艦これすとーりーず ―僕が異世界版艦これの提督になった件について― 作:謎のks
高笑いが聞こえそう。
円卓会議…ちょっと厨二臭い。
だがそれが良い(カッコいい)。
──翌日、僕らは鎮守府連合本部に集結していた。
カイトさんが用意してくれた会議室に集まった僕ら、広い空間の中央に堂々と在るのは、木目天板の横に伸びた巨大ラウンドテーブル、それを囲うように15人分のレザーチェアが配置、奥にはホワイトボードが見える。まるで巨大企業の無駄に長い会議の前の緊張感が漂う…いや皮肉とか冗談じゃなくて、本当にそうとしか言えない位息を呑む程のピリピリした空気を感じるよね。
「カイトさん、艦隊只今参りました」
「ご苦労様、よく来てくれたね? …さぁ、いよいよだよ。先ずは各々話し合いの位置についてくれ」
「分かりました。…じゃあ、行こう?」
僕の後に続く皆に振り返りながら入室を促す。全員気を引き締めた様子で頷くのを確認する、そして…先頭の僕から緊張の面持ちで入室した。
始めに僕が入り口付近の席…左上の端の席に座る、そこから天龍、望月、綾波、野分の順で座っていく。金剛、ユリウスさんはホワイトボードの位置で立ち止まって、そのまま正面を向いて会議が始まるのを待った。彼らは色々話さないといけないことがあるから…。
「…ん? 野分その帽子どうしたの?」
野分は頭に、大きなツバと横にある羽の装飾が特徴的な帽子を被っていた。
「あぁ、これは…気分転換と申しましょうか?」
「…? ふーん、似合ってると思うけど?」
「あ、ありがとうございます…;」
…なんだろ、ヤケにぎこちないというか隣の望月と天龍も何処か…固い感じがする気が…?
「…まぁいっか?」
「(ほっ…)」
僕らがそんなやり取りをしていると、会議室に加賀さんの姿が現れた。
「カイト提督、選ばれし艦娘の招集完了しました。それから…お客様も?」
「あぁご苦労、皆に入ってもらって?」
「了解しました、では…皆さん、こちらへ?」
加賀さんの言葉に、次々と入室する人物たち。先頭にいるのは…選ばれし艦娘の「加古、長良、時雨」の三人だった。加古と長良は僕を見つけると、気さくに話しかけて来た。
「よぉタクト! 久しぶりだなぁオイ!!」
「やぁ加古、元気そうで何よりだよ。長良もね?」
「アハッ、タクトってばこの前よりもしっかりした感じじゃない?」
「おぉ〜マジだなぁ、確か連合の幹部になったって聞いたからよ、この調子なら何れカイトを超える逸材になるのは夢じゃないぜ〜?」
加古と長良と久々の会話を楽しんでいると、加古の言葉に反応してカイトさんが会話に割り込む。
「ほぅ、聞き捨てならないなぁタクト君? 僕も提督としてはまだまだ若輩者だけど、だからって君に早々抜かれるつもりはないよ?」
「っゔ、これはその…あの時は勢いで言ってしまったというか…;」
「ははっ、まぁそういうことにしておこう?」
カイトさんは凄く楽しそうに笑っていた。…うーん、我が言葉ながら青二才の空論だったなぁ。
「…そうとも限らないかもだよ、タクト。君ならカイトを追い抜くぐらいは「その気になれば」可能だよ、まぁ…肝心の君はあまり気乗りしないだろうけど?」
そう言って僕の考えを見抜いた発言をしたのは「時雨」。目隠しをした彼女の「心を読む能力」には、僕たちも何度も助けられた。
「そうだね時雨、僕こそまだまだ若輩者だからさ、今はドラウニーア関連の事件を一区切りさせたいし?」
「そう言うと思ったよ。…さて、雑談はこのくらいにしようか? 君たちも早く話を進めたいだろうし」
「えぇ〜いいじゃん時雨ぇ、アタシらタクトとは大分話してないし」
「もう、言いたいことは分かるけど、タクトたちの迷惑になるよ? ほら行くよ加古!」
「はは、長良もこう言ってるし…ね?」
「へぇーい。んじゃあなタクト!」
「うん、またゆっくり話そうね?」
加古たちは僕らとは向かいの席に座りに行って、僕はそれを手を振って見送った。
…ん? あれ、確か選ばれし艦娘って……んー、後でカイトさん辺りに聞いてみるかな?
