艦これすとーりーず ―僕が異世界版艦これの提督になった件について― 作:謎のks
かくいう私、旧アニメ版をCS放送で何度も見返したほど。原作はまだ読んでないので、この機に読んでみようかな?
生きる糧が出来た…良き…!
遂に世界の崩壊を目論む黒幕「ドラウニーア」を追い詰めた拓人たち。
拓人、翔鶴、由良は最後の機獣である「ヒュドラ」と対峙する。黒幕との間を阻む障害は──レ級を除けば──ヒュドラのみとなる、ここで倒してしまえば後々に優位となる。そう考えた拓人たちだったが…?
『皆、ちょっと良い?』
そう言って拓人は翔鶴と由良の耳元で、手短に自身の考えを囁く。
「大丈夫なの、それ?」
「そう言われるとちょっと不安だけど、何かあればお互いがフォローする形で、どうかな?」
『…ウン、良いんじゃナイ? 私はいけるヨ』
「由良が良いなら…他に方法がなさそうだし」
「じゃあそれで行こう。…よし、突撃っ!」
拓人は何事かを翔鶴たちと話し終えると、そのままヒュドラに向かって真っすぐ駆け出す。
『Shrrraaaーーーッ!!!』
ヒュドラから放たれる獄炎のブレス、拓人は先ほどのようにはならないと右腕を翳すと、ブレスレットが盾の形へ「可変」し火炎を防ぐ。
拓人の身体も覆い隠せるほどの大きさの盾だが、火炎の勢いと熱風は拓人の肌へ直に伝わっていた。この炎を何もせず受け止めれば──骨も残らないだろうと、直感で理解する。
「くっ…!」
「タクト! …魔導部隊発艦! 冷気魔導弾で炎を鎮火して!!」
翔鶴は魔導航空部隊で敵の攻勢後退を狙う、弓矢を構え解き放つと矢は炎を纏い魔導航空隊へと変貌する。
邪龍の上空へ飛ぶ魔道航空隊、機体下が開くと魔導爆弾を雨あられと降り注ぐ。同時に邪龍の身体のあちこちで霜が降りて、炎は消え失せヒュドラの動きを止めた。
「由良!」
『ウンっ!』
由良は翔鶴の呼び掛けと同時に飛び上がり、得物である槌を邪龍の身体に振り下ろす。狙うはヒュドラの首元に設置された「コア」。
拓人が囮となり気を引き、翔鶴が冷気魔導弾で敵の動きを封じ込め、由良が弱点であるコアを狙う。単純だがそれ故に迅速な連携によって、拓人たちは邪龍に王手を掛けた。しかし──
『── Shrrraaaーーーッ!!!』
邪龍の咆哮が木霊すると、全身から噴き出す炎で氷結をあっという間に溶かしてしまう。一瞬で束縛を抜け出したヒュドラは、すんでのところでその長い肢体でコアに向かう攻撃を防いだ。
硬い金属同士のぶつかる鈍い音が響き渡る──ダメージはないようだ。
『…っ!?』
『Shrrraaaーーーッ!!!』
一瞬の隙を見せる由良を、ヒュドラは己の肢体を波打つように動かすと、素早く彼女の身体に巻き付けた。
『しまッタ…!』
『Shrrraaaaaーーーーーッ!!!』
──ゴオォッ!!
邪龍の身体から迸る獄炎、由良の身体にも灼熱の炎が襲いかかる、全身の肌を灼く業火が由良を追い詰める。
『あ"あ"あアアーーーっ!』
「由良っ!?」
「このおぉーーーっ!!」
拓人は可変ブレスレットを「両手剣」の形に変えると跳躍する、次に剣を由良に巻き付くヒュドラの眼球に叩きつけた、眼を深く抉り斬る音と共に、邪龍の片目に剣の刃による傷が出来上がる。
『Shrrraaaーーーッ!!?』
ヒュドラが巻きつけを緩めると身体から由良がずり落ちる、拓人はすかさず由良を抱えて跳躍すると距離を取った。
「…っあち! あちちぃ!?」
拓人と由良の身体から焦げ臭い匂いと煙が上がる、灼熱に焼かれた二人に駆け寄った翔鶴が心配の声を上げた。
「大丈夫!?」
「な、何とか…由良は?」
『…だい、じょうブ…ッ』
問題ないと言う二人であったが、炎から即座に離れた拓人はまだしも、由良は瀕死と言える程に全身に深い傷を負っていた。
火傷を負った彼女の身体は見るに耐えない痛々しさ──皮膚が焼け爛れた痕が顔や腕などに散見される──であった、拓人は由良を迂闊に近づかせた自身の指揮系統能力を詰った。
「ごめん由良、安易に近づくのは危険だって分かりきっていたのに…!」
『大丈夫、問題ナイって言ッタのは私だカラ。それに…火傷のことナラ心配要らないヨ?』
そう言ってさっきと変わらず温和な笑みを浮かべる由良、どうあれこの火傷はまともに戦えるとは思えない…いつもと変わらない様子に、そう疑問に思う拓人だったが?
