艦これすとーりーず ―僕が異世界版艦これの提督になった件について―   作:謎のks

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潜みし悪は。

「タクトちゃん、今なんて…?」

 

 僕が発した言葉…「証拠を作ればいい」に対しどこか驚きを感じている皆。…あ、これ訂正した方がいいな。

 

「い、いや。不正に証拠をでっち上げるわけじゃなくてさ…「尾行」したらどうかと思うんだ」

「尾行って…出来るの?」

「まず神父が夜中に被害者たちを連れ出しているのは、目撃証言から明白でしょ? 尾行してどこに向かったか分かれば、それだけでも有力な手がかりになると思うんだ」

「…ふむ、確かに。しかしタクト、ヤツに関する情報はあまり芳しいとは言えない。神父が俺たちをつけ狙っているという証拠はないにも等しい…それを踏まえて、本当に神父を黒幕と決めつけていいものか?」

 

 天龍は思わせぶりな言葉で、改めて確認を取る。

 

「ここまで来て疑う余地はないよ、それに…」

「それに?」

「…行動して初めて解ることって、あると思うんだ。僕は金剛や天龍みたいに強くないし、望月みたいに頭が回るわけじゃないし…自分なりに考えて、行動が一番答えに近づけるって思ったんだ」

 

 僕の考えを表明すると、言葉にこそしていないが周りの温かな眼差しを感じた。

 

「そうだな? あんにゃろは大胆なヤツだが、決定的な証拠を一つとして残さなかった。だから…こっちも大胆にいかにゃあ、尻尾掴めねぇまま終わるかもな?」

 

 望月の言葉に、全員が頷く。

 

「タクトって、賢そうに見えてそういうとこ直情的っていうか…馬鹿だよね?」

「ストレートだねマユミちゃん…否定しないけど」

「そこがテートクの良いところデース! マユミは分かってないネー?」

「ははは! …そうだな、それで行こう。タクト、酷い言い草だったか?」

「ううん、ありがとう天龍」

 

 こうして僕らは神父を尾行して、あわよくば真実を暴く。その段取りを話し合い、作戦を立てた。

 黒幕に張られた包囲網は、遂にこの要塞の事件の謎に迫る。…と、僕は一つ思いついたことがあるので、ある場所に向かう。

 

 

 

 

 

・・・・・

 

「駄目だダメだ、ここは要塞の住人しか入れない。すまないが神父様のご意向だからな? 旅人さんは帰ってくれ!」

 

 僕が目の前にいるのは教会。ロボットの声で黒幕を判別出来たんだから、神父の顔を見て何か分からないかと思ってたんだけど…アテが外れた。

 扉の前にはこの要塞の住人が数人で道を塞いでいて、よそ者は入れないと突っぱねられた。

 流石に尻尾は見せないか、でもやっぱり気になるなぁ…まぁここでゴタゴタ起こしても仕方ないし、そろそろ戻ろう…ん?

 

「何故ヤツの言葉を鵜呑みにするか!?」

 

 僕は驚きのあまり目を丸くして、その光景を凝視していた。言い合いになっているみたいだ…ただ、その言い合いしている人物の一人が。

 

「ザキさん、アンタも祖国を艦娘にぶっ潰されたんだ。アンタだって俺たちの気持ちは分かるだろ?」

「喧しい! 彼奴とて余所者ではないか、貴様の嫁もあの教会に行ったっきり、帰って来ておらぬのだぞ、目を覚ますのだ!」

 

 ヤマザキさんが神父の信者らしき人の肩を掴んで激しく揺さぶった。

 

「…アイツはヴァルハラに旅立ったのさ。大丈夫、すぐに戻って来るって神父様が言ってたし? …神父様は俺たちの救世主だ、彼の言うことは絶対だ」

 

 …衝撃的な言動だが、彼の眼は据わっていて視点も定まっていない、まともに話が通じるかも怪しかった。

 神父の狂言が、人の心を狂わせてしまった。…僕は宗教には入ってないけど、精神が侵された人間の脆さがここまでだなんて。

 

