艦これすとーりーず ―僕が異世界版艦これの提督になった件について―   作:謎のks

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サラトガの証言──任務前夜

 僕たちはサラさんの案内で、彼女たちの拠点となっている「デイジー島」と呼ばれる無人島に足を運んだ。

 サラさんによればデイジー島より東に「南木鎮守府」があるらしく、南木鎮守府の異変を見張るのには丁度良い位置にあるそうだ。

 後ろを振り返った僕が見たのは黒い霧の立ち上る島。…確かにこの距離なら黒い霧の影響もないだろうが。

 

 まだ分からないことだらけなので、島への移動の道中に海面を滑りながら、僕はサラさんから情報を集めた。

 

「…サラさんは、鎮守府崩壊事件からデイジー島に?」

「はい、私と異能部隊の仲間たちが居ます」

「プリンツと酒匂…だね?」

「えぇ、この海域はあの黒い霧が発生してから、とても人の住める環境では無くなりました。幸いあの霧に近づきさえしなければ影響はない様ですが。それでも何があるか分からないので本島に住んでいたヒトたちは全員避難させましたが──」

 

 かつてアサヤケ海域と呼ばれた海は、絶望を体現したような黒の海域と化した。連合は海域の危険性を踏まえ名前を「クロギリ海域」と改めた。

 サラさんたちは事件後この海域に残って異変を見張るよう連合から頼まれたそうだ、艦娘は肉体構造が違うので少量のマナさえあれば生きていけるから…それでもマナの穢れ(黒霧)に包まれた南木鎮守府から数メートル離れたデイジー島に居なければ、穢れの影響を受けやすくなってしまうそうだが。

 

「本当は南木鎮守府の中を確認したいのですが…あんな状態では」

「成る程、連合が対策を考えるまで貴女たちは動くに動けなかった…ということでしょうか?」

「はい、連合とは今でも連絡を取り合っています。つい先日もカイト提督より先遣隊を派遣すると仰せ付かっていました」

「えっ、そうだったんですか。サラさんたちの事も伝えてくれたら良かったのに…また虱潰しかと思ってたから」

「カイト提督が「忙しくて言及することを忘れていた」…と、先遣隊の隊長に伝えてくれと仰っていたので、そういう事なのでしょう」

「そうですか、まぁあんなこと言いに行った後だったし…っあ、あの島ですか?」

「はい、あれが私たちの仮の拠点…「デイジー島」です」

 

 サラさんが視線を送る先に、この薄暗い風景に似つかわしくない「色取りどりの花」が浜辺に咲く島が見えた。

 …ん? 浜辺に二人ほどの人影が、近づいていくと金髪の美少女とアホ毛の少女が僕たちを出迎えてくれていることが分かった。

 

「ユージン、酒匂!」

「シスタ〜! …って、うぇ〜すごい大人数」

「ぴゃあ…」

 

 あれがプリンツと酒匂か、翔鶴から聞いていたけど…ケモノ耳、ホントに生えてるんだね? 二人のそれはここだけの話じゃなくって、現実でも「艦娘ケモノ化」なるジャンルがあるぐらい…ぁあ駄目だ! これ以上は話が逸れちゃう。

 とにかく話を進めよう、海岸に辿り着くと僕はプリンツたちとコンタクトを取る。

 

「こんにちは〜、僕は色崎拓人って言うんだ。君たちの味方だよ?」

「そ、そうなんだ。グーテンモルゲン…」

 

 ん、プリンツはキョロキョロと目を泳がせている。視線の先には「翔鶴」が居た──成る程、翔鶴の話から察するに「喧嘩別れ」したようなものだし、そりゃ気になるよね? 翔鶴もそれに気づいたのか目をわざとらしく逸らした。

 

「…翔鶴?」

「し、仕方がないじゃない。別に嫌いとかそういう話じゃ…ないんだけど…」

 

 言い淀む翔鶴と顔を俯くプリンツ、そしてそれを見守る僕たち。…辺りは重い空気に包まれる、どうしようもないよね…?

