艦これすとーりーず ―僕が異世界版艦これの提督になった件について―   作:謎のks

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 投稿は5月と言ったな…アレは嘘だ。


抗う者たち、死中にて希望を探る

「──チャージ完了、フルバーストっ!!」

 

 幼さの中にある覚悟を感じるような、鋭くそして勇ましい声。

 その一声が響いた瞬間──閃光が邪龍の左から右頬を貫通していく。

 

 ──それは正に、闇に灯る希望の光であった。

 

『Shrrraaaーーーッ!!?』

 

 ヒュドラの長い胴体を捉え貫いたそれは、暗闇の中敵味方を確りと照らすと、そのまま消えていった。

 その光は人間の等身大サイズの「大砲」から伸びていた、小気味良い音を発すると徐々に形を変えていき、腕輪となり「拓人」の右腕に収まった。

 

「天龍たちを…やらせないぞ!」

 

 拓人、翔鶴、酒匂、由良の4名は天龍たちの窮地に馳せ参じた。

 

『Shrrraaaーーー!!』

 

 胴体にダメージがあったが、ものともせずに牙を剥くヒュドラ。拓人の方に向けて攻撃を仕掛けようとする、すると──闇の中から飛び出す複数の飛翔体が現れ、灯籠弾の灯りで照らされる。

 

「──魔導弾、投下!」

 

 その言葉と同時に、編隊を組んだ小さな艦載機群がヒュドラ頭上を通過、そのまま爆弾の雨を降らす、ヒュドラに着弾したのは「冷気魔導弾」である、邪龍の燃え盛る身体を消火し凍らせていく。

 

『…ッ!? Shrr…raaa……ッ!』

 

 邪龍の身体に無数の「霜」が確認される、ヒュドラは氷漬けにされ動かなくなってしまった。

 

「ぴゃあ! 流石翔鶴ちゃん!」

「えぇ、でもあの程度ではまた動き出すでしょうね。それまでに天龍たちを助け出しましょう」

 

 酒匂の言葉に翔鶴は状況を冷静に分析し、それに向けての行動を促す──が、言うまでもないと言わんばかりに翔鶴たちの前を走り抜ける人物が。

 

「天龍、大丈夫!?」

「た、タクト…」

 

 拓人は天龍に近づくと心配の声を上げる、見ると天龍は身体も、服装も、艤装までボロボロになっていた。特に左腕は見るも痛々しい姿だった。

 

「天龍…そんな、嘘でしょ!?」

 

 驚天動地の表情で目の前の事実に狼狽する拓人。

 改二改装済みの天龍と綾波、その二人をしてもここまで追い詰められるとは…最後の機獣は侮れない強さだと、拓人は警戒を新たにした。

 

「済まない…みっともない姿を見せてしまった…っ、カイニであるというのに、お前の期待に応えることは、叶わなかった」

「っ、天龍…そんなことないよ、君は十分すぎるぐらいに力を示した。だから…お疲れさま、後はゆっくり休んで?」

「あぁ…っ──」

 

 拓人の顔を見て安心したのか、天龍はそのまま拓人の肩に倒れ込んで意識を手放した。

 

「天龍…」

「タクト、天龍を借りるわ」

 

 そう言って拓人から天龍の身を起こしたのは翔鶴だった。

 翔鶴は天龍の額に手を当てると、瞳を閉じて集中する──。

 

「…酷いわね、身体に神経毒が回っているわ。艦娘だから死ぬことはないでしょうけど」

「…治りそう?」

 

 拓人はそう言って翔鶴の「治癒能力」を頼るも…首を横に振る翔鶴。

 

「この左腕の傷は何とか…でも毒は自然に抜け落ちるのを待つしかないわね? あくまで私の回復魔法は外傷や内部の骨の治癒するの、毒系統は薬じゃないと治らないわ」

「そうか…とりあえず左腕の火傷だけでも治してあげて、こうなったらこの場を離れるしかなさそうだ」

「分かったわ」

 

 そう言うと、翔鶴は天龍に向けて再び手を当てると、その手に淡い光を放ち始める。

 

「司令官…」

「っ! 綾波も無事だったんだね?」

 

 拓人は綾波の五体満足の姿を確認して喜ぶも、綾波は暗い表情で頷く。

 

「申し訳ありません…レ級との戦いの途中、私が不覚を取ってしまい…天龍さんは今まで私を庇って戦って下さっていたのです。不徳をお詫びいたします…っ」

「そう…大変だったね。でも謝らないで? 君も天龍もどうしようもない状況だったんだろうし」

 

 拓人はそう言ってヒュドラを見やる…巨大な氷像と化した邪龍であったが、ここで拓人はある異変に気づく。

 

 ──パキッ、パキッ!