「俺たちに必要だったのは、心の平穏を保つこと。そして世界の平和を祈ることだったんだ、そうすれば…きっと世界は俺たちをヴァルハラに導いてくれる」

「そんなものはまやかしだ、何も考えずにいるのは死ねと言ってるものだ! 我輩たちは居場所を奪われたが、心まで取られてしまえば何もかも終わりだぞ!」

「ザキさん…俺らもう終わってんだよ、こんなとこに居る時点でな」

「…っ!?」

「…もう行くよ。今日も家で祈りを捧げなきゃ」

 

 信者はそう言うと、ヤマザキさんに背を向けてフラフラと歩き始めた。

 

「…くぉおお…っ!」

 

 寂しげに、悔しげに肩を震わせながら歯を食いしばるヤマザキさん。

 

「…あの、大丈夫ですか?」

「っ! お主はあの時の?」

 

 彼の背中に声をかけたのは、本当に無意識だった。僕が力になれるとは思わないけど…放っておけなかったんだと思う。

 

「…っ!」

 

 ヤマザキさんは僕の手を乱暴に掴む。

 

「っえ、あの?」

「こっちに来い!」

 

 そう言ってヤマザキさんは、僕の手を引っ張って何処へ連れて行く。そこは…?

 

 

 

 

 

・・・・・

 

「いらっしゃ〜い。お? なんじゃ珍しい組み合わせじゃの?」

 

 まさかのシゲハウス、ヤマザキさんとシゲさんはどうやら知り合いだったようだ。

 

「シゲオ殿、少し居間を借りる。出来ればお主にも見ていてもらいたい」

「ん? …そうかい、分かった」

 

 ヤマザキさんは僕をシゲハウスに連れ込み、僕らは居間の畳の上で正座して向き合う形になった、シゲさんは少し奥でそれを見守る。

 

「…ここなら邪魔も入らん、我輩が暴走しそうになればシゲオ殿が止めてくれよう」

「あ、あの…僕になにか用事が?」

「単刀直入に問う。お主…鎮守府連合の遣いだな?」

「…!?」

 

 …やっぱり無理があるか、他の人ならまだしも、遠目でも僕らを見ていたヤマザキさんは、僕らの正体を見抜いていたみたいだ。

 

「…最初から気づかれていたのですか?」

 

 僕がそう言うと、ヤマザキさんは首を横に振る。

 

「独眼龍を見た時から怪しいとは思っておったが…コバヤシ殿の言い分もある、その場は信じていた」

「…」

「だが…尚も聞き込み調査をしておるお主らを見て…やはりそうなのだろう、と」

「…騙していてごめんなさい」

 

 謝って済む話じゃないとは思うけど…それでも誠意は見せたい。僕が頭を下げると、ヤマザキさんは訂正する。

 

「そうではない。お前たちが何モノか、それは最早過ぎたる話だ。コバヤシ殿、あやつの人物の鑑定眼は凄まじいからな。あやつが信じたのなら、我輩に異存はない。…だが」

「…?」

「だからこそ、教えてほしいのだ。あの教会で何が行われておるのか。…お主らは、もう掴んでおるのだろう?」

 

 ヤマザキさんは力強い目線で僕を見つめながら言った。その目の奥には、真に住民たちを案じる憐れみの心が感じ取れた。仲間思い、いや家族を気遣うような温かさだ。

 

「我輩にとって、この要塞の住人たちは身内も同然。もしあやつ等に何かあるのならば、我輩はそれを阻止したい…頼む」

「…分かりました」

 

 僕は彼の眼を見つめ返し、その真心に敬意を払いながら自分たちの周りで起きたことを、ヤマザキさんに話した。

 僕らがこの要塞に来た理由、その道中と坑道で起こった出来事、それらを照らし合わせて出てきた「ほぼ確信している」黒幕の正体を、包み隠さず話した。

 

「…まさか」

 

