艦これすとーりーず ―僕が異世界版艦これの提督になった件について―   作:謎のks

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決戦! 要塞都市の攻防 ③

 セイレーンの放った「エネルギー爆弾の嵐」は、形だけ保っていた建物等を遂に崩壊させ、辺りには瓦礫の山が築かれた。

 

「…っ!」

 

 拓人は頭上の障害物を退けると、瓦礫の山の中から姿を見せる。

 

「…天龍、皆…無事…っ?」

 

 痛みに耐えながら、拓人はしんと静まり返る光景に向かって、仲間たちの安否の確認を取る。

 

「…はい」

「…問題…なし…っ」

 

 よろよろと歩きながら早霜と綾波が、ボロボロの状態で姿を現した。戦闘は可能だろうが…万全の態勢で動くことは難しいだろう。

 

「…っあぁ、なんとか…な…」

 

 そして天龍も。わき腹から血が見えるも、それ以外は擦り傷以外の目立った外傷は見当たらなかった。

 

「天龍…血が…!?」

「大事ない。この程度…かすり傷だ」

 

 傍から見ても逃げ場のなかったあの凶悪な攻撃をこの程度ですませられたのも、天龍が改二となった賜物であろう。尋常ではないスピードでその場から離脱した…それでも、外傷は避けられなかったが。

 

「…っ、まさか近づくだけで斬られるなんて」

「あぁ、アレはおそらくヤツが空中にいるからこそ出来る芸当だ。なんとしても地上に降ろさなくては…それこそ捨て身で行かなくてはならなくなる」

 

 拓人と天龍の会話をよそに、悠々と空を飛び回る敵の姿が…。

 

『Kieeeーーーッ!!』

 

 …しかしここである異変に気付く拓人。「高度が低い」気がする(尾羽を抜いた影響かは知らないが)…真空の刃さえなんとかなれば、付け入る隙はある、そう考えたが?

 

「……」

 

 横側にいる天龍を一瞥する拓人、脇腹の傷は浅いやもしれないが、こうなったのは自分の責任のように感じてならない。

 もう逃げないと決めたはずなのに、自分は何もしないのか? 何も出来ないのか? そんな悪い考えがぐるぐると巡る…拓人の決意自体は本物だが、人間が誰しもすぐ有言実行出来た試しはない。

 

「…ごめん、天龍」

 

 そう懺悔の言葉を零すと、天龍は無言で頭に手を置く。…気にするな、と言っているようだ。

 

「…! …うん」

 

 二人には今「隔たり」はない、懐かしいようなその感覚が妙に心地良かった。

 …思えば、ただの人間だった自分が、なんの因果か異世界に迷い込み、戦いの日々に身を投じるとは…つい最近までは思いもよらなかったことだ。

 

「(…変われただろうか、僕は…)」

 

 様変わりした眼に映る世界、環境…果たしてそれらは、自身の心に確かな変化をもたらしたのか。

 そんなことを考えていると、拓人の目には天高く舞い上がり、視認できるほどの烈風を見に纏うセイレーンの姿…。

 

「…?」

 

 空気の刃が乱れ踊る、そのまま大きく旋回し…こちらに向きを変えた。

 

『Kieeeーーーッ!!』

 

「…っ! 天龍!!」

 

 拓人は叫びながらも天龍の腕をつかむと、そのまま引き寄せ…攻撃から庇うように迫りくる敵に背を向ける。

 

「っがぁ!?」

「っタクト!?」

 

 砂塵を舞い上がらせながら、地上へ降下した怪鳥は拓人たちの前まで風を運ぶと、そのまま至近距離を通過する。轟音と同時に突風と風の刃が拓人たちを襲う。

 

「きゃっ!?」

「…っ!?」

 

 風に飛ばされそうになる綾波たち、風の刃による多少のダメージはあるものの、前方でその刃をもろに喰らった拓人ほどではなかった。

 

「…ぐっ」

「タクト、おい、しっかりしろ! タクトっ!?」

「…だ、大丈夫。ケガはない天龍?」

「それは俺のセリフだ! …っ、お前…背中が…!?」

 

 天龍の身体に身を預ける形の拓人だったが、背中は風刃により斬傷と血だらけになり紅く腫れていた。

 