加古たちの後に続いて会議室に入って来たのは、例の「お客様」だ。誰かというと──
「…お、お邪魔します」
「マユミちゃん、そんなに緊張しないで? 私たちはお客様なんだから」
「コバヤシさんはそう言うけど…うぅ、私たちなんでお呼ばれしたの?」
マユミちゃんにコバヤシさん。あの百門要塞の時にお世話になった人たち、僕もどうして彼らが此処に呼ばれたかは分からないけど、呼んだのは金剛で何でも話したいことがあるそうだから。
「マユミちゃんにコバヤシさん、お久しぶりです」
「っあ、タクト! ぅう〜、そのどっかボヤッとした顔見てると、なんか安心する!」
「相変わらず酷い言い草だな…;」
「あらタクトちゃん、久しぶりねぇ〜! …んー、暫く見ない間に男らしくなったじゃなぁい、やっぱり私の眼に狂いはなかったわっ!」
「あはは…自分じゃどうなってるか分からないけど、そう言ってくれて嬉しいよ…?」
僕らは少しだけ言葉を交わすと、マユミちゃんたちは加古たちの隣の席にそれぞれ着席した。
…これで全員なのかな? ホワイトボード前にはカイトさんと加賀さん、金剛とユリウスさんがそれぞれ立ち、僕らは椅子に座りながら会議をする準備を整えていた。…あぁ、翔鶴は一応来てるけど、例の理由で会議室の前で内容を聞いてる感じかな?
「こうしてメンバーを見ると、今までの旅の総括って感じがするなぁ。そう思うでしょ妖精………っ」
僕は言葉を止めると、そこに居るつもりで話していた人物(?)が居ないことに気づいた。
妖精さん…あのボウレイ海域でウォースパイトたちを助けると決心した場面以来、一度も僕の前に出てくることは無かった。何故かは分からない、アカシック・リーディングでの「何となくこうなんだろう」という理解も無い、本当にどうしてこうなっているのか不明だった。
不安が無いと言えば嘘になる、それでも僕は…僕を信じてくれる人たちのために、自分の使命を果たしたいと思う。
「(…それで良いんだよね、妖精さん?)」
僕が力なく微笑んでいると、カイトさんは会議の始まりを告げようとしていた。
「さて、これで全員かな? ではこれより鎮守府連合主催、特別会議を執り行ないたいと思います。僕はカイト、この鎮守府連合で幹部を務めています。本日は各々忙しい中お集まり頂き、感謝致します」
「私は加賀、秘書艦としてカイト提督に仕えさせてもらってます。長い会議になるでしょうけど、頑張って付いてきて下さいね?」
「さて、改めて自己紹介…と、どうやら初対面の方々も居るようだな。初めまして、私はユリウスという者。かつて連合に反旗を翻した元TW機関の研究者だ、今は故あってこちら側につかせてもらった。今回の会議では私から情報を出させて頂くが、理解が及ばなければ逐次説明を入れたいと考えている。宜しく頼む」
カイトさん、加賀さん、ユリウスさんの順でそれぞれ挨拶を済ませると…「彼女」が前に出る。
ゆっくりと深呼吸をしながら息を整え、辺りを見回すと…謎に包まれた彼女はそのヴェールを脱ぐように重い口を開けた。
「…初めまして、私は
──エリ。
「…エリ?」
僕の呟きに反応し頷く金剛。
「そう、私はただの人間から艦娘になった。何故私がこうなったのか、これからこの会議で話していきたいと思います。どうか最後まで…」
「……ぁあ〜っ!!?」
…と、金剛改めエリの話をぶった切って声を上げて驚いていたのは…マユミちゃんだった。
「貴女、何処かで見たことあると思ったら…まさか、あの「エリちゃん」なの!?」
「…うん、久しぶりだねマユミ。私たちがまた出会うなんて、これも運命なんて言うのかな? アハハ…」
彼女の本当の名前を聞いて驚くマユミちゃん、それを見て力無く笑うエリ。
どうやら二人は知り合いだったようだ。そういえば初めて金剛を見たマユミちゃんが「貴女何処かで…?」って言ってた気がする。
「あの時は私も記憶が戻ってなかったから、何も言えなかったけど…貴女たちにも本当のことを知ってほしい。だからカイトさんに頼んで私が貴女たちをここに呼んだの、迷惑だった…?」
「ううん全然! そっか、やっぱり勘違いじゃなかったんだ…もう、一人だけそんな立派になっちゃって! なんでそうなったか、ちゃんと話してよね!」
「もちろん。でも…貴女たちを巻き込んだみたいになってしまって、本当にごめんなさい」
金剛は深々と頭を下げて謝罪するも、横で聞いていたカイトさんが弁明した。
「まぁこの場合は致し方ないかな、本来なら一般の人間を巻き込むのはご法度だけど、マユミちゃんも「無関係とは言い難い」立ち位置だしねぇ? そうじゃないにしても、彼女たちの身柄は連合が保障するから、安心しなよ?」
「はい、ありがとうございますカイトさん」
カイトさんの言葉に安堵の表情を表す金剛。…今更だけど、敬語の金剛って若干違和感が…いや、彼女は金剛じゃないんだろうけど?!
