ロウきゅーぶ 六色の色をもつ者   作:たぎす

1 / 1
この話は以前にアットノベルスで投稿していた話で凍結されてしまい放置していた作品です。

また少し書きたい欲がでてきたので投稿させていただきます。

更新は前作と同様に不定期です。


第一話

オレの名前は相茶白兎(あいさはくと)

 

至って普通のバスケが命の男子高校生だったのだけれど今じゃちっこい小学生になってしまっている。

 

気がついたら変な男がいて全然別の世界に飛ばされてしまってよくわからないことになっている。

 

なぜオレは死んだのだろうよく覚えていないがなにかに巻き込まれたのは覚えている。

 

確かオレは親友の――と遊びに行ってて何かに巻き込まれて死んだ。

 

あの時の変な男の事は鮮明に思い出せる。

 

 

■□■□■□■□■□■□■□

 

 

"まだ起きないのか仕方ないのぉ"

 

"てぇ~い"

 

そんな事が聞こえたと思ったら頭に衝撃が走った。

 

「痛い!?何なんだもう!?」

 

"やっと起きたのか"

 

「あんた誰?」

 

"ワシか、ワシはワシントンじゃ"

 

「っで誰よ?」

 

"無視された!?ワシの渾身のボケを受け流すとは気に入った"

 

「いや、だから誰よ?」

 

"ソナタならばワシの力を分けてやって生き返らせてやらんこともない"

 

「無視るなよ」

 

そういえば――がいない。

 

「っていうか――は何処にいる」

 

"――はいち早く生き返らせてやったよ"

 

生き返らせた?

 

そういえばそんなこと言ってたな。

 

そんなことが可能なのか?

 

試してみるか。

 

「じゃあさじゃあさ――がいった世界に連れてってよ」

 

"よかろう、では選べ好きなとこに連れてってやる"

 

えっホントに出来るの!?

 

これは想定外だ!?

 

出てきたのは二枚の紙切れ…

 

「おいおいお前どこでも好きなとこに連れてってやるっていってたじゃないかよ」

 

"そうじゃ、じゃからソナタに選んでもらう。

 

選ぶ?

 

片方の紙は本当に――が行った世界が書いてある紙。

 

もう片方はフェイクじゃ。"

 

「しゃーないな、選んでやるか」

 

"確率としては1/2じゃからそれほど難しくないだろう"

 

「じゃあこれだ」

 

そしてオレは紙を取った。

 

そこに書いてあった世界は[ロウきゅーぶ]だった。

 

「おいおい、ロウきゅーぶってどういう世界だ?

 

死ぬなんて事はないよな?

 

平和だよな?

 

バスケは出来るのか?

 

そんなことより正解かこれ」

 

"残念じゃったのう、それは外れじゃ、正解はこっちの[黒子のバスケ]じゃよ"

 

「何だと~オレも行きたいよ。

 

――だけズルい。

 

キセキの世代を生でみたいよ」

 

"公平に決めたんだ文句言うな"

 

「だってさ」

 

うずくまって地面に[の]の字を書く。

 

"ではソナタの能力はどれにする"

 

「能力?」

 

"そうじゃ、ちなみにロウきゅーぶの世界はバスケを題材とした世界じゃよ"

 

「何ぃーーーー!?」

 

"うるさいの静かにせんか"

 

「マジで!?マジかよ!?

 

じゃあさキセキの世代の全員の能力がほしい。

 

今までのオレの身体能力に上乗せしてさ。

 

出来る?ねぇ出来る?

 

流石に無理だよねこの願いは?」

 

"出来ないことはない"

 

「マジで!?じゃあ頼んます!!」

 

"承知した"

 

「後の願い事は特になしかな。

 

あっそうだ、顔は中の中ぐらいでお願い」

 

"承知した。

 

では飛ばすぞ。"

 

「飛ばすって何処へ……

 

ぎゃぁぁぁーー」

 

"行ってしまったか、あっ転生したら性別が逆転することを伝え損ねたのまぁ大丈夫じゃろう。

 

しかし見事に正解を引き当ておったわい

 

まぁどうでもいいことじゃがなぁ

 

ふぁぁーあ、そろそろ眠いし寝るとするかの"

 

 

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

 

ここ何処だ?

