艦これすとーりーず ―僕が異世界版艦これの提督になった件について―   作:謎のks

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 戻りました。あれから3ヶ月近くですか? 長いですねぇ。

 それはそうと、このお話整合性つけるため溜め込んでたんですけど…脅威の「4話編成」になりそうです、長いですねぇ。

 あと2話、確認出来次第投稿します。お待たせします〜。


追憶─ 風声鶴唳 ─ ②

 ──瑞鶴配備から一年後。

 

 あれから私たちは、激戦区となった戦場や高難易度の任務に駆り出されるようになった。

 というのも、瑞鶴が啖呵を切ったおかげで「年配指揮官」に目をつけられてしまい、何処から持って来るのか生半可ではないミッションばかりを私たちに押し付けるようになった。それまで鎮守府周囲の警戒やら輸送船護衛等を担当していた私からしたら、目まぐるしく世界が変わるような感覚だった。

 

「ごめん翔鶴姐、ワタシだけなら良かったんだけど…翔鶴姐を巻き込んじゃった…」

「全くよ。でも…これはこれで悪くないわね、私刺激に飢えてたのかも?」

「…っぷ! 何ソレ? あはは…!」

「うふふ…!」

 

 私に対し罪悪感を感じしきりに謝ってくる瑞鶴を茶化しながら、私たちは任務を全うしていった。

 

 ──そんなある日、転機が訪れた。

 

 提督室に呼び出された私たちは、提督から用件を伺っていた。

 

「お呼びですか、提督?」

「よぉ! カクカクコンビ、待ってたぜ?」

「か、かくかく…?」

「あはは、それを言うならカクカク姉妹じゃない?」

「ちょっ、瑞鶴! 提督に失礼よ、もう貴女はただでさえ目をつけられているんだから…」

「っうぐ!? ごめんなさい…」

 

 私に怒られた瑞鶴が素直に謝ると、提督はその光景を大いに喜んでいた。

 

「うんうん、翔鶴も大分砕けてきたな。瑞鶴が良い影響を与えたようで、結構けっこう!」

「て、提督…そんな…お恥ずかしいです」

「良いよ、これぐらいが丁度いいんだからさ。…さて、そんな仲睦まじい君たちに、折いって頼みがある」

「頼み…?」

 

 私と瑞鶴はお互いに目を合わせて驚きを表した。

 私たちと年配指揮官のいざこざは、提督なら耳に入れていてもおかしくない。やり過ぎだ、ぐらいの説教ならまだしも「頼み」とは?

 

「実は新しく部隊を新設しようと考えていてな? 南木鎮守府絡みだけでなく「全海域」の平穏を守るための任務に従事する、そんな手練れ揃いのな? 君たちには…是非その部隊に行ってほしい」

「…っ!?」

 

 何と、提督は私たちを精鋭部隊に入隊するよう促してきたのだ。

 彼曰く、この部隊には各主要鎮守府から集められた選りすぐりの艦娘たちを配備するようになっていて、連合総帥直々のお達しなのだそう。

 南木鎮守府にはかつての海魔大戦で活躍した歴戦の指揮官、艦娘が数多く在籍している。世界がまずまず平和になったとはいえ、まだ一部の海域では紛争も絶えないと聞く。秩序を守るには小さな異変を見張ることも大事だが、私たちのような「実力者」を腐らせるわけにもいかない──

 

 …と、提督は私たちに事の次第を聞かせてくれた。彼の言いたいことも尤もだ。だが…まだ分からない。

 

「それだけ? ホントにそれだけなの? 秩序とか平和を守るとかって「艦娘騎士団」の仕事じゃない? ウチらは海域の異変を解決することが主な仕事…じゃないの?」

 

 瑞鶴は私が言いたかったことをズバリ言ってくれた、普段なら厳しく言うところだが、私自身も気になるところなので見逃す。

 提督は…言われると分かっていた、そういう反応をする。頭を掻いてバツが悪いようにしていると、程なく訳を話してくれた。

 

