艦これすとーりーず ―僕が異世界版艦これの提督になった件について― 作:謎のks
艦娘騎士団と別れた後、僕らは再び研究員の捜索に当たった…。
近くの小島を徹底的に調べた…しかし研究員どころか、人のいる気配すらしなかった。
「うーん…」
このままじゃなにも成果が上がらないぞ…どうするか、どちらにしろ時間もないし…。
「…ふぅむ、拓人さん? あまり根を詰めても仕方ありませんよ?」
「そうは言うけど妖精さん…」
「貴方は切羽詰まると考えが纏まらなくなりますから、一度休憩して頭を冷やしてはどうでしょう?」
「リトルフェアリーに賛成ネー! もう一時間くらい捜してるから、服がびちゃびちゃデース」
確かに皆汗にまみれて衣服がベタついていた。あ、濡れスケとか考えた? 残念そこまでじゃないんだなぁ…。
「何考えてるんですか? そんなこと考える余裕があるなら、休まなくてもいいですねぇ?」
「休みますです、はい。」
こうして体力の回復のため、僕らは再度近くの小島で休むことにした…こんなにダラダラしてていいんだろうか?
「急いては事を仕損じる、ですよ?」
「…そうだね? はぁ…疲れた……」
・・・・・
──拓人たちは小島で休憩を挟んでいた。
「…ふぁ……」
「むにゃ…」
拓人と妖精さんは、木陰の下で木に背中を預けて就寝。
「…いたか?」
「居ないよ? …っふふ、君も休んでいいんだよ?」
「傭兵が休んだらいかんだろう?」
時雨と天龍は小島の周りに気を配っていた。
「…やっぱり見えないわ」
「マドモアゼルショーカク、貴女もお休み下さい」
「平気よ、足手まといにはなりたくないもの。…今度望月になにか造ってもらおうかしら?」
「それがよろしいでしょう」
霧の中で艦載機を飛ばさんとする翔鶴、その様子を見守る野分。
「……」
そして…綾波は海岸にて、見えないはずの霧の向こう側を眺めていた…。
「…団長」
彼女がまぶたの裏に焼き付けた光景とは、果たして…?
・・・・・
「ふぁ〜…」
金剛はというと、丁度日陰になっている洞穴を見つけ、入り口に腰を下ろしていた、湿気の蒸し暑さに参っていた金剛だったが、洞穴の冷たい空気によって涼んでいた。
「…はぁ、テートクはどうしたらワタシだけを見てくれるデース? いっそ色仕掛けしてみるデース? そうしたら…〜〜っ、やっぱり恥ずかシーヨ!!」
手で顔を覆い隠す金剛、恥ずかしがるも妙に嬉しそうに身体を揺らす、彼女にとって提督である拓人のことを考えることが何よりの癒しだった…。
「…ん?」
──ふと、背後に視線を感じる。
もし敵だとしても、金剛も腕には自信があるのでさしたる恐怖は感じなかった…が、自分を見つめる居場所の分からない視線は、誰でも気になるもの。
「誰?」
なんとなしに後ろを振り返って、視線の主を呼んでみる。
ざっ
ざっ
ざっ
ゆっくりと、洞穴の奥からまるで不気味に木霊する足音。そして…暗がりから浮かぶ姿は。
「望月?」
金剛のよく知る人物「望月」が立っていた。
「……」
しかし、いつもの彼女なら軽く挨拶するところが、無言で金剛を見つめるだけ。…明らかに様子が違う。
「どうしまシタ?」
金剛はさほど危機感もなく、いつものように声をかける。
…しばらくの沈黙の後、望月が重い口を開く。
「…君は、自分が何者か覚えているかい?』
…気のせいか彼女以外の声も聞こえる気がする。しかし彼女は仲間を疑わない「それが金剛だから」…疲れが溜まっているのだろう、気のせいと思うことにした。
「なに言ってるデース? ワタシは「金剛」デースよ? もう急に暗くなってどうしたんデースか?」
そんな他愛ない会話に持っていこうとする金剛だが、望月は続けた。
「…やはり、まだ戻っていなかったか…』
「え…?」
「…君はまだここに来るべきではなかった。帰るんだ、今すぐこの海域を出ていくんだ。でなければ…いずれ君は「君」でなくなる』
「どういうい……み………?」
金剛がその問いを追及しようとすると、頭に重く何かがのしかかるような感覚が襲う。
「…あ、れ? 急に目眩が……」
「君は今のままでいい。今が一番幸せなんだ、何も思い出す必要はないんだ。…さぁ、私の言葉に、耳を傾けて。何も心配はない、心配ないんだよ…』
囁くように呟かれた言葉は、その通りの「安息感」があった。
「…ワタシ……は…?」
金剛はそのまま、眠るように気絶した。
「………』
望月(?)は金剛に近づくと、そのまま肩に担ぐ。彼女の小さな身体からは信じられない力で、自分の身の丈以上の金剛を持ち上げていた。
「…やはり我々は「神の奴隷」のまま…か』
虚しいような、哀しいような。
そんな儚げな表情を浮かべていた…。
・・・・・
「ふわぁ〜…! よく寝た」
欠伸をしながら起き上がり、辺りを見回す。
やっぱりまだ霧の中か…分かってはいたけど、なんだか陰気な感じが寝起きには悪いなぁ…?