 

目が覚めるとふかふかの暖かいベットの中にいた

 

己のことながらうまく状況が呑み込めない

 

変な人に飛ばされて……

 

数秒意識を飛ばして思い出す

 

そうだここはロウきゅーぶの世界だった。

 

ロウきゅーぶの世界ってどんなのなんだろう。

 

まあいいかどうせバスケはするしどっちみち分かるだろう。

 

そんなことを漠然と考えながらいっぽまたいっぽと階段を降りる。

 

そこで違和感を覚えるあれなんか足の動きが鈍いぞ。

 

体がなんともいえない浮遊感に包まれる。

 

あ、これやばい自覚した時には既に手遅れだった。

 

ドンガラガッシャン

 

漫画で聞いたことがある効果音と共に身体中に痛みが走った。

 

どうやら階段から落ちてしまったようだ。

 

それほど痛くないので放っておくことにして洗面所に向かった。

 

顔を洗うためにふと鏡を見る。

 

茶髪で胸まで届いてる髪、琥珀色の澄んだ瞳にシャツの上から女性を意識させるそれがあった。

 

かわいい……

 

ん?

 

可愛らしい女の子……鏡……

 

「何だこれはぁぁぁーー」

 

体が縮んでいる。

 

命を助けてもらったんだこの際仕方ない。

 

ここまでは許してやるここまでは許してやるが何でオレが女の子になってるんだ。

 

いくらなんでも謎すぎるぞ。

 

あの変な奴のせいだな。

 

聴いてないぞ、オレの性別が変わっちまうなんて……

 

アイツ次にあったらとっちめてやる。

 

ドタバタドタバタ

 

そこで思考は中断され誰かが上から降りてきた。

 

「どうしたんだ、すごい音がしたけど何かあったのか?」

 

廊下の方から現れたのは中学生くらいの男の子だった。

 

「何にもないよ」

 

「何でも無くはないでしょ、すごく騒いでいたし」

 

「それは……その……」

 

痛いところを付かれておしどまる。

 

「何も無いようならいつも通り練習しようか?」

 

「練習?」

 

「そう練習」

 

よくわからず聞き返すとまたそう返される

 

「さぁ白兎も早く支度して先に外で待ってるからね」

 

そう言って外に出て行ってしまった。

 

そうしてよくわからないまま第二の人生が幕を開けたのだった。

 

 

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

 

あれから二週間が経ちいまのオレの現状がわかった。

 

唐突にこの世界で生きた記憶の11年分が頭の中に一気に入ってきたときはひどく驚いた。

 

その影響もあったのか風邪をひき体調が悪くなって学校を休むハメになってしまった。

 

今ではすっかり良くなったので問題はない。

 

そんなことをするくらいなら赤ん坊からリスタートしたかったというのは内緒だ。

 

なぜなら小さいうちからバスケやってればその分貯金ができるからだ。

 

まさにバスケバカである。

 

どうもオレは小学生という年齢で相茶(あいさ)一家のもとに生を受けたらしい、相茶樹吏(あいさじゅり)(お兄ちゃん)の聞いた話では両親は海外でお仕事しているらしい。

 

オレとおにいちゃんの二人暮らしのようこっちの世界でも嬉しいことにどうやらオレは女バスという形になってはいるがバスケをしているみたいだ。

 

今日は15日の金曜日

 

 

「いただきま~す」

 

ホントに美味しい何だこの料理はただの目玉焼きとウインナーなのに。

 

「美味しい!やっぱりお兄ちゃんの料理は最高だね」

 

「たかが目玉焼きとウインナーでべた褒めしすぎだよ」

 

お世辞ではなく本当にお料理上手なのはこの二週間でよくわかったが褒めるといつも謙遜してる。

 

「じゃあ白兎、僕は先に始めてるから食べ終わったら流しに出しといて」

 

「はーい」

 

相変わらず食べるのが早いお兄ちゃんもオレと同じでかなりのバスケバカみたいだ。

 

なんでも卒業していった先輩がとんでもなくすごい選手だったらしく憧れているらしい。

 

食べ終わったし早速準備してこよう。

 

着替えを手早く済ませて外に出ると家の庭でお兄ちゃんがアップをしていた。

 

