艦これすとーりーず ―僕が異世界版艦これの提督になった件について―   作:謎のks

53 / 146
 さぁ皆さん、BGMのご用意を。

 …一人目から大っ分開いてしまった。ははは。


望む月は、いつかの未来

 僕らは望月の容体を見ていた、場所は洞窟の入り口、金剛が休んでいた場所だね?

 

「…ん? アタシは…?」

 

 彼女は目を覚ますと、気だるそうに身体を起こした。

 

「望月、具合はどう? 怪我とかない?」

「大将……あぁそうか、アタシ…乗っ取られてたのか」

「…分かるの?」

「なんとなくだがな。まぁアタシの意識は抑え込まれてたみたいだから、どうにもならんかったが」

「そっか…でも、大丈夫そうでよかったよ」

「なぁ大将、アタシはなにやらかしたんだ?」

「…実は」

 

 僕は望月にこれまでの経緯を説明する。…研究員に取り憑かれた望月が、金剛を連れ去ろうとしたことも。

 

「…アタシが姐さんを?」

「うん…」

「そっか…はぁ〜やっちまった。姐さん怒ってなきゃいいけど」

「大丈夫だよ。金剛なら君がおかしくなってたって言ったら、絶対許してくれるよ。ねぇ妖精さん?」

 

 僕が妖精さんに問いかけるも、彼女はなにも答えずに考え事に集中していた。

 

「妖精さん?」

「なぁ妖精よ、アンタ分かってたんだろ? こうなることを」

「…っ! 分かります…よね?」

 

 望月の的を得た発言に、妖精さんは少し驚いた様子だが、頭の回る望月の言葉なので、それも一瞬だった。

 

「顔に書いてあるぜ? まぁ気にすんなよ。テメェの事情も理解出来ねーわけじゃない、喋れないんだったらアタシはそれでもなんとも思わないぜ?」

「すみません…」

「いいんだよ。…さて、むこうさんの手口は分かったわけだが、アタシがもう一度乗っ取られてもおかしかないわけだわな、で…だ。アタシはどうすりゃいいんだい? こうなりゃ神頼みでもなんでも、対策しておかにゃあな」

「貴女がそこまで乗り気なら、心配なさそうですね。…拓人さん、彼女が亡霊に取り憑かれない方法が、一つだけあります」

「それは…?」

 

「彼女との更なる絆を深める…つまり「好感度」です!」

 

 …えぇ、妖精さんってばドヤ顔のキメ顔してるけど、なんなのこれ? 艦これはギャルゲーだった…?

 

「いやいや大真面目ですから!? 天龍さんのこと見てたでしょ?!」

「そうだけど…あ、望月に簡単な説明すると、好感度上げたら取り憑かれることもなくなるかもってこと」

「はい、好感度が4以上になれば、拓人さんとの信頼が出来て、外側からの精神干渉が出来なくなります」

「アタシが大将を? うぇー…」

「…そんな嫌がることないじゃん」

「まぁ仕方ないか。…って、好感度なんてそんな簡単に上がるわけないじゃん、アタシそんなに尻軽くないぞ?」

 

 望月の言い得て妙の言葉だけど、妖精さんはそう思ってないみたい。

 

「いいえ、私が考案した好感度システムの穴を突いて、すぐに好感度を上げる方法があります」

「システムの穴を考案者が利用するの…?」

「とんだデバッグだな」

「と言っても一定の値まで上がっているからこそ出来ることですが。その方法とは…望月さんの「過去」をこの場で語って頂くことで「アンダーカルマ」を強制的に表示させ、好感度を無理やり上げる…ということです!」

「アンダーカルマ…そういえばあったねそんなの。もう大半の人忘れてるんじゃない?」

「なんかよー分からんが、アタシが過去語りしなきゃいかんの?」

「私が言ったら身もふたもないでしょ! 貴女が語るから意味があるのです!」

 

 妖精さんの熱弁に、若干気圧されながらも「まぁ…でも…うーん」と渋りながらも過去語りをしようとする望月。

 

「望月? あんまり無理に語らなくていいからね。そもそも僕もそういうプライバシーに関することは、そっとしておいた方がいいというか…」

「…いや、アンタはスパイだったアタシを受け入れてくれた。だったらアタシも…その信頼ってヤツに答えやにゃ?」

「そんなこと気にしてたの?」

「まぁこんだけ仲良くしてくれりゃ、後ろめたくもなるわな?」

「…じゃあ、いいんだね? 確かに君の心労の配慮を除けば、君がどういう経緯を辿って連合のスパイになったか、僕も気になるし」

「ひっ、そんな綺麗な理由じゃないぜ?」

 

