艦これすとーりーず ―僕が異世界版艦これの提督になった件について― 作:謎のks
僕は執務室を飛び出し、綾波を探し始める。
綾波…まさか裏で僕のこと…!
拓人妄想の裏綾波「あのクソガキマジイラつく〜、なんであんなDTがウチらの提督なワケ? 冗談はヨシコちゃんだっつーの、クソワロw」
なんて思ってるんじゃ!? い、いや! 確かに今はDTだけど、異世界ドリームでいつか、いつの日か卒業するから、この支配からのっ卒業〜してみせるから、って言ってる場合か!?
…っふぅ〜オーケイ、一回落ち着こう…素数を数えよう…2…3…さ〜…ん? 次なんだっけ??
か、かなり動揺してるよなぁ…でも仕方ないよ。
あの時の綾波の言葉に、僕は本当に救われたんだから。だから…あの数値は納得出来ない…っていうか絶対壊れてる!
最低でも「3」だと思うんだよなぁ〜? えっと、綾波は…んー鎮守府の中には居ないなぁ。だとしたらあそこしか…。
・・・・・
──鎮守府前海岸、砂浜。
「……」
綾波は砂浜の上で、海の向こうの水平線を静かに眺めていた。
彼女の人となりは「平静一徹」に尽きる。仲間内であろうと、その胸中を吐露することはなく、常に「了承」の二文字で任務を遂行して来た。どんな状況においても、彼女が激情の起伏を見せることはない。
それは心の壁がある…という意味とは少し違うようだ。彼女の過去は、今現在の彼女を形成する重要なファクターに相違ない。まるで本当の機械のように…感情を滅多に表に出さない、その在り方の意味とは?
「綾波ー!」
「っ! 司令官…?」
綾波が振り返ると、そこには彼女の司令塔…忠実な騎士の主人、拓人の姿が。
「やっぱりここにいたんだ! 鎮守府に居ないから探したよ!」
「…?」
綾波が首を傾げる、言葉をあまり介さない彼女には動作、仕草が意思表示の代用だ。その意図に気づいた拓人は、彼女の疑問の意思に答えようとこの場に来た理由を告げようとする…が。
「(はっ!? これ…「君を攻略しに来た!」なんて言ったら逆に引かれるのでは…っ!?)」
そう、拓人はまるで恋愛ゲームのように綾波の心を射ち抜いてみせようとしていた。
もちろんゲームでないことは理解しているし、そうしなければならない理由もあるが…女性の心を全く知らない拓人にとっては、どうすればいいか分からずにいた。
「…あ、えーと。いい天気だね?」
「……? はい。」
「……」
「……」
「…;」
不味い、会話が続かない。
金剛のような「常に喋っているような明るいキャラクター性」があれば、すらすらと会話が成立するのだろうが…タクトは基本「ネガティブ&インドア派」そこまで気の利いたセリフが思い浮かばない。トレンディードラマのようにはいかない、と拓人は思った(見たことないけど、そんなドラマ。by拓人)。
「…あ、海を見てたの?」
なので、状況を整理しながら会話の糸口を掴もうとする。綾波はその問いに一回頷く。
「そっか。…ねぇ、君たちは海の上で毎日のように戦っているのに、どうして海を見ていられるの、飽きない?」
「…陸の上でも、戦いますので。毎日は少し言い過ぎかと」
「(あ、ちょっと長いセリフ。心開いてくれてるかな?)…そ、そうなんだ。綾波はいつも陸の上で戦ってる感覚なの?」
「…昔は、大陸を拠点にして活動していました。
「(私たち?)ねぇ、綾波ってさ? 昔はどこで何を…」
彼女が「騎士」であることは調べがついているが、それ以上のことは好感度を上げないと表示されない。なにかヒントだけでも…そうでなくでも昔を思い出す過程で、良い印象を与えられないか? 拓人はそう考えたが…。
