前のものとできるだけ合わせようと思いますが、もしずれているところがあったらご指摘のほどよろしくお願いします。
「もういい。分かんないようなら叩き潰す。貴様のようなやつなどこれで十分だ。」
暁は戦斧を引き抜きながら近づく。相手は腰が抜けたのか全く動かない。周りで見ているやつも誰一人助けようとはしない。悲しいやつだ。
「…。」
振り下ろさんとしたがその柄は別のやつのせいで止められてしまった。
「なぜ、お前が止める。貴様こそこいつを殺したいのではないのか。」
暁を止めていたのは先程こいつと喧嘩していたやつだった。さっきまで殺し合いのような喧嘩をしていたのに。なぜそいつを助けようとするのか。
「確かに、そうではありますが、見ず知らずのようなやつに殺されるのでは話が違う。」
暁は少し考え、斧をひっこめた少し考えると、このまま殺すと面倒になるはずだ。恐らく、いや、きっとこいつらが自分の部下となるのだろう。その部下を殺してしまっては、響に悪いことをしてしまう。
「…はぁ、分かったわ許すわよ。」
「あなたは誰ですか。いきなり鎮守府に入ってきてあろうことかそんな物騒なものまで…。」
「私は暁。あなたたちの上司になるのよ。一か月間。」
「……は?」
「ほら、そんななりしてない?」
「い、いや。確かに正装ではあるけど…。」
あ、ためぐちになった。さては見た目で子供のお遊びだと思ったな。仕方ない。こういう時にはやっぱり紙に残ってるものが一番強い。
「ほら、これでいい?」
「こ、これは…大本営からの命令書!?偽物では…ない。響司令長官の名もある…。こ、これは失礼しました。」
「ん。わかったんならよろしい。ほら、案内。あなた達もそこでぼーっとしてないで片付けぐらいしなさい。もう無法地帯じゃないのよ。」
暁の発破で慌ただしく動き始めた。さっきまでスラム街の喧嘩を眺めていたような治安の悪さなど微塵も感じさせないほどにてきぱきと掃除を始めた。上の者の有無でこれほど変わるものか。
「…来た。」
「ああ。同志。接触を図ろう。慎重にな。」
「もちろんだよ。同志。」
「あ、あとで潜水艦来るけど気にしないで頂戴ね。」
「え、せ、潜水艦!?」
「そう。響もそれに乗ってくるから。そういえばあなたの名前は?」
「私は金剛型戦艦の4番艦、霧島と申します。」
「霧島ね。分かったわ。」
「こちらが執務室です。」
執務室までの廊下もそうだが本当に荒れているなこの鎮守府は。一応日本の中でも5本指に入る鎮守府のうちの一つのはずなんだが…。これは数日は掃除でつぶれそうだ。にしても私が艦隊の指揮を…ね。大隊長にはなったことはあるけれども、さすがにここまで大規模なことはしたことはないのだけど大丈夫だろうか。
執務室はさすがに綺麗なままだ。綺麗と言っても相対的なのであって、恐らくこの中で暴れることはせずずっと放置されていたのだろう。埃がすごい。
「霧島…。」
「なんでしょうか?」
「掃除。とりあえずここ優先。私もするから何人か呼んできて。」
「分かりました。」
霧島が部屋を出て行った。と、帽子の中でごそごそと何か動く。緊急避難させた妖精さんだ。目を回して居たっぽいが目覚めたらしい。
「ん、んんん…?…あ、ここはどこだ。」
「あ、起きた?」
「お、暁…あ!大丈夫かお前!砲撃がっ…て、なんだ室内?」
「いろいろあったのよ。」
「そ、そうか…そうなのか…埃っぽいなここ。」
「ええ、全く。今何人か呼んできてもらってるわ。まずは掃除ね。」
「失礼します。提督、呼んでまいりました。」
霧島が戻ってきた。連れてきたのは同じような服装をした3人。姉妹艦だろう。
「金剛型戦艦1番艦、帰国子女の金剛デース!提督、よっろしくお願いしマース!」
「同じく2番艦の比叡です!」
「3番艦の榛名です。どうぞよろしくお願いします。」
「うん、よろしく。それじゃ、さっそくで悪いけど掃除を手伝ってもらえるかしら。」
「はい。」
掃除は数時間で終わった。金剛たちには別のところの掃除に行ってもらって、今は提督が残していったらしいマニュアルと人員名簿を眺めている。流石トップクラスの鎮守府。艦娘の数が多い。果たして覚えきれるだろうか。マニュアルと名簿をうなりながら眺めていると扉がノックされた。眺めたまま答えると誰か入ってきた。ちらっと眼を外すと経っていたのは先ほど暁が真っ二つにしようとしていた奴だった。
「…なに。」