「このくらいかすり傷だよ…いつっ」

「…っ! 馬鹿野郎! 変な自己犠牲はやめろ!! あのくらいの攻撃俺なら避けられた、お前が傷つく必要なんてないんだ! 俺に生きろと宣ったヤツが…こんな……っ!!」

「…っはは」

 

 拓人の肩を揺らし激昂する天龍に対し、その拓人は何故か力なく笑っている。

 

「…? なんで、笑うんだ」

「だって、今の天龍…「あっち」の天龍に似ててさ、思わずね? 昔はそんな感じだったの?」

「…! そんなこと、今聞くな馬鹿!!」

「ご、ごめん…」

 

 なんだか緊迫した雰囲気が意図せず和らいだが、そんなことお構いなくと言わんばかりに、セイレーンは再び空中を旋回し、風刃を研ぎ澄ましながらこちらを狙い澄ます。

 

『Kieeeーーーッ!!』

 

「っくそ…余裕のつもりか?」

「あの鳥公、許さん」

 

 天空を我が物顔で飛ぶ標的を睨みながら、言葉少なに静かな怒りを露わにする天龍。

 

「とにかく、今は態勢を整えなくちゃ…!」

「…仕方ない。タクト、とにかく俺に掴まれ」

「えっ、もうお姫様抱っこは…」

「今言ってる場合じゃないだろ、ほら」

 

 言われるまま天龍の体に掴まる拓人。だがボロボロの綾波たちはどうするのか?

 

「お前たちは瓦礫の後ろにでも隠れていろ、そのままジッとしていればやり過ごせるはずだ」

「っ! 待ってください、それではお二人が」

「…了承しました、後はお任せします」

「綾波さん…!?」

「このまま我々が戦い続けても、足を引っ張るだけではないでしょうか? であれば、私は司令官たちを信じます」

「しかし…!」

「早霜、ここまで頑張ってくれてありがとう。でももう大丈夫、ここからは僕らでなんとかするから」

「綾波の言う通り、このまま行っても今のお前たちでは足手まといだ、そのボロボロの身体ではな? 怪我人は大人しくしていろ、ということだ」

「…分かりました、ですが…どうか、どうか無茶はなさらぬよう」

「ご武運を…」

「うん、行ってくるね!」

「…またな」

 

 一通りのやり取りを済ませると、そのままフルスピードでその場を離脱する天龍と拓人。セイレーンもまたその後を追随する…綾波たちはその「まるで最後の別れ」のように感じる後ろ姿を見送るのだった…。

 

『Kieeeーーーッ!!』

「…タクトを切り刻んだ礼は、貴様の破壊をもって必ず償ってもらう…!」

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 一方、翔鶴たちは崩壊寸前の街並みの中、住人たちの避難誘導を行っていた。

 

「落ち着いて列を崩さないで、焦らずついて来て頂戴!」

「はーい皆ー! ダンスを踊るようについて来てね〜? あっそぉれワンツーゥ!」

「んもっ! マイちゃんこんな時に余計なこと言わない!!」

「もう少しで門が見えるわ、皆頑張ってね!」

 

 走りながら翔鶴たちが路上で住人を喚呼する中、野分は隣を走るヤマザキに声をかけた。

 

「ムッシュヤマザキ、先程はありがとうございました。貴方の魂の叫び、この野分感動致しました」

「フン、貴様らのためにやったワケではない。吾輩たち人類の未来のためにやったまで。見ておれ、いずれ貴様らの手を借りず、吾輩たちは戦争を終わらせてみせる」

「えぇ、楽しみにしております。…今の貴方はとても美しい!」

「ぬぅ?! それは冗句で言っておるのか? …まぁいい、艦娘には貴様のような間の抜けたヤツもいたのだな」

「えぇ、ボクにとってはその悪態すら美しさを感じる、褒め言葉です!」

「…逞しいな、貴様は」

 

 妙に噛み合わないはずなのだが、何故だか気の合う二人の会話。

 そんな空間を遮るように現れたのは、落下した土砂や岩の塊。

 