 望月はいつもの皮肉笑いに、少し影を落とした表情をしていた…。

 

「望月…不安だろうけど、僕はどんなことがあっても君の味方でいるよ」

「恥ずいこと言うねぇ、でも…あんがとよ? んじゃ言わせてもらうぜ。…さて、どっから話したものかねぇ?」

 

 頭を掻きながら、話の流れを考える望月、最初に発した彼女の言葉は、この世界においては驚くべき「事実」だった。

 

「アタシには…姉妹が居たんだ」

 

「…っ!?」

「ま…ホントの姉妹ってワケじゃないけどね?」

「それはどういう意味?」

「TW機関、知ってんだろ? ヤツらは連合の与り知らないところで悪さを繰り返した。艦娘に違法な実験、非人道的な改造を施した…この世界のあらゆる技術を用いて、ヤツらは艦娘の可能性を験(ため)していたのさ」

「艦娘を使った人体実験? …っ、まさか」

 

「そう、アタシはその被験体だった。「No.11」がアタシの元々の名前だった」

 

「…っ!?」

 

 衝撃の告白と共に、僕の前に「無情なように」IPが姿を現した…。

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 ──好感度上昇値、規定値以上検知…。

 

 

 望月の「アンダーカルマ」が解放されました。

 

 

 …望月のプロフィールに、新たな情報が追記されます。

 

 

裏の使命(アンダーカルマ):??? → 『実験艦』

 

 

 

 ──その運命が示す道…「証明」

 

 

 

 海魔大戦終結の折、艦娘の能力の研究により、この世界の調和を志すモノたちが居た…しかしてそれは「外法」であった。

 

 自らが何者か、その存在理由は「最初から」造られ、打ち棄てられるモノでしかない…幾重もの実験の果て、使い捨てのガラクタとしてその命運は尽きようとした…。

 

 周りには、前世界の縁により集った同型艦…彼女自身にその感覚はなかったが、何故か彼女たちを見ていると、暖かな気持ちになる。

 

 

 ──が、この変わりゆく世界は、彼女の能力を必要とした。

 

 

 闇より解き放たれた異彩は、ある時は文明の発展に、ある時は監視役として、その才能を遺憾なく発揮した。

 

 その原動力は、いつかの姉妹…彼女は駒として働く契約を結び、その条件に「彼女たち」を挙げる。

 

 眠りにつく呪われし姉妹、存在否定されしモノたちの希望、彼女は自分たちが何モノでもないと「証明」するため立ち上がった…。

 

 終わりの見えない宵闇の道。ただ…あの時の「感情」の高ぶりを知りたいと、それでも彼女はいつものように笑う。

 

 

 …その存在証明がなされた暁には、夜明けと共に静かな海を歩むことを夢見る。

 

 

 愛しい彼女たちと、共に在ることを──

 

 

 

 

 

・・・・・

 

「…姉妹艦って、もしかしなくても」

「そうさ、アンタの世界じゃアタシらを「睦月型」って言うんだろ? まさか大将の世界でも姉妹やってたとはな」

 

 望月は意外そうにしながらも、あまり驚いている様子はなかった。…どこかで分かっていたのかな? 彼女たちのこと。

 

「アタシらの場合は艦娘というより、ただの被検体だったからな? 向こうでも良い性能してなかっただろ? こっちでも同じさ」

「一概にそうとは言えないけど…戦いは性能よりも「場数」だと思うよ? 君らだって…」

「そうかい? でも…ヤツらが欲しかったのは「程のいい実験体」だろうからなぁ」

「っ! …ごめん」

「いんだよ。…機関には連合が封印した「艦娘建造」の技術があった、ソイツを利用してアタシらをこさえた連中は、アタシらを使ってある計画を立てた」

「…それは?」

 

 望月は特に辛そうということもなく、淡々と事実を述べた。

 

「選ばれし艦娘の異能…特異点であるイソロクによって与えられた能力(改二)を、自分たちで創り出せないか。…とまぁ、力に溺れた野郎が考えそうな悪い思考さ」

「…っ! そうか…イソロクさんが居なくなったから、連合も戦力を欲しがっていたんだね」

「いいや大将、そういう話じゃないのさ? アンタやイソロクさんがやったことは誰にでも出来ることじゃない。努力とかじゃどうにもならない「未知の領域」ってヤツに研究者は嬉々として挑むものさ。…ナニモノを犠牲にしてでも、ね?」

