艦これすとーりーず ―僕が異世界版艦これの提督になった件について―   作:謎のks

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変わりゆく日々

 百門要塞の一大決戦は幕を閉じた…。

 

 先ず結論から言うと…黒幕は遂に僕らの前に現れることはなかった。

 いや、僕らはだけど。別行動をしていた野分が追跡して、神父が黒幕だということを突き止めた。彼はやはり…多くの信仰者を犠牲にしていたようだ。己の野望のために…!

 でも神父はその場で御用とならなかった。何があったかは分からないけど、野分は黒幕の魔の手に倒れ、舞風に介抱されていたのが翔鶴たちによって見つかった。

 翌日、横になっていた野分に大丈夫か訪ねると「少し目眩がしますが、大丈夫です!」と、歯茎をキラキラさせながら言った。うん、いつも通りで良かった…でも、心配だな?

 

 そして…要塞の今後についてなんだけど、セイレーンとの戦いから数日後に「カイトさん」が百門要塞を訪ねて来た。住人たちを前にカイトさんは柔らかな笑みを浮かべて演説する。

 

「皆さん、ご無事のようで何よりです。この度は我々の負の遺産である「機獣セイレーン」が多大なご迷惑をおかけした様子、連合を代表して、謝罪申し上げます」

 

 一瞬鎮痛な面持ちになると、カイトさんは深々と頭を下げた。そして顔を上げると同時に演説を再開する。

 

「今まで皆さんにはご不便ばかりおかけしておりました、貴方がたに施すべきであった生活援助もその一つ。我々が下手に貴方がたに関われば、貴方がたの心の傷を更に深く抉るのではないかと思い、それでも見て見ぬふりをしてきたのは事実です」

「……」

「ですが、私の部下である加古と長良、そしてタクト君よりこの要塞で起きた戦いの一部始終を聞き、貴方がたに償いを果たすのは今、と悟りました」

「ッフン、能書きは良い。具体的には何をするつもりなのだ?」

 

 民衆の中で腕を組み不機嫌そうに言葉を投げるヤマザキさん、カイトさんは「よくぞ聞いてくれた」と言わんばかりに微笑む。

 

「今よりこの要塞は連合の所有権を外れ、難民保護を目的とする公共都市に改装することを、宣言します!」

 

「…!?」

「えっ…それって?」

「はい、時間はかかりますが、要塞の全ての武装を排除し、海原に放置された機雷も撤去、内部の無償改装と設備の新調新設と、貴方がたの暮らしやすい新たな都市として生まれ変わらせます」

「おぉ…だ、だがそんなこと言って…連合が直したっつー名目で、俺らにアンタらの支配下で暮らせってことじゃ?」

「ご心配なく。我々はあくまで都市の無償改修及び生活援助に着手するだけ、あくまでここの暮らしを作っていくのは…貴方がたです」

 

 カイトさんの側に立っている加賀さんがつけ加える。要は都市として生まれ変わるだけで、生活自体は変わらない感じだね?

 

「い、いいのか? そんな至れり尽くせりで。俺たちは…まだお前らを許したわけじゃ」

「もちろんです。我々も簡単に許してもらおうとは思っておりません、ただ…これは私の持論ですが「困った時はお互いさま」…ということで?」

 

 にっこりと笑いながら言ってのけるカイトさんに、周囲には「底が知れない何か」を感じ取った人々の苦笑いが。

 

「…っはは、なんだそりゃ」

「でも、もらえるモノはもらわなくっちゃね!」

「そうだな! あぁ楽しみだなぁ〜この要塞にも愛着湧いてるからさぁ!」

 

 住人たちはそれぞれ喜びの声をあげる、ヤマザキさんはどうかというと…?

 

「……」

「お気に召しませんでしたか?」

「いや、感謝している。だが…吾輩も人間だ、お前たちに借りを作るようで、どうも釈然とせんのだ」

「そうでしたか。…ならこう考えて下さい、我々がひっくり返るような素晴らしい都市、生活を貴方がたがこれから作っていってください。それが形を変えた復讐だとしても、我々は喜んで受け入れます」

「ッカ、なんと器の広いことか。…いいだろう、後悔はするなよ?」

 

 不敵に笑うヤマザキさんに、カイトさんは温和な笑みを返すのだった…。

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 僕らは今、要塞の周りを見まわしていた…「商船の上」で。

 黒幕がとっくに逃げているのは分かり切ったことなんだけど…少しでも手掛かりが落ちていないか、手分けして探している。

 金剛たちは甲板の上から、僕と天龍は操舵室から。

 

「すみません船長、無理を言ってしまって?」

「気にすんなよ旦那、俺らも乗りかかった舟ってヤツさ。しっかし…あの戦いを潜り抜けたっつーのに、もう黒幕の捜索って、大変だねぇ? 少しは休めたのかい?」

「ふ、休めていないから艤装も万全ではないのだ、しかしそれを理由に動かないわけにはいかんからな、俺たちは」

「そっか、アンタも気苦労が多いねぇ旦那。こんなタフな女に囲まれてるとよ? ウチの女房見てるみたいだ」

「あっはは…」

「ふっ…」

 

 船長と気兼ねない会話をする僕ら、ちなみに要塞の決戦の時、船長とアキちゃんは率先して住人を近くの島まで船で避難させてくれていた。一般の方に迷惑をかけるのは本来はご法度よ? って加賀さんに白い目で見られたけど…彼らには、感謝してもしきれない。

 

「…ありがとうございます船長、アキちゃんも…貴方たちの協力には、本当に助かりました。感謝しています」

「そうかい? 普通のことしたつもりだったんだが…ま、礼はありがたく受け取るぜ?」

 

