが無理やり引っぺがすなよ? 今のアイツらは機獣と同じ状態になっている。つまり…適切な処置を施さないと”最悪死ぬ”」
「そんな…どうすれば」
「そりゃアイツらにもう一度意識を取り戻させりゃあ良い」
簡単に言うけど、そんなことどうやって……あ。
「…もしかして、同じこと考えてる?」
「おう、これか?」
望月が取り出したのは、さっきの魔鉱石。…つまり。
「…”出来る”ってことだよね?」
「おうさ、種明かししたいとこだけど、時間が惜しい。ここでアイツに雲隠れされたらアイツらを助ける機会はそうそうないぞ?」
「…コマンダン、何をおっしゃっているか分かりかねます。出来の悪い頭で申し訳ありません…」
「とにかく、望月が準備できるまで僕らで時間稼ぎだ。良いかい?」
「了承」
僕は望月を信じて、野分と綾波と共にロボットとレ級、操られた艦娘たちと対峙する。
・・・・・
──敵艦補足、合戦準備 …
◇
拓人
野分
綾波
望月
vs
謎のロボット
戦艦レ級
操られた鳥海
操られた吹雪
操られた漣
操られた五月雨
◇
勝利条件:操られた艦娘の救出
敗北条件:拓人の戦闘不能
…戦闘開始 !
・・・・・
僕らが構えていると、向こうの艦娘の一人が猛烈な勢いで迫ってきた…鳥海だ。
「…っ!」
僕は野分たちの前に躍り出ると、彼女の先制パンチを受け止める。
「くっ…」
「……」
鳥海は拳を防がれたまま、艤装を召喚し身に纏うと僕に向けて砲撃を放とうとする。
「ゼロ距離射撃か…って流石に勘弁して!?」
「ゴゴアァ!!」
べべが鳥海に向けて、上空からのヒップスタンプをかます、避けられてしまうものの砲撃は免れた。
「ありがとう、べべ!」
「…!」
べべ、サムズアップ。無機物だけどこういう愛される雰囲気出してるキャラって、尊いよね…?
「大将、べべはアンタの好きに使ってくれ」
「え? いや望月さんどうしろっていうのさ??」
「とりあえず命令してみ? 武装でも何でも化けてくれるからよ」
「え、じゃあ…キャノン砲とか?」
「ゴッ!」
べべ、トランスフォーム。カシャンカシャン、と小刻みな音とともにべべの姿は「べべキャノン砲」に変わる。
「おお…(カシャン)…結構軽い?」
なんか、戦隊モノのフィニッシュによく出てくる…バスターランチャー? みたいな。それにしても僕の背丈ぐらいの大きさなのに、なんでこんなに軽いんだろう? 戦隊モノも片手で持ってたし、素材が違うのかな?
僕が不思議そうにしていると、今度は吹雪たちが砲撃を放つ。
「うわっ!? …この!」
ベベキャノン、発射。エネルギー光弾が炸裂し艦娘たちの動きを止める。
「コマンダン、助太刀いたします!」
野分は自身の艦砲を取り出すと、僕と一緒に艦娘たちの足止めを行う。
「…?」
僕はちらりと奥を見やると、ロボットとレ級は巨大な魔鉱石を前に微動だにしない。
アレを守っているのか? よほどあの魔鉱石が重要な意味を持つということ、ベベキャノンで破壊できないかな? それとも…。
「っ! コマンダン!!」
野分が叫ぶ声に我に返り前を見ると、鳥海が迫って来ていた。
「…!」
僕はバックステップで避けると、更に追随するように距離を縮めようとする鳥海、なんというインファイター。うん間違っていないな。メガネは大体パワーキャラだからな?
「…綾波!」
僕はそう叫びながらバック宙返りで大きく弧を描きながら飛び避ける。その後ろには…?
「了承」
綾波が得物を構えている、そのまま地面に叩きつける。砂塵が舞い、鳥海の視界を奪う。
「…おりゃ!」
僕はべべに頼んで「ハンマー」になってもらうと、死角からブン回して、鳥海をそのまま吹っ飛ばした。
…あ、吹っ飛ばしたらマズイかな? …ううん艦娘だし大丈夫…多分。
「よし…って!?」
驚く僕の目の前には、爆風と閃光、急速に迫る凶弾。
ほんの一瞬の隙を突かれた結果、吹雪たちから砲撃の雨を受けた僕。
「コマンダン!?」
「……だ、大丈夫。…ふぅ、べべ便利だな」
今度はべべにシールドになってもらって、なんとか凌いだ。…ここに来て改めてべべの利便性を痛感した僕であった(小並感)
「…うし、出来た!」
望月が嬉々と叫ぶ、僕らに視界を開けろと言うので、望月の視界を遮らないように横に退く。
「──我、母なる海の使者。邪悪より世を守るモノ、蒼海の戦士たちよ、この声に応えるならば…汝の命、転じ授からん!」
望月の詠唱とともに、彼女の手の魔鉱石が見る見るうちに青く染まり…サファイアのような煌びやかな海の光を放つ。
「…っ!!?」
その光は、操られた艦娘たちの目にしっかりと焼き付き…彼女たちの襟ぐりの魔鉱石にヒビをいれて、粉々に砕け散らせた。
「やった!」
僕が歓喜に沸くと、艦娘たちの眼に光が戻る。正気に戻ったようだ…!