「…っ、傷が…!?」
瞬間、驚く拓人が見た光景は──重症であった由良の火傷が「見るみる内に塞がっていく」異様なものだった。
『…ウン、そういうことだカラ私の身体は気にしなくて良いヨ。この程度の傷ナラ…少しシタラ治るカラ』
「…そっか」
そう言って由良をゆっくりと降ろす拓人、先ほどの火傷はすっかり治っており立ち上がりも軽々と言った具合だった。
おそらく深海化に伴い「自己再生能力」が付与されたのだろう、深海棲艦が異能を有していることは何となく理解していたが、まさかここまで驚異のものとは思わず、戸惑いを隠せない拓人。
深海棲艦は人類に仇なす異形の集団…それを理解していたつもりだったが、事実をまざまざと見せられている気分になった。深海化した由良もまたそうだと──瞳に映りし光景に、拓人は複雑な心境になった。
『タクトさん、私はこの能力で貴女タチの盾になるカラ。だから…何も心配しないで? 今はただ敵を倒すことを考エテ…ネ?』
「由良…っ」
由良の儚げな微笑みを見て…拓人は悔しげに歯を食いしばると、霧の暗闇に隠れているであろう黒幕を睨んだ。
艦娘と深海棲艦との関係性を理解しながら、ドラウニーアは由良を含めた様々なモノ──艦娘だけでなく、無力な民間人まで──を「深海化」という憂き目に合わせた張本人、今すぐ問い質したい気持ちではあるが、邪龍ヒュドラが壁となりそれどころではない。
「──何か言いたそうだな? 特異点?」
すると暗闇から嫌味たらしい声が響く、世界を崩壊させようとする黒幕は、自身の犯した罪をまるで意に介さないような傲岸不遜な態度を思わせる声色で、拓人に言葉を投げた。
「…ドラウニーア、どうしてこんなことを! お前は世界を変えるため…艦娘の居ない世界にするために、多くの人々を不幸にしてきた。何でだ…なんでそこまでして艦娘たちを憎む!?」
拓人の当然の疑問に、ドラウニーアははっきりとした声で答えた。
「この世界を根本から変えた張本人たちだからだ、この世界は…マナの恩恵に育まれた穏やかな世界だった、それを焦土と硝煙の蔓延する光景に変えたのは…艦娘たちではないのか!?」
「違う、元は人間たちが「海魔」の脅威を許したのが発端だろう! 艦娘たちはこの世界を海魔から守ろうと必死になって戦っただけだ。それを──」
「ならば問うが、その海魔との戦いが終わった時点でヤツらは「用済み」ではなかったのか?」
「…っ!」
いとも簡単に残酷な言葉を吐いて見せるドラウニーア。
言っていることは正しいかもしれない、だがその言葉の裏にはどうしても「排除」の二文字が浮かび上がった。
「お前にとっては愛らしい少女なのだろうが、私には兵器という名の「化け物」にしか思えん! あのお方がどういう心境であったのかはさておき、兵器としての宿命が定められたモノどもが、人間らしい生き方など
「…っ、そんなのやってみないと分からないだろう! 確かに天龍たちもそう言っていた。でも彼女たちは…それでもココロを殺して、知らない誰かのために戦ったんだ! そんな彼女たちが報われないまま、終わらない戦いの中に居るなんて…そんな運命、僕は認めたくない!!」
「タクト…!」
拓人の信念の言葉に、翔鶴も感嘆したように彼の名を呼んだ。彼らの信頼を表すような場面に、黒幕は悪態を吐いた。
「馬鹿が!! その生温い精神が今の世界の現状を起こしているのだ、艦娘は人間とは何もかもが違う、深海に堕したヤツらが破壊衝動に呑まれ殺戮を繰り返すことを、貴様も知らん訳ではあるまい!」