「テートクーぅ!」
「ん、金剛?」
先ほどの拓人と同じ要領で後ろから砂浜を駆けるのは金剛、そのままの勢いで拓人に飛びつく。
「ぅわっ!? どうしたの?」
「カガから緊急連絡デース、カイトが今すぐワタシたちに会いたいと言ってマース! すぐ連合本部へ行きまショー!!」
「えっ、もう!? …あの人も忙しい人だろうから、もう少し先になると思ってたんだけど?」
「テートク! 善はハリアーップデース! 急ぎまショー!!」
「わ、分かったよ。…あの、いい加減離してくれない? 抱きつかれると急げないよ」
「ヤー! 最近"テートニウム"を補充出来てないので今のうちに充電しマース!!」
「…テートニウムて?」
ニュアンス的に分かるのだが、やはりここは急ぎ支度をせねば先方を待たせてしまう。
拓人は(内心断腸の思いで)金剛を諭すと、直ぐさま砂浜を走り出す。
「…司令官」
「っあ、綾波! また今度ゆっくり話そうね!」
振り返りざまにそれだけ言うと、拓人は連合本部へ向かう準備を進める…。
「…忙しない人、まるで…"あの人"みたい…っふふ」
何かを思い出すように穏やかな笑みを浮かべる綾波。そこにあるのは年相応の少女のあどけない表情だった…。
・・・・・
さて、綾波と仲良くなることは失敗したけど、だからって投げ出すわけにもいかない。なんたってカイトさんからの緊急招集だ、なにか大事な話に違いない…。
僕らは急ぎ連合本部へと向かい、カイトさんの居る執務室を訪ねる。
「…いいかしら?」
「は、はい…うぅ、ここに来るのは二回目だけど、緊張するなぁ」
僕の発言を聞き流しながら、加賀さんはいつものようにドアをノック、ドアノブに手をかけると、ゆっくりと開ける。
「…失礼します、カイト提督。タクト提督をお連れしました」
「ご苦労様、さぁ皆入って」
カイトさんは執務室から僕らに呼びかける、僕らは言われるまま入室する。
「お邪魔します…」
「おっじゃましマース!」
「…邪魔するぞ」
「ただいま戻りましたよっと…ひひっ」
「お邪魔致します! …おぉ、流石選ばれし艦娘のコマンダン、執務室も美しい!」
「入室」
次々と入室して、順々に整列していく僕と艦娘たち、舞風と早霜に留守を任せて僕らは全員連合本部へと集結していた。
「…あら、翔鶴さんは?」
加賀さんが翔鶴が入室していないことに気づく、事前に事情を聞いていた僕は、理由を話す。
「翔鶴は…カイトさんに会いたくないみたいで、一応執務室の外に居るんですが」
「そうか、来てくれただけでも僥倖だ。ありがとう」
カイトさんは特に気にする様子はなく、僕らを見回す。…その眼はやがて僕に止まる。
「カイトさん、金剛以下六名、そして僕…色崎拓人は。トモシビ海域、百門要塞で起こった怪事件の調査及び解決の任務、完了いたしましたことをご報告します!」
僕は形式的な言葉で任務完了を宣言すると、そのまま敬礼。金剛たちも僕に続いて敬礼をする。
「…うん、引き締まった良い顔つきになった。矢張り君に一任して正解だったようだ」
「ありがとうございます!」
僕の顔を見てにこやかに笑い喜ぶカイトさん、僕はお礼を言いながら敬礼の手を下げた。
カイトさんは満足そうに僕らを眺めると、ここに呼んだワケを話す。
「先ずは任務完遂おめでとう、そしてお疲れ様。君たちの尽力奮闘には感謝に堪えない。これは僕の言葉だけでなく、連合上層部並びに「連合総帥」の御言葉でもある」
「なっ、マジか!!?」
望月が大分驚いているけど、僕や他の艦娘たちもピンと来ていない様子、理由を聞いてみる。