そんな僕の考えを余所に会議は進んでいく、初めはカイトさんが話を振る。
「さて、先ずは何から語ろうかな? …ユリウス殿?」
「あぁ。矢張りここは…」
ユリウスさんはホワイトボードに向かうと、マーカーで大きく文字を書き始めた。
──TW機関の「計画」
ホワイトボードにはそんな文字が書かれていた。
「…我々が、いや…ドラウニーアが何を計画しているのか、それを話そうと考えている」
ユリウスさんの重い一言に、会議室内に緊張が走った。
いよいよか…僕らは固唾を呑んでユリウスさんたちの説明を静聴する。
「先ず我々機関の本来の目的は、二度と海魔大戦のような甚大な被害が及ぶ戦争を繰り替えさせないこと。そして脅威の再来に備え軍備を整える連合が、抑止力たらんための強大な兵器を造る… 「対脅威防衛兵器開発機関」これがTW機関だ」
「それは機関が連合直属の組織だから…ですよね、カイトさん」
「そうだね、機関は元々連合が授かった「予言」を元に、来たる次代の脅威に備えるために艦娘に代わる「次世代の兵器」を造ることを前提に取り合わせたのだからね」
ここで言う予言は、海魔大戦の終結後に当時の特異点であった「イソロク様」により紙に書かれたもの、それは彼に近しい人に手渡されたと言う(連合の関係者かな?)。
「…で、表では抑止力になるための兵器造りに勤しんでたけど、裏ではドラウニーアが中心になって違法な実験の数々を行ってた…ということですか?」
「そうだな、新たな艦娘の製造も禁止されていた中、アイツは「ある出来事」を切っ掛けに艦娘製造を含めた様々な実験に手を出していった」
「…なんだ、そのある出来事とは?」
天龍の疑問だけど、やっぱりユリウスさんはこの話題を話すのを渋った。
「いや、ここでは省かせてもらうよ。話が長すぎて脱線しかねないからな、詳細はタクト君や彼の秘書艦殿に伝えてあるので、気になるなら後で聞いてもらいたい」
えっと、ドラウニーアは当時イソロク様みたいな「特異点」の研究をしていて、その過程で「アカシックレコード(通称:神の領域)」に至ったことで様々な情報…この世界の過去、現在、未来の情報を得ることに成功した。それでも一部だけみたいだけど?
「まぁ噛み砕いて言えば、ドラウニーアは多種多様の実験を繰り返す過程で、この世界の真実…何れ世界全体に「滅びの刻」が訪れることを知り得たんだ」
「滅びだぁ? 深海のヤツらが人類を滅ぼすってのかい?」
望月が大袈裟に驚きながら適当に言葉を投げると、ユリウスさんは落ち着き払った様子で回答した。
「半分正解だな、正確には…艦娘と深海棲艦、両勢の戦いが世界崩壊の切っ掛けとなる…とね?」
「っな…っ!?」
僕らは皆、背中に氷を貼り付けられたような悪寒が走るのを感じ取った。
「ユリウスさんの言っていた「艦娘の戦いで世界が滅ぶ」は、ドラウニーアから教えてもらったの?」
「あぁ、アイツは艦娘こそが世界バランスを崩壊させる悪魔であり、人類は大きな過ちを犯してしまったんだと、狂ったように語っていたよ」
「ちょい待ち、言いたいことは解るがよ? アタシら別に世界滅ぼす気なんざないぜ? 何だったら海魔だとか深海のヤツらだとかから、世界守ってるっつうのによ?」
望月の反論に誰もが頷く、しかしユリウスさんは続ける。
「一部の者には既に話してあるが、艦娘と深海棲艦の因果関係を考えれば、自ずと答えは出る」
「えっと、艦娘が沈んだら深海棲艦になるんだよね?」
「うぇ、マジ?」
「うっそ〜!? 私聞いてないんだけどぉ!!?」
加古たちやマユミちゃんたちは驚きを隠せない様子だった。まぁ僕は前世の知識があるから驚かないけど、普通はそうなるよね?
