艦これすとーりーず ―僕が異世界版艦これの提督になった件について― 作:謎のks
──海底研究所、廊下。
薄暗い道を、拓人が持参した探照灯の灯りを頼りに進んでいく。時々水の滴り落ちる音がぽた…ぽた…と不気味に木霊していた。
「こ、こわぁ〜い。お化けとか出そ〜」
「…そうかもね」
マイペースなニムに何処か素っ気なく答える拓人。
ニムの力を借りて、巨大な岩壁の中に確かにあった建物の中に潜入した拓人であったが…研究員との直接対決に、矢張り緊張が生まれていた。
「んー、何か寂しー。…ねぇねぇねぇ、お話しようよーこの辺り怖いからさぁ」
「……っ、しっ!」
「むぅ、"しっ"て何よ〜私……っ!」
拓人が前方を見やる、その先には…暗闇でシルエットが薄暗いが、おそらく"研究員"が立っている。
ニムは異変に気がつくと、そのまま隠れるように拓人の後ろに回る。
「…来たか」
そう言うと、研究員はゆっくりと歩いて来る。
探照灯の灯りに照らされて、徐々にその姿が明らかになる。…白衣を見に纏った男性だ。浅い黒肌にスキンヘッド、整った髭に眼鏡をかけている。知的な雰囲気を感じる、静かにこちらを見つめる男。
「…貴方が、研究員?」
「そうとも。名はユリウスと言う、こうして対面するのは初めてだな…特異点?」
低く落ち着いた声色、まるで拓人を見定めるようにこちらに目を向けている研究員…ユリウス。
「…そう、改めて僕は色崎拓人、ユリウスさん…貴方と話がしたいので、この場まで来させてもらいました」
「話などない、君はこの場に来た時点でもう「アウト」なのだから」
そう言ってのけたユリウスは、白衣の左ポケットから「スイッチ」のようなものを出した。片手で握り親指でスイッチを押せる小型タイプのようだ。
「っ、それは…」
「察しの通り「自爆スイッチ」さ。君がここに一人で来るかは賭けだったがね? …後ろの艦娘はどうやら戦いたくないようだから、さして変わりはない」
ニムは拓人の後ろでびくびくしながら様子を見ていた。
「君を道連れにすれば、その後はドラウのヤツが好きにするだろう。アレの世界に対する思いは本物だからな?」
「道連れ…貴方は神父…アイツが間違っていると思わないんですか? 何故心中してまでアイツの有利になることを…?」
そう尋ねられたユリウスだったが、陰を落とすと本心を話し始める。
「…確かにあの男の言い分は、一見支離滅裂の妄言に感じるだろう。だが…それが真実味を帯びているから、尚更たちが悪い」
「…僕が特異点で、艦娘たちが世界を終わらせてしまうことも、アイツから聞いたんですか?」
「あぁ、最初は信じられないと思ったよ。だが…彼はまるで未来を「予期」したような言動をとり、事実そのように時代は変異していった。…深海棲艦の出現、各鎮守府への襲撃、崩壊…これらが続けばいずれは世界は深海棲艦に滅ぼされる、その要因を作っているのが艦娘だ…とね?」
拓人は綾波が「現在の鎮守府は機能していない」と言っていたことを思い出す。
深海棲艦により鎮守府が襲われて、どのくらいかは分からないが「機能不全」にまで追い込まれているなら、相当数の鎮守府が犠牲になっているのだろう…。それは理解した、しかし。
「艦娘が世界を滅ぼす要因とは、僕には思えません」
「…そうかも知れないな、願わくば私もそう信じれたら…良かったのだがな。…しかし、これは事実だ」
「だとしても、それは「海魔石」のせいでそう見えるだけで、彼女たちはただ人々を守りたいと思っているだけです。ドラウニーアが間違っているだけなんです。…ユリウスさん、貴方はただ騙されているだけなんです…!」
拓人の必死の説得に、ユリウスは思わず得心したように穏やかな笑みを零す。
「…フッ、君の言う通りだ。彼は間違っている「最初から」ね? 私も…彼の言うことを全て鵜呑みにしてはいないさ」
「だったら…!」
「駄目だ。私たちは犠牲を作り過ぎた、今更…間違いだったからとやり直したところで、過去は変えられない」