「実はな…その件の艦娘騎士団、どうも「崩壊」したようなんだ」

「…えっ!?」

 

 完全に予想外の一言だった。

 艦娘騎士団…この世界に住む者なら一度は聞いたことはある、世界平和のため武力による紛争の根絶と秩序の維持を目的とした集団。かつての海魔大戦でも連合と共に海魔の大元を打倒した。

 その後は50年にも渡り世界中の戦争を止めるため活動を続けて来た。最近は提督の代替わりで活動が消極的…というより艦娘騎士自体が数少ないモノになって来たので、行動が制限されていたとか。

 確かに落ち目は見えていたのかもしれない、それでも…あの艦娘騎士団が「崩壊」とは?

 

「ほら、あそこの鎮守府は国として民を統治していたのは知ってるだろう? 詳しくは分からないが大多数の艦娘騎士が「一斉蜂起」したらしく、その際多くの民を「虐殺」していったようでな?」

「っな!?」

「…その話、本当なの?」

「間違いはないだろう、俺も半分信じてないが…最近は妙に向こうの活動が大人しいし、こちらから連絡を入れても反応はないからな。おそらく…そうなのだろう」

「そんな…それが本当なら一大事じゃないですか!?」

 

 私は慌てふためきながら大声を上げる、提督はその行動を「口に人差し指を持ってくる」動作で停止した。

 

「…言い忘れてたが、この事は極秘事項だ。お前たちには話すが…艦娘騎士団崩壊の事実は、無闇矢鱈に口外するなよ? それこそ一大事になる」

「は、はい…」

 

 提督の低く真剣な声色に、私は押し黙った。彼がこの声や、今のような鋭い眼差しをするときは…本当に「不味い事態になった」ということ。

 それでも提督は柔らかい笑みを浮かべると、私たちへの説明を続けた。

 

「だからだよ、本当にそうなら今まで荒事を一任していた連合にとっても痛手だ。混乱を招く前に艦娘騎士団に代わる組織を構成したい、そうしなければ良からぬ輩によって「世界秩序そのものが崩れる」可能性がある」

「な、成る程…」

「…で、その部隊員選定の中でお前たちの噂を聞いてな? ナベさんの無茶振りを文句一つ言わずに遂行したお前たちなら、この新設部隊の激務にも耐えられるだろう」

「…やっぱ知ってたんだ、あのヤローが「嫌がらせ」してること」

 

 瑞鶴の問いに頷く提督だったが、すぐに訂正を加えた。

 

「あんまりナベさんを恨まないでくれよ? 優秀であることは確かなんだが、ちょっと気難しいとこがあってな。俺も再三注意はしてるが…はは、まぁ本人も良かれと思ってやってるみたいだから、目を瞑ってやってくれ?」

「…ぶっちゃけさ、あの人が居なくても大丈夫なんじゃないの? そういうのばかり目立つ人が居たら艦隊の士気にも関わるだろうし、何より…翔鶴姐を乏しめたアイツを、アタシは簡単に認められそうにないよ」

「瑞鶴…」

「お前の言いたいことも解るよ、瑞鶴。俺だってそんなことやられたら悔しい、だが…ナベさんの作戦指揮能力や先を観る眼は確かなものだ。組織としては彼の能力を卑下出来ないんだ、俺も注意深く見ておくから…すまんが、理解してもらえないか?」

 

 提督の言葉に──不服そうに苦い顔をしているが──無言で頷いた瑞鶴。

 

「よし! じゃあ早速だか君たちに会わせたい娘が居るんだ、その娘も新設部隊に入る予定だから、顔合わせだな?」

「へぇ〜、どんなヒトなの?」

「隣の部屋で待たせてある、じゃあ行こうか? これから色々大変だが…お前たちなら必ずやり遂げると、俺は信じているぜ!」

「分かりました提督、必ず…貴方の期待に応えてみせます!」

「おぅ、期待してるぜ…翔鶴!」

「はいっ!」

 

