艦これすとーりーず ―僕が異世界版艦これの提督になった件について― 作:謎のks
──この世界で何があったかは、分かってる?
…そう、海魔大戦。海魔は近年出没するようになった「深海棲艦」の前身と言われているわ。
海より現れたそれは、あらゆる術式を無効化し、当時の文明を破壊し、この世界の破滅をもたらそうとした…。
その中で現れたのは、大提督「イソロク」…そして、彼の直属の部下である「選ばれし艦娘」……全部で五人いた、そう言われているわ。
でも「もう一人」…私たちと一緒に戦った、更に私たちよりも「上」の存在がいたと言ったら…?
…強さ、なんて単純な比較では彼女の恐ろしさは言い表せない。彼女は……全てを"超えていた"。
軽くなろうと言葉で表現するなら──鬼神、あるいは修羅──
拳を一振り、空が震え。
拳を二振り、敵を薙ぎ。
拳を三振り、海が割れた。
そんな規格外の強さを見せつけたのが、かつての私の仲間…いえ、仲間扱いされるのもおこがましい、彼女の存在は「唯一つ」のモノ、ただ人類の味方だったというだけ。
それが、貴方たちが金剛と言っているモノ…しかし、彼女は先の大戦で命を落としている。
身に余る力を一身に受けた、そんなあの人を我々は「頼り過ぎた」…海魔との戦いの負荷は、確実に彼女を蝕み、そして遂に沈めさせた。
分かる? もう居ないのよ? 艦娘の建造方法が失われた以上、あの子が代替えとは考えにくい…。一体何が起こったのか、現状では分からない。
それでも、あちらには何ら敵意はないことはもう分かったわ。あの子が何モノなのか、それはこちらで調べておくわ。…貴方はすぐ側であの子の正体を見極めてちょうだい。
これは極秘事項よ、誰にも悟らせないように…いいわね?
・・・・・
「はぁ…」
僕は加賀さんとの会話を反芻していた。
金剛のこと…まさかそんなことになってたなんて…彼女、僕の目の前にいる金剛は一体…?
「ヘーイ皆さーん! ちゃんと付いてきてくださいネー?」
金剛は旗艦として艦隊を率いながら、元気よく皆に呼びかけていた。あの演習の翌日から、僕らは加賀さんから初めての任務を受け取り、海上を進んでいる…。ちなみに僕も参加している、転生の特典で水上を滑れるし、妖精さん曰く「大丈夫でしょう〜」とのこと。
彼女たちは陣形みたいな列にならず、それぞれが好きに動いていた。といっても、あの戦い方を見る辺り妖精さんの言う通り、あんまり型にはまったのはやらない方がいいと思う。ちゃんとついて来てるし、各々が警戒してるようにキョロキョロ見回してるし。
「彼女たちは、拓人さんにとっては、これ以上ない逸材では〜?」
「どうしてそう思うのさ?」
「だってぇ、拓人さんが陣頭指揮を執る姿なんて、想像出来ません〜!」
「悪かったな!」
悪態を吐く妖精さんに、僕はいつものようにツッコミを入れる。…ん? よく考えたら、妖精さんに聞けば金剛のことも…?
「やはりそうなりますよねぇ〜?」
「どうなの妖精さん? やっぱり金剛は…」
「拓人さん」
僕が不安を隠せないでいると、妖精さんは言い聞かせるように優しく問いかける。
「もしも彼女がニセモノだとしても…それは貴方にとって重要なことですか?」
「え…?」
「この世界は貴方の妄想を基に成り立っています、しかし、彼女たちにとってはこの世界は「現実」なんです。貴方が元いた世界で暮らしていたように…彼女たちもこの世界で、一生懸命に生きているんです」
「…!」
「人生長ければながいほど、色々なことがあります。それこそ艦娘は、ここでも傷つきながら、長い時を過ごして来ました…貴方は提督になりました、ここでの貴方の使命は、そんな彼女たちに寄り添い、彼女たちの傷を癒すこと…だと思うのですが?」
…そうか──
「…うん、どうせ向こうで僕の人生は終わっちゃったし、だったら僕は! 彼女たちのために出来ることをしたい!」
「うふふ〜! そう言ってくれると思ってましたぁ!」
そう、彼女が金剛じゃなくても関係ない。
僕の手を取ってくれたのは、あの金剛だ…だったら、僕は彼女を信じる!