どういうことかは分からないけど、望月にも「魔術が使える」みたいだ。アレは望月の造った艦鉱石で、あの青い光にはマナを活性化させる作用がある…と思う。
前に話していた艦鉱石の概要を踏まえたらね? でも…まさか魔術まで使えるなんて、望月って一体ナニモノなんだ?
そう考えていると、鳥海たちが目を覚ましたようだ。
「…あれ、私たちは…?」
「はれ、私たち確か調査に…??」
「んーどうやら我々には計り知れない事態のようですなぁ、キタコレ!」
「…私は…一体…?」
良かった、なんともないみたいだ。僕らがほっとしていると、ロボットから舌打ちのような音が…?
『…チッ、マサカ「ムーンチルドレン」カ』
「…え?」
「おんやぁ、アタシを知ってるっつうことは、アンタ連合と関係あるね?」
『…ドウダロウナ?』
「ははっ、しらばっくれても無駄さ。アンタこの間の襲撃といい短絡的すぎんだよ、ボロが出まくって自分で自分の首を絞めちまってるねぇ、ヒッヒ!!」
『…イイキニナルナ、”ガラクタフゼイ”ガ…ッ!!』
ロボットはそう怨嗟を呟くと、胸の装甲が開く。中から出たのは…!
「海魔石!?」
「っち! お前ら目をつむれ!!」
僕らは目を瞑ったが、調査隊の艦娘たちはその禍々しい光を見てしまい…全員地面に伏した。
「えぇ!? またなの…!?」
『…サテ、コレデマタフリダシカ、マァイイ。ソノガラクタドモヲマモリナガラキサマラガ、ドコマデタタカエルカ…ククク』
胸部のシャッターが下りると、海魔石の紅い光が消える。僕らが目を開けると、そこに居たのは倒れた艦娘たちと、臨戦態勢のロボットとレ級。
「…っ、金剛が居てくれたら…!」
僕が呟くと同時に、地を蹴り宙を駆けながら得物を構えて迫るロボット。体感でも分かる”秒速”のスピード、速すぎる…!
「って、ぅおお!?」
べべシールドでなんとか敵の斬撃を防ぎ、そのまま鍔迫り合いの形になる。
『…ナゼダ』
ロボットから何か聞こえる…"何故だ"…って?
『キサマハモウワカッテイルノダロウ。アノ"コンゴウ"ハニセモノダトイウコトヲ…ナゼソバニオクノカ、リカイデキン』
「っ! お前…!」
『ダガ、ワタシニハソンナコトハカンケイナイ。アレハワタシニトッテハ「ユウヨウナソンザイ」キサマハメザワリデシカナイガ、アレヲサシダストイウナラ、ソノカギリデハナイ』
「っ! …やっぱり金剛が狙いなのか、お前は」
『イチドシカイワナイゾ。…エラベ、アノガラクタヲサシダスカ、ココデイミモナクツイエルカ』
…コイツ、僕に金剛を売れって言っている。…だったら、僕の答えは一つ。
「嫌だ。金剛は僕の嫁だ、お前なんかに…渡すものか!」
突き飛ばす動作で、力強く黒鎧を弾き返す。
絶対に渡さない…艦娘たちを「ガラクタ」なんてのたまうヤツなんかに…!
『…ナラバ、キエルガイイ…!』
距離を置いたロボットは、片腕をキャノン砲に変形、光弾を射出した。
「はぁ!」
颯爽と現れた野分。自慢の剣技で、高速の弾丸を見事に真っ二つにせしめた。
「貴方が何モノであろうと、コマンダンを傷つけはさせません! ボクは美しい者たちの魂の守護者、この光を消せるものな」
『シネ!』
素早くビームソードに武器変更したロボット、そのまま野分に迫るが、さっきと同じような鍔迫り合いになる。
「…っ! 美しくない!」
「いや、長ゼリフ言ってるからだよ…;」
『ヌゥン!』
ロボットが腕を振り抜くと、野分はそのまま吹き飛ぶ。
「必殺」
綾波が身の丈以上の巨大な斧を振り下ろす。しかし?
