まわりがスロー再生のように遅くなる。
何かが飛んでくる。
そう、認識したと同時に思い出すいつの日の記憶。
じぶんは、手を伸ばしている誰かに向けてだ。自分を守るように立ち、こちらを向いて微笑んでいる。
その顔はすすけていて、立っているのもやっとと思えるぐらいの傷を負っているのだとわかるぐらいに全身が血にまみえている。
あぁ、置いていかないで、一人にしないで、そう叫んだような気もするが全く思い出せない。
ただ覚えているのは、後悔したこと。あの場で守り切れなかったこと。
瞬間現実に引き戻される。いまだに、スロー再生のような感じだが回想していた分の時間は進んでいる。
飛んでくる何かが近くなってきている。何とか腕を動かし妖精さんが入っている胸ポケットをかばう。
そして、時間の進みが早くなっていく…。
大きな着弾音。
何分か前にも同じような距離で地面を撃ったが、相も変わらずとてもうるさい。
そのまま目の前の戦艦と戦闘を続行と行きたいところだが、そうもいかない。先ほど自分が外した砲弾があろうことが、外部の人の場所に飛んで行って
そして、着弾。今目の前には煙がもうもうと立っている。
いくら、小さくなっているとはいえ軍艦の砲だ。そんじょそこらの銃とは威力がまるで違う。あんなに近くで食らったら、生身の人間なら人体欠損なんかで済むはずがないだろう。
もしかしたらもはやその肉体は消し飛んでしまっているかもしれないし、中途半端に残っていてとてもグロテスクな状態になっているかもしれない。
誰に掃除させようかなと思っていると、急に何かが飛んできた。ソレはまっすぐこちらに飛んできて自分が認識する時間すら与えなかった。
瞬間鼻に強い衝撃を受け視界にきれいな青い空が入ってくる。そのままコンクリートに頭を打ち付けるかと思ったがなんとさらに蹴られた。
かなり強い衝撃が後頭部を襲う。
「っハ…!」
手で後頭部をかばおうとするもむなしく誰かが胸に乗って胸倉をつかんで強く引っ張る。
「どういうつもりなのかしら?」
妙に高い声。艦娘である自分を飛ばすようなものとしては不釣り合いな声だ。
痛みで目が開けられないがやっとの思いで目を開けるとそこに映っているのは少女のシルエット。しかし顔は逆光でよく見えない。
こんな小さなガキに飛ばされたのか?この私が?
そう思ったとたん急に腹が立つ。まだかなり後頭部が痛いがそんなことはどうでもいい。今はとりあえず目の間のガキに一発入れたい気分だ。
「こんのクソガキがっ!」
つかまれた腕を強引に振りほどき今度は逆にこっちが胸倉をつかんでやる。身長は自分のほうが上で結果その少女は宙に浮く。
「てんめぇ。なに急に蹴ってきやがってんだ?あぁ?」
「そう。話す気はないのね。じゃあ、少し痛い目見てもらうわ。」
何を言っているのか?痛い目を見てもらう?
すると少女の背後からなにか打ちあがる。そしてそれを目で追って…
突如近くから異常な殺気を感じる。目の間の少女からだ。急いで手を放し後ろに飛ぶ。
刹那自分の鼻っ先を何かかすめ、地面に突き刺さる。
斧だ。なんともでかい斧だ。明らかに本来の使い方をしなさそうなサイズで、これまた少女が使うには大きすぎる。
目の前の少女は先ほどと明らかに気配が違う。殺気があふれ出ている。
瞬間悟った。これはやばいと。これは死んでもおかしくはないと…。