ユグドラシルより来たりて   作:あきちゃま

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原作リスペクトは欠かしてないです


第3話

 アダマンタイト級冒険者。彼らは人類の希望の一つであり最終兵器である。

 ここ100年ずっと第一線で活躍している最強のアダマンタイト級冒険者『空騎士』。空を自由自在に飛びまわる騎士は世界中どこを探しても彼しかいないだろう。

 

 竜王国は危機に瀕していた。

 ビーストマンによる攻撃によって民は殺され、喰われ、食糧とされている。女王はその事実に怒りを覚え、絶望する。もはや猶予はあと僅かだ。

 

 兵士は皆、疲弊しきっている。ビーストマン一体で兵士何人が必要なのか。考えるだけで絶望だ。

 

「この国も滅びが近いか。民衆がそれを受け入れているならもはや部外者はどうしようもないだろうな。だが、俺は部外者じゃない。ならばビーストマンをどうする?逃すか?捕まえるか?」

 

「殺すしかない。それは主人も分かっているだろう?」

 

 そう、俺たちは冒険者だ。貰えるものさえ貰えれば怪物退治を請け負う。今回は竜王国直々の依頼がきただけだ。依頼が来たからには受けるだけだ。俺とユリアで不可能な依頼など存在しない。

 

 俺の合図でユリアはドラゴンへと戻り、その背中へと乗り込む。ビーストマンの軍勢を蹴散らすために。

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 絶望であった。ビーストマンの軍勢は強靭であり、我々の軍隊は既に疲弊済み。どちらが勝つかなど誰の目から見ても明らかであった。

 

「隊長!もう撤退すべきです!我々には無理です!」

 

「馬鹿野郎!俺たちがここで食い止めなきゃ後ろにいる命がどれだけ失われると思っているんだ!」

 

 隊長と呼ばれた彼は気付いている。このままこの場で踏み止まったとして、その先に何があるのか。だが、隊全員の命を天秤に掛けても守るべき人々が彼らの背後にはいるのだ。この戦線を抜かれるだけでも致命傷なのだ。

 ここだけではない。重要な戦線はいくつも存在する。彼らも少ない軍隊で戦線の維持を命を懸けて行なっているのだ。自分たちだけが撤退するわけにはいかないだろう。

 だが、そもそも攻勢に転ずる事ができていない時点で、彼らの軍隊はロクな末路を辿らないだろう。

 

「クソっ!お前たちさえいなければ!クソっ!クソっ!クソっ!」

 

 

 

 

 

 

「──力を望むか?」

 

 それは突然だった。

 世界中どこを探しても彼しか相棒にしないだろうドラゴンの背に乗り、まるで散歩でもするかのようにこの戦場へ現れたその男。アダマンタイト級冒険者『空騎士』。

 

「お前が俺の実験に手を貸すなら、この国を一時的にだが救ってやろう。その後はお前たち次第だ。まあ、そうだな。お前を戦士として一流にできるか否かという実験をしたい、ただそれだけだ。」

 

 悪魔のような囁き。

 彼の差し出す手を受け入れればこの戦線は、ビーストマンは駆逐されるだろう。この俺の命と引き換えに。

 彼はアダマンタイト級冒険者でありながら、時折その高額な依頼料を受け取らない時がある。それは、彼の実験という対価で要求された時だ。彼の実験にされた人々がその後、どのような末路を辿ったのかは未だ不明だ。彼がアダマンタイト級冒険者でありながら、恐れられている原因の一つだ。

 

 だが、俺の命一つで部下が救われる。国民が救われる。家族が救われる。こんな悪魔染みた条件に乗らないわけがない!

