艦これすとーりーず ―僕が異世界版艦これの提督になった件について― 作:謎のks
それぞれが掃除を頑張ったおかげで、僕たちの鎮守府(予定)は隅々まで綺麗になった。
床、窓、部屋の中、玄関…埃も払われて澄み切った空気が窓から通り抜ける。…あぁ、ようやく。
「ようやく始まるんだ…僕たちの"伝説"が…!」
なんて言ってる場合じゃないけど。とりあえず後は監査官の人を待つだけだったが…その人は意外な人物だった。
・・・・・
「………」
今、僕の目の前にいるのは、無愛想な表情の黒髪美人「加賀」さん。艦これでも上位の人気のお方です。
表情の無さに裏打ちされた、感情の表現が人気の秘訣、頭にきましたとかデデンッ! とか。でもあぁ、良かった…彼女は原作と相違ないみたいだ、また"魔改造"だったらどうしようかと…;
僕と艦娘たちは、彼女の前に整列していた。僕は少し緊張してしまったけど、艦娘たちは平常通りというか緊張の二文字が無い。金剛はニコニコ笑い、天龍は腕組んで仁王立ち、翔鶴はちゃんと背筋は伸ばしているが表情は「まるで復讐相手を前にした」ような睨みを利かせた顔つき…望月はそれを愉しむように嗤い、野分はどこ吹く風と髪型を整えていた(お前はカ○ミ貝か!)、唯一綾波は普通に整列している。あぁもう…無茶苦茶だよ、鳳翔さん何でこんな娘たちを?
「…貴方が新しく提督になりたいと言う子ね?」
加賀さんは気にせず話をする、あっはいそうです、僕がそういうと加賀さんはジッと僕を見つめ始める…ひっ!? 怖すぎる!!
「(でもここで怯んだら駄目だ!)…ジイィーーー!!」
「そんなに睨まなくても、取って食べたりしないわ」
「え?! あぁすみません…」
「いえ…ではこれより鎮守府査定を執り行います。私は加賀、鎮守府連合より派遣されたモノです」
一礼する加賀さん、そのキビキビとした姿勢の良さはその場の雰囲気を更に引き締めさせた、学校の先生みたい…ちょっと分かりづらい? この例え?
「先ずはこの鎮守府…立地条件、清掃の有無、深海棲艦の出現率の低さ…それらから判断しても「有り」ですね?」
「えっと…合格、ですか?」
「まだ気が早いわ。…そう、次は艦娘。貴方が集めた子たちの第一印象は」
「…ごくり」
「とりあえず整列出来ているわね、合格よ」
「え!? (とりあえずって、不合格じゃないの?!!)」
「不服そうだけど、仮合格のようなものよ? これからが本番」
「というと?」
「次は”演習”よ? 貴方たちと私で演習を行い、貴方たちが勝てば合格、私が勝ったら……まぁ、それなりに頑張らないと、ね?」
その凍てついた眼差しに、思わず震えが止まらない僕。
まずい…演習って戦うんだよな? 僕は指揮なんてしたことないし、艦娘たちもある意味頼り甲斐があるけど、果たしてまとまりが出来るか怪しい…。
「とにかく戦ってみましょう! 拓人さんなら大丈夫ですよぉ!」
「気楽で良いね? …ん? 妖精さん、もし僕の特典? チートってことだよね?」
「一般的にはそう言われていますねぇ?」
「じゃあさ? もし僕が一番欲しているスキルに変えてほしいって言ったら?」
ダメ元で頼んでみる僕、これで催眠能力だったりカリスマだったり手に入れたら、この状況を打破出来る! …と思ったら。
「それはダメに決まってますねぇ〜?」
「まぁ、そうなるな?」
「特典はこちらで用意させてもらってますので、それで我慢して下さい〜? それにあんまりチートだと面白くないですからね?」
「ええー分かってないなぁ、無双するから面白いんじゃん? あ、じゃあ今の僕の特典(スキル)って…」
「…貴方、さっきから何を話しているの? その小人は?」
加賀さんに妖精さんを指摘される、上手く誤魔化さないと…。
「あ、この子は妖精さんで…えと、ペットです!」
「うぇあ?!!」
妖精さんが奇声をあげる中、その場の全員が僕を不思議そうに見つめる、いや翔鶴さんその「マジクソだなコイツ」みたいな冷ややかな視線やめて!?