初めに家の庭を見たときはメチャクチャ広くて驚いた、なんと家の庭にハーフコートが併設されていたのだ。

 

今ではもう見慣れたものになってしまっているが一般家庭でバスケコートがあるのはかなり異常だ。

 

アメリカでもめったにないのではなかろうか。

 

「白兎、準備できた?」

 

「バッチリだよ!」

 

「それじゃあいつもの1on1勝負しようか」

 

「うん」

 

朝練はオレとお兄ちゃんの日課で毎日欠かさず行っていて、朝から体をめいっぱい動かしたい人なので非常に助かっている。

 

素早くボールを受け取り所定の位置についた。

 

今日の感触を掴むべくオレは何時も通りにドライブを仕掛けた。

 

お兄ちゃんはオレの正面に入り進行をを阻む、フェイントを織り混ぜながら徐々にお兄ちゃんの余裕を奪っていく。

 

体勢が崩れた一瞬の隙をついてクロスオーバーで抜き去った。

 

そのままレイアップシュートでゴールにおさめた。

 

今日は調子がいいだけど少しおかしいお兄ちゃんの動きがいつもより鈍い気がする。

 

「いや~強いな~白兎は」

 

「お兄ちゃん、真面目にやってよ!」

 

「真面目にやってるよ」

 

「嘘だよ!県準優勝チーム所属のお兄ちゃんがそんなに弱いはずがないし手加減なんてしなくて良いよ」

 

強く言うといたずらがばれた子供のような困った顔を浮かべてオレが投げたボールを受け取った。

 

「あはは~バレちゃったか、まだアップ途中だったからね

 

少しずつ慣らしていこう、白兎のアップが終わったら本気でやるよ。」

 

お兄ちゃんはそういってオレにボールを手渡した、初めはいつもこうやって緩い入り方だけど少しずつ朝練が激しくなっていくのだ。

 

お兄ちゃんはオレが投げて渡したボールを返してくる。

 

不思議に思ったので思わずオレは口を開く。

 

「お兄ちゃんはオフェンスしないの?」

 

そう聞くとお兄ちゃんは不思議そうな顔をした。

 

「何言ってるの?

 

この前、白兎がオフェンスを見て欲しいって言ったからこうやってオフェンスを見てるんだよ。」

 

そうだったっけ?そういえばそんなことを言ったような気もする。

 

「今のオフェンスはすごく良かったよ。

 

右に左に相手を振り回して体勢が崩れたところにクロスオーバーで一気に抜き去る。

 

白兎らしいバスケだね。」

 

何だか照れ臭いな。

 

人に誉められるのは前世でも人に褒められるのは慣れてなくて変な感じになっていたものだ。

 

こっちの世界ではずっとお兄ちゃんに褒められっぱなしで慣れてきてはいるんだけどやっぱり少し恥ずかしい。

 

今度はキセキの世代の青峰の『型のないバスケスタイル』を試してみよう。

 

そういえば、どうやったら出来るんだ?

 

この二週間は環境を把握して記憶の整理をつけるのにちょっと手間取ってしまった、風邪をひいてしまったことも手伝って実際に試してなかったのだ。

 

イメージすれば良いのかな。

 

頭の中でイメージすると扉が現れた。

 

赤、黄、緑、青、紫そして黒の扉が…

 

俺は青の扉を開いた。

 

腰を低く構えてドリブルをつく、何も考えず感じるがままドライブを仕掛けた。

 

何だろうこの感じ……

 

手にボールが異常にほど吸い付いてくる。

 

これならどれだけボールを振り回しても大丈夫そうだ。

 

これがキセキの世代の青峰の『型のないバスケスタイル』なのだろうか?

 

そしてオレはあっさりとお兄ちゃんを抜いた。

 

前回のオフェンスはじっくりと攻める形だったが勝負は速く決した。

 

「やっりー」

 

「白兎はやっぱりものすごい素質があるよ、けどちゃんとアップしてから全力出さないと怪我をして後悔するよ!」

 

「うー、お兄ちゃん大丈夫だよ!

