艦これすとーりーず ―僕が異世界版艦これの提督になった件について―   作:謎のks

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 今回、話の雰囲気が少し暗くなるかもです。

 …少し、は信用出来ない?

 ごもっとも。


運命ほど残酷なモノはない。

 ──数週間前、カイト提督執務室にて。

 

「良いタクト君…彼は貴方に試練を与えようとしている。これは貴方のため、それは分かってね?」

「はい!」

「…この任務で貴方はこの世界の現状を目の当たりにすると思う。そこから、貴方自身が為すべきだと思うことを…良く考えて頂戴?」

「はい! ありがとうございます!」

「…天龍君?」

「…?」

「(…金剛を宜しく頼むよ? 何かあれば「君の好きにして」いいから)」

「…っ!」

「怒らないで? もしものことだよ?」

「…………フン」

 

 タクトたちが一通りの伝達を終えると、彼らは次の任務に備えるため次々と執務室を後にする。

 

 …その時、天龍がドアノブに触れた手を止めた。

 

「…それは任務か?」

 

 彼女の纏う雰囲気が一瞬で変わる。

 突然の言葉に目を見開きながらも、問われたカイトは平然と回答した。

 

「ああ、君が望むなら報酬も出そう。もし金剛が暴走した時は…君が止めてくれ」

「…生死は?」

「…っ!」

 

 側にいた加賀は思わず息を呑んだ。背を向けた彼女の顔を計り知ることは出来ないが…その言葉の意図は「至極冷徹」であった。

 

「出来れば生きたままにしてくれ、と言いたいが…生け捕りは難しいだろうね、君の実力を疑うワケではないが。金剛相手では逆に君自身がどうなるか…」

「…最悪相討ちか」

「天龍っ!」

 

 天龍の予測する展開に、加賀は声を荒げて反論した。

 当たり前だ、誰であろうともそうなる。彼女は…「最悪仲間を殺す」と言い切ったのだ。

 

「もちろん僕らはそんな未来は望まない。君がどう思っているのかは分からないけど、艦娘同士…仲間同士での殺し合いなんて。そんな危険を冒してまで、君はこの任務を受けてくれるのかい?」

 

 まるで試すように、カイトは天龍に問いかけた。

 

「…任務、承った」

 

 その声は迷いなく、しかしてどこか虚空に響いていた…。

 

 

 

 

 

・・・・・

 

『キッヒヒヒ!』

 

 薄暗い地下下水道、濁り腐った浅い水面を進む中、僕らは"ヤツ"に出くわした。

 

「レ級か…こんな時に!」

「でもテートク! 彼女がここに居るということは、黒幕もやっぱりこの先にいマース!」

「だな…まぁコイツが素直に退いてくれたら楽なんだがなぁ?」

 

 望月の言う通り、このレ級はどういう理由か黒幕の手下のような立ち位置で、幾度となく僕らの前に立ちはだかって来た。

 

「今更簡単に通れるとは思えない…!」

『キッヒヒヒ!』

 

 もう何度も見た光景。彼女の手のひらにエネルギーが収束し、形作られた黒い大鎌を手に取る。

 

『キッヒャア!』

 

 彼女の歪な尻尾がおっ立つ、先端が怪物の顔のそれは、口を開くと火球を放って、僕らの間に水の壁が出来上がる。

 

「っ!? 皆気をつけて!」

「来るぞっ!!」

 

 瞬間、水の中を突っ切り死神か嗤いながら僕らの首を狙って鎌を振るった。

 

「綾波!」

「了承」

 

 綾波から放たれた剛腕の戦斧が、大鎌の軌道を遮る。鉄の打ち合う音が、地下下水道の虚空に響く。

 

『キヒヒヒ!』

 

 でもレ級を押し留めるのがやっと。このままじゃ黒幕に逃げられる…!