「…これは自分に対する「罰」…と言いたいのですか?」
「そうだ。私は艦娘の居ない世の中こそが、この世界を救う方法だと信じた…しかし…今考えれば私は「怖かった」んだ。アイツは裏切り者に容赦はしない、君も聞いただろう? 連合に捕らえられた研究員がどうなったかを。あれはアイツが全てやった、情報を売り渡し生き延びようとした者を、全て…っ!」
ユリウスは、連合に捕縛された元機関の研究員たちの末路を挙げ、それらはドラウニーアの殺戮であったと吐露した。
「私は…殺されたくなかった、だから無辜の人々を…自分が生き延びるために…見捨てたんだ…っ!」
身体の震えが止まらない、ユリウスの「後悔」を拓人は視認し肌で感じる。
「もう自分は許されるような人間じゃないんだ、だから…私は…っ!」
ユリウスはもう自分自身が見えない状況に陥っていた、信念も疑念に塗れ、罪なき人々を犠牲にした(おそらく精神乗り移り実験のことだろう)罪悪感が彼を押し潰そうとしていた。
そんな罪人の姿を垣間見て、拓人は…?
「…ふふっ」
ただ、微笑んだ。
「…? 何故笑っているんだ?」
「あぁいえ、やっぱり…僕と貴方は似ているな、って思って?」
「似ている…だと…?」
ユリウスが何処か不思議そうにしていると、拓人は自然な笑みを浮かべながら答えた。
「はい、それが償いきれない罪であれ、辛くて何も変わらない現実であれ…自分の心に蓋をして、見てみぬふりをして、理想だけを追い求めて…本当に、どうしようもないですよね?」
「君は…」
「でもユリウスさん、理想は皆が見る「夢」ですが、そこに自分の思いが無ければ…「何の意味もない」のではないでしょうか?」
「…っ!」
「僕はそれに気づいた、見ないフリばかりだと自分の道すら他人の理想に塗り変わってしまう。だから…僕たちは自分が「信じられる道」を歩みたいと思うんじゃないでしょうか?」
「……それは…」
「ユリウスさん、貴方は…自分の「信じる道」を行くべきです。貴方の心は…今何と言ってますか?」
「っ、わ……私は…っ!」
その言葉に何かが揺れたユリウスは、膝から崩れ落ちて力無く項垂れ、目からは思いを表した涙が流れ出た。
「私は…世界を守りたい! だが…それは幼気な少女たちを犠牲にしてまでやることではない、間違っているっ! 理屈ではない…私は人を…艦娘たちを…生かしたかった…っ!」
罪に溺れる囚人は、今日までの己を懺悔する。
「…やっと、歩けましたね?」
拓人の心からの言葉に「すまない…すまない…」と涙に震えるばかりだった…。
「ユリウスさん、変わりましょう。今ここから…世界も艦娘も同時に救う方法を、一緒に見つけましょう…!」
ユリウスに手を差し伸べる拓人、世界を救うため愚行を繰り返した罪人は今、変わる…。
──カチッ
「…っ!?」
しかし拓人の耳に届いたのは、残酷な現実だった…。
ユリウスは、用意していた自爆スイッチに手を掛けていた…!
「ユリウスさん! どうして…?!」
驚愕する拓人、しかしユリウスは依然と虚しげな笑みを浮かべていた。
「…特異点、いや…タクトだったか? ありがとう…最後の最後で私は自分が何をしたいのか思い出したよ」
ユリウスが拓人に弁明していると、空間が大きく揺れ遠くで爆発音が響いた。
「だが…私は自分が何をしたのか分かっているつもりだ、今更自分だけ生き延びることはしない。あの世で…私は自らの罪を償おうと思う」
哀しい顔でユリウスは自身に裁きを与えようとしていた…気づけば辺りは建物の瓦礫が落ち、崩れ始めていた…。
「駄目だ…死んだって何も変わらない、変わらないと…生きて罪を償うんだ、ユリウスさん!!」
拓人の魂の叫びだが、それでもユリウスの意思は変わらない。
「ありがとう…しかし、私は君のように強くはなれない。この罪の重さに…耐えられそうにない」
「…っ!」
「君は何も悪くない、これは私の我儘だ、分かってくれ。……さぁ、急いでここを脱出するんだ、早くしないと君まで…」
その時──
──ガラガラガラッ!!