「そう、艦娘が沈めば深海棲艦に成る、しかしその逆は「イコール」とは限らない、深海棲艦から艦娘に戻ることは現状有り得ないんだ。その意味は…タクト君、君なら理解出来るだろう?」
ユリウスさんに振られて僕は、頭の中をフル回転させその意図を探った。
「えっ、っと…艦娘は深海になったら"そのまま"……待って?…っ! ぁあそうか、そういうこと!?」
僕の叫びに会議室の皆は、僕の方に振り向いて凝視した。堪らず綾波が回答を求めた。
「どういうことですか、司令官?」
「つまり、今は分からないけど…このまま深海なり人同士の戦争なり、戦いが長引けばながびくほど、結果的に多くの艦娘が「沈んでいく」んだ。それは同時に人類の脅威である深海棲艦を「量産」している…という事実がある」
「…っ!?」
会議室に衝撃が走る、皆一様に驚天動地の様相だったが、ユリウスさんは静かに頷き肯定した。
この世界では艦娘の建造法は封印されているから、このまま何もしないでいたら確実に拮抗が破られる。具体的には艦娘と深海たちの割合が今は半々、そう遠くない未来では…深海の割合が大きくなる可能性が高い。
「…ううん、やっぱりここは原作よろしく、新しい艦娘を造ったり、よしんば深海たちを倒して元の艦娘に戻す…というのは?」
この世界で艦娘建造をやることは、封印されてるって言った後だけど「不可能ではない」のだ。ここには連合の幹部や機関の元研究員もいるし、緊急事態なのでそうも言ってられない。でも一番効率が良いのは「深海棲艦を倒して艦娘に戻す」…かな?
そんな僕の考えに、ユリウスさんは苦い顔をしながら首を横に振る。
「タクト君、言いたいことは解るがそれでは何の解決にもならないんだよ。深海棲艦の侵食を止めるには、その切っ掛けとなる「戦争」を止めなければならない。しかし…それをするためには多くの人間の「エゴ」と向き合わなければならない」
「っ!」
そうか…例え深海棲艦や艦娘たちが戦うことを止めたとしても、戦争を引き起こす人間の
「そうだな、
「そうさねぇ、ソイツ(戦争)が世界を滅ぼす原因だとしてもよ、じゃあアタシら何のために居るんだ〜ってなるわな。…自分で言って歯痒いけどさぁ」
「…止められないのでしょうか、このループは」
天龍、望月、綾波の言葉はこの世界が抱える大きな課題を表していた。
人は深海棲艦を恐れ、深海棲艦を艦娘が討ち、そんな艦娘に人は依存する。艦娘自身にも止められない「無限ループ」がそこに在った。
…皮肉だな、人が持つべきじゃない大きな力を、人の手で造ってしまったから、力に依存してしまうなんて。彼女たちは…艦娘は兵器なのかも知れないけど、それでも僕は…彼女たちを人間だと信じてあげたい。
自分の意思で「戦いたくない」と言える、全ての艦娘たちがそんな在り方を見つけられたら…!