 

「…っ!?」

 

 そこには凍った場所が次々とひび割れていき、今にも動き出しそうな邪龍。予測よりも早い「再起動」に、拓人は差し迫る危険を感じた。

 

「ヤバっ、早く逃げないと!」

「…治療完了よ。簡易的なものだから多少の傷は残っているけど、時間がないでしょう?」

 

 翔鶴の肩に担がれた天龍の左腕は()()元通りの肌色を取り戻していた。それを確認した拓人は満足して頷いた。

 

「よし、すぐここを離れよう。綾波もそれでいい?」

「司令官お待ちを! あのヒュドラの近くに「ドラウニーア」が!」

「え…!?」

 

 その場を離れようとした一同だが、突然の綾波の言葉に戸惑いを隠せずにいた、その隙を突き──

 

『(パリィン!)Shrrraaaーーー!!』

 

 獄炎を身体から噴き上げ、狂える邪龍が動き始めた…!

 

「くっ…!」

「ぴゃ…どうしよう」

「参ったわね…アレをどうにかしないと逃げられないわ」

『…ッ』

 

 拓人たちは苦い顔で邪龍を見上げていると、綾波の言う通りに空間に声が響いた。

 

「…特異点、来たか」

『…ッ! この声ハ…!!』

 

 声に反応した由良は、怒りを抑えながらも周りを冷静に見回した。

 

「ドラウニーア…やっぱりこの中に隠れていたのか。まさかこんな近くから盗み見てるとは思わなかったけど!」

 

 仇敵の存在を感じ、拓人は皮肉混じりに言ってのける。闇の中の声はそれでも拓人の心を乱すように囁く。

 

「ここまで来るのは予想外だったが…()()()()()を考えれば、それも止む無しか? 運命(さだめ)を賭けた戦いは…既に始まっている、か?」

「またそうやって全部知った風な口して…いい加減にしろ、お前に構ってる暇はない。今は引かなきゃだけど、準備を整えたら必ず捕まえてやる。お前の野望は絶対に止めてみせる、もう逃げ道は…ないんだ!」

「フハハ…馬鹿が、私がお前たちを易々と見逃すものか。必ずここで始末する…邪龍ヒュドラよ! 邪魔モノドモを焼き尽くせ!!」

 

『Shrrraaaーーー!!』

 

 ドラウニーアが叫ぶと同時に、邪龍の眼が紅く光る。次の瞬間──邪龍は全てを灰塵と化す豪炎を吐く。

 

「…はっ!?」

 

 邪龍ヒュドラの口から吐き出される豪炎は、一同の視界を一瞬で紅色に埋め尽くす。肌が灼けるような熱さが熱風となり感じ取れた。

 ドラウニーアという討つべき脅威に意識が逸れたか、ヒュドラの不意打ちを許し、息吐く暇も無く拓人たちは焼き消されようとしていた。

 

「うわぁ…っ!?」

 

「…っ! 司令官は…私が守ります!!」

 

 拓人が思わず身を固めた瞬間──拓人たちの周りには「透明の膜」が張られていた。

 

「綾波っ!?」

「……くっ!」

 

 綾波のバリアーによって不意打ちは防がれるも、炎が途切れバリアーが消えたと同時に、綾波も膝を突いてしまう。

 

「無茶しちゃ駄目だよ! どんなデメリットがあるかも分からないのに…!」

「申し訳…つぅっ!!」

「タクト、今は話している時間はない。この場を離れないと不味いわ!」

 

 翔鶴の言葉も尤もだが、拓人は頭を悩ませていた。

 目前には仇敵とヒュドラ、自陣は天龍が負傷し綾波も満足に戦えない、二人を連れて行かなくてはならない上、酒匂も無事に帰さなくてはならない。

 まともに戦えるはずはなかった。しかしこの場を逃げ切れるかも怪しい──絶体絶命であった。

 

「くそっ、どうすれば…っ!?」

 

『──…』

 

 拓人たちが苦心していると、槌を構えて邪龍へと静かに歩み寄る影が。

 

「っ! 由良、何してるの早く逃げないと!!」

 

 翔鶴の言葉に由良は顔を向け振り返る──そこには「決死の覚悟」を湛えた、硬くそして揺るぎない決意の表情があった。

 

『翔鶴チャン、私ハここで皆が逃げる時間を稼グ。その間ニ皆ヲ』

「いきなり何言い出すの!? そんなこと」

『翔鶴チャン』

 