「っ、ユリウスさん!!」
罪人の頭上には、大きな瓦礫の岩が…罰を執行する断頭台のように、振り下ろされようとしていた…。
「…ありがとう、私の分まで…どうか……っ!」
そう言うユリウスの表情は、死を前にしても微笑みを浮かべていた…。
・・・・・
『Kyuooon…!』
天龍の「長丁場になる」という言葉通り、機獣クラーケンとの戦いは混迷を極めた。
天龍の高速をもってしても、クラーケンは漏斗のジェット噴射でその場を離脱、金剛や時雨も砲撃で応戦するも、巨大な的であるはずのクラーケンだが当たる直前にジェット噴射で華麗に避けられてしまい、中々当たらない。
「…っち」
「はぁ…はぁ…っ」
「しぶとい…このままじゃ僕たちの体力がもたない…!」
時雨の冷静な状況分析、艦娘であろうと時間と共に体力を消耗すれば、確実に隙が出来る。そこを突かれでもしたら…あの漏斗の「圧縮水鉄砲」の高威力を嫌でも思い出す一同。
「…こうなったら」
金剛は自分の限界を超える算段を画策する、それは…度々彼女の意識を乗っ取った「もう一人の自分」…心の中で助けを求めてみる。
「(お願い…力を貸して…っ!)」
金剛がそう必死に願いを込めて念じると、"あの声"はそれに応え…ただ一言だけ発した。
『──No、今のアナタに力は貸せまセーン』
「…っ、そんな…どうして……っ!?」
思わず狼狽して声を漏らす金剛、しかしてあの声が再び彼女に応じることは無かった。
「…どうした?」
天龍は金剛の異変を察知し、彼女を身を案じる。
「…テンリュー、駄目…私…ワタシになれない…っ!」
「何…?」
「…っ! 天龍、金剛!!」
時雨は大声で二人に呼びかける。見ると遠くでクラーケンが浮き上がり、圧縮水鉄砲の狙いを定めていた。
「…っ」
天龍はすぐさま金剛を抱き抱えると、高速でその場を移動する。彼女たちの居た場所には、圧縮水鉄砲の一閃が轟いていた。
「っわ、テンリュー?!」
「すまん、この方が早い。…というか、お前は「お前」だろう金剛?」
「え…?」
金剛には天龍の言わんとすることが解らない。天龍は呆れながらも続ける。
「いいか? どんなに都合の良い力があったとしても、決してそれだけに頼ってはいけない。そういった力は…大抵心を「腐らせる」からな。自分のことは…自分の力で何とかするべきだ」
「…っ!」
そう、力に溺れた者の末路はいつだって悲惨なものだ。金剛は知らずのうちに…もう一人の自分を頼っていたのだ。
「まぁ…それも方便だろうがな。俺もこうして"カイニ"の力を使っているしな、だから…どうしても埒が開かないときの為に、お前の切り札…十中八九あの「金剛」のことだろうが、それはその時まで取っておけ。それまでは俺たちで何とかしよう」
「テンリュー…」
全てを知らない筈の天龍は、何も追求せずただ自分たちを信じてほしいと金剛を諭した。
天龍に背中を押された気分になり、金剛は意を決した様子で身を引き締めた。
「…分かったよ、私は…私にしかなれないもの!」
「その意気だ。さて……ん?」
天龍が目を凝らすと、クラーケンに向かって猛進する一つの影が…。
「あれは…綾波か!?」
「っ! アーヤ…無事に帰って来たんだ…良かった…!」
亡霊騎士との決着をつけた綾波が、天龍たちの救援に駆け付けた。
現在クラーケンは空中をゆっくりと降下している途中だが、悠然と綾波に向けて圧縮水鉄砲を構えていた。
綾波も動じずそのまま宙に浮かぶクラーケンに向かい、海面を蹴って空高く跳び上がる。彼女の「重力操作」の賜物で抵抗なく、勢いそのままにどんどんクラーケンとの距離を詰める。
「…なっ、待て綾波! 今ソイツに近づくのは危険だ!?」
