艦これすとーりーず ―僕が異世界版艦これの提督になった件について― 作:謎のks
というのも、このお話を書いている最中に天龍改二が実装されたので「あ、書こう」と衝動的にプロットを組んだのが詳細です。まぁ多少融通は利くかな? と思い。
拓人の初々しいリアクションも楽しんでいただけたら、と思います。
──そう、漸く見つけたのね?
「…ああ」
…ふふっ、ホントに長かったわね? 忘れないでくれるのは嬉しいけれども。…甘えんぼさんにもほどがあるわねぇ?
「…すまない」
いいのよ。それより…本当にいいのね?
「ああ。…俺は、アイツに自分自身を重ねていた。だから…それを言い訳にして生き永らえていたに過ぎない」
もう…大丈夫なのね?
「…どうだろうな? そう言われると自信がないが。…それでも、もうお前の影を追うことは、止めるよ。アイツが…悲しむからな」
……うん、その眼はもう心配ないわね。本当に…良かった。
「迷惑をかけた…すまない」
もう、謝ってばっかり。それよりも…早く行ってあげなさい?
「…分かった。行ってくる」
…さよなら、貴方の新しい相棒と一緒に、生きて。それが…私の最後の、お願い…。
「…違うな。お前も生きるんだ、俺の中で…アイツが俺を必要としてくれるように、俺も…お前が必要だから」
…! …っふふ、馬鹿ねぇ? でも…私はそんな貴方が、好きだなぁ。
「…ありがとう……お前は最後まで…俺の大切な……」
──相棒……!
・・・・・
僕は、皆と向き合う決心をした。
今まで、自分の殻に閉じこもってたヤツが、今さら何言ってるんだーって言われそうだけど。…僕にとって大事なのは彼女じゃなくて「彼女の思いと一緒に進むこと」だって気づいた。だから…誰になんと言われようと、もう迷わない。
…そんな僕だったが、目の前の光景に
「………」
『ッグ…!?』
僕に迫っていた、ロボットの振り下ろした凶刃は、目の前に立ちはだかる刃に阻まれた。
「…!」
刀を大きく振り弾き返す。ロボットは距離を取りながら、そのシルエットを見据えた。
『…"カワッタ"…ダト…ッ!?』
そう、さっきまで命の危機に瀕していた。にも関わらず黒幕の攻撃を返した、僕の前に立つ彼女の横姿は…。
「……」
………き。
キターーーー (゚∀゚) ーーーーーッ!!!
うおお、こんな状況だって分かってるんだけど…あ、あれが…天龍の………「改二」!
改二…それは練度を上げた艦娘が進化を遂げた姿。衣装も新調し、印象もガラリと変わる。
天龍の場合は…身につけていたカーディガンとマントを取り払い、白シャツの上にファー付きジャケット、スリットつきスカート、ハイニーソ、ハイカットスニーカー…総じてオシャレかつワイルドな仕上がり。か、カッコいい…!
「…あ、お腹の傷が塞がってる?」
僕は見事な変身を遂げた天龍の腹部を確認する。あれだけ深く傷つけられたのに、今はシャツも元どおり、血のシミすら見当たらない…完全に「治っている(流石に元からある、無数の身体の傷はそのままだけど)」。
原作でも、大破した状態で改装すると、同時に損傷も修復してくれる。原作再現…ってことにしておくかな?
「……」
天龍はなにも言わず、ただ変わった自分の姿を見渡す。…本人も何が起こったか、理解していないのかな?
「…天龍?」
僕が声をかけると、いつもと同じ…うん、少し訂正。険しい表情が和らいだ、少し困った顔で僕を見つめる。
「タクト…これは一体…?」
「驚かないで。 その姿は「改二」って言って、君がパワーアップした証拠なんだ」
「…?」
「…まぁそういうリアクションだよね、普通」
それにしても天龍に改二かぁ…遠征番長と言われて久しいけど、本家に実装されたらこんな感じなのかな?
僕が感慨深い気持ちに浸っていると、黒幕は動揺を隠せないといった具合に言葉を投げた。
『…ニワカニハシンジラレンガ、ヤハリ…オマエハ「アノカタ」トオナジ…!』
「…お前の言いたいこと、僕にはまだ分からないけど、でも…ここでお前を捕まえれば、そんなの過ぎた話だね」
『ツカマエル? …フ、フハハ! マダソンナ「テイジゲン」ナハナシヲシテイルノカ?』
「え…?」
『ダガダカラトイッテ、マザマザト"チカラ"ヲミセラレタイジョウ、ナオサラオマエヲ、イカシテオクコトハデキナイ!』
僕らがその言葉に意味を理解しようとする刹那、黒幕の後ろにいた金剛が飛び上がり、拳を叩きつけようとする。
「ガアァ!」
「金剛!? まだあのままだったんだ…っ、早く距離を」
僕が言いながら距離を置こうとすると、天龍の姿がないことに気づく。…その思考を巡らせている最中、事態は収束した。
「…っふ!」
「ッガ!?」
なんと、天龍がいつの間にか金剛の前に、俊速のボディーブローを彼女の腹部に打ち込む。たまらず失神し天龍に倒れこむ金剛。すごい…金剛もボロボロだったけど、それでも比類のない力を見せた彼女を一撃で…!?