 

「…仕方ありません」

 

 早霜はそう呟くと、手で印を結びながら何かを唱え始めた。

 

「…招来」

 

 すると、早霜の後ろから黒い霧が立ち上る。レ級の大鎌のヤツに似ている? その霧は徐々に形を整えると…?

 

『…っ!』

 

 早霜の後ろから大きな黒い影が、その巨大な腕をレ級に振り下ろした。

 

『ッギ!?』

 

 素早く反応し攻撃を躱すレ級。

 早霜の後ろの影は、一般の大人より一回りは大きい筋骨隆々な男のような見た目だった。

 

「スタープラ○ナ…いやカゲ○ンか!?」

「違いますよ? これは悪霊の魂たちを一時的に繋ぎ合わせ、私の手足としたものです」

 

 おっそろしいことを淡々と言ってるけど…要はシャー○ンキングだと。

 

「オーゥ! ハヤシーにこんな特技があったなんて!?」

「皆さん、ここは微力ながら私が抑えます。隙を縫って貴女たちは急いで奥に進んで下さい」

「…加勢」

「そうだね綾波? 早霜だけじゃ心配だから、側でサポートしてあげて」

「了承」

「心配症なのね…しかし、ありがとうございます。助かります」

『ギシャアアア!』

 

 レ級が得物を構えながら突っ込むも、早霜の悪霊に払いのけられる。

 

『ギッア?!』

「…さぁ、急いで!」

「健闘…」

「うん。二人も無理しないでね!」

 

 僕らはレ級を二人に任せ、黒幕がいるであろう奥に進んだ。

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 …どれだけ歩いただろう。僕らの目の前には暗闇が広がるばかり、ピチャ…ピチャ…と雫の落ちる音が不気味に木霊した。

 もしかして何もないのか? そう思い始めた時、奥から光が見え始めた。

 

「下水道の予備電源での明かりだろう、いよいよか…?」

 

 望月に言われるまま、僕らは臨戦態勢のまま奥に進む…光は徐々に大きく広がり、そして…。

 

「…っ!?」

 

 その異様な光景に、僕らは思わず息を飲んだ。

 

「これは…」

「彫刻…いえ、これは人が…!?」

 

 薄暗く広大な、天井の予備電源の明かりが陰鬱で虚ろな雰囲気を演出する。

 

 生温い風が頬を掠める…そんなあの世みたいな場所。

 

 そこに在るのは…まるで石化したような、おびただしい数の人間だった…!

 

「…!?」

 

 誰もが理解した。この彫刻のように白く固まったモノらは、元は生きとし生ける者だったということを…。

 その顔に刻まれた恐怖と絶望に歪んだ顔、何かから逃げるような、もがき苦しむような…おぞましい光景だ。

 

「…っ! ゔうぇ…っ!?」

 

 強烈な吐き気に襲われた僕は、その場に顔を伏せると…中の汚物を嘔吐した。

 恐怖、そして拒絶。今の僕らにはその感情しかない…この場所は……普通じゃない!

 

「テートク?」

「…だ、大丈夫」

 

 金剛が心配して、伏せっていた僕の手を取り立ち上がるのを手伝ってくれた。

 

「無理すんなよ大将」

「うん…ありがとう望月」

 

 望月に礼を言った僕だが、それ以上彼女の返答はなかった。…顔を見やると、彼女が冷静でないことが分かった。

 

「…あのヤロー」

 

 怒り心頭といった具合。望月が何に怒っているのか分からないけど、こんな彼女を見たのは初めてだった。

 

「望月…」

『…オソカッタナ』

 

 奥から声が響くと、僕らはその方向を注視する。

 暗闇から現れたのは…やっぱりあのロボットだった。何か引きずっている……?

 

「…っ!?」

 

 僕は目を疑った。ヤツが引きずっていたのは…!