 翔鶴の名を呼ぶ由良は、少しの間を置いて頬を緩ませて笑っていた。

 

『ごめんネ…でも、あの男がこんな近くまで来てることハ、今まで一度もなかッタ。だから…今が復讐の機会ナンダ、翔鶴チャンたちは酒匂チャンたちを送ってあげて…ネ?』

「由良…またそうやって自分だけで解決しようとして! 皆で仇を討とうって約束したばかりでしょう!?」

『デモ…もし翔鶴チャンたちに何かあれバ、私は…提督や皆に顔向け出来ない』

「…っ!」

 

 由良の言葉に思わず二の言葉が出ない翔鶴、由良は宥めるように続けた。

 

『ソレに、酒匂チャンに何かあってからジャ取り返しがつかナイ、そう思うカラ翔鶴チャンも酒匂チャンを守らないといけない…そう思ッタ、デショ?』

「それは…」

 

 翔鶴が言葉に詰まっていると、今度は突き放すような言葉を投げる由良。

 

『大丈夫、私はモウ「死んでいる」も同じ。だから…悲しまなイデ? 仲間を逃がすためナラ、守るためナラ…私はどうなっても構わナイ』

「由良…っ、馬鹿なこと言わないで! 瑞鶴だけじゃなくて貴女まで…そんなことしたら、許さないから!!」

 

 由良は自身を犠牲にしてでも翔鶴たちを逃がそうとしているようだ、翔鶴は──過去のことも相まって──涙ながらに由良を止めようと叫ぶ、しかして彼女たちの間に建てられた壁──由良自身の罪という名の壁は、翔鶴の思いを遮った。

 勝ち目があるとは思えない。このままでは由良が犠牲となってしまう…それだけは避けなければならない。

 

「(…こうなったら)」

 

 拓人は右手を前に掲げると、透明の光る板が現れる。

 

 

 ──「A・B・E」、承認しますか?/残り一回

 

 

 この絶望的な状況を変えるため、拓人は過去の選択を「やり直す」ことを考えた…しかし。

 

「………」

 

 拓人の承認の意志を示す指が止まる、頭の中で黒幕の発した「ある言葉」が引っ掛かり押すに押せなかった。

 

 

「──ここまで来るのは予想外だったが…()()()()()を考えれば、それも止む無しか?」

 

 

「(まさか…アイツは僕の「A・B・E」と()()()()()()()()()()()()?)」

 

 あの「観測者」が言うには、"A・B・E"とは時間の流れの影響で歪んでしまった運命を、自身の思うように修正出来る力。つまり現在を「改竄」することが可能であるのだが、使用制限が三回までしかなく、その上でこれまで力を「二回」使って来た拓人。

 この力を全て使い果たしてしまえば、特異点としての能力が無くなってしまうというのだ。命の保証が出来ない戦場を、ただの「ニンゲン」として生き抜かなければならない。

 それだけならまだ良いが、拓人と同じく異質な存在であるドラウニーアは──先ほどの発言から察するに──拓人と「同じ、又は似たような」能力を持っていることは明白だ、でなければ妖精さんが散々言って来た「ドラウニーアに都合の良い展開」を避けて来たことにも納得がいく。

 

「(まだドラウニーアとの戦いは終わっていない、仮にこの場をやり直して切り抜けたとしても…その先でヤツの「因果律操作」めいた力がある以上、同じ結果じゃないか?)」

 

 それはまだ予測の範囲を出なかったが、この場にドラウニーアが隠れ潜んでいる以上、油断は出来なかった。しかしてそれもまた由良の窮地を…()()()()、とも言えなくもなかった。

 

「(僕は…由良を、助けたい。でも……で、も……っ!)」

 

 もしも自分が特異点で無くなったら…ドラウニーアの異能により、由良だけでなく、翔鶴や金剛たちにまで危険が及ぶかもしれない。そうなれば…どれだけ残酷な結果が待っていてもおかしくない。

 ゾっと背中を悪寒が走る感覚に襲われ、拓人は土壇場で「A・B・E」承認を取り止める。

 

「…ごめん、由良…っ」

 

 目を強く瞑り歯を食いしばり、震える手をそっと離すと──「A・B・E 承認画面」は、光と共に消えた。

 

「(…でも、由良のイノチには代えられない。状況を見極めて…本当に危なくなったら)」

 

 そう頭で考え、拓人は自身に整合性をつけた。不甲斐ないクズ野郎だと自身の行動を罵りながら。

 拓人が歯痒い思いでいると、彼の横から声を上げるモノが居た。

 

