艦これすとーりーず ―僕が異世界版艦これの提督になった件について―   作:謎のks

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鋼が屈する日

 シズマリ海域の海上にて…。

 

「はぁ…はぁ……っ!」

 

 綾波は一直線に波を掻き分け進んでいた、その先に待ち受けるものは。

 

「…っ!」

 

 綾波は目の前に人影を認めると、波をブレーキに歩みを止めた。

 

 そこに佇んでいたのは…?

 

『……』

 

 白い影のシルエット、背中まで伸びた髪も、スラリと細い脚も、肌までも儚く、美しさを感じる「真っ白」だった。

 その身に羽織るマントは白緑で、薄汚れところどころが破れてボロボロだった。そんな彼女の瞳は一転して「憎悪を象徴する真紅」に染まっていた。

 そして…綾波が真っ先に目に付いたのが、彼女が背負っている「得物」…それは剣身にも細やかな意匠が施された「大剣」だと分かる。

 

「そ…その剣は……っ、そんな…っ!」

「綾波!」

 

 拓人たちは綾波に追いつき側に寄った、拓人が顔を覗き込むと、綾波はこれまで見たことがないぐらい恐怖に引き攣り、瞳孔は定まらず狼狽していた。

 

「綾波落ち着いて、一体何が起こったの?」

「……団長…!」

「アーヤ、しっかりするデース!」

「…駄目だ、すっかり気が動転しているみたいだ」

「あの深海の姫がどうしたの?」

 

 拓人が呼びかけると、綾波は途切れ途切れだが言葉を繋げた。

 

「団長…あの人は……っ、私たちの…騎士団の…団長…」

「っ!」

「何ですって!?」

 

 翔鶴と共に驚愕の表情となる一同。

 つまり目の前の「姫」は、艦娘騎士団の元団長。騎士団が事実上の崩壊をした日、行方が知れなかった艦娘かもしれないと言うのだ。

 

「そんな…!」

「団長っ!」

 

 綾波が白き姫に駆け寄ろうとするが、直前で拓人に肩を掴まれる。

 

「落ち着いてっ! 不用意に近づいちゃダメだ!?」

「何かの間違いなんです! 彼女がこんなところで沈むわけない!! 私と約束したんです「必ず戻る」って! だから…だから……っ!」

「アーヤ…」

 

 今日まで鉄面皮を守ってきた綾波は、狂ったように叫び、涙に濡れた顔は砕け散る寸前だった。

 その瞬間拓人は理解した。綾波にとって目の前の深海の姫が、どれだけ大切な人物であるかを、彼もまたそういった経験があるので気持ちは痛いほど分かった。

 

「綾波…」

『来たか…特異点』

「…っ!?」

 

 聞き覚えのある声が響く、それはボウレイ海域にて出会った「研究員」の声。厳密には声を聞いただけだが、白一色の麗人から想像つかない「低い男の声」が木霊した。

 

「お前は…あの時の研究員!?」

「…成る程、あの時の望月みたいに取り憑いているみたいだね? まさか深海の姫にまで取り憑くことが出来るとはね」

「本当に、取り憑いていると言うの…綾波たちの団長に……っ! なんて酷い!」

 

 金剛は敵対する白き姫、彼女を操る研究員に対し惨たらしいと非難した。

 

『…そうか、惨いと思うか。ならばその恨みは受け入れよう、こうして君たちを誘き寄せたことは事実だ』

「っ、やっぱり罠だったか。どうして僕らを? お前は何をしたいんだ!」

 

 拓人の問いに、白き姫は静かに拓人一行を見つめ…問い返す。

 

『君たちは…本当にこの先に進むつもりか?』

「何?」

『この世界は、君の肩の上の「神」によって創られた。もちろん…この世界が辿るべき「運命」も』

「…っ!」

 

 神と呼ばれた妖精はひどく驚いた様子で、研究員が取り憑いた艦娘の成れの果てを見据える。

 