「望月…」

「…嫌だねえ、やっぱり胸糞悪くなるわ。それを理解出来ちまう自分がいることにもな。…話を戻すぞ」

「…うん」

「とにかく、だ。ヤツらはアタシら睦月型を使って「艦娘に異能を植え付ける」実験を繰り返した。連中はその一連の計画を「ムーンチルドレン計画」だなんて、皮肉にも程があるネームを付けやがった。けっ」

「…廃坑で黒幕が呟いてたこと、やっぱり望月のことだったんだ」

 

 黒幕がロボットを操って僕らを襲ったとき、望月を見て「ムーンチルドレン」と言っていたことを思い出す。

 

「そうさ、ムーンチルドレンは全部で「12人」居たとされている、アタシを含めてな」

「…なんか、他人行儀だね?」

「まぁアタシが出会った姉妹は、本当に少数だったからね。特に最後の「12番目」なんて、会ったことすらない」

「そ、そうなんだ。(夕月が実装されてないことと関係あるのかな?)」

「…んで、やましいことっていうのはバレるのが早いワケよ。連合によって閉鎖に追い込まれた機関だが、当然アタシらも明るみに出て来るよな」

「機関が違法な実験をしていることを知った連合によって閉鎖され、同時に君たちの存在も分かった…ということか」

「そ。でも連合のヤツらはアタシら見るなり「忌子」としてその存在を封印しようとしたのさ、当然だよね。制御出来るかも怪しい能力もあったし、何より機関は連合が作ったんだから、建前上の問題もあるわな」

「自分たちが作った機関が非人道的な実験を繰り返してたって分かったら、確かに大騒ぎだよね…その象徴である君たちを、連合は簡単に受け入れられなかった」

「そういうことだな。…アタシは「頭が良くなる」能力だったから、まだ脅威とは見なされなかったワケで、そんでも他のヤツらは連合に拘束されていて、今はなにをしてるか分からねえんだ」

「…そうなんだ」

「ガッカリした? 本物じゃなくて限りなく本物に近いニセ物のエセ科学者だって?」

「そんなこと言うわけないだろ? 望月には…何度も助けられたんだから」

「…あんがとな大将。この力をそんな風に褒められたのは久しぶりだ」

 

 照れ臭そうに指で頬を掻きながら、望月は自身の過去を最後まで振り返る。

 

「アタシは連合に一艦娘として行動することを許された。まぁ自由の身だよな、ただ…アイツらのこと考えてると、なんかモヤっとしてな」

「…それは?」

「…上手く言えねえけどよ、釈然としねーっつうか、利用されるだけされてお終い、なんて冗談じゃねーってな、だから…その……」

「姉妹艦を助けるために、皆を解放する条件として連合の艦娘として働いている…ということだよね?」

 

 さっきのアンダーカルマの情報から察せられること、望月にはやはりIPが見えなかったのか、少し驚いた風だった。

 

「…っ! …そうか、そうだったな。全く、ホント意地が悪いぜ大将?」

「望月の本音が聞けるのは滅多にないからね?」

「いやそこは察せよ。恥ずいんだよこんな調子でもよぉ」

「あはは、ごめんごめん…」

「…と、こんなとこか。ま、これがアタシの過去。連合の駒として動くアタシの正体ってワケさ」

 

 彼女は少し疲れた様子だったが、どこか気持ちが晴れ晴れとしていた。

 

「…辛かったんだよね、望月。君のことは全部知っていると思ってたんだけど、やっぱり…この世界の艦娘には、語られない物語があるんだね」

「あぁ〜? あんま憐れんでくれるなよ? 別にお涙頂戴欲しいから話したんじゃねぇし」

「分かってるよ。…どう妖精さん?」

「はい、好感度は無事に上がりました。これで万が一のこともなくなったでしょう」

「そっか。…なんか胸のつかえが取れた気するわ、せっかくだから大将、昔のこととかどんどん聞いてくれな? せっかくだからよ♪」

 

 望月が(この世界でも前の世界でも)見たことがないような可愛らしい笑顔を見せた。…よかった、彼女は自分の過去を前向きに捉えているみたいだ。

 