「…おはようございます、拓人さん」
「おはよう妖精さん。…って、どうしたのそんなしかめっ面して?」
僕の肩で妖精さんが何かを考え込むように表情を険しくさせていた。
「懸念していたことではありますが、今しがた「起こるべくして起こった」ことがありました。と言っても私にもぼんやりとした事しか分かりませんが」
「っ! …それって?」
ただならぬ気配に、異常事態を察した僕は妖精さんに問いかけるが、何かに気づいた様子の妖精さん。
「…っ! 拓人さん、右に向かって走ってください!」
「分かった!」
言われたとおり、僕は右に向かって走り出す。霧のおかげで視界が不明瞭だが…程なくして、僕らの知る人物に出くわす。
「望月? それにアレは…金剛!?」
そこには、海岸に向かって歩く望月、そして金剛…彼女が気絶したまま望月の肩に担がれ、引きずられている姿…!?
「望月! 何があったんだ? なんで金剛が…?!」
僕が質問を投げると、望月は僕を虚ろな目で睨んでくる。
「…特異点か、予想より気づくのが早いな』
「…っ! お前…誰だ? 金剛と望月に何をした!」
「その肩に乗っているのが、この世界の「神」か?』
「っ!」
「妖精さんを知っているのか?」
僕の質問を無視し、金剛を砂浜に下ろして僕らに向き直る望月。
「神よ…我々は貴女の創り出した世界の「運命」に、必ず抗ってみせる。思い通りにはさせない。…たとえその先に破滅があろうとも、創造が為されると信じて…』
「…楽園に至る、か?」
その言葉を聞いて、一瞬驚いた顔を見せる謎の人物。…いや。
「お前…研究員だな? 黒幕とは別の。やり方は分からないけど、いつのまにか望月に化けていたんだ。金剛を攫って…なにをするつもりだ!」
「特異点、君もまた運命のレールに乗るトロッコの乗員に過ぎない。あまり詮索するな、この世界は「残酷すぎる」…君の理想は叶えてやれないだろうが、彼女になにをする気も私にはない』
「なに…?」
「君に彼女と添い遂げる意志が本当にあるなら、彼女のことは君に任せよう。但し…もう二度と「ヤツ」に関わるな。最愛のモノと、最期の日まで共に居たいのなら、尚更だ』
「…僕に、お前たちを見逃せと?」
「私は君たちを案じてそう言っているだけだ。どう思われようが構わないが、いずれ後悔するぞ…真実を知ることが、君たちの明日を破壊することになるんだぞ』
「…拓人さん」
妖精さんが僕の顔を心配そうに見つめる。
──僕の取るべき行動は二つ。
・金剛と一緒に逃避行して、誰も知らない場所でひっそりと暮らす。
・研究員を捕まえて、残酷な現実を受け入れる。
理想と真実、二つに一つ…。
「…って、僕が素直に従うと思う?」
「なに…?』
「答えは一つ、お前たちを捕まえて、真実かなにかを知ってでもお前たちの野望を打ち砕く。そして…金剛と一緒に退役した後、誰も知らないような場所でひっそりと暮らしていく! これが僕なりのハッピーエンドじゃい!!」
「拓人さん…!」
「…呆れたな、蛮勇では何も変えられないのだぞ。真実を知ることが恐ろしくないのか?』
「怖いよ。でもそれ以上に…なにも知らないまま誰かが傷ついていることを、黙って見過ごすことは、僕はもう嫌なんだ」
「…っ!』
「お前たちの知っていることがなんなのか知らないけど…そこにどんな大義があっても、人の命を弄んで言えることはないだろう?」
「…何も知らないから、そんなことが言えるんだ』