『ッ?! バカナ、ハヤスギル…!?』
「あ、当身…!」
早すぎて動揺したかな? 僕が訳の分からないことを言ってるのをよそに、天龍は金剛を肩に抱える形で僕の方に近づく。…って早い!? 分かりづらいだろうけど音もなく一瞬で近づいて来た、モーションが見えない…!?
「タクト、金剛を頼む」
「う、うん」
金剛を受け取ると、天龍は漆黒の鎧に向き直る。
『…ッ! キサマ…』
「さぁ、決着をつけるぞ」
天龍が得物を構える。両手持ちの大きな刀を、片手で軽々と持ちそれを黒幕に向ける。
『ケッチャクダト? オモイアガルナ、ソンナモノ…キサマヲ「コワシテ」ソレデシマイダ…!』
黒幕はそう言うと、両腕からビームサーベルを放出し、天龍に向けて構える。
「……」
『……』
…静寂が訪れ、二人の身体は時が止まったように動かない。
どちらか一方が次に動いたその瞬間…勝敗が「決まる」…!
──ザッ
「っ!」
『ウオォ!』
一直線に相手に向かう二人、予想通り一気に決めるみたいだ。
しかし…幾ら改二改装したからといって、先ほどまでボロボロにされていた天龍が勝てるだろうか…。
僕のそんな「一抹の不安」を、彼女は一瞬で掻き消す。
『ウルァ!』
ロボットから繰り出される斬撃の応酬、出鱈目に振り回してるけどそのスピードは並みの戦士でも見切れないと判断できる。だが…天龍はその悉くを「捌いた」。
「ふっ!」
『…ッ!?』
鋭い鋼鉄のぶつかる音、それは天龍が見事に斬撃を防ぎきっているという証…敵の攻撃を相殺する度、ヒュッという風切り音と共に衝撃が僕の頬を掠める。
黒幕は相当焦っているのか、距離を取りつつ手を頭に添える。
『…ッ、フザケルナァ!!』
ロボットが腕を前に突き出すと形状が変化、キャノン砲になると光弾を発射。しかし天龍は光弾の軌道ギリギリを紙一重で避ける。顔をすれすれで通過する光弾は、まるで天龍の身体が透明であるかのように貫通していく。
ならばと、ロボットは機動力を活かした跳躍、からの突撃。またも斬撃を繰り出すも、大刀を軽々と操る天龍に全て防がれる。
改装前とは比べ物にならないスピードと技、これが…この世界での「改二」…?
『…マサカホントウニ。…ック! ナメルナァ!!』
ロボットが胸部を軸にして、腕の光剣ごと回転し始めた、そんなことも出来るの!?
『コワレロガラクタアアァ!!』
「……」
天龍は平然と、そして焦ることなく光剣に己の刃を重ね…一気にはね上げる!
逆刃に構えた刀は…そのままロボットの片腕を「斬り飛ばした」…!!
『ッナ!?』
「切り伏せる…!」
天龍がそう呟くと、そのまま片手に大刀を構えつつ、腰に携えた「もう一つの刀」に手をかけた。
『…!』
──刹那、空間は切り裂かれた。
『…ナ……ニ…ィ…ッ!?』
「……」
音もなく何重にも空間に切り刻まれた斬閃は、ロボットを文字通り「細切れ」にした。
見事に大量のスクラップと化したロボットは、地面に叩きつけられ…同時に戦いは終わりを告げた。
・・・・・
まさに高速の戦い、一瞬目を瞑ってしまったから、なにが起こったか理解出来ずにいた。
でも確かに決着はついた。勝ったのは天龍、地下空間に残されたのはロボットの残骸のみ…でもこれは、本当に終わったのだろうか?
