艦これすとーりーず ―僕が異世界版艦これの提督になった件について―   作:謎のks

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望郷の過去、忌避すべき未来

 ──それは、遠い昔のような。

 

 それとも、つい最近のような…そんな過去。

 

 

「見てみて! 私……で…たよ!」

 

 

 何かが書かれた紙を得意げに見せる。誰かがそれを見て嬉しそうに頭を撫でる。

 

 

「行ってきまーす!」

 

 

 誰かに手を振りながら笑顔を咲かせ、何処かへと駆け出す。誰かはそれをまた笑顔で送り出す、顔は黒く塗りつぶされて見えない。

 

 

「もう、そんなんじゃないって! あはは!!」

 

 

 仲間と語り合う私。仲間の顔は…思い出せない。

 

 

 ”私”の頭の中に知らない記憶が流れ込む。…少女として穏やかな日々を過ごす、私の姿。

 

 

 これは何? 何故こんな記憶が? 問いかけても返答は返るはずもなく…。

 

 

 ただ、一つ言えることは…こんなもの、ワタシじゃない。

 

 

 違和感。

 

 焦燥。

 

 ──"懐古"。

 

 

 違う、ちがう、チガウ…!

 

 

 

 

 …わたしは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

    シ

 

 

 

 

 

      ハ

 

 

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 レ…?

 

 

 

 

 

「──金剛!」

 

 

 

 

 

・・・・・

 

「…!」

 

 僕に名前を呼ばれ、ハッと目を開けた金剛、浜辺で横たわっていた彼女は体を起こす。

 

「…? 私…は…?」

「良かった、大丈夫みたいで」

「ウィ、まるで何かにうなされているようで…ご無事で何よりです、マドモアゼルコンゴウ」

「…?」

 

 どこか他人事のように、ボーっとした様子で僕らの話を聞いている金剛。どうしたんだろう…いつもと様子が違う?

 

「望月、あの研究員が金剛に何かしたとか、知らない?」

「…いや、アタシはあの時意識を抑えられていた。何があったか…ホントに分からねぇんだ」

「…そっか、ごめんよ? 君も辛いのに、気づかなかった」

「いや、仕方ねーさ、うん…」

 

 沈痛な面持ちの望月、金剛は僕らの話を黙って聞いていた、おかしい…いつもの彼女ならこんなに静かじゃないのに。…天龍がすかさず金剛に尋ねた。

 

「金剛、何か身体に異変や違和感はないか?」

「…どういう…こと?」

 

 天龍の質問に回答する彼女は、普段とは正反対の、小さく消え入りそうな声だった。

 

「…お前は眠っている間、うわごとを言っていた。「私は誰?」と苦しそうにな」

「…っ!」

 

 金剛がボーっとしたまま、目を少し開いた。その様子を見た望月は、金剛に向かい謝罪する。

 

「済まねえ姐さん、アタシがポカっちまったせいで…体は何ともねえか?」

「…はい」

 

 一回頷き、肯定の意志を見せるも、またもどこか力の抜けた回答だった。目もどこか虚ろだし…僕は金剛に呼びかけてみる。

 

「…金剛、大丈夫?」

「……」

「金剛?」

「…金剛っ! 貴女に聞いているのよ?」

 

 翔鶴が一喝すると、驚いた拍子に彼女の異様な雰囲気は晴れていく。

 

「…ホワッツ!? な、何事デース!?」

 

 まるで電源を入れたように、今度こそ大袈裟に驚く金剛。

 

「…ほっ、本当に大丈夫そうだね?」

「テートク? どうしまシタ? はっ!? まさか敵デース?!」

「おいおい、本当に大丈夫かよ…」

「金剛、本当に体は大丈夫?」

「は、はいテートク。…っ、でも頭が痛いデース…」

「無理はなさらないで下さい。…そういえば確かに身体が重い気がしますね、この霧の影響なのでしょうか?」

「そう? 僕は何ともないけど…?」

「俺も何ともないな?」

「僕もだよ…ふむ、この違いは何を表しているんだろう、興味深いね?」

 

 野分を始めとした艦娘は「身体が重く」感じ始めているようだ、対して天龍と時雨、僕は何の体調不良も無かった。

 

「…"霧"か。大将、この霧の海域には長いこと居ない方がいいかもな?」

 

 望月が霧のワードを聞いて警戒している。…もしかして「要塞地下の黒いモヤ」のことを言ってる?