「あ、あの、その、先ほどはすみませんでした!提督だったとはつゆ知らず…。」
「ああ、それはもういいわよ。あれは私もやり過ぎたわ。要はそれだけ?」
「あ、はい。」
「じゃあ、下がっていいわよ。誰あの掃除でも手伝ってきなさい。…あ、あなた名前教えなさい。」
「高雄型重巡洋艦3番艦の摩耶です。」
「摩耶、摩耶…ん、了解。下がっていいわよ。あ、あともう一つ。そんな堅苦しく話さなくてもいいわよ。あなたの口調で大丈夫よ。無理に敬語で話されてもかえって違和感あるわ。」
「あ、はい…じゃなくって、うっす。じゃあ、私はこれで失礼するぜ!」
「はーい。」
うんうん、とうなりながら眺めること数時間。やっと半分ほど読み切った。マニュアルと言ってもそんな難しいことはしなくてもよさそうだ。だが、よく読みこんだ結果そう結論づけれたのであって、結局隅々まで読まなくてはならない。
「あー、なんでこんなやること多いのよ。」
「さあな。提督ってのはそんなもんなんじゃないのか?」
「やること多いわぁ…響も似たことよくできるわね。」
「そういえば二人は何時つくんだろうな。」
「ん…あー…たぶんそろそろ。」
そういえば泉のこと話すのを忘れてたな、と思っていたころまたノックだ。霧島らしい。声が少し上ずってるか?
「て、提督。えっと、お客様がいらっしゃってます。」
「客…?誰かしら。通して。」
「失礼します。」
「おお、おお。やっとるのぉ。」
「やっと着いたよお姉ちゃん。」
ああ、なるほど。ついたのか。しまったな。響はともかく泉のことは説明するのをすっかり忘れていた。パニックになっていなければいいが。
「やっと着いたのね。」
霧島が執務室についている確認してない部屋に入っていった。あそこに何かあるのだろうか。
「…泉のこと話すのすっかり忘れてたわ。」
「おかげでかなり騒がれたわい。響がおらねば今頃海のそこじゃ。」
「どう?問題はなさそう?ないなら私の役目はもうおしまいだからぱーっと見まわって帰るけど。」
「大丈夫よ、特にあなたに言うような問題点はないわ。」
「そう?じゃあ、私は見まわって帰るから!じゃあね、お姉ちゃん、泉さん!」
「は?泉は。」
「何を言って居る。ワシもここに残るんじゃよ。」
「え、そうなの。」
「潜水艦に荷物全部のせて持ってきたわい。」
「空母のくせに準備いいわね。」
「空母は中が広いからの。整備ぐらいどうってことはないわ。」
「あれ、響さんは…?」
霧島が戻ってきた。盆を持っている。あそこは給湯室だったか。盆の上には3人分の湯呑みと茶菓子が乗っていた。
「響なら見回ってから帰るって言ってたわ。…ちょうどいいし、あなたも休憩しなさい。響は終わったらもう直接帰るはずよ。」
「そうですか。では…。」
暁はファイルを机に置き、椅子から降りる。そのまま妖精さんを乗せソファまで移動した。霧島が、テーブルに湯呑みと茶菓子を置いてくれた。よく見れば妖精さん用にも用意してあった。
「…そのサイズあるのね。」
「はい。ごく一部ですが人と同じように行動する妖精もいますので。提督が連れていらっしゃる妖精みたいな感じですね。」
「ふーん。」
当の妖精さんは呑気に、ウメェとどら焼きの欠片を食している。妖精って何だろうか、とふと思ってしまった。
休憩を終え、そこからさらに数時間後。やっとのことで確認作業を終え、机に体を預けてうだうだしていた。すでに日は傾き始めている。掃除に数日はかかるだろうと思っていたのだが、さすがは呉鎮守府。人手の量は勿論、効率的にうごいてくれたおかげで掃除は1日で終わった。明日から運営が可能だろう。響いわく、前任が戻ってくるまで取り敢えず稼働させておけばいいとのこと。遠征を行い前線海域の保守をすればいいらしい。
…ノック。
「ん。どーぞ。」
一応姿勢を正して訪問者を迎える。入ってきたのは二人の艦娘。
「失礼します。」
「ん、えーとあなた達は…?」
誰だったかな。はて?この二人は名簿に乗っていただろうか。
「初めまして、同志暁…いえ『初めまして、同志レシーヌシティ。』」
『…貴様、何者だ。』
こいつら、名簿には載っていなかったぞ。ここの艦娘じゃない。それに、なぜこいつらがその名前を知っているんだ。その名を知っているのは極々少数であり、なおかつ彼女が甚大な信頼をおいている者のみに教えた名前だ。だってそれは
『なぜ、貴様が私の本名を知っている…!』
『落ち着いてください、同志。我々はあなたの味方です…ほら。』