 ──こうして、私たちは新設特務部隊に入隊することになった。

 その後、私たちの下に集まった艦娘は皆「適合体」であったことから、いつしか周りから「異能部隊」と呼ばれるようになっていった…。

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 ──更に一年後。

 

 私たち異能部隊は、結成から一年まで様々な高難易度の任務を遂行していき、今では南木鎮守府と連合の代表として、着実に新たな「楔」として機能するようになっていった。

 艦娘騎士のように各地の紛争を止める…などと言うわけにはいかないけど、海域中に点在する国は──私たち異能部隊の存在を懸念して──他国への侵略を踏み止まる程度には影響力が出て来た。まぁ…それでも内紛や反乱は流石にどうにもならないみたいね。

 少数精鋭で任務を速やかに行い、争いの火種を迅速に鎮静化する。あらゆる武器兵器を以ってしても彼女たちを止めることは不可能、彼女たちの「古の力」はそれだけで現代において、最も強大な力である──異能部隊とは私たちを「畏怖」することから呼ばれた皮肉でもあった。

 何故適合体ばかりの艦娘部隊を創ったのか、提督にそれとなく聞いてみたことがある。彼は──申し訳なさそうな苦笑いをして答えた。

 

「あの時は本当に緊急事態でさ、騎士団崩壊を公式に伝えるまでの短い期間に、彼女たちに成り代わるような精強な部隊結成を強いられてるようなものだからなぁ? だから…誰が見ても「あぁ、これは強い。強くない訳がない」って思わせる必要がある」

「…適合体は三大異種族の因子を宿した艦娘、それぞれ特殊な力を有する強力な兵器。確かにそれなら「誰が見ても強い」と思われますね?」

「そういうこと。秩序の均衡を保つためには、これが最適解だと思うよ? …まぁ、君たちを利用するみたいであんまり気が乗らないのも事実だけどな? はは…」

「提督…」

 

 提督の言葉に、私はそれだけで胸が熱くなった。

 彼は聡明な頭の持ち主で、今だって艦娘騎士団崩壊後の問題を解決せしめた。でも…それに加えて「人情味」に溢れたヒトでもあった。私たちはそんな提督を慕い、彼もまた私たちを頼りにしてくれる…彼と私たちはそんな間柄だ。

 

「ご心配ありません提督、私たちは貴方の部下であり兵器です。貴方のためなら…皆喜んで力を振るうでしょう」

「…ありがとな翔鶴、お前には本当に迷惑かける……俺にとってお前は──」

「…?」

 

 私の顔を見て何かを言いかけた提督だったが、直ぐに顔を背けて「何でもない」と言う。

 

「とにかく、これから忙しくなるだろうから。頑張ってくれよ!」

「お任せください!」

 

 提督の期待に応えたい一シンで、私は力強く回答した。

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 アサヤケ海域は複数の小島と、中心に据えられたようにある大きな島があるのだが、南木鎮守府はその島(本島)から少し離れた島に建てられた。

 天然の要塞とでも言うべきか、木々の生い茂る巨大な土壁が周囲を覆い、その中の湖の中心に築かれた大理石製の立派な建物…それが南木鎮守府。

 鎮守府への入り口は壁面正面に開けられた洞(ほら)しかなく、万が一敵襲があったとしても、一つの入り口に数人の艦娘が交代制で見張っているので対応でき、仮に空襲があっても、鎮守府付近に建てられた監視塔に備え付けられた機銃が対象をハチの巣にする。

 南木鎮守府はかつての「海魔大戦」時の主要戦線拠点の一つでもあったことから、その防衛力などは他の拠点より頭一つ抜けて強固なものだった。

 

 ──誰も南木鎮守府が「崩壊」するなんて、微塵にも思わなかった…。

 

 まぁ、この時は深海棲艦も現れてなくって、現れると予想されたのは精々艦娘や連合を快く思わない反乱分子の奇襲程度だったんだけど?