『特異点、君は騙されている。この世界は破壊と創造を繰り返している、しかしこのままいけば、いずれ何もかもが滅びる。艦娘が戦いを止めない限り、人が艦娘を求める限り、そのループは決して変わりはしない』

「っ! 妖精さんが世界を滅ぼそうとしているだって…ふざけるな! 妖精さんはそんなことしない!!」

『いいや、君も提督であるなら嫌でも見ている筈だ。艦娘たちが「要らぬ戦い」を引き起こし、戦争を長期化させている現状を』

「…っ!」

 

 そう言われた拓人の脳裏に浮かんだのは「トモシビ海域」の住人たちだった…彼らは戦争により居場所を失った、その戦争を長引かせたのは…。

 

『艦娘という概念を生み出したのは誰か、などどうでもいい。君だろうとイソロクだろうと関係ない。人は愚かだ、それでいて自らの罪に気づかず、そのまま脆く崩れ去る…君もそれは理解しているだろ?』

「それは…っ」

『分かるか? 神が艦娘という「誰にでも手に入る力」を受け入れた故に、力を求める人間、それに応える艦娘、それにより崩壊の道を辿る世界…この因果関係が成り立ってしまった。そしてその先に待つものは…何もかもが消え去る「滅亡の未来」だけだ! 私は…その未来を食い止めたいだけだ』

「…だから、多くの人間を犠牲にして…いいって?」

『……っ』

 

 犠牲、その言葉を聞いて苦い顔になる研究員。

 

『理解している。許されることではない、だが…我々が動かなければ世界は…!』

「…世界だって? そんなに「世界」が大事なのか! お前は…」

「…答えて」

 

 拓人が更に追求しようとすると、その前に綾波が白き姫の前に進み出た。

 

「団長は…死んでるの?」

 

 その瞳に光はなく、黒く淀み切った双眸は絶望を色濃く映していた。

 

『…君の問答の意図が理解出来ないのだが?』

「答えて…貴方が団長を「殺した」の?」

『何…?』

「あ、綾波…?」

 

 困惑する研究員、拓人は綾波の変貌の兆しに慄く。

 

 …程なく、思い出したように研究員は呟いた。

 

『そうか…君は艦娘騎士団の』

「…っ!」

 

 闇に染まった瞳から、憤怒の業火が噴き出す。

 

『…そうだ、これは君たちの「団長」と思ってもらっていい。()()()()()…』

「…?」

 

 拓人がその言葉の「違和感」に気づいたのも束の間、綾波は得物の大斧に手を掛ける…"殺気を放ちながら"。

 

「何故殺した…?」

 

 彼女の怒りと静かな殺意が空間に伝わり、張り詰めた空気と化す。

 

許さない…っ!

 

 斧を構えながら一気に距離を詰める綾波、拓人たちはその瞬間に対応できず彼女の愚行を許す形になる。

 

「綾波っ! 駄目だ!!」

「っく! 姫級に一人で立ち向かうのは無茶だよ、止めないと!」

 

 時雨の言葉に頷き、各々が戦闘態勢に入った。…果たした綾波の運命は…?

 

 

 

 

・・・・・

 

 

 ──敵艦補足、合戦準備 …

 

 

拓人

金剛

綾波

翔鶴

時雨

 

vs

 

謎の白き姫(研究員)

 

 

勝利条件:謎の白き姫の撃退

 

敗北条件:綾波の戦闘不能

 

 

 

 …戦闘開始 !

 

 

 

 

 

・・・・・

 

「……っ!」

 

 綾波の全霊を込めた一撃、その一撃を難なく防ぐ姫。

 

『…人の話を聞かない娘だ』

 

 冷徹に吐き捨てると、大きく剣を振り上げ綾波を弾き飛ばす。

 

「…っ!!」

 

 二撃、三撃と必殺の斬撃を繰り出す。そのどれもが今までの彼女の全力の一撃を超える迫力、破壊力だった。

 しかし…白き姫はそのどれもを捌ききる。大振りでありながら高速の斬撃の応酬は、次元を超えた戦いだった。

 