 船長は商船を操縦しながら、なにか感慨深い表情で前を見つめながら呟くように言った。

 

「…なぁ旦那、知ってるかい? このトモシビ海域の「トモシビ」っつー名前の由来」

「え? (あ。これ知ってる)」

 

 僕はその話の内容を(ルールブックで)知っているが、それは言わぬが花というもの。その場の流れに身を任せた。

 

「この海域の潮の流れはよ、要塞をぐるっと回るように囲まれててな、その形は「ハート」になってんだ。コイツには諸説あるみてーだが…一番は「設計者であるイソロク様がそうなるように設計した」って言われてんだ」

「……」

「ハートの中央に要塞を立てた理由、それは…これからここに流れ着く人々が「心を一つにして」支え合っていけるように…だってよ」

「そうなんだ…イソロク様が」

「あぁ、最初はいがみ合ってばっかだったみてえだが、これからは艦娘も人も関係ねぇ。正に心に「トモシビ」を宿して進んでくだろうよ、それは多分…旦那、アンタが頑張ったおかげだ」

「そ、そんな…僕は何も出来なくって…」

「謙遜すんなよ、ここの住人も同じこと思ってるだろうぜ? …よくやったな、これからは…皆心を一つにして頑張っていけるだろうよ」

 

 船長の用意されたような言葉、だが確かな温かさを感じる。僕は…何故か涙がこぼれそうになる。

 

「…ありがとう、本当に…ありがとう」

 

 その言葉に返答はなかったが、その空間に確りと繋がりがあることを誰もが感じ取ったことだろう。

 

「…さて、タクト。改めて聞きたいことがあるのだが?」

「ん、どうしたの?」

 

 僕の隣の天龍が尋ねたいことがあるようだ、僕は天龍の顔を見ながら聞く姿勢を作る。

 

「お前はこれからどうする? 任務を遂行する毎日をただ送るか…それとも、あの黒幕を追うか」

「…それって、今更聞くこと?」

「一応な」

「うーん。まぁ決まってるよね?」

 

 息を大きく吸い、強く吐き出す。そして…決意を込めた一言。

 

「僕は戦う、特異点として…この世界の君たちを守るために」

 

「…そうか」

 

 天龍は満足そうに笑うが、横で聞いていた船長が突っ込む。

 

「いや旦那、そうじゃなくってさぁ。これから具体的にどう行動に移していくのかって聞きたいんじゃねぇのか? 天龍はよ」

「そう? でももう分かるよね?」

「まぁ…ここまでの仲になったからな」

 

 まるで深い愛を誓った関係のように、言葉がなくても伝わると僕らが言うと、呆れたようなため息を吐く船長。

 

「あぁそうかい? なら俺にも分かるように説明してくれ、気になるからさぁ」

「うん、まずは「アレ」だよね?」

「うむ、アレだな」

「だっから…;」

「まずは知ることから始めようと思う。この世界で起こっている異変、その元凶を」

「黒幕について調べる、ってことかい?」

 

 船長の言葉に、僕は強く頷いた。

 

「うん、だから…先ずはカイトさんに会いに行こうかな、ほとぼりが冷めたらさ」

「それがいいが、タクト。もっと手っ取り早い方法があるぞ」

「ん?」

「そもそもお前がこの世界に呼ばれた理由を知るモノ、あらゆる事柄を予期していたような言動や、思わせぶりな態度をとりながら俺たちをここまで導いた…ソイツに聞いた方が早い」

「…あぁ、最近見かけなくなったからすっかり忘れてた」

「ん? おいおい一体誰に聞くんだよ?」

 

 天龍の提案にクエスチョンマークを頭に浮かべる船長。僕は…とりあえず呼びかけてみた。

 

「いるんでしょ「妖精さん」? 出てきてよ」

 

 僕がそう声を響かせると、僕の後ろ…背中から肩に顔を出したのは。

 

「…ど、どうも〜;」

 

 手のひらサイズの妖精さん。色々あったせいか、もはや懐かしいようなそののんびりとした口調。それでもどこかバツが悪そうな様子だったが?

 

「出たな諸悪の根源」

「た、拓人さん。そんな睨まないでくださいよ〜アハハ…」

「いいや。そもそも君の口車に乗った僕が悪いけど、元は君が色々吹っかけてきたのが問題でしょ? やっぱり異世界転生の神さまにロクなのはいない、とんだQBだ」

「うむ」

 

 僕の意見に、天龍は大きく頷く、そして相変わらず状況が飲み込めない様子の船長。

 

「そのちっこいのがどうしたんだい?」

「要するに、詐欺師だよサギシ。提督詐欺なんてメじゃない」

「マジか、最低最悪ってヤツだなぁ!?」

「(そこまでは言わないけど…)とにかく、どうしてこんなことになったのか、いい加減話してもらうよ」

「…逃げるなよ?」

「は、はいぃ…」

 

 こうして、妖精さんから事の次第を聞く僕ら。

 

「…しかしそれはまた、新たな冒険の始まりでもあった…」

「反省が足りない、天龍」

「了解(むんず)」

「あぁ! やめてぇ!? 握りつぶそうとしないでぇ〜! ま、まじめにやります、やりますからぁ〜〜!!?」

 

 やれやれ…これからもお世話になるんだから、あんまり傷つけちゃダメだよ?

 

 ──そう、ここから戦いは更に加速する。

 

 僕らを待ってるもの…この先の運命とは、果たして…?

 

 

 ──ボウレイ海域編に続く。

 

 




 ボウレイ海域編では、もう少し設定に踏み込んでいく予定。
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