 …とにかく、この日も私たちは異能部隊の拠点である「南木鎮守府」へと任務からの帰投を果たしていた。

 

「たっだいまー!」

「瑞鶴ったら…そんな大声出さないの、子供みたいに思われるわよ?」

「なはは、ゴメンごめん~♪」

 

「──良いじゃないですか翔鶴、私たちにとって此処は「我が家」同然です。瑞鶴が子供のようなことは皆知ってますよ?」

 

 隣でニコニコと私たちに笑いかける女性がいた──異能部隊のヒトリで私たちと同じ「エルフ」の因子、特性を持つ艦娘「サラトガ」…通称シスター。

 異能部隊の主力空母であり、いつも笑顔を絶やさない──兵器としては異端な──慈愛に満ち溢れた人物だ。

 シスターは提督から異能部隊の結成を持ちかけられたあの日、隣の部屋で初めて顔を合わせた。提督の話では「イソロク」の肝煎りで再現された「ベイ艦娘」の一隻だとか? ベイとは遠い異国の地の名前と言われたけど…?

 

 …ん、そう。タクトも知っているのね? ……へぇ、ベイってそんなに凄い国なんだ、ちょっと信じられないけど…何故かしっくり来る自分がいるわ。

 

 話を戻すわ。…シスターは話の通り実力は高く、それでいて裏がなく穏やかで優しい性格だった。私も羨ましいぐらい…でも、この時の私は何処か彼女を訝しんでいたわ。

 兵器として任務に忠実にあるだけでなく不服や無理な話だと感じたら、直ぐに提督なり私たちなりに相談していた。皆を思いやるその姿がどこかニンゲン染みていて……提督は何も言わず意見を取り入れてくれるし、周りのニンゲンたちもただヒソヒソと嫌味を言うだけで実害があるわけじゃない。だからこそ余計に…彼女には何か「思惑」があるのではないか、そう勘繰る自分が居たわ。

 

「そ、そうよね。私ちょっと厳しすぎたかしら? あはは…」

「そうですねぇ。でも…サラはそれが貴女なりの優しさだとも思うから、気を悪くしたらごめんなさいね?」

「…っ」

 

 こんな風に、私のことを知ったような口を聞いて、謝りながらもそれとなく諭してくる。それが…私には何処か「間違いを質されている」ような気がして、嫌な気分になることもあった。

 勿論、彼女は良いヒトだったわ。悪いのは…私、私は彼女や瑞鶴のように自由に振る舞えない。それをしたら…私は兵器(ワタシ)で無くなるような、そんな被害妄想があったの。──怖かったんでしょうね? 自分に素直になることが。

 

「そうそう、翔鶴姐は私が心配なの! 口ではなんだかんだ言ってるけどね? シスター解ってるじゃん!」

「ウフフ、そうですか?」

「…はぁっ、全く。茶化してる暇があるなら、早く提督に報告に行きなさい?」

「えぇ〜っ!」

 

 そんな私たちが一緒のチームとしてやっていけたのは、合間に瑞鶴が入って緩衝剤になってくれたから。私は…そう思っている。

 

「──皆! 報告なんて後にしてスイーツ食べに行こ、私もう待ちきれないよぉ〜」

「ぴゃあ、酒匂もスイーツ食べるぅ。食堂のおばちゃんの限定ケーキ食べたぁい!」

 

 私たちの背後から呑気なことを言ってるのは、適合体の一種「ワービースト」の因子を持つ艦娘たち、金のおさげ髪と黒基調軍服を着た「プリンツ・オイゲン」と幼い顔立ちと意地らしく立つ頭の髪の毛、特徴的な語尾の「酒匂」。

 ワービーストの特徴として、頭の左右に「モデルとなった種族の耳」がある、たとえプリンツなら「モデル:キャット」であり、頭の上には三角の耳が生えている。酒匂は「モデル:ドッグ」で丁度人の耳のある位置に犬耳が垂れ下がっている。