 

「あぁ、さっきから肌に纏わりつく嫌な感じがする。あの研究員の未知の技術もある、一回外に出て近くの島の住人たちに聞き込みした方がいいかもな?」

「うーん、金剛がまだ起きたばかりだし…もう少し様子を見て、そうしたらひとまずこの海域を出よう」

 

 僕の提案に頷く皆、シズマリ海域に戻って、近くの島で聞き込み調査だ。

 

「金剛、君は向こうで休んでなよ?」

「はい…うぅ、皆、面目ないデース…」

「気にすんなよ姐さん。今度はアタシと綾波が行ってやっから。…行こうぜ、綾波?」

「了承」

 

 金剛を望月たちに任せると、それぞれ持ち場に戻っていく…。

 

「…タクト、少し良いかな?」

 

 皆が離れた後、時雨が僕の元に近づいて来た。

 

「どうしたの?」

「うん、金剛のことなんだけど…僕の中にある違和感を、君に話しておこうと思って」

「違和感?」

「うん、彼女はやっぱり「僕の知ってる」金剛ではないようだね」

「っ、そうか…やっぱり時雨もそう言うかぁ」

 

 時雨と金剛は同じ「選ばれし艦娘」の一員だ。でも…加賀さんたちも言ってたけど、僕らの金剛は「海魔大戦時」の金剛ではないようだ。

 

 この世界の金剛は数々の艦娘の中でも最強だったけど、海魔大戦で沈んで今はもういないらしい(この世界では建造技術が封印されているし)。

 なら目の前の金剛は? という話になるけど…正直今まではっきりした答えは出ていなかった、金剛は居なくなったんだから、君は偽物「だよね」? という憶測の域を出なかったけど…。

 

「タクト、君は「今の」金剛がどういう存在か理解しているかい?」

「それがさっぱりなんだ。今までは何も問題はなかったから考えないようにしてたけど…研究員たちに狙われている以上、知っておいた方がいいよね?」

「そうだね。僕なら…君の求めている答えが何か分かるかもしれない」

「っ! そうか…時雨の「液体を介して心を読む」能力なら、分かるんだね」

 

 僕の問いに頷く時雨。

 

「うん。でもおかしいんだよね、さっき僕は金剛じゃないとは言ったけど…薄っすらとだけど「懐かしい感じ」もするんだよ」

「っえ、どういうこと?」

「分からない…僕の知ってる金剛の気配も、彼女の中に存在してる…ということかな?」

「…二重人格?」

「それにしては片方の人格の気配が薄すぎるね? 今にも消えてしまいそうな感覚だし…」

「そうなの? 僕らが目にした金剛はそんなことなかったけど?」

 

 スキュラとの戦いで覚醒した金剛は、まるで豹変したように圧倒的な実力であの怪物を瞬殺した。あの大きすぎる存在感を否定することは出来ないよね?

 

「…君の心を読ませてもらった。なるほど…そんなことが」

「どうかな? 時雨からみて金剛は…?」

「…何とも言えないかな。不確定な要素が多すぎるけど、あの金剛にはなにか「引っ掛かる」感じもする…そんな気がするんだ」

「ねぇ、妖精さんはどう思う? 金剛って本当は死んでなかったとか?」

「…そうですね」

 

 いつもの緩い返答でなく、どこかそっけない。妖精さんがこういう対応するときはいつも…。

 

「妖精さん、やっぱり金剛について何か知ってるんだね?」

 

 僕の問いを肯定するように話をする妖精さん。

 

「それを言うのは簡単ですが、拓人さんたちが自分自身で見つけるのが一番なんです。幸いと言いますかこの海域に「手がかり」があるでしょうから」

「それって…このボウレイ海域に「答え」があるってこと?」

「その通りです、この一連の事件を解決に導いた先に、必ず彼女が何であるかの「解答」があるはずです」

 

 …なるほど、確かに妙だとは思っていた。

 

 あの研究員は、望月の意識を乗っ取っている状態で金剛に接近していた。黒幕の仲間だったら後ろから不意打ちで金剛を捕まえるのが本当だろう。…だがアイツは、彼女をどこかへ「逃がそう」としているように見えた。それどころか金剛を僕に任せるとも。