「うあぁ!!」

『っ!!』

 

 綾波の断撃を大剣で受け止め、またも振り払う。だが…彼女は決して攻撃の手を緩めなかった。

 

「何故殺した、答えろっ!」

『今の君に答える義理はない』

「団長がお前たちに負けるはずない…あの人は約束した、きっと帰ってくるって! だから…私はぁ!!」

 

 綾波の怒気のこもる言葉に、白き姫はどこか不機嫌そうに眉をひそめる。

 

『そうやって希望をもつ「フリ」は止め給え。君たちが争いを求めるからこそ、戦争はなくならず滅びの運命も消えない。君たちは…ただ戦いの中で己の存在を証明したいだけだろう? 兵器の道しか辿れない…虚ろな存在の君たちを証明するために、世界と人々の運命を狂わせた…!』

「違う…私たちはただ…世界に…平和と…秩序を…っ!」

『戦いに犠牲はつきものだ、それを知らない君ではないだろう? …君の団長も』

うるさいっ!! それ以上団長を侮辱するな!」

 

 声を荒げ、全てを否定する綾波。

 

 嘘だ、ウソだ、私は信じてる、信じていた、彼女は生きていると、ただ道に迷っているだけだと、だから…。そうやって己に言い聞かせ、現実を逃避する。

 

『君たちがそうやって戦いの果てにあるものから目を背けているから、犠牲はなくならないんだ、自業自得という言葉を知り給え、誰のせいで争いが無くならないと思っている!

 

「…っ!!?」

 

 

 ──誰のせいでこうなったと思っている!?

 

 

「そんな…」

 

 お前の殺した団長だ…っ!

 

「嫌…いや…イ…ヤ…っ!」

 

 返して…私たちの団長を…返してよぉ!!

 

「…あ……あぁ…!」

 

 

 

 

 

 ──またね、綾波。

 

 

 

 

 

あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!

 

 

 

 

 

 その時、鋼鉄に守られた彼女の心が脆く崩れ去った。

 

『…っ』

 

 苦悶の表情を浮かべながらも、白き姫は崩れ落ち泣き叫ぶ彼女に、容赦ない一撃を掲げる、それは「処刑台の罪人を罰する処刑人」のようだった。

 

「──させないっ!」

 

 金剛がサイドから砲撃を仕掛ける、その攻撃は白き姫の傍にいる「白蛇の砲撃」により相殺されるが…?

 

『…っ!?、君は』

 

 平静を装っているが、明らかに動揺の声色を隠せていない。

 彼女が「研究員」であるなら、金剛は()に対しどうしても問わなければならないことがあった。

 

「貴方は誰? 私の何を知っているの? 私は…()()()?」

 

 …真実を知るべくこの海へ赴いたわけではない。それでも…あの「記憶」に何か意味があるのなら…その問いは必然だった。

 

『…この状況でその問いとは、君は馬鹿なのか! 知らずにいた方が幸せなこともあるのだぞ!!』

「貴方にとってはそうかもしれない。それでも…私は真実を知ったうえで前に進みたい、だって私は…」

 

『…っ、ぁあ! 何故こうも分からず屋ばかりなのだ!? ()()()()()()()()()()()()()()()()()!!』

 

「……え?」

 

 苛立ちの言葉が、頭の中で巡る思考を一瞬で凍結させる。

 

 目の前が真白い絵の具で潰される、穴の開いた心に更に「都合の悪い」言葉が届く。

 

『そうさ、そんなに知りたければ教えてやる! 君は「ゼロ号計画:被検体No.55」我らの計画の最終段階、”粛清の夜”の尖兵となるはずだった! だが…適合率の完璧であった君でさえ金剛になるのは「不可能」なんだ。君はただの…』

 

 

 ──()()()()()…!