 

「──あ、酒匂ちゃん。服にゴミがついてるよ。…はい、大丈夫です。ね♪」

 

 何処か緩やかな雰囲気を纏っているのは「ドワーフ」の因子を持つ適合体の艦娘「由良」。ドワーフは外見的特徴として「一部分の毛が長くなる」と言うけど…彼女の場合は髪の毛が異様な長さになり、それらを一纏めにしてポニーテールとして結いリボンで巻いている。手入れは大変だと本人も多少の愚痴を零していた。

 手先が器用で彼女が異能部隊に配属されてから、施設設備の補修を担当して助かっていると提督の談。ドワーフは物づくりの才能がある種であるため当然ではあるが。

 

「ありがと由良ちゃん! ねぇねぇ由良ちゃんもスイーツ欲しいよね?」

「え? んー、私はどっちでも。っあ! 私が報告に行くから皆で先にスイーツ食べて来なよ?」

「そんな、悪いわよ由良。行くなら私も一緒に行くわ!」

 

 私は由良の優しさに遠慮して、彼女と共に報告をしようとした──本当は、提督と二人きりになる彼女を邪魔する…そんな思惑もなかったわけでもないわ。私…こういう我の強い性格だと分かっているから、あまり自分を出したくないの。

 そんな私に柔らかい笑みを浮かべた由良は、遠慮しないで? そう言いながら静かに言葉を紡いだ。

 

「今回の任務は、翔鶴ちゃんたちの航空支援がなければ達成出来なかった。ううん…貴女と瑞鶴ちゃんにはいつも助けられてばかりで──だから、このぐらい私にやらせて? こんなことぐらいでしか…私は役に立てないから」

「由良…」

 

 由良は何処か自分の力に自信がないのか、相手を立てた上で自身の実力を卑下することが多々あった。でも…私たちこそ彼女に助けられていた。彼女の航空機メンテナンスがなかったら、私たちも全力を出せないのだから…。

 でも、当時の私は──内心はそれを理解していても──彼女の謙虚過ぎる態度に苛立ち、それを隠して笑顔を取り繕い、彼女の優しさを敢えて否定してみせる。

 

「由良、そんなこと言わないの。私たちは皆で一つの艦隊なんだから、貴女が居なければ私たちが困るもの」

「翔鶴姐の言う通りだよ、皆で一つのチームなんだから! 誰かが役立たずなんて…そんなことないんだよ、絶対に」

「翔鶴ちゃん、瑞鶴ちゃん…。うん、ごめんね? こんなこと言って」

 

 瑞鶴と一緒に諭したことで、由良は先ほどの言葉を謝罪する。それでも薄暗くなった空気はどうしようもなかったが──それを見かねたシスターは話を纏めた。

 

「ほら、だったら皆で報告行きましょう? その方が提督も私たちの無事を確認出来ますし、誰も不満は無いはずです。…良いですかユージン、酒匂? 後で一番美味しいスイーツを奢りますから♪」

「ぅえ!? ホント〜! やったやった〜〜♪」

「ぴゅ〜〜〜♪ サラちゃんやるぅ!」

 

 子供のようにはしゃぐプリンツと酒匂。彼女たち二人の我儘は今に始まったことではないが、話が拗れたら大抵シスターが上手く二人を言い聞かせて場を落ち着かせる。本当に…今だから言えるけど、彼女には何度も助けられたわ。

 

「話がひと段落したね、よし! じゃあ執務室まで競争〜ビリの人はスイーツ奢り! はいっスタート!」

「えぇ〜っ!? 聞いてないよぉ! 待ってよ瑞鶴〜!」

「ぴゃあ〜〜、酒匂負けないもんね〜!!」

 

 瑞鶴はプリンツと酒匂たちとよく絡んでいた。彼女たちと競争したり一緒になって話を盛り上げたり…瑞鶴なりに場を和ませようとしていたのかもしれない、彼女にとって異能部隊は…かけがえのない存在になっていったのかも…分からないけど。