「道が塞がれている…!」

「そんな、後少しなのに〜!?」

「お、おい。来た道を戻る時間もないんじゃないか?」

「っもう! 死なないって決めたのに、こんなところで…!」

 

 住人たちがざわつき始めた…その時、頭上から新たな落下物が。

 

「っ! 危ない!!」

 

 野分が艤装を召喚し、住人たちに襲い来る岩石の数々を爆砕する。

 

「ひいぃ!?」

「…このままでは、不味い…!」

 

 翔鶴は辺りを見回すも、周りの建物も崩れかかっており、かといって来た道を戻り新たな道を探すのも時間がかかる。

 思考を巡らせる翔鶴たち。このままでは全員土砂に埋もれてしまう…!

 

 誰もが諦めかけていた…が、転機は突然に訪れる。

 

 

「──おらぁ!!」

 

 

 瞬間、翔鶴たちの前を塞いでいたはずの土の壁が消し飛ぶ、その光景には何故か「稲光」と轟音が…?

 

「…っ! 貴女たちは…!?」

 

 土壁を破壊し現れたのは、翔鶴たちにとっては見慣れた二人組。

 

「よぉ! お前ら無事か?」

「また望月から連絡入ってね、助けに来たよ!」

 

 選ばれし艦娘、加古と長良だった。その変わらない強さと頼もしさに、その場の誰もが安堵の表情を浮かべた。

 

「あ、あれって噂の…選ばれし艦娘!?」

「や、やった! 助かった!!」

「…全く、タイミングがいいわね」

「怒るなおこるな、今まではどうやって人目を避けたものか分からんかったから、侵入できなんだだったが」

「うん、こんな時にそんなこと言ってられないよね!」

「ナイス判断、加古っち、長良っちぃ!」

「お、おぅ…誰だあの金髪、初対面だよな?」

 

 とにかく窮地は脱した。後はもう突き進むのみだが…その時、加古たちの後ろから近づく、見慣れない人影が。

 

「…? 貴女たちは?」

「っ! マドモアゼルチョウカイ!? その部下さんたちも!」

「お久しぶりです、野分さん。私たちにも手伝えることがあると思い、馳せ参じました」

 

 その正体は、鳥海と吹雪たち「調査隊チーム」だった。その姿を見た住人たちは、思わず疑心暗鬼に駆られる。

 

「…っ! あの眼鏡のヤツ、俺らの船を襲った…!?」

「えっ!? そ、そいつらが…?」

 

 またもざわつき始める住人たち。鳥海はまず何も言わずに、深く頭を下げて謝罪の意を表す。

 

「…謝って済む話ではないことは、重々承知しております。ですが…こんなことで罪滅ぼしにもならないとは思いますが、どうか…我々に貴方がたを助けさせていただけないでしょうか」

 

 鳥海の誠意を込めた思いと言葉に、住人たちのシワも徐々に和らぐ。

 

「…そうだな、今はそんなことよりここを脱出しなきゃな!」

「あぁ! まぁアンタらもなんかあったみたいだし、ここを出る手伝いしてくれたら、許してやるぜ!」

「わー、ウエカラメセンだぁ!」

「う、うるせぇぞ!?」

 

 住人の一人の言葉に、舞風が笑いを被せてその場を和やかな雰囲気にしていく。

 

「あはは、まぁよろしく頼むよ眼鏡ちゃんたち!」

「…っ! ありがとうございます…本当に…ありがとう…っ!」

 

 許されると思わなかったのか、鳥海は嬉しさのあまりに涙を零す。

 その様子を微笑みながら見守る群衆の中で、ただ一人空を睨む男がいた。

 

「…すまんが、吾輩はこれから別行動をさせてもらう」

 

 ヤマザキの突然の申し出に、その場の誰もが驚きを隠せなかった。

 

「えっ、急にどうしたのザキさん!?」

「マユミ、それからコバヤシ殿、誰でも構わんから吾輩に黙ってついてくる者はおらぬか?」

「ザ、ザキさん。説明がないと皆混乱しちゃうわ」

 

 マユミとコバヤシの問いに、ヤマザキは自信に満ちた表情で告げる。

 

「なに、あのアホウドリに人間の恐ろしさを思い知らせようと思ってな?」

 

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