 

『フン、コンカイモシッパイダッタ。マァデータハジュウブンダカラカマワンガ…ヤハリタダノニンゲンデハ"深海化"デキナイカ…』

 

 引きずっていたモノを乱暴に地面に放り投げる。石の顔に刻まれた死の恐怖に怯えた表情…これは……神父と一緒にいた……っ!

 

「…ぅうああああああああ!!!」

 

 怒り、猛り、僕はヤツに対して許せない気持ちが、グツグツと煮え滾っていた…っ!

 

「お前…やっぱり、お前が…!」

『オマエタチガビコウシテイタコトニハ、キヅイテイタ。ダガラアエテソシラヌフリヲシテ、オマエタチヲココマデオビキヨセタ』

「アタシらが目障りになったから抹殺する…ってか?」

『ソウダ、ジッケンデータモジュウブンアツマッタ。ココマデカギマワッテイタノハ、ソウテイガイダッタガ…ヤハリガラクタヨ、タダケサレルタメニ、ノコノコヤッテクルトハ』

 

 まるで嘲笑するような薄ら笑いが聞こえてきた…こいつ。

 

「何で…なんでこんなことを!」

『ナニ…?』

「実験だって? こんな…こんなの人殺しと同じじゃないか!! お前は…お前を慕ってくれた何十何百人もの人を…殺したんだ!」

「テートク…」

「どうして…僕が憎いんじゃないのか!? お前は…人をなんだと思ってるんだ!!!」

 

 僕の憤慨と叫びに、一呼吸置いたアイツは…こう回答した。

 

『シレタコト。コイツラハタダノ"モルモット"ニスギナイ』

 

「…っ!?」

 

まるで、最初から心がないような、冷たく鋭い返答に…僕らは言葉を失う。しかしヤツは続ける。

 

『センソウニヨリカエルベキイエ、クニ、カゾクヲナクシ、モハヤイキルカチモナイ。ソンナモウジャドウゼンノヤツラニ、ワタシガイキルイミヲアタエタ。…()()()()()()()()()()()()()()()()。ドウダ? イミモナクイキルヨリ、ズットカチガアルダロウ?』

「…お前……っ!」

『フン、ワタシガイミモナク、ジッケンヲクリカエシテイル、トオモウカ? ムチトハマコトナ"アクトク"ヨナァ?』

「なに…?」

 

 ロボットの指が正面を指差して止まる。その方向には…僕がいた。

 

『トクイテン。ワタシハオマエノスベテヲシッテイル。オマエガコノセカイニエラバレタコト。オマエガカンムストイウガイネンヲ、コノセカイニモチコンダコト。マエノセカイカラニゲルヨウニ、コノセカイニキタコト』

「…っ!!?」

 

 ヤツの語る言葉に、驚きを隠せない僕。まさか…僕が転生したことまで…!?

 

『オマエノセイデカンムスガウマレタ。オマエノセイデコノセカイカラアラソイガナクナラナイ。オマエノセイデ…ココニイルモノタチハ、カエルベキバショヲナクシタ!』

「っな…!」

『ソウダロウ? コノセカイニアラソイノタネヲマイタノハ、オマエダトクイテン。ワタシハ…カンムスヲコノセカイカラ、カンゼンニマッショウスルタメ、コウドウシテイル!』

「…するってぇと何か? てめぇは…全ての原因が大将にある…って言いたいのか?」

 

 怒りを露わにした望月が、声を震わせながら言葉を投げつける。ロボットは手を広げ、大仰に肯定する。

 

『シカリ! コノモウジャタチヲウンダ、ソモソモノゲンインハ、トクイテン! オマエガコノセカイニコナケレバ、コンナコトニハナラナカッタ! オマエガ…オマエジシンガ! ココニイルスベテノモノヲ…コロシタ!』

「……!」

 

 僕が…ここにいる全ての人を…殺した。

 

 突拍子もないことだ。でも…僕は心のどこかで、それを認めているのだった…。

 

 ──to be continued

 

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