「(………)」
──拓人さん…貴方は本当は………。
・・・・・
さて、僕たちが受け取った任務、その内容は。
──襲われた商船──
依頼主は、商船の船長の娘「アキ」。彼女によると、商船は比較的安全な航路であるこのハジマリ海域で、とある海域に向けて舵を切っていたところ、運悪く深海棲艦の群勢に遭遇、そのまま包囲され立ち往生…船長は彼女だけボートで逃し、彼女は助けを求めて僕たちに依頼をした…と言っても、僕らは鎮守府連合を通した依頼を受けただけだが。
「貴方たちの練度なら、まず大丈夫でしょう。場所はこの鎮守府から少し行ったポイント、今日受諾されたばかりの任務ですが、商船の乗員にもしものことがあれば事です、早急な対処を望みます」
「分かりました!」
「よし…では、各員は準備出来次第に抜錨、任務を遂行してください…」
「あ、あの…お父さんを、よろしくお願いします!」
僕らに頭を下げて、父の無事を願うのは依頼者のアキちゃん。幼い子供だが言葉はたどたどしくなく、しっかりした印象…しかしながら僕は思うのです。
「この声は…CVは門〇さんか、それとも生〇目さんか…それが問題だ!!」
「拓人さん…;」
オタク心をくすぐる大天使ハイトーンロリヴォイスに癒されながら、僕らは一路、商船が襲われたポイントへ向かう…果たして彼らは無事なのか…?
・・・・・
「それにしても、今回の任務って…」
今回受諾された任務は、原作(RPGの方ね?)ではもっとお話しが進んだ後に発生するイベント、しかも海域が違う。どうなってるんだ? これも妖精さんが言っていた「魔改造」だと言うなら話も分かるが。
「うふふ〜! メタ知識はそうそう通じませんよう〜?」
「だから性格悪いって…?」
「おい」
艦隊の最後尾にいた僕に、声をかけて来たのは天龍。
「な、何…?」
「…この後、どうなるんだ? お前は分かっているのだろう?」
天龍は小声で僕に問いかけた。幸い他のメンバーには聞こえていないようだった。
「な、何のことカナ…?」
「先程からのそいつ(妖精さん)との会話…どうも下世話な話とは違うようだ、お前が何者かは聞かんが、この先の展開が分かっているなら教えろ」
「…耳、いいんだね?」
「フン、戦場では情報が命運を左右する、職業病だ」
…うーん、別に隠すことでもないし…でも、あんまり公表しちゃいけないような…?
「いいのではないでしょうか〜? 天龍さんは元傭兵さんということで、お口は固いかと〜?」
「…そうだね? じゃあ天龍…さん?」
「天龍でいい、提督にさん付けで呼ばれるのは慣れん」
「そっか…じゃあ」
耳を近づけるように促すと、僕は天龍の耳元で、僕の素性を明かした。
「…ふむ、舌の動きに違和感はない。声も淀みなく、目も泳いでいない…嘘ではないか」
「そ、そこまで見るの…?」
「言っただろ、職業病だ。…なるほど、ではお前にとってここは「架空」の世界か?」
「い、いやそんな短絡的には見てないよ?」
「そうか、何よりだ。…しかし、だとしても不可解だな?」
天龍は僕の肩に乗ってる妖精さんを睨みつける。
「…お前はなぜコイツに全てを伝えない?」
「あら〜? 全部教えてしまったら、面白くありませ〜ん? 彼はこの世界で生きたいと言った以上は、私はそれを見守るだけです〜」
「どうだかな? この世に慈善などない。俺には…目的があるから「泳がせている」…ように見えるが?」
「! ま、待って天龍! 妖精さんは」
「いや、そうは言ったがここから先はお前の問題、お前がソレを信じるというなら、俺に異存はない。お前が自分を守ってほしい、というなら話は別だが?」
肩を竦めながら、天龍は鼻で笑いそれ以上追及しようとしなかった。
「…そっか、ありがとう、信じてくれて?」
「フン…それで、ここからどうなるんだ?」
「そうだね…まず商船を襲っている深海棲艦と戦うことになると思う」
「それは理解している」
「うん、敵の種類は…僕の考えが正しいなら、敵旗艦は「ヲ級」だと思う」
「ヲ級…正規空母クラスか、厄介だな」
「この海域でのイベントの一つに「ハジマリ海域の支配者たち」ってあるんだけど…その敵艦隊の旗艦がヲ級なんだ。まぁ魔改造されちゃってるから、姫クラスが出る可能性もあるけど…」
「そこまで根性腐ってないので、大丈夫ですよ〜?」
「フン、神の言葉ほど信用出来んものはない」
「あはは…気持ちは分かるけど?」
「てへぇ〜?」
「…なるほど、了解した。では対空警戒を強化しよう」
「天龍たちには、そういうの必要ないんじゃ?」
「確かに、俺は非常時でも刀で薙ぎ払うのも造作ない、しかし警戒に越したことはない。敵は常に自分の予想を上回るものだ」
…なんだろう、フラグにしか聞こえない;
「…考えても仕方ないか! よし、行こう!」
「うむ、だがお前はあまり前に出るなよ?」
「わ、分かった! …あはは、こうして話してると僕の知ってる天龍みたいだなぁ」
「…む、その向こうの俺とは、どのような輩なのだ?」
「え? えーっと………フフ怖?」
「…フフ怖」
天龍はそれ以降何も問いかけず、ただ「フフ怖…」と繰り返し呟くだけであった…何はともあれ、次はいよいよ深海棲艦との艦隊戦、ここでの戦いも加味して、楽しみだなぁ!
「………(妖精さんは静かに艦隊を見つめている)」