「アーヤっ!」
傍目から見たら自分から攻撃を喰らいに行っているように思える、天龍と金剛は驚きつつ綾波を制止する声を上げ、クラーケンは勝ち誇ったように金切声を鳴いた…。
しかし…誰も知らないだけだったのだ、綾波が「強力な能力」を手に入れていることを。
「──落ちろ!」
手を翳し、クラーケンに対し「過重力負荷」を掛ける綾波。クラーケンの周りの空間が徐々にじょじょに歪んでいき、巨体は黒い膜に覆われていく。
『Kyuooon…!!?』
まるで巨大な隕石が落下するように、クラーケンは一気に海面に落とされそのまま叩きつけられる…豪快に水飛沫が上がると、そのまま広範囲にシャワーとなり降り注いだ。
「な…!?」
「…え?」
「…ウソ、だよね?」
あまりの突然の出来事に絶句する金剛たち、三人は水に濡れながら状況を飲み込めず呆けていた。クラーケンは黒い膜に包まれて身動きが取れないようだった。漏斗は背中側にあるので圧縮水鉄砲も封じられ、ジェット噴射も不可能なようだった。
『Kyu………ooooon!!!』
しかしただではやられない。クラーケンは過度に重力を強められているにも拘らず、八本の触手を力強く伸ばし、綾波を捉えようとする。綾波は空中でクラーケンを見つめており逃げ場はない…ように思えたが?
「はぁぁあああっ!!!」
空中で身を捻り回転、そのまま背中の戦斧に手を掛けると、疾風怒濤の勢いで迫りくる触手を次々と「切断」していった…!
七、六、五、四、三、二…巨大な魔手を豪快に薙ぎ倒していく綾波。
気を焦ったのか、クラーケンは口に隠した触腕を射出するも、綾波には通じない。ひらりと空中でバク転を繰り出すと、クラーケンの外套膜付近まで跳んでいく…。
「うぉおおおおおおっ!!」
そのまま戦斧を高々と掲げ雄叫び、コアと思しき窪み部分を…クラーケンの身体ごと「一刀両断」する。
『…ッ!!?』
豪断は海獣の巨体を真っ二つにせしめ、海の悪魔は…呆気なく騎士により討伐された。
『Kyuoooooooooooooooooooooo……n──』
クラーケンの断末魔が空間を震わせる、ここに…綾波の圧倒的強さを示す戦いが残された。
「…ほ、本当に一人で倒してしまうなんて…はは…凄いや」
時雨は綾波の強さを認め、ただただ引き攣った苦笑いをするよりなかった。
「…テンリュー、この場合の綾波って…?」
「お…俺に聞くな!」
金剛と天龍は、先程までの緊張が和らいでおり「青天の霹靂」とでも言わんばかりの状況に笑うしかなかった。
「…む?」
全てが終わり、海面にゆっくり着水する綾波だったが…遠くで「黒いフード」の何モノかがその場を去っていく様子を見る。
「…鼠を逃したか。仕方ありませんね…おそらく穢れ玉とやらも………っう!?」
…と、突然綾波の身体に「痛烈な身体の痙攣」が襲う。あまりの痛みにその場に蹲る綾波。天龍たちは綾波の異変に気付いて彼女の元に駆け寄る。
「大丈夫か、綾波?」
「…身体の、異常な筋肉痙攣を感知しました……っつ!」
「無理しないでアーヤ?」
「…ふむ、どうやらさっきの能力は短時間の連続使用は控えたようがよさそうだね? 重力操作のようだけど、君もカイニに?」
「はい…司令官に、このお力を賜りました…」
「…成る程、強力な力には何事もデメリットがある、か」
何にしても使いどころが重要な能力であることに変わりはない。それでも綾波は光を灯した瞳で皆を見渡し、笑った。
「それでも…この力で皆を守れて…良かった」
綾波の言葉に、一同は微笑んで彼女の敢闘を称えるのだった…。
・・・・・
・・・
・・
・