「あくまでもロボットは身代わり。早く黒幕(神父かはまだ確認できてないけど)を捕まえないと」
「…タクト、無事か?」
天龍が僕の側まで駆け寄り(瞬間移動って言った方がいい?)安否を確認する。
「ありがとう、なんともないよ。…それにしても本当に強くなったね?」
「ふ…お前が居てくれたおかげだ」
そう言うと、天龍は僕の頭に手を置き撫でる。
「…子供じゃないんだから」
「童顔のくせに何言ってる。まぁそういう意地らしいところも可愛いがな」
「て、天龍…大分ストレートに言ってくるね?」
「今更だろ?」
天龍はそう言いながら満面の笑みを浮かべる。憂いのない表情、彼女が吹っ切れた証だと思いたい。
『──………ッ、フ、フフ…フハハハハ!』
…まさか、と僕らは後ろを振り返る。見るとロボットの頭部から未だに音声が流れている。
『ココマデヤルトハ…ショウジキオドロイテイルゾ、ガラクタ』
「貴様…!」
『トクイテン、キサマノソノチカラ。”改二”トカイッタカ? ソレハカツテ「アノオカタ」ガモッテイタ、シンピノチカラトオナジ。ダガ…ソレハケッシテ、キサマガショジシテイイノウリョクデハナイ!』
「うるさい。お前に持っていいかなんて決める権利ないだろ、自惚れているのはそっちだろ」
僕は辛辣に回答すると、ロボットから鼻で嗤う音が聞こえる。
『ッハ、ショウシ。ソレハ「オレ」ニコソフサワシイ。オレハ…アノオカタノ…!』
「…? もういい加減にしろ、お前が何を言いたいのかはっきりさせてやる、お前の本体を捕まえてな」
『ソレハカナワヌソウダンダ。オマエタチハ…
ロボットはそう言うや否や、頭部の額部分のシャッターが開くと、瞬時に何かが飛び出す。
「…っ!」
遅かった。ヤツの放った何かはそのままあるモノにひっついたようだ。それは…。
「はっ!?」
…石像にされた人たち、その一人に引っ付いているのは…まさか!?
『…ビーストシフト「Se-iren」…!』
「ウソ!? な、なんで…あの種は深海棲艦を…」
『アノ「機獣チップ」ハ「深海細胞」ニハンノウシ、ソレヲショクスノダ、セイカクニハナ! ソシテトリコンダサイボウハゾウショクヲクリカエシ…アラタナ「機械生命体」トナルノダ!』
「っな!?」
『オレガナンノタメニ、コノシッパイサクドモヲココニソノママニシタトオモウ? サイショカラ…「コレ」ヲコウシスルタメダッタノダ! コノヨウサイノジュウニンゴト、オレノコンセキヲケスタメニナ! フ、フハハハ!!』
「…外道が!」
天龍は怒りに任せ、ロボットの頭部を大刀で叩き斬った。盛大に真っ二つに割れるも、尚も怨嗟を振りまく黒幕。
『キサマラヲ…イカシテ…オクモ…ノカ……ッ。コノヨウサイトトモニ…クズレオチロ…! フ、フハハ…ハ……』
…ロボットはそれだけ言うと、小さな爆発を起こし、二度と言葉を発することはなかった…。
「…っ!? 天龍!」
しかし本当にそれどころではなくなる。種に寄生された人型のモノは徐々にその形を変えていく。
「…っ!」
すると、まだ足りないと言わんばかりに「銀の触手」を伸ばし、周囲の石像と化した人々をも飲み込む、触手に掴まれると液体状になって身体を包み、対象を消化していく。
…やがて、栄養を蓄えた「ソレ」は…次第に肥大化していき…。
──巨大な「怪鳥」となった。
『Kieeeeeeeーーー!!』
空間に木霊する金切り声、巨大な鉄の翼を広げ…鈍色の怪鳥は「産声」をあげた。
「…助けられなかった、あの人たちを…っくそ」
僕が唇をかみしめる思いに駆られていると、怪鳥の冷たく鋭い視線に気づく。まるで獲物を狙いすますように、僕らを見下ろしていた。
「っ!?」
僕らが身構えるも、しかして怪鳥は一瞥する程度で、すぐに別の行動に移る。
『Kieeeーーーッ!!』
羽を広げると、巨大な怪鳥がふわりと宙を舞う。どうやら翼の上部分にブースターがあるようだ。
そのまま加速的に上昇し…遂には「天井を突き破る」。
空間が揺れ動く中、僕らは予想外の展開に驚きを隠せない。
「うぇ!? 僕らが狙いじゃないの!?」
「いや、なんにしても不味い。アレが街で暴れてしまえば…!」
「っ! い、急いで戻ろう!」
こうして、またしても黒幕に乗せられる形で、僕らは地上へと戻る。果たして…この要塞はどうなってしまうのか?
──To be continued …