「それは…っ」
「世界から戦争が無くならない限り、艦娘ドモは何れ深海棲艦となり牙を剥くだろう。解るか? 私が何をしなくとも世界は「遅からず滅びゆく」のだ、愚かな一部の人間ドモが、艦娘という悪魔の兵器を用い続けることによってな!!」
「…っ!?」
「私はこの世界が陥った「ループ」を終わらせる、そのためなら…世界であっても破壊する! 忌むべき深海ドモを利用してでも、必ず…神の意志を超えてみせる、貴様らの好きにはさせん!!」
ドラウニーアは己の所業を「世界のため」と宣った。しかしそれは「欺瞞」ではなく、己の「
「…っ、言わせておけば。好き勝手しているのはどっちだ! お前の暴走を止めるために…僕は妖精さんからこの世界を託されたんだ、お前の凶行を止めてほしいって言っていたんだ!」
「何…?」
激しい言葉の押し合いの中、拓人の言葉を受けたドラウニーアの二の言が一瞬止まる。間を置いて高笑いで侮蔑する。
「…ふ、フハハハ! 成るほどなあぁ…? だとすればとんだ神もいたものだ? 目的は分からぬが「惨い」ことを」
「そうやって知ってる素振りで僕らを混乱させようとしたって、そうはいかない。もうお前は終わりだ…お前の計画も野望も、全て!」
「ほう? ならば終わらせてみろ? 出来るものならなぁ!!」
『Shrrraaaーーーッ!!!』
ドラウニーアは嘲笑うと、再び邪龍ヒュドラを嗾(けしか)けた。
獄炎の巨邪龍は、見た者を一瞬で萎縮させるほどの圧倒的な威圧感を放っていた。それでも拓人たちはこの壁を越えなければならない、せめて応援が来るまで持ち堪えなければ──
「(…いや、ヒュドラは天龍たちを追い詰めたほどの脅威、綾波が動けなかったからって天龍に大怪我を負わせたことに変わりない。改二でも苦戦しているのに、この状況を長引かせるほどの余力が僕らにあるのか?)」
ヒュドラの実力は並大抵ではないことは明白、今までのようにすんなりいくとは思えない。下手を打てばやられるのは自分たちだ…そう結論した上で、拓人は冷静に状況を分析し始める。
翔鶴の冷気魔導弾による足止めももう通用しないだろう、凍らせた瞬間に氷が蒸発させられることは目に見えていた。とはいえそれ以外にヒュドラを止める手立てはない、「炎」を纏った敵に如何にして立ち向かうか…拓人は手詰まりを感じざるを得なかった。
「(この状況を打破する手段は──)」
拓人は目を閉じて頭の中で念じる、大いなる意思に問いかけるように…すると、一つのワードが飛び出した。
「(──鍵は"翔鶴の魔導弾"か)」
「タクト、何か思いついた? ヒュドラが睨んで今にも動き出しそうだけど?」
「…翔鶴、魔導弾の属性って何がある?」
「え?」
唐突に問われた翔鶴だったが、拓人の真剣な眼差しを見て、自身も真摯に答える。
「そうね。私の手持ちは「火炎、氷結、電気」の三種かしら」
「成るほど、今までに出たもので全部か」
拓人の問いに頷く翔鶴、しかし…どうしたものかと頭を捻る。
火炎をあの獄炎にぶつけても意味はない、氷は蒸発する、電気は…そもそも効くのだろうか? 知恵の足りない頭で何とか打開策を考えていると──
『…あァ、そういうコトか。拓人サン中々やるネ』
横で話を聞いていた由良が何かを思い付いた様子だったが、拓人たちにはさっぱりだった。
「ど、どういうこと?」
『あれ、気づいてタわけじゃナイの? あのネ…』
由良が考えを説明しようとすると、遂にヒュドラが動き出した…!