 

いままで何もなかったんだから問題なし!」

 

前の世界でもこっちの世界でもオレはアップっていうのを真面目にしてこなかった人ですぐボールを触りたい!ドリブルしたい!試合がしたい!っていう楽しいことにめがない奴だったからなぁ。

 

お兄ちゃんの言うことはもっともだと思うし何も間違ってないと思う、けど今までそうやって過ごしてきた身としては正直時間がもったいない気がしてならない。

 

準備運動はもちろん始まる前からしてるし大丈夫だと思うんだけど

 

遊びながらアップしていけばいいじゃないかっていうのがオレの持論だ。

 

「はぁ仕方ないなぁ、それにしてもどんどん上手くなっていくなぁ

 

……本当にすごい

 

……恐ろしい才能だよ」

 

 

 

 

 

□■□■□■□■□■□■□■□■

 

「今日はこのぐらいにしようかな。

 

復帰初日に遅刻してもらっちゃ困るしね。」

 

あ、もうそんな時間か。

 

バスケをしてると時間がたつのがはやいなぁ。

 

「樹吏だけ白兎を独占するなんてズルいじゃないか」

 

「白兎~今日は久しぶりの学校登校だから送ってってあげるね。

 

それとクリーニング出しておいた制服渡しておくよ」

 

「樹吏!?まさかのガン無視ですか!?」

 

うるさいなぁ……

 

あれ誰だっけあの人……そうだ変態さんだった。

 

「気を付けるんだぞ。

 

僕も途中までは同行するけどね。」

 

お兄ちゃんが変態さんを無視して話を進めていく。

 

変態さんが我慢できなかったのかひときわ大きい声で叫ぶ。

 

「樹吏!?少しぐらい構ってくれないか?かなり寂しいんだけども!!」

 

「うるさいよ!!兄ぃーさん静かにできないの?」

 

何かお兄ちゃんと変態さんが言い争いをしていたけど遅刻してしまうので学校の支度をしに行った。

 

あーそういえば変態さんもいたな。

 

相茶和文(あいさかずふみ)こと変態さん言動がちょっとあれ過ぎてカウントしてなかった。

 

何にせよ関わると碌なことがないのはこの二週間でよくわかった。

 

簡単に言うと重度のシスコンもしくはロリコンの模様。

 

変態さんのことは頭の隅に追いやり現状の問題に目を向ける、女物の制服はなんでこんなにふりふりしてるんだろうな。

 

本当に理解に苦しむ。

 

着ないことにはどうしようもないけどかなり恥ずかしいんだよな。

 

この二週間の間は風が長引いたのもありスカートなんて着る機会なかったからなぁ。

 

それからどれだけ制服とにらめっこしていただろうか、意を決して制服に着替えて時計を見てみると6:30分だった。

 

あっれ~かなり葛藤していた気がするけどあんまし時間が経ってないな。

 

そして変態さんに見送られながら樹吏お兄ちゃんと一緒に家を出た。

 

通学バスはこれに乗るんだよとか学校の行き方を色々とお兄ちゃんが教えてくれた。

 

前も通ってた学校のはずなんだけどその辺の知識は記憶に薄かったので非常にありがたい感謝感謝だ。

 

通学バスに乗って目的地に向かった。

 

何でもオレが通う学校は慧心学園というところで男子バスケ部が去年、地区優勝を果たし有名になったらしい。

 

そしてその男バスとオレの所属する女バスとの間で軋轢があるのだがそれがなんともめんどくさいことになっている。

 

男バスというかその顧問だな、オレの場所を奪おうなんてなんとも許し難し。

 

そう思っているうちに慧心学園の校門についた。

 

「僕はここまでしか送れないからじゃあね、白兎」

 

「うん、ありがとうお兄ちゃん」

 

うまく教室行けるだろうか、そこが一番の問題だった。

 

不安は拭えないがとりあえず校門を通り教室に向かう。

 

警備員の人がこっちを見てきた時はかなりビックリしたが、そのまま無事に通りすぎた後は何だか気が抜けてしまった。

 

校舎が何個もありどれがどれだか全く分からない。

 

なんでこういうことは記憶に残りづらいんだろうなぁまったく。

 

ヤバイなもしかして迷ったかも?