『キヒヒ!』
レ級がその一撃を黒鎌で打ち払う。その隙を縫いロボットからキャノン砲光弾が綾波を襲う。
「っ!」
腹部に直撃し炸裂する凶弾、幸い鎧を着用しているのでダメージは少ないが…吹き飛ばされ、壁に叩きつけられてしまう。
「綾波!」
「やっべ、コイツ隙がねぇわ…!」
ただでさえレ級がいるのに、この黒鎧の強さも侮れない。…どうしよう、下手に動いたら後ろの艦娘たちがどうなるか…。
流れは完全にロボットに向いている。向こうも余裕か、調査隊に目もくれず僕らににじり寄る…いや、僕らが本命なのか…?
『オワリダ…!』
ロボットの腕から光剣が迸る、不味い…!
「…いいや、終わりはアンタだよ」
望月がそう呟いた瞬間、耳元に響く電磁波と突風の音…。
「オラァ!」
「やぁ!」
僕らの横をすり抜けて、敵二体に雷と風を纏った強力な飛び蹴りを食らわせる…それは。
「加古、長良!」
選ばれし艦娘の二人、僕たちの窮地を助けるように、敵を奥の魔鉱石の方角まで吹き飛ばした。
『ギヒャア!?』
『…!』
二体は巨大魔鉱石の前で態勢を整えていく、ロボットから通信越しに黒幕の悔しげな舌打ちが聞こえた。
「ありがとう二人とも、でもどうしてここが分かったの!?」
「ふふん? 望月が連絡用の機獣を寄越してきてね」
加古の肩には、確かにメタリックカラーの鳥が止まっている。長良も気合たっぷりに頷く。
「さっきはそれを飛ばしてたの、望月?」
「ま、何か出ることは分かりきってたし、座標データを鳥に入れて二人に飛ばしたっつーわけ」
彼女の聡明な頭脳には、頭脳派気取りの僕は敵わないや…味方で良かった、色々な意味で。
『…エラバレシカンムス。マッタク…ナゼコウモジャマガハイル』
「どうする? 今のうちに投降するってんなら、ここでお終いでいいぜ? 後ろのデケェ石のことも話してもらわないとな?」
加古の降伏勧告に、通信から鼻で嗤う声が響く。
『ハッ! タンサイボウドモガ。…ワタシガココデオワルトデモ?』
「…っは!? まさか自爆するつもりじゃ…!」
「爆発による崩落狙いか…大将、そしたら敵もどうなるか分からんぜ?」
『ダカラ「タンサイボウ」ダトイッテイル…!』
ロボットの眼から「ピピッ」という機械音と共に赤い光が走る…すると、地響きと共に。
「…なっ!?」
巨大魔鉱石の足場が開き、そのままぽっかり空いた穴に落ちていく。
『サラバダ、ガラクタドモ。セカイノオワリヲ…ユビヲクワエテボウカンセヨ! …フフフ、フハハハハハ!!』
その穴に一緒に落ちていくロボットとレ級。…逃げられた!
「…いや、色々得るものもあった。ここは痛み分けといこうぜ、大将」
望月は目の前で気絶している艦娘たちに目を向ける。そっか…彼女たちが無事だっただけでも、良しとするべきか…。
「…さて、何があったか、聞かせてもらうぜ………ん?」
加古の言葉が止まると同時に…僕らはある異変に気付いた。変だな? 地響きが鳴りやまない…?
「…あ、これ崩れるわ」
…いやいやいやもっちー、今サラッととんでもないこと言わなかった!!?
「あの野郎、どっかに爆弾でも仕掛けてやがったな? 証拠隠滅、最後までアイツの掌の上…てワケか」
「感心してる場合じゃないよ!? 早く逃げなきゃ!!」
「そうさな。んじゃ面倒なんで、あの艦娘たちは大将に任せたわ~」
「おいぃ?」
「心配すんなって、アタシらが手伝ってやるからよ、なぁ長良?」
「もちろん! 肉体労働は私たちのオハコだよ!」
「何でこんなときなのに嬉しそうなんですか君たちは…;」
…こうして、窮地を脱した僕らは、調査隊の艦娘たちを担いで、崩れていく坑道を後にした。
これで事態が進展してくれたら嬉しいけど…それにしても、黒幕は一体ここで何を…?
・・・・・
「…っち、奴ら…木偶の集まりかと侮ったか、意外に勘のいい」
「…まぁ、あの鉱石の回収も無事果たした。あれほどの規模なら、然るべき場所に置いても問題あるまい」
「……フ、フフフ……いよいよだ……いよいよ「計画」実行の時……」
「審判の日が訪れる…艦娘、そして特異点。貴様らの好きにはさせん……フフフフ」
──では、そろそろ最後の"実験"を始めるとしようか…!