『Shrrraaaーーーッ!!!』
「うわっ!?」
巨大な口からまたしても火焔を放つ、拓人たちは急いで回避するも彼らの居た場所には、全てを燃やし尽くす豪炎が広がっていた。
辛くも避けた拓人たちだったが、やはり正面からヒュドラに攻撃を仕掛けるのは不可能に近かった、それほどに邪龍の纏う獄炎は強力であり、隙も見当たらない。
『Shrrraaaーーーッ!!!』
「っく…!」
このままでは何れやられる。どうすれば…そう拓人が考えた束の間、由良が翔鶴に急かすように話しかけた。
『翔鶴チャン! 電気魔導弾ノ入った矢ヲ貸して!!』
「えっ、何なの? もう…仕方ないわね!!」
翔鶴は電気魔導弾の矢を由良に渡した。その手に魔導矢を受け取ると、由良はぶつぶつと何かを唱え始めた──すると光の文字が浮かび上がり、それらに何か書き加えようとしている。
『二人トモ、私に考えがアルわ。でも少しだけ時間を稼いでいてほしいノ!』
由良はそう言葉少なに言うと、拓人たちから少し遠ざかりそのまま空中の光文字に向き合った。
「アレは…由良のドワーフの力、魔導矢に何か細工している?」
「電気でヒュドラを何とか出来るの?」
「分からないけど、由良に任せるしかないわね?」
「そっか…なら、僕たちでヒュドラを引きつけないと!」
「えぇ!」
拓人と翔鶴は由良の閃きを信じて、邪龍ヒュドラを相手取る。
「こっちだ!」
拓人はヒュドラの注意を引くため由良の居る場所とは逆の方向へ走り出す。距離を取りながらもブレスレットを変形させたキャノン砲をヒュドラに向けて撃つ。
『Shrrraaaーーーッ!!!』
対するヒュドラも口から獄炎を放射する、光弾は獄炎に掻き消され遂には拓人をも飲み込もうとしていた。
「うおおおっ!」
拓人は即座に盾を形作ると、ヒュドラの炎を防いだ。炎の勢いが拓人に伸し掛かる、一瞬でも気を緩めれば盾が吹き飛んでしまうほどの衝撃…盾が無くなれば拓人は文字通り「灰燼に帰す」だろう。
「タクトぉ!」
翔鶴は拓人を助けるべく、冷気魔導弾の矢に手を掛ける。矢を番え勢いよく解き放つ──瞬間矢は炎を纏い「艦載機群」となる。
そのままヒュドラに突撃し艦載機下部より冷気爆弾をお見舞いする、氷結が迸りヒュドラの身体を包み込む──しかし。
『Shrrraaaーーーッ!!!』
マグマのように噴き出す獄炎は、ヒュドラに纏わりつく氷を瞬時に溶かし尽くした。お返しと言わんばかりに翔鶴に火焔を放つヒュドラ。
「…っ!?」
「翔鶴ーーっ!!」
全力で駆け出した拓人は、盾を構え翔鶴の前へ来ると獄炎を防ぐ。
「タクト!」
「翔鶴、出し惜しみは無しだ…ありったけの冷気をぶつけてやれ! その間の隙は…僕が必ず守り抜くから!!」
「っ! ……ぅあああああ!!!」
翔鶴は声の限り叫ぶと、矢筒の冷気魔導矢を一心不乱に乱射する。
次々と発艦される冷気魔導機隊は、ヒュドラ上空を旋回しつつ下部から豪雪の如く、冷気魔導弾を降り注いだ。
『Shrrraaaーーーッ!!!』
ヒュドラの炎もまた激しさを増していく、灼熱の炎と極低温の氷がぶつかり、入り乱れる暗闇の空間。
冷気がヒュドラを凍らせ、灼熱がヒュドラを煌々と燃え上がらせた。氷炎の繰り返しの中、翔鶴を狙い獄炎を放射するヒュドラ、そして翔鶴を守るため自ら盾となり彼女を守る拓人。両勢の戦いは今、熾烈を極めていた。
──ここで負ければ全てが終わる、誰もがそう感じながら。
闇に灯る紅と蒼のコントラストが映える、その幻想的とも不可思議ともいえる場面で──突如翔鶴の矢を番える手が止まる。
「翔鶴?」
「…っ、ごめんなさいタクト。冷気魔導矢の替えが…
「っ!!」
その言葉を聞いた瞬間、拓人の脳裏に浮かんだのは──”絶望”の二文字だった。
『Shrrraaaーーーッ!!!』
「くっ…!」
それを待っていたように口を大きく開き、獲物を逃さない眼光で見据えるヒュドラ。
万事休す…そんな絶体絶命の中、一筋の光が差し込む。
『──出来タ! 翔鶴チャン、これヲ!』
由良の声のする方を向くと、彼女は電気魔導矢を翔鶴に向けて振りかぶり投げようとしていた。
「…っ!」
それを見た瞬間翔鶴は、無我夢中で走り出すと跳躍。電気魔導矢を空中で掴むと弓に番える、そして着水した──刹那。
「いけえええええ!!!」
『Shrrraaaーーーッ!!!』
「当たれえええええええっ!!!」
弓矢を構え、逆転の一矢を解き放った──
──バチバチッ!!
閃光の如く飛び出した矢は散開し「艦載機群」へと変化、ヒュドラは獄炎を放って塵にしようとするも、光速の回避運動はヒュドラの獄炎すらも避けて至近距離へ…そして。
──遂に、艦載機よりヒュドラへ必殺の「雷槍」が突き刺さる…!
『二人トモ、跳ンデ!!』
「っ!」
「えっ!? っうおおお!!!」
由良は魚雷型の電気魔導弾が当たる直前、拓人たちに跳躍を促す。意図が分からずとも二人はその場で思い切り跳んだ。
──カッ! ズドオオオォォォン!!!
『Shhhrrrgraaaーーーッ!!?』
槍は世界を白く染める…そしてまるで稲妻が落ちたような雷鳴と共に、邪龍の断末魔が響いた。