 

 

「…っ!?」

 

 瞬間、彼女の中のナニカがひび割れ…粉々に砕け散った。

 

「…っう!?」

 

 それは、ダムが決壊し水が押し寄せるような感覚…。

 

 次々と記憶が蘇る…それは彼女が決して知ってはいけない「禁句(タブー)」だった…。

 

 

 

 

 

・・・・・

 

「何故ここに連れてきた! この娘はまだ…」

 

「この少女はいずれ「使える」。あの鬼神とのボディシンクロ率が完璧だった、こんな逸材は他とない。我々の計画には必要だ…」

 

「しかし…!?」

 

「艦娘を滅ぼしたのち、人類は思い知ることになる。…今まで自分たちが使用した道具がどれだけの「恐ろしい」代物であったのかを、な? であるなら…それを刻むのは彼女でなければ、鬼神…いや? 「魔神」金剛こそ終末の使者に相応しい! フフフ…フハハハハ!!」

 

「そんな…俺たちは世界を」

 

「そう、世界に混沌を与えし元凶たち、艦娘を根絶やしとし「愚かしい人間」を抹消し、選ばれし人間により新たな世界を築き上げるのだ。それは少数…それも一桁で収まらなければならない、俺たちと…俺たちに賛同する者だけで充分なのさ?」

 

「…っ、そんなものは」

 

「今更否定してももう遅い。貴様は世界を救うのだろう? 結構だ、だからこそ世界に相応しくない人間は排除するに限る。…せっかくの同士を消したくない、あまり機嫌を損ねるものではないぞ?

 

「…っ! ……」

 

「それでいい。…喜べ少女、今日からお前は「器の乙女」として余生を過ごす。せいぜい我々の役に立ってくれよ? フハハ…フハハハハ!!」

 

 

 

 

 

・・・・・

 

「な…に……っ?!」

 

 記憶の断片、語るべきでなかった忌まわしき過去。

 

 それは金剛の「アイデンティティ」を破壊するには十分過ぎる…顔に手を当て、海の上で立ち尽くす金剛。

 

「金剛っ!」

 

 何事があったかは分からないが、研究員によって金剛が窮地に陥ったことは、拓人にも容易に理解出来た。

 しかして拓人の叫びも虚しく、金剛は歯を食いしばりながら精神の汚染、記憶の濁流に耐えていた。

 

「ワタし…私ハ…どウシテ…っ!?」

『そのまま大人しくしていろ。君に危害は加えたくない…が』

 

 白き姫は金剛を一瞥すると、今にも崩れそうになっている綾波を見下ろす。

 

「団長…だん、ちょう……っ!」

『…大切な存在を喪って自棄になるのは、生命を受けたモノに与えられた権利だろう。だが君たちは…戦いという存在証明に縋り付き、挙句世界を脅かす害悪に成り果てた。そんな君たちが我々と同じように「喜怒哀楽」の感情を振る舞うことが、私は許せない…!』

「…だんちょう…ごめん、なさい……ごめんなさい…っ!」

『…ッ、何故だ…なぜ争いを激化させた! 君たちがあの戦いでこの世界から消えていたら! どれだけ多くの人が不幸にならずに済んだと思っている!?』

 

 …綾波は答えない、否「答えるだけの余力が残されていない」のだ。絶望をその身に受けるだけで精一杯だった…。

 苛立ちが頂点を迎える。彼の”葛藤”を…知るモノは居ない。

 

『…ふざけるなっ! お前たちさえ居なければ…世界はぁ!!』

 

 振り上げられた断頭台は、確実に綾波の首筋に狙いを定めていた…。

 

 

 

 

 

 ふざけるなぁ!!