「──酒匂が、二人を送るよ!」

 

「…っ!?」

「酒匂っ!」

『酒匂チャン…?』

 

 酒匂の急な意思表示に、拓人たちは三者三様に驚いた。

 

「酒匂のせいで天龍ちゃんたちこうなったんだから、酒匂が二人を守りながら外に連れてくよ!!」

「何を言っているの!? そんな危ないこと」

「それにっ、酒匂…あの時瑞鶴ちゃんが居なくなっちゃった時みたいに、由良ちゃんに行ってほしくない、犠牲になってほしくない!!」

『酒匂チャン…』

 

 翔鶴の反対の言葉を押し切り、酒匂は自分の「やるべきこと」を語った。あの時の悲劇を繰り返したくないと、自分の意志で。

 

「だから、翔鶴ちゃんたちはここであの化け物蛇をやっつけて! 翔鶴ちゃんたちが力を合わせたら…勝てるよ!」

「酒匂…」

「…分かったよ酒匂、二人をお願い出来る?」

「っ! 拓人!?」

 

 拓人は酒匂の意見を受け入れ、天龍たちを酒匂に託そうとする。

 当然翔鶴の反発の声が上がる、勿論拓人も酒匂に一任するのは抵抗があった。しかし──もしこの場で全員が残って戦っても、どうなるか分からない…最悪「一人沈む可能性」がある、それだけ切羽詰まっていた。

 

「翔鶴、もし皆を全員無事で済ませたいなら…僕らでヒュドラを止めている間に、酒匂に外から助けを呼んでもらうのが一番じゃないかな? じゃないと…本当にどうなるか分からない」

「…っ」

 

 仮に酒匂たちを外に出すことに成功したら、金剛たちに救援を頼むことも出来る。酒匂からガスマスクを一つ受け取るしか出来ないが、金剛が戦力に加わるならば、ヒュドラを倒しつつ脱出出来るやもしれない。

 そもそも──先ほどからこの南木鎮守府の中で通信を行おうと試みるも、繋がることはなかった。原因は分からないがどのみち外に出て救助を頼む他なかった。

 拓人の言葉に翔鶴は…悔しそうに俯くと重く頷いた。

 

「大丈夫だよ翔鶴ちゃん、必ず二人を送り届けて来る。翔鶴ちゃんを…二度も悲しませることはしない!」

「酒匂…!」

『…酒匂チャン、大人になったネ?』

 

 由良の言葉に、ガスマスクの裏で屈託なく笑う酒匂。

 こうして酒匂は手負いの天龍と綾波を送り届けるため行動する、肩に天龍を担ぎ綾波は体の痛みが治まるまで手を繋いで先導する。

 

「綾波ちゃん、動ける?」

「はい。酒匂さん…申し訳ありません。少し時間を置けば私も動けると思うので、それまでは…」

「びゃ、無理しないで綾波ちゃん。酒匂が絶対に送ってみせるから!」

「…ふふっ、頼もしいですね?」

 

 酒匂の言葉に、綾波は笑顔を返した。言葉少なではあるが綾波は酒匂の気概を信頼していた。

 

「酒匂…気を付けてね?」

「うん! 翔鶴ちゃんも…今度こそ、皆で生き延びようね!」

「…ええ!」

 

 翔鶴と話し終えた酒匂は、そのままゆっくりとその場を後にしようとする──しかし。

 

『Shrrraaaーーーッ!!』

 

 邪龍ヒュドラはまたしても獄炎を吐こうと口を大きく開く、このまま見逃せば酒匂たちが消し炭になるが──

 

「──やらせないっ、攻撃隊発艦!!」

 

 それを予期していた翔鶴は素早く弓を構えて矢を番える、矢が放たれると小さな艦載機群が編隊を組む。機銃掃射で邪龍の注意を逸らした。

 

『Shrrraaaーーーッ!?』

 

「酒匂っ!」

「うん!」

 

 翔鶴が時間を稼いでいる間に、酒匂たちは戦場からの離脱に成功した。

 

「…よし、何とかなったね?」

「大丈夫かしら…?」

「きっと大丈夫だよ、出口もすぐだろうし」

「でも、さっきみたいに深海棲艦に襲われないか、心配で…」

 

 翔鶴は酒匂の身を案じるも、背を向けて後方へ下がりながら歩み寄る由良は、問題は無いと言う。

 