 ヤマザキさんは絶句していた、あまりの衝撃に目と口を開けていた。

 無理もない、艦娘の暴走、神父の邪教じみた信者の洗脳行為、これらが一本の線で繋がっていただなんて。

 

「…まだ、確定ではないのですがね?」

「…ぬぅっ!」

 

 ヤマザキさんは怒りを滾らせると、立ち上がり何処かへ向かおうとする。…しかし、シゲさんがそれを止める。

 

「これこれ、どこへ行くんじゃ?」

「我輩は恥ずかしい、彼奴の謀略に踊らされておった自分自身が! 我輩なら教会に入れよう、彼奴の首根っこ引っ掴んで、真相を暴いてやる!」

「ま、待って下さい! それは…」

 

「こんの戯けがぁ!!」

 

「…!?」

 

 シゲさんの一喝に戦慄を隠せない僕たち。シゲさんは険しい表情を変えずに、ヤマザキさんに言い聞かせた。

 

「ヤツが何をしているか定かではないが、この子の言うことが真実であるなら、それまでのらりくらり隠れ通して来たヤツだ、そう簡単に口を割るか」

「しかし…こうしておる間に住人たちが!」

「頭を冷やしてほしいと頼んだのは、お主じゃろうが! …連合もこの事態に勘付いておるはずじゃ、そうでなきゃこの子はこの場に居らん」

「…小僧に任せて、我輩たちは見て見ぬ振りをしろというのか!?」

「そうではない、ワシらが出来る範囲で協力するんじゃよ。コバヤシたちがそうしたようにな?」

 

 ニカッと笑いながら、シゲさんは僕を信頼の目で見つめる。

 

「…信じてくれとは言えません。でも…僕もここで色々なことを学ばせて頂きました、マユミちゃんやコバヤシさんみたいに艦娘たちを信じる心、シゲさんからは自分を信じることの意味を教えて貰った。僕は…その恩返しがしたい、血の繋がりがなくても、絆っていう信じ方があるって教えてくれた…温かな、この要塞の住人たちに」

 

 僕は心から湧き上がる言葉を紡いで、ヤマザキさんに聞かせる。ヤマザキさんは…僕を見ながら、その頑なな表情を徐々に柔らかくしていく。

 

「…あい分かった。貴様らを…信じよう」

 

 ヤマザキさんは僕に手を差し伸べる、僕はその手を取り…握手をする。簡単な動作だけど、彼が信頼を寄せてくれていることを感じた。

 

「だが忘れるな、我輩たちの居場所を奪ったそもそもの要因は艦娘にある。今は目を閉じるが…その怨嗟が簡単に断ち切れると思わぬことだ」

「肝に命じます。ありがとうございます、ヤマザキさん」

「かぁっ! ザキで良い、そっちの方が呼び慣れておる」

 

 照れ臭そうにそっぽを向いたヤマザキさん。良かった、最初はどうなるかと思ったけど、話をすれば良い人だった。

 

「カッカッカ! 頑固者め、お主はもう少し柔らかくならんとなぁ、ザキよ?」

「ふん! …ところで…むぅ」

「…あ、僕は拓人です」

「タクト、お主は独眼龍をどこまで知っておる?」

「え?」

 

 天龍のことだよね? 僕はとりあえず知っていることを話した。

 

「天龍は傭兵で…各地の戦場を転々としている、ですか?」

「そうだ、義理堅い傭兵、それが皆の印象だろう。だがそれは彼奴の一側面でしかない。我輩からしてみれば何故あやつは未だ大人しくしておるのか不思議でならん」

「それはどういう意味ですか? 貴方は天龍について、僕の知らない何かを知っているのですか?」

「ふむ…折角の機会だ、彼奴について我輩が知り得ていることを教えよう。二度と我輩たちのような犠牲者が出ぬようにな」

 

 ヤマザキさんは、自身から見た天龍を教えてくれた。

 

 

 それは、僕が今まで知らなかった彼女の”非情な一面”だった。

 

 

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