「そりゃそうだよ、連合総帥ってぇのは居るかどうかも分からねぇぐらい遥か高みの、人前に出てくるのも稀な御仁だぜ? アタシらの活躍バッチリ耳に入ってたんだなぁ!?」
「そ、そんなにすごいの…?」
「(天龍)うーむ、俺も聞いたことはないが…」
「まぁ、気まぐれなお方だから…とだけ。そういうことだから、その総帥の推薦で君たちを「連合幹部」に招こうと思うんだ。どうだい?」
「へぇ連合の幹部。……っ! か、幹部うぅ~~!!?」
僕はおおげさに驚いて見せた、他の娘たちも似たような「信じられない」といった表情。…綾波以外。
「(綾波)……」
「僕の受け持った任務を見事にやり遂げたんだ、君たちは正真正銘の強さと誠実さを併せ持つ、正に幹部に相応しいと、総帥のお考えだ。僕もそれに異存はない。どうかな?」
「え、えぇ…幹部って具体的に何をすれば?」
「心配ないよ、重要な機密事項の共有と任務のランクアップ以外は、今までとさしたる違いはないはずだよ」
あぁ、そんなものか。確かに色々聞きたいことはあるし、どうせこれから黒幕と本格的に戦わなければならないだろうから。
「…分かりました、不肖この色崎拓人、謹んでお受入れします!」
ちょっとの緊張で強張った口で、その申し出を受け入れた僕。カイトさんは僕の前に寄ると、両手で僕の手を握り握手をする。
「ありがとう、これからも危険な任務に就いてもらうことになるだろうけど、よろしくね?」
「はいっ!!」
あ、改めて言われると余計に緊張が…うわずった声で返答してしまう僕。
「ははっ、そんなに緊張しないで? …さて、次は君だよタクト君。君は今すぐ僕に聞きたいことがあるのではないかな?」
話を振ってくれたので、とりあえず息を整えつつ…例のことを聞いてみる。
「トモシビ海域で出会った神父…黒幕のことについて、お聞かせ願えないでしょうか?」
…カイトさんは相変わらずポーカーフェイスだけど、どこか真剣な眼差しを向けてくる。僕の覚悟を試している?
僕も負けじと真剣な眼差しで見つめ返す。…少しの沈黙の後。
「…分かった、君は僕の与えた試練を見事に克服した。その眼に宿る覚悟も確かに見える…この世界のために、戦ってくれるんだね」
「はい、それと…この世界の艦娘たちのために」
「…っ。…そうか」
一瞬驚く、そしてすぐに温和な笑みを浮かべる。カイトさんも…この世界の艦娘たちの扱いに疑問を抱いているようだ。
「よし、だがその前に…君の肩にいるご意見番にも話をさせてもらえるかい?」
カイトさんはそう言いながら妖精さんを指す。
「…カイトさん、もしかしなくても妖精さんのこと?」
「あぁ、"知ってる"。嘘を言っても仕方ないからね? まぁ資料がなくとも僕らは君たちを幾らでも知ることは出来るってことさ…ねぇ?」
カイトさんは望月を指して同意を聞く、望月はバツが悪そうに「さぁね?」と言わんばかりにそっぽを向く。
「情報の共有…ということですね?」
「そうゆうこと。あぁそれから…この際だから、他の娘にも情報を伝えておきなさい」
「っ! …それは…しかし」
「ここにいるメンバー全員に情報を共有しているわけでもないんだろう? ここから先は…曖昧な絆だけではいけない。全てを理解したうえで戦いに臨むべきだ」
「…おっしゃる通りですね、分かりました。…いい、妖精さん?」
「はい。こうなることは承知していました。ですが…話せないことは話せませんよ?」
「理解してるよ。…さて、では種明かしといこうか?」
こうして僕らは、カイトさんと情報を共有することになった。
果たして、黒幕は一体何者なのか…?