 

「早いモノ勝ちだものね〜〜……お?」

「……ぅわ!?」

「ぴゃ!」

 

 瑞鶴は突然立ち止まり、後ろから追いかけていたプリンツと酒匂が瑞鶴の背中にぶつかった。プリンツが少し怒った様子で瑞鶴を問い詰めた。

 

「もう、どうして急に止まるの!」

「ご、ごめん。…あれ提督だと思って?」

 

 瑞鶴の指差す廊下の曲がり角──確かに提督の後ろ姿が。白の軍服に背丈の高いスラッとした印象なのでほぼ間違いない、問題は…彼が話している"人物"。

 どうやら立ち話をしていたようだが、相手の顔は丁度提督の身体に隠れて見えない。しかし服装は…軍服ではないのは明らかな「白衣」を身に纏っていたのが理解出来た。

 

「誰だろ、あんなヒト鎮守府に居たっけ?」

「ふぅん? …提督! 特務艦隊帰投しました!」

 

 私は遠くの曲がり角に居る彼に聞こえる声を張り上げた、すると提督はハッとした様子で私たちの方を振り返った。

 

「ぉお帰ったか、ご苦労さま! …分かった、じゃあ手筈はその通りに」

 

 提督は話し相手に何事かを告げると、相手はそのまま私たちの前から隠れるように廊下の角から消えた。

 私は気になって提督の下まで小走りで近づいてみた…しかし、私が廊下の角を見る頃には、謎の人物の姿は煙のように霧散していた。

 

「…提督? 今誰かとお話しされてましたか?」

「うん? あー、ちょっとお偉いさんとな。今度の作戦の打ち合わせだよ」

「はぁ…?」

「そんなことより…本当にお疲れ様! 確かボウレイ海域まで遠征だったよな? 遠いところまで悪かったな?」

「そんなことありませんよ。…っあ、提督。これから皆で食堂に行こうと思うんですけど、ご一緒にどうですか?」

「っえ、良いのか?! ぅお〜嬉しいなぁ、ありがとう! よぉし、なら皆の分を俺が奢るよ!」

「そ、そんな!? ご無理なさらないでください、提督」

「なんの、いつも頑張ってくれてる君の…っあいや、君たちのため、だからさ? 遠慮するなよ〜!」

 

 提督は私の背中を叩きながら豪快に笑った。

 私は彼のあどけない笑顔を見て──ココロが暖かくなっていくことを感じた。

 

「…っふふ、なら私にも払わせてください。ワリカンです♪」

「えぇ!? 良いのか? …ははっ、ごめんなぁ?」

「良いんです、好きでやらせてもらってますから」

「翔鶴姐〜〜?」

「あっ、今行くわ! …では参りましょう提督?」

「あぁ!」

 

 瑞鶴に呼ばれて並んで歩き始める私と提督、私は──この瞬間の満ち足りた気持ちを忘れたことはない。

 

 ──To be continued …

 




○異能部隊

 艦娘騎士団崩壊による無秩序を危惧した連合により、南木鎮守府を含めた「各主要鎮守府において優秀な能力を持つ艦娘」たちで新たに構成された部隊だ。
 彼女たちは全員「適合体」であり、異能部隊なる名前も適合体の脅威的な能力に対する嫌味であると思われる。
 とはいえ、今まで世界秩序のための楔であった騎士団の崩壊──という火急の事態に対応するためには、最初から一線を画した能力を保持する「適合体」で揃えるのが一番だった。彼らなりに考えた結果であるんだ…それならあの戦いの折に造られた適合体にも「意味はあった」…そう思いたいものだな?
 彼女たちの主な拠点はどうやら「南木鎮守府」に絞られたようだ、物語中の彼女たちも、南木鎮守府を我が家のように感じていたようだな? …本当に、何故ああなったのだろうな。あの場所は…"彼"は──
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