『今の酒匂チャン、普段よりしっかりしてるカラ心配ないヨ。翔鶴チャンに無理させないヨウ頑張っているんダヨ、キット』

「…そっか、駄目ね私。酒匂に要らない不安感じさせて、強くならないと…私も」

「大丈夫、君は十分強くなってるよ。酒匂もそれは理解してるさ?」

 

 拓人の言葉に、翔鶴はマスク越しに微笑んで「ありがとう」と感謝を告げた。

 

「さて…」

 

『Shrrraaaーーーッ!!』

 

 拓人たちは各々身構えると、目前の獄炎邪龍を睨んだ。

 

「酒匂のためにも…倒す気でいかないとね!」

「えぇ、必ず倒すわ…そしてドラウニーアを捉えてみせる」

『…ウン、絶対に負けナイ』

 

 拓人たちはそれぞれ武器を構えて臨戦態勢、対する邪龍も巨大な牙を見せつけながら拓人たちを威嚇する。

 これが最後の戦いのつもりで、全力を出し切ると胸に誓いながら──火蓋は切って落とされる。

 

「…不味いな」

 

 だが、影に潜む者は邪智を駆使して、その行手を阻もうとしていた。

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 ──その頃、長門はレ級たちと交戦していた。

 

『ギキャア!』

 

 黒鎌を何度も振り下ろしては長門の首を狙うレ級、しかし長門の「鉱石装甲」の前に全て弾かれていた。

 

「埒が明かないな…これは」

 

 そう言って長門は、レ級から距離を取ると両腕から鉱石を生やす、そして──

 

「…フンッ!」

 

 右腕を正拳突きの要領で突き出すと、腕の鉱石は勢いついて辺りに飛散する、宛ら「三式弾」のようだ。レ級は意表を突かれて鉱石散弾が身体を貫いていた。

 

『ギィ!?』

 

 身軽さに救われたか、致命傷は外れるように避けていた。長門もそれを予期してか今度は左腕で散弾を放つ。

 

『ギャ!』

 

 同じ手は食うまいと、レ級は大鎌を振り回して散弾を防御する。そこまでの威力もないのか散弾は弾かれるとあっさりと水面に落ちていった。

 

 ──ズンッ!!

 

『…ッ!?』

 

 その束の間──長門の発射した「徹甲弾」がレ級を捉えた、しかし…レ級は寸でのところでそれを躱す、頬を掠めていく徹甲弾は枯れ木に着弾すると轟音と共に爆発した。

 

『ギィ…!』

「隙を見せるな、お前が姫級のような厄介な存在であることは先刻承知している。どのような手段を用いても…貴様はここで沈める、覚悟してもらうぞ…悪く思え」

 

 冷たい顔で鋭い眼光を形作ると、レ級を捉え睨みつける長門。レ級も負けじと眼孔から目玉をギョロリと剥き出すと威嚇する。

 

『ギィルルル…!』

 

『──……』

 

 その動向を遠くから見守る一角の魔人である「港湾棲姫」は、長門に向けて攻撃しようと片手を突き出して構える、おそらくは深海航空隊を発艦させるのだろう…しかし。

 

 

 

 

 

 ── オ イ カ ケ ロ ──

 

 

 

 

 

『…ッ!』

 

「…む?」

 

 虚ろな眼に紅い光が宿ると、そのまま長門たちに背を向けて何処かへ向かおうとしていた。港湾棲姫の異変に気付いた長門だったが…?

 

『ギェアアア!!!』

 

 レ級に行く手を阻まれる、どこへも行かせないと威嚇するレ級と、彼女の後ろで怪しい動きをする港湾棲姫。何かがおかしい…このまま行かせるのは不味い。

 

「くっ…ならば!」

 

 長門は即座に右腕を構えると鉱石を生やす、そして闇に紛れて消えようとする港湾棲姫に向けて放つ──

 

 

『……ァ…ッ!?』

 

 

 何かの呻き声が響くが、最早黒霧が視界を遮り何も見えなくなってしまった…それでも、手応えを感じる長門。

 

「これで良い…さて」

『ギャアアアアッ!!!』

「喚かずとも何処へも逃げはせん。…行くぞ!」

 

 長門はそのままレ級との戦闘を続ける、その胸の内は「予測可能な最悪の事態」を退けるようにと祈りを捧げていた。

 

「(力不足で済まない、だが…何とか逃げ延びてくれ……っ)」

 

『ギィエイアアアアアアアッ!!』

 

 狂気の咆哮を上げて、レ級は全身全霊の力で目前の標的を刈り取ると宣誓した。

 

 

 黒衣の死神と不屈の戦艦…果たしてその勝敗は如何に?

 

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