 

「俺の命でいいなら!助けてくれ!」

 

「よく言った!」

 

 突如、ビーストマンが吹き飛ばされた。

 ビーストマンを吹き飛ばしているドラゴンの咆哮。

 ドラゴンの背に乗る騎士。たった一振りでビーストマンの波を裂いていく。

 

 人類の頂点。人類の最終形態がそこにはいた。

 

「はは…ははは!これが、これが同じ人間なのか…。」

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 ビーストマンたちは壊滅した。

 数万の被害を出したのだ、彼らが竜王国へ侵攻を再開するには数年を必要とするだろう。その間に、砦を建設するなり、陸軍を再編するなりできるだろう。

 だが、そのために必要なのは強いリーダーだ。

 

「というわけで、お前はこれから強くなってもらう。最低でも王国のガゼフ・ストロノーフと戦えるレベルにはなってもらう。ああ、竜王国の首脳陣には伝えてあるから心配するな。」

 

「主人よ、色々と端折りすぎだ。あと、ガゼフの名前を出したせいでこの男が呆けておるぞ。」

 

 当たり前だ。

 大陸最強の戦士と戦えるレベルとなれば、大陸最強を狙えるに他ならない。もし、自分にそんな才能があったなら、今頃アダマンタイト級冒険者か陸軍でも将軍級になれていた筈だ。

 才能がないのは自分がよく知っている。

 

「空騎士さん、貴方に救ってもらった国民を代表して言わせてもらうが、俺を鍛え上げても無駄だよ。そもそも大陸最強と同格なんて、無理に決まっている。」

 

 常識で考えれば自分の今の地位でさえかなり頑張ったと思うのだ。自分は隊長格としては、才能が足りなさすぎるのだ。

 尊敬する人物には悪いが、そこの所は理解してもらうしかない。依頼料を蹴ってまで自分を獲得した行為は無駄だと悟ってもらおう。

 

「主人よ、この大馬鹿者をどうやって成長させるのだ?自分から限界を悟っているこの愚か者を。」

 

「決まってんだろ。修行といえば山籠りじゃあああああああ!」

 

 それを境に、俺は意識を失った。

 

 ◇◆◇◆◇

 

 ビーストマンの再侵攻。

 竜王国を崩壊へと導いた最悪の災厄が再び起こる。国民は誰もが絶望し、女王の住む王都でさえ暗い影を隠せなかった。

 しかし、最前線は違った。違ったのだ。

 

 

 

 鍛え上げられた男が、一つの軍団に向かって演説を始めた。

 

「諸君!我々は何のために戦うのか?

 金か?地位か?名誉か?それともその他か?

 断じて否だ。そんなものなど要らない。

 我々が欲するのは、血肉踊る激しい死闘!我々が終わりを飾るに相応しい好敵手!我々の最後の敵!

 あのような知性の欠片も感じられない獣如きに我々の野望を阻止されていいのか!?」

 

「「「断る!!!」」」

 

「そうだ!答えは否だ!我々が欲するのは大陸最強!

 我々が最後に戦うのはあの竜騎士!そうだ!我々はいまだ弱者だ!ならば見せよう!我々の戦いというものを!あの男へ挑戦する第一歩を踏み出すのだ!!!!!」

 

「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」」

 

 もう待てない。

 まるで子供の我儘のように彼らは要塞を捨ててビーストマンへと突撃を敢行した。

 指揮官の命令を無視するのではなく、指揮官自らがこの特攻に参加しているのだ。

 

 竜王国第3特別軍団。

 あのアダマンタイト級冒険者『空騎士』より直々に指導をうけた指揮官『バーミリオン・スターク』の下、一から鍛え上げられたその軍団は大陸最強の軍隊として畏れられていた。彼らはただただ強敵との死闘を求める戦闘狂。バーミリオン・スタークといえば、あのガゼフ・ストロノーフと死闘を続け、決着をつけられずにいるという大陸最強候補の一角である。

 だが、彼らは知っているのだ。本当の最強は自分たちでもガゼフでも、何度か目にした法国の特殊部隊でもない。竜の背に乗り空を自由自在に駆けるあの騎士だと。

 だからこそ、彼らは彼に挑み、殺されたいのだ。

 

 そんな狂気をまとった軍団、その数は僅か数千だが、数万のビーストマン如きに遅れを取る筈がなかった。

 自分こそが最強だ。その事実を証明するため、種族として上回るビーストマンを一人で何体殺せるか。軍団一人一人が競っているのだ。

 ビーストマンは人間の10倍のスペックを持っている筈にも関わらず、彼らは止まらない。止まれない。今まで食料だと思っていたものが、明確な敵となってきたのであった。

 

 

 

 この年、ビーストマンの国は竜王国との不可侵条約を結ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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