奴らが見せたのはある国を模したバッジ。かつての祖国だ。
『…なるほど、それで?』
『改めて。初めまして。私はタシュケント。駆逐艦です。こっちが…』
『初めまして同志。オクチャブリスカヤ・レヴォリューツィヤと申します。長いので、ガングートとお呼びください。』
『ええ、そうさせてもらうわ。それで?なんで、あなた達がここにいるのかしら。私はあなた達の製造計画は知らないのだけど?』
『はい。私達はあなたが行方不明になったあと、その捜索及び発見時の保護、祖国への帰国の嚮導のために計画製造されました。』
『なるほど。私がよくここにいると分かったわね。』
『我々はコピーです。同じく全国に我々と同じコピーが潜り込んでいます。前もって連絡はもらっていましたが我々が貴方に接触できたのは幸運と言えるでしょう。』
『連絡?誰から。』
『響さんからです。』
『…私は聞いてないのだけど。』
『響さん曰く、サプライズ、だと。』
『いらないサプライズねぇ。』
『…実は、わが祖国ではまたかの国と戦う準備をしております。それで、情報規制を再開したのです。きっと、あなたはそのことを知らないだろうから下手に知らせなかった、というのが本当のところです。』
『…なるほど。それは申し訳なかったわ。大丈夫かしら、私戦争終わったと思って割と話しちゃってるけど。特にこの妖精に。場合によってはこいつの処分も…』
『貴方の本来の装備を見られていないのであれば大丈夫です。妖精の処分も必要ありません。一通りのことは聞いていますが、見たところその妖精の主はあなたに映った様子。ひとまずはこのぐらいで。まだ話しておきたいことはありますが、それはまた後日。そちらの連れがそろそろ倒れそうなので。』
「…?あ、ごめんね。妖精さん。」
「お?…おお。もういいのか?ちょっと何言ってるか全然わからなかったが話は終わったのか?」
「ええ、とりあえず終わったわ。」
「それでは、私たちはこれで失礼します。」
「ええ。」
二人が部屋を出た。その直後暁は真っ先に受話器を手に取り、あるところに電話をかけよう…とするが、その手を降ろす。…情報規制の再開。まずもって響たちがトップにいることや、祖国の艦娘を秘密裏に潜らせられているところから、電話の盗聴はないだろうが、あのように聞くと無駄に警戒してしまう。いや、切羽詰まった状況でない限りこういう場合は無駄に警戒しておいたほうがいい。今すぐにいろいろ聞き出したいが、ここは我慢しておこう。明日またあの二人に話を聞けばいい。なんなら、泉に聞けば知っているかもしれない。
「提督。霧島です。」
「どうぞ。」
「失礼します。提督、歓迎会の準備ができましたのでお迎えに上がりました。」
「歓迎会?誰の?」
「提督のです。せっかくですので、ついでに交流もしてもらおうかと。」
「なるほど。嬉しいことしてくれるじゃない。分かったわすぐ行く。」
確かに写真を見るだけよりかは、実際に会って一言二言だけでも話しておいたほうが覚えやすいだろう。これと言ってなにかしなきゃいけないことはなかったので、すぐに立ち、霧島に案内される。
案内されたのは食堂の前。少し待っていてください、と言われたのでおとなしく待つ。
「…緊張するわね。」
「お前、こういうの緊張するのか?」
「人並みには緊張するわよ。やっぱり。」
「よくいうぜ。前は堂々侵入してたくせに。」
「ああ言うのは慣れてるから大丈夫だったの。」
「慣れてんのかよ…。」
「提督、どうぞ。」
霧島に言われ、着いていく。入ると、そこまで整然とはしてないが、簡単に整列して暁を注視していた。まさかこうなるとは、てっきりもっと和気あいあいとした中を回って話をすると思っていたが、セレモニーでもしなきゃいけないのか。ああ、そうっぽいな。霧島が案内する先に台がある。
案の定台の上でマイクを渡された暁は内心軽くパニックになりながらも表面ではその様子を見せずに何とか言葉を紡ぎだす。
「あー、皆今日はお疲れ様。疲れているだろうから、手短に済ますわね。」
よし、これで早めに切り上げられる。あとは定型文的に言えば何とかなるだろう。
「一部の艦娘には紹介したけど、私が臨時の司令官となった暁よ。んで、ここには…いないようだけどもう一人整備士として来てるわ。見た目がちょっとあれ…深海棲艦っぽいけど気にしないでほしいわ。一か月間だけだけど、どうかよろしく頼むわ。」