「魔法生物なの? 珍しいわね、ほとんど絶滅していたと思っていたけれど?」
「あはは…この子と他愛ない会話をするのがタノシミナンデスヨー(棒)」
「…まぁ、ほどほどにね? では30分後に海岸へ、その間に作戦を立てること、いいわね?」
そういうと加賀さんは颯爽と歩いて外へ出ていった…。
「…どうしよう?」
「テートクには何かアイデアあるデース?」
「ううん、何もかもが初めてだから…僕が指揮すればいいの?」
「そうだな? だが俺たちの指示は飽くまで旗艦の仕事だ。お前は艦隊に全体の流れを考え、それを伝えればいい」
天龍が仁王立ちしながら僕に助言してくれた。うーん、やっぱり提督は難しいようだ、案外元の世界観じゃなくて助かったかも…?
「えっと…ガンガンいこうぜ?」
「ぷっ!? はははは! 何だよ大将、アンタ脳筋だったのか?」
望月は吹き出すと大笑いする、そんなに笑わなくてもいいじゃん…。
「何て体たらく…何故貴方のような提督の下に…」
ため息をつきながら、翔鶴はここに来たことを後悔したようだ、嫌な感じだなぁ? エルフ耳は好感持てるけどね!
「落ち着きたまえ諸君! 我らがコマンダンには秘策がある、とボクは睨んでいる。我らの手を取って下さったコマンダンがこんなところで終わるはずは無し! さぁいざ行かん! 決戦の地へ! そして我らの勇姿を! マドモアゼル加賀の目に刻みつけようではないか!!」
野分は仰々しく動きながら勇ましく艦隊を鼓舞する、さながら某宝塚のよう…てか長い、君セリフ長いよ。
「うーん…綾波は何かアイデアある?」
綾波は微動だにせずに直立不動の姿勢のまま、一言。
「司令官の御命のままに」
かった!? 固いよキミ? 別に僕はモノホンのヤツになるつもりないから、よくある二次創作でふしだらな生活送ってる艦これの提督になりたいだけだから、もっと艦娘と和気あいあいしたいだけだから!
「うわぁ気色悪いですねぇ〜?」
「だから妖精さん心読まないでって!?」
「何を言ってるか分からんが、ここでアイデアを出さなければ、お前の信用は失墜する。肝に銘じろ」
「一人既に信用ないみたいだけどねー?」
眉をひそめる翔鶴を見やる望月、翔鶴がジロッと睨むと望月は目を逸らしながら嗤った。なんか雰囲気悪いなぁ? ここで僕が何か言うべきなんだけど…ない知恵絞ってもなぁ?
「むむぅ…?」
「そうですねぇ? では、こういうのはどうです?」
と、妖精さんは策ありと耳元で囁く。僕は合わせて小声で彼女の話を聞く。
「何かアイデアが?」
「はいぃ〜! 彼女たちの各々のスキルを把握して、それを相手にぶつけてみると?」
「ふぅむ? 具体的には?」
「彼女たちの好きにさせてみる、ということで〜?」
「…彼女たちの"好き"に? それってカオスが極まる予感しかしないんだけど? ビース○ウォーズばりのヤツしか思い浮かばないよ!?」
「しかし、彼女たちが素直に拓人さんの言う事を聞くとは思えませんよ?」
「確かに(正論)」
「? テートク? どうしましタ?」
「あ、いや…とりあえず君たちのスキルを考慮して、好きに動けばいいかと…」
一か八か妖精さんのアイデアを通してみた、僕が指揮とか出来るとは思えないのでな! (自虐) 流石にどうかしてるって思ってるだろなぁ…と考えていたら、艦娘たちから意外な反応が。
「…ふむ、面白い」
「え」
「いいねぇ? 下手に命令されるよりマシだわ〜」
「まぁ、いいでしょう。私が彼女を倒せばいいだけですから」
「ブラーボ! 流石はコマンダン! 個々の能力を尊重するその寛大さ! 美しいです…! (キラーン)」
「了承」
「テートクが言うなら、ワタシも全力でいきマース!! バー二ング!! ラアアァァァアアブ!!!」
燃える金剛を中心に、何故か士気が高まる彼女たち。あぁ艦娘って提督命令が絶対だからこう、ストレス溜まってるのかな? いや違う??
「こういう個性の塊みたいな人たちは、下手に指揮するとどうなるか分かりませんからねー?」
「なるほど、好きにさせた方が効率がいいと?」
「はい〜、まぁ拓人さんのグダグダな指揮も見てみたいですが〜? (にやにや)」
「性格悪いな君…」
「テートクぅ! みんなと作戦会議デース! テートクも一緒にやりまショー!!」
「あぁはいはい、分かったよ!」
僕は金剛に言われるまま、艦娘たちの輪に入り改めて作戦を立てる…各々が「出来ること」を聞きながら…でも、聞いている内に不安が大きくなる。
「…ええぇー……;」
幾らファンタジーだからって…この娘たちそんなこと出来るの…?
「…どうしよう」
仕方ない…こうなったら!
もうどーにでもなーれ☆