 

あてもなく歩いているとダムダムという体育館でドリブルをする、バスケットボールの懐かしい音が聞こえてきた。

 

思わずオレは足を止めて体育館の中を覗きこんだ。

 

どうやらバスケ部が朝練をしていたようだ。

 

それも男子バスケ部、

 

バスケ部の人たちが片付けだし一人また一人と帰っていったが一人だけ自主練習をしている選手がいた。

 

遠目ではだれかわからなかったがどうやら夏陽のようだ。

 

体がウズウズしだしていてもたってもいられなくなって思わず飛び出してしまった。

 

「バスケしよ!!」

 

「うぉぉっ白兎じゃねぇか

 

脅かすなよ」

 

「それよりもバスケしようよ。」

 

再度同じことを繰り返すと困ったような顔を浮かべる。

 

「まあいいけどおまえからだはもういいのか?」

 

「もうすっかり大丈夫だよ、オレからオフェンスな♪」

 

「あ、おいっ!もうしかたねぇな!」

 

有無を言わさずボールをひったくると夏陽にボールを渡しボールがオレのもとに戻ってくる。

 

それが開始の合図

 

オレはドリブルを開始する。

 

キセキの世代の誰の力を使おうかな♪

 

やっぱり青峰かな♪

 

もう一回見てみたいし夏陽には実験台になってもらおう。

 

イメージして青の扉を開いた。

 

「行っくよ!」

 

「来い!」

 

[型のないバスケスタイル]

 

お兄ちゃんとやった時と同様にいやそれ以上に異常なほど手に吸い付いてくる。

 

体の重心を床に届くぐらいまで一気に下げて右に高速でドライブする。

 

一気に下がることによって体感速度を上げて反応を遅らせるテクニックだが当然のことながら欠点もある。

 

それはディフェンスが重心を落としたらあまり効果がない。

 

だがこの攻撃は止められることはなかった。

 

何故なら完全に白兎のスピードについていけなかったからである。

 

読み通り夏陽が体勢を崩した瞬間に夏陽を抜いてレイアップシュートを決めた。

 

「クソォー

 

はやすぎだろ!?」

 

「あはは、やっぱりバスケは楽しいな。

 

次は夏陽の番だよ」

 

結局、この勝負は時間の都合上お開きと言う形になり勝負はつかなかった。

 

この1on1で分かったことはキセキの世代の技を使うのはまだ練習が必要のようだ。

 

まだ未完成でイメージ道理に動けないからだ。

 

おそらくまだ体が出来上がってないからだと思われる。

 

まだ青峰の『型のないバスケスタイル』しか使っていないため良くわからない点もあるしイメージの中でのことだが赤と紫の扉は鎖で閉ざされてしまっていて開きそうになかった。

 

これはいろいろと検証していかないといけないな。

 

 

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

 

「あ~楽しかった」

 

「ほんとお前は楽しそうにバスケするよな」

 

「だって楽しいじゃん夏陽も楽しいでしょ」

 

「そりゃそうだがなんつうか、やっぱいいや」

 

夏陽が何かを言いかけて誤魔化した。

 

「大丈夫だぜ

 

夏陽こそ手加減なんかすんなよ

 

オレたちは負けないからよ」

 

何を言いたいのか何となくわかってはいたので今の気持ちを素直にぶつけた。

 

「お前はほんとにいい性格してるぜ

 

あぁもうバカみてぇ早く片付けて教室いこうぜ」

 

「そうだな

 

結構ぎりぎりまでやっちまってたからやばいかも」

 

その後、夏陽と一緒に教室に向かった。

 

 

□■□■□■□■□■□■□■□■

 

「おっはよー」

 

教室のドアを勢いよく開くと視界に仲良しグループが映る、背後から抱え込むように栗色の髪の元気の良いまさに天真爛漫を形にした女の子を抱きしめる。

 

「うぉっ!、はっくんじゃんかー!