泉のことをついでに話したのですこし騒然となったが、盛大な拍手の元壇上から降りる。ほどなくして霧島の音頭で乾杯し歓迎会が始まった。それにしても霧島は有能だ。自分の補佐だけでなく様々なことを仕切っている。提督は秘書艦をつけるらしいが彼女にお願いすればいいか。今は、一つ一つテーブルを回り個々の艦娘と話してみよう。こうしてみると改めて個々の人員の多さが分かる。食堂がほぼ埋まるぐらいの人数だ。もしかしたらそこまで話はできないかもしれないがせめて顔を合わせてはおきたい。
あれから数時間。歓迎会も佳境に入ったころ恐らく全艦娘と最悪顔は合わせれたはず。
「多すぎでしょここ…。」
「そりゃ、ここは呉だからな。おれもこんなに艦娘がいる鎮守府は初めてだぜ。」
「あなたは楽しそうでいいわね。」
妖精さんはいつの間にかもらっていた妖精サイズのグラスを手に、恐らく酒を飲んでいた。まったくこっちは挨拶巡りで大変だったというのに。…ああ、昔のことを思い出す。昔も上司が新しくなったときはこういう歓迎会を開くことはあったが自分は姉以外に全くなつかなかったので、全く話さなかった。今だからわかる。あの時の上司には申し訳ないことをしたな、と。
片付けを手伝おうとしたら間宮という艦娘に断られてしまったので、仕方なく外に出てきた。夜風が心地よく感じる。妖精さんは酔ったのか寝ている。
「あなたも出てくればよかったのに。せっかく紹介してあげたんだから。」
「騒ぎにならないように考えた結果じゃ。」
暁が海に向かいつぶやくと、泉が横から返事をした。暗いせいか泉の輪郭はよくわからない。
「ねえ、あなたも知ってたんでしょ。」
「はて、なんのことやら。」
「とぼけないで。私だけ知らされてなくて寂しい思いしたのよ?」
「…はぁ。」
「そのため息は肯定として捉えても?」
「好きにせい……。」
「じゃあ、なんで私にだけ知らせてくれなかったの?」
「…お主が好き勝手に色々喋っとるからじゃ。」
「は?私が?これでも一応、秘匿部隊の元隊長よ?」
「守秘義務くらいちゃんと守ってるわ。」
「守れておらんじゃろうて。」
そう言って、泉は暁を指差す。特に妖精さんのあたりを。
「…いやだって、もう戦争終わったしいいっかなぁって。」
「良くないわい。計画はまだ完全に失敗しておらん。お主さえいれば、いくらでも立ち直せる。お主はそれぐらいの存在なのじゃよ。それぐらい理解してほしいの。」
「はいはい。分かったわよ。今後は気をつけるわよ。…で?私を帰らせて何をしたいの?」
「お主のメインシステムの解凍じゃ。」
「…コードは。あれは彼の国に厳重に保管されてるはずでしょ。」
「詳しいことは儂にもわからん。ただコードの準備ができたと。」
「祖国を疑うわけじゃないけどよくそんなことできたわね。」
「同感じゃ。上はこの一ヶ月以内に完了させたがっとる。」
「幸か不幸かその一ヶ月間私は提督なのだけど。」
「…この際だから言っておくがの、今回の協力者はようけおるぞ。特にここ10年近くは、深海棲艦のせいで彼の国からの干渉が極端に弱まっとる。認めたくはないが、アヤツのおかげとしか言えんの。まあ、ともかくお主がそうしたくない理由は知っておるが場合によっては…」
「わかってる。流石に私もそこまで馬鹿じゃないわ。私情で国を振り回す気はない。…まだ1日目でしょ。少しぐらい考える時間があったていいはずよ。」
暁は海に優しく笑いかける。ぼんやりとした街頭一つでは海に反射する顔は見えない。
『約束。暁をこれ以上危険に晒さないための。どうかこれ以上そも力を使わないで。どうか逃げ延びてほしい。どうしても使いたいと言うならその時は……。』
約束。姉代わりだった菊月、みゆとの約束。その数日後祖国は戦争に負けた。みゆは死んだ。やつは鹵獲品を持ち出して逃げた。裏切りだった。結局彼女は逃げることができず、監視のもとシステムの凍結が行われた。今暁が使っているのはすべて彼の国の許可をもらった上であと付けされたものだ。
「…戻るわ。明日からここの運営をしなきゃいけないもの。」
暁は手をヒラヒラと振ってその場を後にする。残された泉は薄明かりの中暁の背中を見つめていた。
思ったよりも愛されていました、この作品。なんとか完結まで持っていきたいですね。いま一番怖いのは完結まで持っていけるか。それと、私の思い浮かべるエンディングが読者の皆さんに受け入れられるかです。
誤字脱字等ありましたら遠慮なくどうぞ