 

「…くんくん」

「…ん? 何??」

 

 と、酒匂が鼻を動かしながら僕に近づいて来た。

 

「──ぴゃ! 酒匂このヒトの匂い好きっ!」

 

 一言叫んだと思うや、酒匂はいきなり僕に抱きついて来た。

 

「おぅふ。」

「まぁ。酒匂がヒトの匂いを気に入るのは、余程貴方が善人である証ですね、うふふ♪」

 

 サラさんがまるで自分のことのように喜び、金剛たちはその光景にそれぞれの反応を示す。

 

「(金剛)ぅ…うん、まぁ…警戒が解けて良かッタ…ね?」

「(天龍)…くっつき過ぎじゃないか?」

「(綾波)むぅ・・・」

 

 金剛は怒って良いのか喜んでいいのかって感じだけど、天龍に綾波、明らかに嫌そうな顔だね。止めなさいヒト様の前で。

 

「…はぁ、ほら酒匂。タクトが困ってるわよ?」

「ぴゃ、ごめんなさいっ。それから…お帰り、翔鶴ちゃん!」

 

 翔鶴が声を掛けると、酒匂は満面の笑みで彼女の帰還を喜んだ。一瞬驚いたように固まる翔鶴だったが…?

 

「…ほら?」

 

 僕の方を見てどうすれば良いのか? と眼で訴えていたので、小声で催促する──

 

「──ただいま…!」

 

 そう彼女が答えた後、今度は僕から翔鶴に向かって「ハグ」をする酒匂。

 

「びゃ〜、久しぶりの翔鶴ちゃんの匂い〜♪」

「こ、こら。もう…」

 

 過去はどうあれ、仲睦まじい彼女たちの関係性は、まだ完全には壊れてはいないみたいだ。

 プリンツもサラさんも、二人の姿を見て顔を綻ばせるのだった…。

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 感動の再会をもっとさせてあげたいが、一先ずはこの状況を打破するため協力し合うことになった僕たち。

 早速彼女たちに連合の考えを伝えるべく、腰を据えて話せるよう彼女たちの寝床に案内された。正直…すごく…ボロい木小屋です…。

 

「すみません、私たちで一生懸命建てたのですが…何分急いでいたので、少し落ち着かないと思われますが」

「いや、それは…っえ、これサラさんたちが? す、すごい…!」

「うむ、これだけ基礎が出来ていれば多少ボロくとも雨風は凌げるだろう」

 

 僕も天龍も彼女たちの意外な器用さに驚いていた。見た目は森にある掘建て小屋なんだけど、暖を取るには十分だろう。

 

「異能部隊の時にも今と似たような長期滞在の任務があって、その時の経験が役立ちましたね♪」

「…そんなこともあったわね?」

 

 サラさんの言葉に、翔鶴は小声で誰に返すでもなく呟いた。

 雑談もそこそこに、僕たちは連合との作戦内容をサラさんたちと共有した。

 

「──というわけで、南木鎮守府に潜んでいる黒幕…ドラウニーアの包囲網を敷くため、先ずはこの海域の異変を調査しているんです」

「…そう、ですか」

 

 サラさんは平静を装っているが、何処か緊張の面持ちで内容を聞いていた。

 

「す、すごい…! やったねシスター! これで皆元どおりになる、提督や皆にも会えるよ!!」

「ぴゃ〜! 酒匂もそう思うー!!」

 

 プリンツと酒匂は「狂喜乱舞」といった具合に喜びを身体で表現する。バンザイ三唱したりシェイクしたり飛び跳ねたり、此方から見ても大袈裟とは思わないが、長い間…耐えて来たんだろうからね。

 

「まぁ暫くは僕たちだけで調査をする形になるけどね? 何日かしたら連合本隊と合流して、あの南木鎮守府へ突入するよ」

「リョーカイ! 私たちも手伝うよっ!」

「びゃ〜! 頑張るがんばるー!!」

 

 嬉しそうに身体を動かして答えるプリンツと酒匂、ここまで来た甲斐があったなぁ…ん、待てよ?

 

「ねぇ、そういえば君たちの提督さんって何処に──」

「──タクトさん、ちょっと」

「…? はい」

 

 僕が疑問を口にすると、見兼ねたサラさんが僕を小屋の外へ呼び出した。

 

「…ん? あのヒトなんだって??」

「ぴゃ? わっかんなぁい! そんなことより踊ろー!」

「おどろオドロー!」

「おいおい、あまり騒ぎすぎるなよ。全く…」

 

 元気が有り余っているプリンツと酒匂に、天龍は注意を呼びかけている。

 

「……──」

 

 そんな中翔鶴は外に出て行った僕らを、ジッと見つめていた…。

 

 

 

 

 

・・・・・

 

「どうかされたんですか?」

「タクトさん…貴方にはお伝えした方が良いかと思って」

 