 

もう体はいいのかー!」

 

その少女、真帆は振り払わずにぽむぽむと効果音の付きそうな手で頭を触ってくる。

 

「うんおかげさまでもうすっかり良くなったよー」

 

オレの登場にいち早く反応したこのグループのまとめ役でありこのクラスの委員長でもある、腰まで届く御空色の長い髪とメガネが特徴的な少女が口を開いた。

 

「よかったわ、風邪が長引いてたみたいだから皆でお見舞いに行こうかって話してたとこだったのよ」

 

その少女、紗季は席を離れてオレに近づいてくる。

 

まじかそれはもったいないことをしたな確かに結構長引いてたもんなぁ。

 

こんなに休んだのは結構久しぶりだったから新鮮な感じだ。

 

「いや本当にこの大切な時期に風邪を引いちゃって申し訳ない」

 

そうオレが口を開くと真帆と紗季の後ろから三人の少女たちもオレに気付いたのか、手を挙げながら近寄ってくる。

 

一人はまさに可愛らしいピンク色という表現が一番似合うであろう少女のひなたちゃん、身長がこの中で最も低くぽわぽわした雰囲気で場を和ませてくれるそんな女の子。

 

もう一人はオレが勝手にライバル認定していてピンクの髪でショートカットの片側をリボンで結んでいる智花だ。

 

最後にオレと同じ茶髪でボブカット、小学生に見合わないその体躯。

 

このグループの中で最も身長が高く目測で170前後ありそうな、バスケでは恵まれた体格を持つ気遣い上手の愛莉だ。

 

ちなみに愛莉は自分の身長のことをひどく気にしていて、身長のことに関しては話題を振ってはいけないのはこのグループでは周知の事実になっている。

 

「風邪じゃしかたないよー、白兎ちゃん」

 

愛莉が気遣ってすごくあったかい言葉をかけてくれる、なんともむずかゆい。

 

「そうだよ、なんでも篁先生が優秀なコーチを見つけてきてくれるって話だから」

 

なるほど篁先生が動いてくれてるのか、いい人だったらいいなぁ。

 

「おー、ひなも今日のれんしゅうたのしみー」

 

ひなたちゃんが可愛らしく拳を突き上げてそう宣言する。

 

クラスの男子たちがそれをみて顔を赤く染めてるのを久しぶりに見る、わかるわかるぞ無意識に眼で追ってしまうんだよなぁ。

 

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

 

放課後

 

オレは女バスみんなと一緒に体育館の中に居る。

 

慧心学園女子バスケ部はちっとめんどくさい状況に置かれている。

 

慧心学園には男バスと女バスがあり体育館の使用権を巡って試合をすることになっている。

 

体育館の使用権は月水金と女バスそれ以外は男バスで分かれていた。

 

真面目に練習しない女バスを快く思っていなかった男バス顧問の小笠原先生が女バス顧問の篁先生と対立して、男バスと女バスが体育館使用権をかけて試合をすることになった。

 

女バスが負ければ月水金の使用権が男バスに移るということで決着した。

 

その試合に負ければ女バスは活動できる場所を失う。

 

廃部寸前まで追い込まれている。

 

そして女子バスケ部の練習だが…

 

とりあえず遊ぶといったものバスケ経験者は智花一人で人数もオレ含めて六人だから仕方ないといえば仕方ないけれど……

 

せめて有能な先生が顧問についてくれれば何か変わったのかもしれないが顧問の篁先生はバスケ経験なし。

 

これでは何もできないのも頷けるというものだ。

 

篁先生が一応コーチをしてくれる人を見つけてきてくれるということだけど難しいだろうな。

 

時間が圧倒的に足りない、そんな状況だから女バス存続のためにはオレが頑張るしかないともう決意を固めている。

 

今日も試合形式の練習で二つのチームに分かれる。

 

試合形式といっても形だけでトラベリングだとかダブルドリブルだったりだとかそんな基礎的なこともない暗黙の特別ルールのもとで行われている。

 

チーム決めだがオレ真帆ひなたちゃんチームと智花紗季愛莉チームこのチームに分かれるのが毎回恒例になっている。

 

なぜこのチーム分けなのかというとボール出しをできるのが経験者のオレと智花しかいないことがあげられる。

 

「さぁ今日もめいっぱい楽しもうね」

 

「おっしゃーやってやんぜ!」

 

「おー、ひなもがんばる」

 

オレがそう声をかけると真帆とひなたちゃんが力強くこたえてくれる。

 

ここからいつものようにゲームが始まる。

 

それは勝ち負けに拘らずただただ楽しむためのバスケ、それが悪いとは思えないけどいまのこの状況を考えるとモヤモヤしたものに胸の中を支配される。

 

ハーフコートでの3on3での試合、そこに戦術はなくただがむしゃらにボールを追いかける真帆にボールを持ったままその場であるいちゃうひなたちゃん。

 

見ていてとても微笑ましい・・・が現実はシュートどころかボールを運ぶことすらままならない。

 

本当にこれで男バスに勝てるのだろうか?