 

 つまり…黒幕と研究員とは「どこがしかで意志の違い」がある…。

 

「もし…あの研究員が僕らの話を、素直に聞いてくれるようになれば」

「確かに研究員なら、少なからず情報を持っているはず。しかし…あの状況を見たら、そう簡単に捕まるとは思えないな? だからこそ僕がここにいるのだろうし」

「時雨さんの言うとおりですねぇ?」

「大丈夫だよ、少なくとも黒幕みたいな「問答無用」な感じはしないし、キッカケがあればなんとでもなるよ!」

「ははっ、そうだね。君はキミの心の赴くままに行動すればいい、サポートは僕らに任せて…ね?」

「時雨…ありがとう!」

 

 時雨の励ましを受けて、僕は改めて金剛を想う。

 

 彼女がニセモノだろうと、もう関係ない。…金剛は「金剛」だ、僕はそう信じる…信じたいんだ。

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 一方、暗がりの部屋に一筋の明かり、その薄明かりを見つめる男。

 

「……」

 

 無言で見つめる男、その光はある人物を映し出す。

 

『──この世界は「ループ」する運命にある』

 

 低くゆっくりと、唸るように呟かれる言葉。

 

『繰り返される戦い、それと共に増長する憎悪…人類はそれが滅びの道と知らず、己が欲望を満たすため力を求める。…人がヒトである限りそれは変わらない、だからこそ我々が「救わねば」ならない』

 

 その何処を見つめているか判らない背中に向かい、男は静かに頷いた、

 

『どうやら奴らは我々の計画に勘付いたようだ。その証拠に…あの男が送り込んだ木偶とその配下のガラクタが、私の実験場に姿を見せた。まるで低次元の話しかしないがな? アレが特異点だなどと未だに信じられん』

「…特異点」

『返り討ちにし、そのついでに器の乙女を手に入れようと考えたが…結論を出すと「無理」だ。順調に馴染んでいる様子だったが、その実「ヤツ」の力は我々の予想を上回っていた。あれはコントロール下に置くのは難しいだろう』

「…そうか」

 

 その言葉を聞いて、男は安堵したように息を吐いた。

 

『おまけに、木偶の力によってガラクタが私の人形を破壊し、形成逆転とでも言うように私を「捕まえる」と言うのだ。あの神聖な奇跡の力を、さも自分だけの特別な能力と言わんばかりだ。…全く勘違いも甚だしい、奴らの好きにはさせん。先ほど「機獣セイレーン」を起動した、もうこの要塞も長くないだろう』

「…っ、相変わらず…容赦ないな…!」

『容赦ない、などとお前は言うだろうが、我々には時間がない。邪魔者は徹底的に排除するべきだ。だが…仮に奴らがセイレーンを下した時、私は奴らに縄で縛られるか、さもなくば逃走を果たしただろう…まぁ、この映像を見ている時点で結果は知れているだろうがな?』

「…逃げ果せた、か」

『…ッチ、奴ら存外しぶとい。距離を置いて態勢を整えるつもりか? まぁセイレーンからは逃れられんだろうがな』

 

 何を見つめているのか、男には判らないが…彼が「焦っている」ことは理解出来た。

 

『俺はこれから計画を急がせる。”ユリウス”、もし万が一奴らか、あの男の刺客がそちらに来ることがあれば…必ず「始末」しろ、いいな?』

 

 それだけ言うと、映像が消える。再生終了、男…「ユリウス」と呼ばれた研究員は大きく息を吐きながら眉間を押さえた。

 

 彼はTW機関という研究組織の元構成員である、今しがた視聴した映像に出てきた男は、彼と同じ研究員だ。

 

 彼らは互いに共通する計画を遂行するため、様々な非道な実験を繰り返してきた。当然許される行為ではないと理解しているが…彼はそれを「世界を救うため」と見てみぬふりをしてきた。

 それというのも、彼らは当時の機関の研究を通して知ってしまった事柄があり、それを止めるために研究の継続と更なる実験が必要だった。半ば言い訳かもしれないが、ここまで来てしまえばそんな悠長なことは言えなかった。