「じゃあ…もし良かったら、姉妹艦は誰に会ったとか聞かせてくれない? 僕の世界での彼女たちを君に伝えておきたい」

「慰めてくれるのかい? ッヒヒ、サンキュな。…そうだなぁ、ムーンチルドレンには「前期型」と「後期型」があるんだが、アタシは後期型だから同じ型のヤツらとは顔合わせてたなぁ」

「ん〜、前期と後期の違いって?」

「前期型は機関の技術の総力を結集した「禁忌の力」をその身に宿したやべー奴らだ、No.1〜No.6までが当てはまるな。後期型はそのデチューン版ってかより使いやすくした感じだな、No.7〜No.12までな」

「…つまり前期型には、望月より頭が良い娘がいるんだ?」

「そうなるな? まぁ()()()()()()()()()()()は謎だろうがな」

「んー、要するにドラ○ンボール的に言ったら、フ○ーザ編と力の○会編ぐらいのパワーバランスがあるんだね?」

「意味は分からねえが、多分その解釈で合ってんじゃねぇかな?」

 

 それで良いんだ、言った僕が疑問に思うのはどうかということだけど。

 …前期型が神の領域に片足入れてるって? どんだけだよTW機関、睦月なんてモノホンの魔王だぞ。

 

「まぁ前期型は万が一でも大事になりかねないから、おいそれと解放は難しいだろうが…せめて後期型の仲間ぐらいはな?」

「後期型か…えっと、そうなると君が出会ってたのは「文月、長月、菊月、三日月」かな?」

「ぉお! 正解。「ふみ」と「ながなが」、「きく」と「みか」だな。アタシは「もっちー」って呼ばれてたぜ? なぁ大将?」

「うーん、もっちーが最初からもっちーと呼ばれてたとは」

「アハハ、ホントにアンタとは気が合うなぁ。…で? どんな感じなんだい、向こうのアイツらは?」

 

 僕は簡単にではあるが望月に、向こうでの文月たちを話す。

 

「…って感じかな。三日月なんてしょっちゅう望月の世話焼いてるイメージ」

「へぇ? みかがそんな感じなのか。想像つかねぇなぁ」

「ん? 望月のイメージは違うの?」

「そだな。まぁ後の三人はイメージに近いが、三日月は終始何かに怯えてるようなヤツでさ。まぁアイツの能力も特殊だから、色々弄られてたんだろうさ」

「…っ、なんだって…」

「おぉ、いきなり怒るなよ? …でもありがとよ、三日月のために怒ってくれて」

 

 優しく諭すようにお礼を言うと、望月は徐に立ち上がる。

 

「さ、アタシも気が済んだし。早く姐さん見に行こうぜ?」

「…そうだね? …あっ、望月!」

「ん…?」

 

 望月が振り返るところを見計らい、僕はお礼を返した。

 

「ありがとう、君の過去を話してくれて」

「っへ。大将だから話したんだぜ? …行こうぜ」

「うん……ん?」

 

 僕らが浜辺に向かおうとすると、その浜辺の方角から走り近寄ってくる影…。

 

「コマンダンッ! 一大事です!」

「野分? どうしたの?」

「マドモアゼルコンゴウが、たった今目を覚ましました! しかし…様子がおかしいのです」

「…!?」

 

 一体金剛に何があったのか…?

 




○ムーンチルドレン

連合によって設立された「TW機関」が計画した、特異点と艦娘の異能の研究の一端である「ムーンチルドレン計画」は、連合の目の届かない場所で幾重にも行われた、違法な人体実験の一つです〜。
望月さんを含む「睦月型駆逐艦」艦娘たちが犠牲となり、型番が一から六(睦月〜水無月)までが「前期型」、七から十二(文月〜夕月)までが「後期型」としていました。これは一から六を造る過程で「より人が御し易い形」を考えた機関が、七から十二を今までの能力の調整版としてリデザインしたモノとなっています〜。
望月さんの言うことが正しいなら、前期型は「選ばれし艦娘」と同等の、又はそれ以上の存在なのかも知れませんねぇ〜?
機関の表向きの目的は「海魔大戦のような巨大な争いを未然に防ぐ」ことと「イソロクさんが遺した異世界の技術の研究、及び昇華」なのですが、彼らの研究はいつしか「神の使いであるイソロクさんの力を超える」ことになり、それがムーンチルドレン計画として形を成し、彼らの罪の一つに数えられたのですねぇ?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。