 

勝つためにはオレがもっと頑張らなくちゃこの場所を守るために!

 

 

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

 

3on3が終わった後はボール出し係で体力を持てあましている、智花とオレの1on1の5本勝負でお開きという感じになっている。

 

そんで今回もこの流れに

 

「時間もそろそろまずいしやっちゃおうか」

 

「病み上がりなのに白兎大丈夫?」

 

「心配ないよ。

 

もう全然平気だし今日もお兄ちゃんと一緒に思いっきりやってきたからさ。」

 

「そうなんだ、じゃあ手加減しないよ!」

 

「おっけい!そうでなくちゃ!」

 

オレはゴールを背にして静かに向かい合う、ボールを手渡され智花に返す。

 

次の瞬間、強烈なドライブで左を切り裂こうと肉薄してくる。

 

負けじとすんでのところで反応して体を滑り込ませそれを阻止することに成功した。

 

久しぶりのこの感じたまらないやっぱ智花は別格だ、これだけのスピードにボールキープ力どれをとっても一級品それに外のシュートもある欠点がない。

 

頭の中でべた褒めしてる間も智花はフェイントを織り交ぜながら隙を伺っている。

 

右に突進したかと思えばそれはフェイントでつられて後ろに下がってしまったオレに智花のジャンプシュートを止めるすべはなかった。

 

綺麗な放物線を描きゴールへと吸い込まれたボールは地面に落ちてオレのところまで転がってくる。

 

「まず一本!」

 

「くっそ完全にだまされたぁ」

 

力強くそう宣言した智花とオレの立ち位置が入れ替わる。

 

あんなドリブル持ってて外もあるとかほんとに智花はすっげーや。

 

これは気を引き締めないとな、まずは一本だ!

 

「いっくぜ!」

 

「いつでもいいよ!」

 

そしてドリブルを開始、視線をしっかりと智花に固定して小細工なしのトップスピードで脇を通り過ぎようとする。

 

しかし智花もしっかりついてくるここまでは予想通りそこで体を反転させて進行方向を逆に変える。

 

完全に逆を突かれた状態で無理やり反応しようとして体勢を崩した智花を横目で捉えながら通り過ぎゴールに納めた。

 

お兄ちゃんとバスケしたときも思ったけど今日はすごく調子がいい気がする。

 

「よっしゃー!これでイーブンだ!」

 

「まだまだこれからだよ!」

 

闘志を御互いに燃やしていると歓声が上がる。

 

「もっかんもはっくんもちょーカッケー!!」

 

「おー、ひなもがんばる」

 

「ほんと白兎ってばバスケのことになると別人よねぇ」

 

「智花ちゃんも白兎ちゃんもはやすぎるよぉ」

 

「智花きょうはすごく調子がいいから負ける気しないよ!」

 

「わたしだってすごく調子いいもん」

 

そのあとオレも智花もお互いの攻撃を止められず結局5対5の引き分けになった。

 

いつも引き分けで終わるんだよなぁ、今日は行けると思ったのに悔しいなぁ。

 

 

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

 

みんなと別れて家に帰ってきた、時刻は夜の7:00

 

まっ先にオレは庭のゴールに向かって自主トレを始める。

 

これがオレの日課になっている、家に帰ったら宿題は二の次でまずは自主練から!