「そう、この世界は艦娘を受け入れた時点で、既に崩壊の運命にあった。人類が争いを止めない限り艦娘は戦い続け、その度に深海棲艦に成る可能性がある。そう遠くない未来に人間の手によって滅びが訪れる、それを理解したドラウニーアは"考え方を変えた"んだ」
「それは…例の「計画」に繋がることですか?」
僕の言葉に小さく頷いたユリウスさんは、アイツの計画の全貌を語り出した。
「我々の手でこの世界の法則を覆す。具体的には…艦娘という種をこの世界から「亡きモノ」とし、滅びのループの元凶たる人類のほぼ全てを「絶滅」させる。そして…ゼロとなった世界で平穏を望む者たちと新たな世界…
──ゼロ号計画。
「…っ!?」
ゼロ号計画…確か「元になった話」にもそんな名前で計画されていたっけ? ジュピター機関の悪者が…ん〜、そんな感じ…だったっけ?
「タクトどうだ? ゼロ号計画というのに心当たりはあるか?」
「あるにはある、よ。…でも…んー、そっから先が思い出せないんだよなぁ?」
「大将の例の「メタ知識」ってヤツかい? そもそもボウレイ海域はどうだった? 大将の思ってたヤツと違うかい?」
望月に問われた僕は、ボウレイ海域の話も思い起こしたが…んーー? 確か…。
「大筋は一緒かも、でも原作にあった…"いざなみ"だか"いざなぎ"だかの艦娘部隊が居たんだけど、そういえば出てきてないなぁ?」
「あン? 綾波の艦娘騎士団が居たんだから、ソイツらが代わりだったんだろ、なぁ?」
「…私には分かりかねます」
望月に話を振られた綾波は、首を傾げるばかりだった。そりゃそうだよね?
…そう言われたら大分改変部分があるなぁ? ユリウスさんを発見出来たのは、言ってしまえばこのメタ知識のお陰なんだけど…記憶も朧気になってきたし、ここからはメタ知識にも期待出来そうにないなぁ。
ユリウスさんは僕らの話が終わるのを見計らうと、計画の詳細を教えてくれた。
「先ず艦娘を滅ぼすには、全ての艦娘を機能停止に追い込む必要がある。が…艦娘とは己の心臓部である艦鉱石に、世界に満ちた「マナ」を少量でも吸収出来ればそれだけで存在出来る。彼女たちの明確な死というのは身体に致命傷を受けた場合と「水底に沈む」以外に無いのが現状。あの大戦より数十年経つが、それでも艦娘は星の数ほど居る。彼女たちをそのまま全滅に追い込むには、どうしても膨大な時間がかかる。ではどうすべきか…ドラウは「一斉に機能が復活出来ないようにすれば良い」と考えた」
「全ての艦娘を完全に機能停止にする、ですか? そんなことどうやって…?」
野分が疑問を呈しているところを聞いていると、ふと僕の頭の中に思い浮かんだ言葉があった(アカシック・リーディングの力だね?)。
「…黒い霧?」
「っ!?」
僕の呟きにユリウスさんは頷いて肯定する。その言下に周りの皆がざわつき始めた。
「ユリウスよぉ、黒い霧っつうのは…もしかしなくても?」
「君の浮かべている考えで合っているよ、望月? 黒い霧の原料は「マナの穢れ」そのものだ、艦娘を機能停止に追い込むのは彼女たちの天敵以外には無い」
「やっぱそうなるよなぁ?」
「うむ、人の欲望や負の感情に侵されたマナの穢れを、黒い霧として濃縮させ艦娘に向けて放つことで、彼女たちの機能を弱体化させる、長時間黒い霧の中に在れば、彼女たちを完全停止することが可能。これを利用してドラウは艦娘の殲滅を図った次第だ、それらの実現のためアイツは「黒い霧を生成する魔石」を作成した。…我々はその魔石を「零鉱石」と名付けた」
「成る程、その零鉱石が艦娘殲滅の鍵ということか……あれ?」
「ん、待てよ………っ! ……大将、今アタシ嫌な考え浮かんだんだけど?」
「僕もだよ望月、それってアレでしょ?」
「「──廃鉱の巨大魔鉱石」」
僕と望月は二人揃って最悪の回答をした、それに釣られて綾波と野分は驚愕していた。
「な、なんと!? ではあの魔鉱石は…っ!」
「待て。タクト、一体何の話だ?」
天龍に問われたので、僕らはかつて廃鉱でドラウニーアが「巨大魔鉱石」を所持していたことを話した。
「何だと…!?」
「…ユリウス?」
「あぁエリ君、おそらくそれはドラウニーアの計画において「切り札」となる重要アイテムだ。そんなことがあったとはな…逃げられたのは痛手だったな」
あの巨大魔鉱石を零鉱石にして、艦娘たちをどうにかしようとしている。…具体的な方法はまだ分からないけど、いよいよアイツの言ってた「世界の終わり」が現実味を帯びて来たな…っ!