 自らに命令を下したリーダー格の男…「ドラウニーア」は出会った時から何かに取り憑かれたように研究に没頭し、そしてこの世界の危機を突き止めた。

 その元凶の最たるものは「艦娘」。他ならぬ自分たちの先祖が作り上げたものだが、それが間違いだったと狂気に満ちた眼で語りかけた。

 ドラウニーアが何故そこまで彼女たちを憎むのか、それは今現在も不明だが…世界が艦娘の存在により戦争の機運が高まっていることは確かだ。彼らの研究の成果が正しければ…世界は「滅びる」確実に。

 そこでドラウニーアとユリウス、そして「マサムネ」の三人は機関の下を離れ、滅びのループより世界を救うため動き出した。

 …実験資料を残さず持ち逃げたのだ、連合は血眼になって自分たちを探しているだろう、だが捕まるわけにはいかない、犠牲になった人々や仲間たちのためにも、我々は「艦娘」を滅ぼしてでも世界を救わねば…。

 

「…それが正しい行動なのか、立証は出来ないがな」

 

 彼は誰に言うでもなくポツリと呟いた。…立証が出来ないとは研究者失格だろうか? そう自嘲の笑みを浮かべる彼の真実には、何が映っているのか…?

 

「…さて」

 

 彼は暗がりの部屋から廊下に出る、そして少し歩いた先のドアに手をかける。

 

 …そこには、点滅を繰り返す色とりどりの光。それらを映す機械は何かの装置のようだ。その後ろには…カプセルに設置された「白き姫」。

 

「(さっきは試しに動かしてみたが…やはり肉体と波長が合わなかったようだ、糸が切れたように倒れてそのままだった。…長くは持たない、やはり”作り物”では不足か)」

 

 何事かを思考すると、徐に頭に装置を取り付けそのまま機械に指を触れる。

 

「データ入力完了、対象にデータ読み込み開始、ダウンロード…バックアップ構築…ボディシンクロ開始…上昇率にタイムラグなし」

 

 淡々と状況を読み上げる彼の見つめる画面には、機械に入力されたデータが反映されていた。それは白き姫にも影響が出ていた。

 

 

 ──ピクっ

 

 

 カプセルの中央の白き姫に、機械に接続されたコードが伸びており、コードから発せられた小さな光は機械から姫に向かい、吸い込まれるように彼女の中へダウンロードされていく。

 

「…成功だ」

 

 画面に「SUCSESS」の文字が浮かび、機械も役目を終えたように沈黙する。

 

 カプセルの開閉口が開くと、先ほどと同様に白き姫が…すると。

 

『…これでいいかな?』

 

「…これでいいかな?」

 

 同時に声を発した彼と姫、動きも寸分違わずシンクロしていた。

 

「ボディの反射神経と運動能力を確かめたいが…時間がない、この研究所もいつ気づかれてもおかしくない」

 

 そう言うと姫は身体のコードをぶち切りながら歩き、彼の横を通り過ぎると、そのまま部屋を出ていく。

 

「…全く、こんな荒業は本来なら御免被りたいが…状況がじょうきょうだからな、仕方ない」

 

 そう愚痴をこぼす彼の眼に映るのは、頭に取り付けた装置越しに見る深い海の底のような揺らめく画面、画面は徐々に上昇していき…霧深い海面へ浮上する。

 

「奴らは…」

 

 画面に表示される情報に目を通す、そこには森林の木々に取り付けたと思われる隠しカメラ、その映像から「拓人たち」の姿が。

 

「ふむ、どうやら外へ出るようだな。しばらく様子を見ながら…距離をとり見守るとしよう」

 

『シュルルル…』

 

 白き姫の下に近づく影、まるで蛇のような怪物だったが、ソレの口に何かが銜えられていた。

 

「…よし」

 

 姫はそれを受け取る、身の丈ほどの「剣」を軽々振り回し、背に納める。

 

「行こうか…」

 

 短く合図すると、白き姫と大蛇はそのまま霧の中へと姿を消した…。

 

 その様子を彼は「海中深く」から静かに見守っていた…。




 …ん? 研究員の名前違う? シナリオ確認…あっ(察し)。

 ま、まぁ一応意味はあるしこのままで…ね;
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