 

この時間になってくるとすっかり日は沈み、辺りは夜に包まれている。

 

家のリビングから漏れる光がある為、真っ暗ということはなく。

 

そのかいもあってこうやって体を動かせる。

 

練習内容は特に決まってはなく、自由気ままにドリブルだったり気が変わったらシュートだったり反復練習が主になっている。

 

お兄ちゃんがご飯で呼びに来てくれるまで自主練に励む。

 

その時間が来るまでシュートの感触を体に染み込ませていく。

 

今日もそれは変わらず程なくしてお兄ちゃんが顔をのぞかせるのだった。

 

「白兎~、ご飯もうすぐできるから風呂入ってきなー」

 

「わかったー」

 

オレはいま風呂とご飯を済ませて自室に戻っている。

 

そしてオレが次に向かうのはノートパソコンだ。

 

―交換日記(SNS)―◆Log Date 4/15◆

 

これは慧心女子バスケ部の情報交換または他愛もない雑談に花を咲かせるSNS兼ボイスチャットである。

 

そして今日もみんな集まっているようだった。

 

チラッと目線をパソコンに向けると文字が目の中に飛び込んできた。

 

 

『ついさっきみーたんかられんらくあってコーチが来てくれるみたい!

 

まほまほ』

 

『えっ、コーチ?

 

白兎』

 

『そうコーチ!これでだんばすのやつらにめにものみせてくれる!

 

まほまほ』

 

コーチが来てくれると助かるとは思ってたけどこんなに速く来てくれるなんて篁先生に感謝だな。

 

これから楽しくなりそうだ・・・なんて考えてたらいつの間にやら会話は進んでいてメイド服がどうとかいう話をみんなでしていた。

 

真帆の奇行は今に始まったことではないのでそこまで驚きはないが謎だ。

 

『そのコーチをでむかえるときにめいどふくをきるんだけど

 

まほまほ』

 

……っていうかメイド服!?

 

メイド服ってアレだよな。

 

お帰りなさいませご主人様ってやつだよな?

 

そもそも何でコーチを出迎えるだけなのにメイド服を着る流れになってるんだ。

 

常識的に考えておかしい。

 

『あの~大変申し上げにくいのですが。

 

オレはメイド服を着ないという方向でお願いしたいのですが

 

……ダメでしょうか?

 

白兎』

 

『だめだよ。

 

なにいってんのはっくんってばめいどふくのことわかってない

 

まほまほ』

 

真帆が悪ふざけでそう提案しているものか確認のためこちらもふざけ気味に尋ねたところ、どうやらおおまじらしい。

 

ほかのみんなもはじめこそ反対意見が多かったが真帆が言い出したら止まらないのは知っているのでだんだん真帆の旗色がよくなってきている。

 

このままではズルズルいってしまってみんな仲良く着用する羽目になってしまうのは目に見えている。

 

『紗季は?紗季はメイド服を着るのイヤだよね!

 

白兎』

 

そんなときに真帆を止められるのはこの方しかいない。

 

『そんなことはないけれど真帆がどうしてもって言うから……

 

紗季』

 

だがそんなオレの浅はかな考えは実らずまさかの好感触、結構乗り気じゃないか。

 

『ひなた、ひなたはメイド服を着るのイヤだよね。

 

ねぇイヤだよね。

 

白兎』

 

『おー、ひなはイヤじゃないよ

 

ひなた』

 

天使にまで見放された。

 

『おうじょうぎわがわるいぞ、はっくん

 

まほまほ』

 

『う~、くそぉ~

 

分かったよ、着るよ

 

白兎』

 

『やっとかんねんしたか

 

じゃあ、げつようびにみんなのめいどふくもってくるから

 

みんなのめいどふくすがた、たのしみだな~

 

まほまほ』

 

『はくと、ファイト~

 

ひなた』

 

とひなたちゃんが励ましてくれる。

 

ああ、ありがとうひなたちゃん。

 

お陰でちょっぴり精神的ショックから立ち直ることができた。

 

『白兎、頑張ろう

 

智花』

 

『白兎ちゃん、元気だしてしかたないよ

 

あいり』

 

あの恥ずかしがりやな智花と愛莉が決意を固めてるんだからオレももう常識がどうとかぐちぐち言わずにいってしまおう。

 

『ありがとう、ひなたちゃん、愛莉、智花

 

オレ、頑張ってみせるから!

 

白兎』

 

『うん、その意気だよ白兎ちゃん

 

あいり』

 

『はくと、元気になった?

 

ひなた』

 

『うん、おかげで元気になったよ

 

白兎』

 

 

そして宿題を済ませ月曜日に不安を募らせながら眠りにつくのであった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。