 そう言うとサラさんは、今から「鎮守府崩壊事件」前後に何があったのか、聞かせる準備は出来ている…と僕に告げた。

 

「っ! 急ですね?」

「いいえ、調査が始まる前にこの海域の事件について私が知っていることを話しておいた方が都合が良いと考えました。カイト提督からも「知っていることは全て話してくれ」と言われていますし、何より…貴方に伝えたら、彼女のためにもなるかと思いまして」

「…翔鶴のことですね?」

 

 僕の問いに静かに頷くサラさん。

 

「私は彼女に取り返しのつかないことをしてしまった。でも…謝って許されるとは思えないし、謝って何もかも元どおりなら私もそうしています。それでも…言葉だけでは何も変わらないと思いますので」

「…そうですか、翔鶴のことは嫌いではないのですね?」

「とんでもないっ、悪いのは私なんです。私も本当は仲直りしたいです!」

 

 僕の回答に少しだけ強い口調で反発するサラさん、彼女の「想い」が垣間見えた瞬間だった。

 

「あはは、すみません。でも…翔鶴を嫌いにならないでくれて、ありがとうございます」

「…いいえ。すみません、少し取り乱しました」

「大丈夫ですよ。…じゃあ、鎮守府崩壊事件が起こる「任務前日」に何があったか、話して貰えますか?」

「はい、了解です」

 

 サラさんは姿勢を正すと、改めて彼女が見聞きした「あの日」の出来事を話してくれた──

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 ──鎮守府崩壊事件前、南木鎮守府作戦会議室にて

 

 私と瑞鶴は任務の前、提督に呼び出されて居ました。

 

「お呼びですか、提督?」

「提督さん、来たよ」

「すまんな二人とも、お前たち二人に真実ってヤツを話した方が良いと考えてな?」

 

 そう言った提督の隣には、翔鶴たちと縁のある「ナベシマ」さんが居たのが確認できた。

 

「…やっほ、オジサン」

「おぅ、聞いとるぞ異能部隊で大層な活躍をしとるそうじゃないか、ほほっ。これも私の教育の賜物だな!」

「(どの口で言ってんだ…)」

 

 ナベシマさんの物言いに明らかな不服の表情をする瑞鶴、流石に不味いので私はアイ・コンタクトでそれとなく諭した。

 

「(…分かってる)」

 

 瑞鶴は姿勢を正すと、提督の言葉に耳を傾けた。

 

「実は──」

 

 それは私たちが請け負った任務…シルシウム島偵察任務についてだった。

 

「…っ!? 艦娘騎士団崩壊の黒幕が…!」

「シルシウム島に潜伏してるかもって…!?」

「あぁ…この任務自体はとある筋から来た「連合総帥直々」の令なんだが、あの島にあるデカい機械設備は、何れ世界の脅威と成り得る兵器となる可能性がある。ヤツはそこで機械の調整を行っているはずだ、君たちには…ヤツの捕縛を改めてお願いしたい」

 

 何と、あの艦娘騎士団崩壊に関わったとされる人物が、シルシウム島にて良からぬことを画策しているとのことだった…!

 

「ヤツは神出鬼没なヤツでな、とある研究施設の研究員だったそうだが、連合の機密を持ち出して数人の同志と共に脱走して、世界の秩序を乱し回っているようなんだ、調べてみたら艦娘騎士団崩壊もその黒幕の仕業みたいなんだ」

「そ、そんな…っ!」

「…成る程、つまり世界の敵であるソイツを何としても捕まえよう…って腹積もりなんだ? でも…それならそうと、どうしてあの場で言ってくれなかったの?」

「それは…」

 

 瑞鶴の問いに言い淀んでいた提督を見て、ナベシマさんが口を開いた。

 

「彼奴の仲間を捉えて居場所を尋問しようとしたところ、仲間の研究員は尋問前日に次々と「不審な死」を遂げてのぉ、彼奴には超化学と呼ばれる力があるから、それを利用して裏切りを働いた仲間を容赦なく「殺して」いったのじゃろう」

「…っ!?」

「それがどうしたの?」

「つまりじゃ、彼奴はどこからか我々の情報を「嗅ぎつけておる」という事実があるんじゃ。おいそれと任務内容を全て話して見ろ、今度は君たちが彼奴の毒手にかかるだろう。あの場で大人数の前で言うのは得策ではないと考えた私は、提督殿に頼んで君たちの前では内容を語らなかった…ということじゃ」

 