「ユリウスさん、早くアイツを止めないと!」
「待ち給えタクト君、それだけの魔鉱石を変換させるには膨大な時間がかかる。だからこそドラウは君たちから隠れて、ある場所で計画の再調整をしている筈だ」
「ある場所って…ドラウニーアが何処に居るか分かるんですか?!」
「落ち着けタクト。今功を焦ってもヤツが何をして来るか分からん、ヤツの全てを知ってから行動しても遅くはない。…そうだな、ユリウス?」
「あぁ、天龍君の言う通りだ。不本意ではあるだろうがドラウニーアという人物が何なのか、全てを理解した方が後々こちらが有利になる場面が多いだろう」
そうは思わないけどなぁ……んー、いや確かに焦ってるかも。
「敵を知り己を知れば……急がば回れ……っよし! オチツイタ!!」
「…ホントに大丈夫かい?」
「司令官、いざとなれば私が何とかしますので」
「おぉ綾波が居てくれたら…ってちょっと、天龍から聞いてるけど改二の能力あんまり使っちゃ駄目なんでしょ、無理しないでね!」
「…司令官が私を頼ってくれません」
「いや、妥当な反応だと思うが?」
綾波があんまりにもしょんぼりした顔をするから、天龍が思わずツッコんだ。…ぁあ駄目だ、グダって来たかも。話を戻そう。
「…すいません、取り乱しました;」
「いや、仕方がない話だろう。…さて、艦娘を滅ぼす算段としてはそんなとこだ。更に具体的な情報を…と言いたいところだが、先に「艦娘を滅ぼした後」を仮定して話していこうか」
「それは「人類のほぼ全てを絶滅させる」方法ですか?」
「そうだ、と言ってもこの方法は明確な形を保っていない。何せあまりにも「荒唐無稽な話」だからな?」
「どういう意味ですか?」
僕がユリウスさんに問いかけると、それまで静かに話を聞いていた「彼女」が、スッと前に出ると衝撃の一言を発した。
「…ドラウニーアは、人類をある艦娘の手で終わらせようと画策してたの」
「えっ、それって…まさか…っ!?」
「そう、それこそが私がここに居る理由。彼はかつての最強の艦娘…「金剛」を人類の破壊神に仕立て上げようとしたの」
「…っ!?」
そう事実を告げた金剛…エリの顔には、虚しさが溢れていた。
○ゼロ号計画
この世界の法則…人が深海棲艦を恐れ、深海棲艦を艦娘が討ち、そんな艦娘に人は依存する。そのループの先には、深海棲艦に埋め尽くされ滅びゆく世界がある。
その法則を覆すため、艦娘をこの世界から滅ぼし、人類のほぼ全てを絶滅させる、そしてゼロとなった世界で幸福な楽園を創造する。
彼らはそんな理論も倫理もない滅茶苦茶な計画を立てた。首謀者であるドラウニーアは計画を二段階に分けた、先ず艦娘を「零鉱石(黒い霧の発生源)」を利用して全機能停止させ、その後人類を「ある方法」で破滅寸前に追い込む、ざっくりしているが「彼」は本気でこの計画を実行しようとした。
それでも余程の障害がなければ、彼の計画は成功するだろう。何せ彼は──
…いや、それでも拓人君という「余程の障害」が現れた以上、後の展開は「綱の引っ張り合い」だろう。
・・・
〇零鉱石
数ある魔鉱石の中でも悪意の込められたもの、というのはマナが負の感情に侵された時に変化する「マナの穢れ」を生成し、それを濃縮した「黒い霧」を排出する恐ろしいものだ。
海魔石との違いは、海魔石は人の欲望や負の感情を薪木として艦娘を狂わせる光を放つ。対して零鉱石は、艦娘もしくは人間の肉体に悪影響を及ぼす穢れそのものを生成する。
彼(ドラウニーア)が要塞地下でやってのけた離れ業は、負の感情の具現である黒い霧は海魔石にとっては文字通り「ご馳走」であり、海魔石の光の濃度を高めるには充分すぎるという証明になった。