「──私は…世界を守りたい! だが…それは幼気な少女たちを犠牲にしてまでやることではない、間違っているっ! 理屈ではない…私は人を…艦娘たちを…生かしたかった…っ!」
罪に溺れる囚人は、今日までの己を懺悔する。
「…やっと、歩けましたね?」
拓人の心からの言葉に「すまない…すまない…」と涙に震えるばかりだった…。
「ユリウスさん、変わりましょう。今ここから…世界も艦娘も同時に救う方法を、一緒に見つけましょう…!」
ユリウスに手を差し伸べる拓人、世界を救うため愚行を繰り返した罪人は今、変わる…。
「…っ! ──」
──パシッ
「…!?」
ユリウスが手に握った自爆スイッチに手を掛けようとした矢先、寸でのところで「拓人に取り上げられた」。
「…ぅああ”っ!!」
拓人がそのまま自爆スイッチを床に叩きつける。スイッチは盛大に破壊音を立て、使い物にならなくなってしまった。
「…っえ、なになになに?! 何が起こったの?」
一瞬の出来事だったので、ニムは理解が追いつかなかった。それはユリウスも同様だった。
「な…何故私が自爆スイッチを押すと…?」
ユリウスが憔悴しきった眼で拓人を見つめていると、拓人は悲しそうにユリウスを見つめ返しているだけだった。
「…っ! まさか君は…「A・B・E」を…私を止めるために…!?」
ユリウスの導き出した答えに、拓人は黙って頷いた。
「…っ! 馬鹿か君は! それが何を意味するか分かっているのか、君は自ら世界を救う力を手放そうとしているんだぞ!!」
「……ユリウスさんを犠牲にしてまで手に入れた平和なんて、あの外道に操られていただけの人が報われない運命なんて…そんなの「間違っています」。僕には…それは受け入れられない」
「…っ」
拓人は、自らの力を失う危険が伴うと分かり切っていても、ユリウスの強行を止めたかっただけなのだ。拓人にはそれが自然の摂理だと咎められようとも、自身が納得できないことを放っておくことが出来なかった。…それが「エゴ」だも解っていても、正しくなかったとしても彼は己の「本心」を制御することがままならないのだ。
「…どうすれば良かったのだ、君は…どうして私などを助けたというのだ…?」
「貴方は何も悪くないんです、死んで罪を償いたいのが貴方の我儘なら、生きて罰を受けるべきだと思ったのが…僕の我儘なんです」
「君は……どうしようもないな、本当に…どうしようもない阿呆だ…!」
涙を流しながら拓人を罵倒するも、怒りなのか感謝なのか分からないぐちゃぐちゃの顔は、彼が路頭の迷い人と化している証拠だった。
「ユリウスさん…貴方はここで「死んだ」その事実は変わらないでしょう。僕は…それを先延ばししただけに過ぎない、いつかその日が訪れるまでで良いんです…どうか、僕たちに力を貸して貰えないでしょうか?」
…拓人の自らを賭けた説得に、遂にユリウスの迷いは…”晴れた”。
「…私はもう「TW機関の元研究員」ではない。ここに居るのは…死ぬ機会を失った「ただのユリウス」だ、それで…納得するとしよう」
「…ありがとう、ユリウスさん。貴方が生きていてくれて…良かった」
憑き物が取れたように、力なく微笑んだユリウスとそれに応えるように笑う拓人…その視線が映る先には…。
…承認完了。
「残り1回」
空間に浮かぶIP、その光に記された文字を、拓人は重く受け止めるのであった…。
拓人がユリウスを助けたことは、果たして正解だったのか?
作者も首を傾げるばかりですが、その場で選択を迫られないと自分の「譲れないもの」は分からないと思います。拓人にとってこれが「譲れない選択」だった、それだけなのかもしれません。
…さて、次回はいよいよボウレイ海域編の最後…だと思われます。
期待しないで待ってて下さい〜。