 ナベシマさんは真剣な表情で私たちに事の重大さを話した。瑞鶴は…それを聞いて心底意外そうな顔をした。

 

「…アンタがアタシらを気遣うなんてね?」

「フンッ、確かに君たちには苦い思いをさせられた。だが…それ以上に君たちは我が鎮守府の大事な戦力だ、それを分からない私ではないわい」

 

 ナベシマさんは鼻を鳴らして、それでも立場を弁えた言葉を零した。

 

「…ふっ、何それ。まぁ良いわ…そういうことにしてあげる」

「おぉそうしろ、私個人としては君たちの所業を忘れた訳ではないがなっ、ガハハハッ!」

 

 瑞鶴とナベシマさんの関係は相変わらずだが…それでも少し場が和んだ気がした。私もその様子を見て何も言わずとも微笑んだ。

 

「この作戦会議室には防音設備が敷かれてある、万一のこともないだろうが…勘の鋭い君たちには、真実を話した方が都合が良いだろうと考えたんだ」

 

 提督の発言に、成る程と納得して頷く私と瑞鶴…しかし、まだ不明瞭な部分はある。

 

「ねぇ…本当にシルシウム島に黒幕が居るの? 話聞いてもやっぱり出来過ぎてるっていうか…」

 

 瑞鶴の言葉に同意を込めて頷く私。私たちの様子を提督も予期していたのか、事情を全て話した。

 

「それがな…その黒幕の仲間だって言ってる研究員を、ウチで保護してるんだよ」

「…っ! それって…いつだったか提督と話し込んでた白衣の…?」

「知ってたのか。まぁ何れバレるとは踏んでたが…ジッとしててくれと言っても中々聞いてくれないんだよ、あの人」

「提督殿は彼奴に先んじて、仲間の研究員から「主犯」の居所を聞きつけたそうな、私も半信半疑だったが…事前に偵察部隊を送ったところ「人影がある」と確かに報告を受けた」

 

 ナベシマさんもそう言ってその情報の信憑性の高さを伝えた。それでも…瑞鶴は全然納得した表情をしていない。

 

「いやおかしいでしょ、明らかに罠っぽいというか…絶対裏があるって」

「君ねぇ…私が直々に調べたというに、まだ疑うのかね?」

「いやオジサンだから疑ってんだけど、っていうかアンタが調べたんじゃなくてどうせ艦娘に丸投げしてたんでしょ!」

「な”っ!? 君は本当に口が減らない…!」

「まぁまぁ、二人とも落ち着けって! …確かに言いたいことも解る。だが…ヤツをここまで追い詰めた試しは今までない、例え罠だったとしても連合はアイツに関係する情報を欲している、我々としても世界秩序のため、渦中に飛び込んでみる必要はあると思った次第だ。さっきも言ったけど君たちの実力なら何が起きても対応出来ると、俺とナベさんは判断したワケだ」

 

 提督の言葉にナベシマさんは大きく頷いて同意を示す、私も同様に頷いて見せた。

 

 しかし──どういう訳か瑞鶴は未だに渋った表情を崩さないでいた。

 いつものように納得がいかないのか、と思い私はそっと瑞鶴の耳に囁く。

 

「瑞鶴…ここは提督の言う通りにしましょう。いざとなったら遠くから機械設備を観察して──」

 

 そう言った私の側を離れ、一歩前に出た瑞鶴ははっきりと疑問を口にした。

 

「提督さん…まだ私たちに隠してることはない?」

「…っ!」

「ず、瑞鶴…?」

 

 和やかなムードは一変し、剣呑な雰囲気が漂い始めた──

 

「…どういう意味だ?」

「瑞鶴、これ以上は…」

「分かってるよシスター、私が今どれだけ勝手を言ってるかなんて。でも…あの時の状況と同じなんだ、あの「灰色のヤツら」がいたあの時と。ヤツらは──」

 

 ()()()()──そう呼ばれてるんでしょ?