「そうさ。だからこれから理解していくんだ…お前たちを捕まえて!」
僕は望月に近づいていく、一歩いっぽ力強く…しかし。
「…っ』
「タクト、なにがあった?」
「天龍! 今望月が…っ!?」
僕の後ろから天龍が近づいてくると、目の前に衝撃の光景が。
「…憑離(ソウル・アウト)』
望月がそう呟くと、彼女の体から光の玉が浮かび上がる。
「な、なんだ!? アレって幽霊…っ?!」
光の玉が外に出ると、望月は力なくその場に倒れこむ。
『憑依(ソウル・イン)』
光の玉から声がしたかと思うと、玉は瞬速で僕の後ろの天龍に向かっていく。
「っは! まさか望月は取り憑かれたってこと?! …天龍、避けて!」
「いえ拓人さん、心配は無用ですよ」
妖精さんが意味深なことを言う、しかし天龍の中に玉は入り込み、そのまま彼女に取り憑く…と?
──ガキィン!
『…なっ!?』
「なんだ…?」
なにが起こったのか、天龍の中に取り憑こうとした玉は、そのまま何かに弾かれるように外に飛び出した。
『馬鹿な…憑依が出来ないだと!? こんなこと今まで一度も…』
「残念でしたね! 天龍さんはタクトさんと固い絆で結ばれました、そんな彼女の魂を揺さぶったり取り憑くことは、もう誰にも出来ません!」
「それって…好感度最大値のメリットってこと?」
「なんのことか知らんが、目の前のこの妙な玉は俺たちの敵…だな?」
『…っ! くそっ!!』
悔し紛れの言葉を残して、光る玉はそのまま何処かへと姿を消した。
「待てっ!」
「拓人さん、ここまででいいでしょう。天龍さんに乗り換えてこの場を凌ごうということだったみたいですね? アテが外れましたけど」
「…っ、まさか…幽霊みたいに誰かに取り憑けるなんて。この辺りの海域で起こった怪奇現象も、あの研究員の仕業か?」
「私も…そこまでは見えないです、残念ながら」
「…そっか」
「タクト、あの火の玉は? 望月たちは何故倒れている?」
天龍の質問に回答していく僕。
「…僕も何が起こってるのか、よく分からないんだ。ただ…あの光る玉が「研究員」だってことは確かだよ」
「っ! …まさか、そこまで事態が動いていたとは」
「僕も驚いたよ」
天龍の後ろから、時雨が近づいて来た。
「君たちの言う火の玉は、僕の力では読み取ることが出来なかった。つまりあれは、本当に生霊の可能性がある…」
「そっか、時雨の「水」を感知する力じゃ見つけられないわけだ。魂だけだったから」
「とにかく…まずは金剛たちの手当てを。望月も心配だ」
「うん…!」
天龍の言う通り、まずは二人の容体をみないと…!
それにしても…研究員は何で金剛を…?
『──真実を知ることが、君たちの明日を破壊することになるんだぞ』
アイツの言っていたことを、自然と反芻していた僕。
あの研究員は…一体何を知っているんだ?
・・・・・
──ボウレイ海域、とある小島。
「まさか特異点の力がここまでとは。見誤っていた…」
「…やはり、戦うしかないのか」
迷いを見せる白衣と浅黒い肌の男…研究員は後ろを一瞥する、彼を見つめるのは黒いフードから狂った笑いを浮かべる小さな影。
「…いや、もう後には戻れない」
…男が見つめる先に、カプセルに保管された「白き姫」。
「…許してくれ。これも…我々の世界を救うため…!」
カプセルの扉が開く、その中の蒸気が外に漏れ出す。
『……!』
白き姫は眠りから「覚醒」に至った──