 

 

 

 

 

『…何っ!?』

 

 完全にノーマークだった。死角からの拳を避けきれず、白き姫は顔面に怒りの鉄拳を喰らうと、そのまま後ずさる。

 

『がぁ…っ!? 貴様…特異点…っ!』

 

 白き姫は対峙する拓人の顔を睨みつけた。拓人もまた綾波を守る形で、怒り心頭の形相で白き姫を見つめる。

 

「…お前は彼女たちの”思い”を知らない」

『…っ』

「彼女たちの存在意義は「守ること」なんだ。イノチを懸けて…見ず知らずの人々、大好きな人たちを守るために戦う…それが過ちだとか、間違いだったなんて絶対に言わせない」

『それが世界を歪ませていると、君は理解しているのか、このままでは世界は…』

 

「大事なのは世界じゃない、その上で生きて物語を紡ぐ「人間」だ」

 

『…!』

「その人間さえ間違いだって言うんなら…お前たちの”世界”こそ間違っている。そんな理想なんていらない、僕が…それを正してやる」

『…貴様ァ!』

 

 大剣を構え、拓人に斬りかかる白き姫。

 拓人も腕輪を盾に変形させて応戦する、重い一撃の一つひとつが拓人の全身を駆け巡る。

 

「ぐっ…!」

 

 だが拓人も退けない。後ろで茫然自失とする綾波を守るため、彼もまた傷ついてでも戦うと覚悟していた。

 

『何故だ…何故だなぜだナゼだ! 理解出来ないっ! お前は…なぜ戦い傷つくことを恐れないのか、その娘たちを庇い続ければ世界が滅亡に向かうんだぞ!?』

「例え…彼女たちが人を傷つけてしまったとしても、艦娘は…人間と変わらない、必ずやり直せる! 綾波が…そう教えてくれたんだ!!」

「…っ、司令官」

 

 綾波は瞳に光を灯し、拓人を見つめる。そんな彼の後ろ姿に…かつての「憧れ」を想起する。

 

「大丈夫だよ、綾波。僕が…君たちのそばに居るよ」

「…!」

『特異点んんん!!』

 

 必殺の斬撃が今まさに振り下ろされようとした…その時。

 

「水よ…!」

 

 拓人たちの周りに展開する、薄くそれでいて絶対防御の「泡」それは拓人たちを包み、白き姫の斬撃を弾いだ。

 

『っ! 選ばれし艦娘か…邪魔するなぁ!!』

 

 時雨の能力により堅い守りを得た拓人たち、後は…動きを封じることが出来れば。

 

「悪いけど…サポートをするって約束したから!」

 

 時雨の言葉と同時に、白き姫の身体に海水が、蔦が巻き付くように絡み取り、動きを封殺していく。

 

『っ! くそっ…!?』

「今だ、翔鶴!」

 

 空から現れた鉄翼の編隊が、大量の雨粒を運んできた雨雲のように中から爆弾を降らしていく。それは…翔鶴の「魔導爆弾」であった。

 

『ぐっ、氷結か…!』

 

 白き姫にまとわりつく水は、魔導爆弾の「冷気」によりその場に固定される。

 

『どうということはない、力づくで…っ!?』

 

 氷の拘束を抜け出そうとした白き姫だったが…刹那、目前に迫る「第二の魔導爆弾」を捉えた。

 

「魔導航空隊第二波、既に投入済みよ。…燃えなさい!」

 

 その言葉通り、爆弾は盛大に氷塊を砕き燃え上がる…爆発が止んでもなお煌々と火柱を上げ燃え盛る炎は、魔導爆弾の属性が「火炎」であることを言わずとも理解させた。

 

『ぐっ、ぐがああああ!? あ、熱い…っ!?』

 

 思わず身をよじらせ痛みから逃げ出そうとする白き姫、こちらに気をかける余裕はなさそうだ。

 

「時雨、金剛を頼む!」

「分かった!!」

「よし…綾波、ここは一旦離脱しよう。あれだけの傷ならそう簡単に追ってこないだろう」

「………」

「…っ、綾波…」

「仕方ないわね…ほら、逃げるわよ? 気持ちはわかるけど…」

 

 見かねた翔鶴が綾波の腕を掴む、拓人もまた綾波の腕を掴む。

 

「ありがとう、翔鶴」

「いいのよ、それより…村に戻ったら綾波の話をよく聞いてあげるのよ? 金剛もね?」

「分かった。…厄介なことになったなぁ」

 

 炎に包まれる白き姫の影を一瞥しながら、拓人たちは戦線を離脱した…。

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