 

「…っ!?」

 

 深海棲艦…その言葉に本能的に恐怖した私は、ヒトリ鳥肌立つのを感じた。

 

「き、君…何処でそれを!?」

「連合のお偉いさんが話してるのを見たことあるんだ、私…偶然そういうの聞くことが多いんだよね。運が良かった…ってことかな?」

「な、何と…?!」

 

 ナベシマさんが驚きを隠せないのを余所に、瑞鶴は鋭い視線を絶やさず彼女なりの回答をぶつける。

 

「白状するとね、昔…ソイツらに私の元いた部隊が「全滅させられた」んだ。その時も偵察任務で…いきなり現れては私たちの部隊に攻撃を加えて…私一人を残して部隊は壊滅した」

「そ、そんな…っ!?」

 

 瑞鶴の過去を言葉だけで認知した、嘘のように聞こえるかもしれないけど、そこに在る彼女の「絶望」は確かだった。

 

「もし…それが貴方たちの追う黒幕の仕業だったとして、また同じことをして来ないとは限らないでしょ。貴方たちは…それを理解している筈、なのに…どうして何の対策もなしに行こうとするの?」

「…っ」

「あの怪物たちは生半可な実力は通じないんだ、それを踏まえて私たちを送り出すなんてどうかしてる、私たちはただの道具じゃないっ! …どうして、貴方なら……理解してくれると思ったのに…っ」

 

 彼女は目に涙を、顔に恐怖を浮かべて理性的な態度が崩れようとしていた。私は言葉で聞いただけですが、それだけ彼女にとってココロの傷になる出来事だったのか…彼女がここまで駆り立てられる姿を見ていると、そう思わざるを得ませんでした。

 だからといってこのままではいけない、そう思って私は瑞鶴に敢えて厳しい言葉を向けた。

 

「瑞鶴、いい加減にして下さい。提督も立場がおありなんです、貴女もそれは分かっている筈でしょう?」

「…分かってるから嫌なんだよ、これ以上…翔鶴姐たちが危険になることが…あの時みたいに私を置いて何処かへ行ってしまうことが…嫌…なんだよぉ」

「っ、瑞鶴…!」

 

 瑞鶴の暴走する感情は、翔鶴たちに対する「愛情」とそれを喪いかねない「恐怖」だった。それを知った私は…それ以上の言葉に詰まってしまう。

 

「──確かにお前の言う通り、その深海棲艦が出る可能性もあるし、黒幕がソイツらを裏で操っているかもしれないとも、連合上層部で噂されている」

 

「…っ」

 

 瑞鶴は淡々と事実を告げ始めた提督に、それ以上何も言わないでほしいという視線を送ったが、それでも…彼は止めようとしなかった。

 

「だからこそ君たちじゃないと頼めないんだ、黒幕は研究員として培った「超科学」の力で良からぬことを考えている。それが艦娘騎士団崩壊とシルシウムの機械設備、そして深海棲艦の予兆に表れている。…違うか?」

「っ、それは…」

「仮に今ここで黒幕を逃すようなら、世界の均衡がまた破られてしまう恐れがある。ここで捕まえなければ…今度こそどんな災厄があるか分からない。ここで出遅れては不味いんだ」

「だからって…罠かもしれないんだよ! 翔鶴姐はどうなってもいいの?!」

「罠であったとしてもっ。…聞こえは悪いが「君たちよりも世界秩序の維持が優先される」。犠牲になってくれとは言えないし、君たちがどうなるとは思えないが…もしそうなってしまっても、こちらから責任は…取れない…っ」

 

 提督の声を押し殺すような口の動きを見て、彼もまた本意ではない、仕方ないことだと私は理解した。

 普段なら私も提督も意見を言う場面ですが、私たちの立場は「兵器」であり、戦場で危険な事柄を一手に担うことは周知の事実であるのですが、人間のような人権…ましてやイノチの危険の可能性を考慮することは本来なら有り得ないのです。

 提督の様子から察するに、そういった立場の違いを上層部に突きつけられているのでしょう。聞けば世界の命運がかかっているのは明白でしたし、私も今更危険な任務だからと文句を言うつもりはありませんでした。しかし──

 

「…何それ? 私たちが危険に晒されても文句ないってこと…っ!? 信じらんない…っ!!」

 

 瑞鶴は悔しさと失望の感情を顔に湛えながら、床にズンズンと足音を響かせながら会議室から出て行ってしまったのです…。

 

「ず、瑞鶴!」

 

 私は瑞鶴を追いかけようとしました…その時、提督の顔を一瞥すると…彼は()()()()()()()()()()()()()()()()言葉を漏らしていた。

 

「ごめん……ごめん、な。…俺は……本当は君たちには……お前には──」

 

「……」

 

 机に向けて流れ落ちた涙、悔恨を口にする提督と…それを黙って見守るナベシマさん。

 彼の心情を読み取った私は、それでも瑞鶴の元へと走って行きました。

 

 ──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…思いもしなかったから。




 変なところで切ってゴメン、やたらと長いからさ〜。
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