最強と言われた艦娘   作:猫又提督

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30話

「…い。お…い。おーい、おい。起きろー。」

「んんー、んにゅ?」

「もうすぐ21時だぞ。」

 

時計を見ると5分前だ。

 

「ほら、着替えろ着替えろ。」

「んー、急かさないでよお。」

 

何か夢を見た気がするが全て忘れた。あまり時間も見なかった気がする。急かさないでほしいが、艦隊がもうすぐ帰ってくるのは確かなので急ぎはする。着替えて椅子に座り一息ついた頃、ノックが聞こえた。

 

「艦隊、帰投しました。」

「ん、入ってどうぞ。」

「失礼します。」

 

入ってきたのは短めのツインテの赤い服の艦娘。身長的に巡洋艦。川内とか言ったか。しかし暁は川内の姿を見た瞬間立ち上がり川内の前に立った。そして手を合わせオジギ。

 

「…ドーモ、ハジメマシテ、 暁です。」

 

突然の行動部屋にいた誰もがその行動を理解し得なかった。しかし、川内は違う。暁と同じように手を合わせオジギする。

 

「ドーモ、ハジメマシテ 、暁=サン。 川内です。」

「何やってるんだお前ら。」

「ちょ、妖精さん。妖精さんもアイサツしなさい。ニンジャにはアイサツしなきゃだめなのよ。コジキ?にもそう書かれてるって昔言われたわ。」

「いや、川内は軽巡洋艦で忍者ではないぞ。」

「でもアイサツしたわ。ニンジャよ。」

「もう大丈夫ですよ、暁=サン。私は川内、あなたは提督。これで終いにしましょう。」

「…わかったわ。」

「…はい!提督、報告書。」

「はいはい、えーっとぉ?」

「変わり身が早いぞ。」

 

この一連の行動についていけたのは起こした張本人のみ、他の者は何がなんだかわからず終始唖然としていた。

 

「…特に気になるようなことはなしね。あなたから言っておきたいことはある。」

「なにも。特に変わった様子はないよ。哨戒は__鎮守府に引き継いでもらったから。じゃあ、私はこれで「夜戦はだめよ、寝なさい。」えぇ。」

「書き置きに残されてたのよ、川内に夜戦に行かせるなって。」

「えぇー、なんでー。」

「危ないからでしょ。深海棲艦は最近減ってるんでしょ。好きで夜戦に行く理由はないわよ。」

「ちぇー。」

 

川内はふくれっ面で出ていった。それに少し遅れて他のものも外に出る。再び部屋に静寂が訪れた。

 

「さっきのなんだ。」

「さっきのって、アイサツ?」

「あれは挨拶…いや、名乗ったから挨拶?」

「あれは、まあ、一般的な挨拶ではないわね。」

「自覚してんのかよ。」

「あれはアイサツであって挨拶ではないんだもの。アイサツは誰にでもやっていいわけではないわ。ニンジャにだけやらないとだめなの。昔そう言われたわ。」

「…わからん。じゃあ、お前って忍者なのか。」

「私はニンジャではないわ。でも、心はニンジャなのよ。じゃなきゃアイサツなんて出来ないわ。」

「あーうん、わかった。俺が理解しようとしたのがいけないんだ。うん、そうだなお前はニンジャだ。アイサツは大事だな。古事記にもそう書かれているんだもんな。」

 

改めて報告書を見る。昼間と同じように特別な行動はしていない。戦闘もなし。川内の偵察機で遠くに艦隊を見つけたのが数度程度だ。昼間よりかは夕方のほうが出没は多いみたいだ。これが多いのか少ないのかはもう数日かかる。報告書を挟んで背伸びをする。体が伸びていくのがわかる。時刻を見ると先程の出来事が10分にも満たないことであるのがわかる。消灯時間まで2時間近くあるがどうしようか。先に寝てしまうのはそれとなく駄目な気がする。しかしかと言ってやる事も…そう言えば今自分は一人だ。じゃあ、あれでもして遊ぶか。

暁は机の上で手をかざす。飛行機が出てきた。いつしか作ってみせた零戦の52型。

 

「お、懐かしいな。どうした急にそんなもの作って。」

「ただのの暇つぶしよ。やることないんだもの。」

「そう言うなら先に寝ちゃえばいいだろう。」

「えー、何か駄目な気がする。」

「お前は、破天荒なのかきっちりしてるのかよくわからないな。」

「悪かったわね。」

 

ウキウキと暁がつくった零戦に乗り込む妖精さんにムスッと顔を向ける。

 

「そういや、前に泉がお前のシステムがどうたらこうたら言っていたがどうなんだ。」

「…どうってのは。」

「いや、あいつがシステムを開放できたらーとか言ってて、お前が乗り気じゃないって聞いたからよ、開放する気はねえのか?」

「藪から棒にどうしたのよ。」

「別に、お前が飛行機作るところ見てちょっと思い出しただけだ。」

「…他に何か詳しく聞いた?」

「お前がロックしてるシステムが4つって言うことぐらいだな。」

 

なんだ、あいつ結構話しているんじゃないか。泉に一応許可をもらってから話そうかと思っていたが別にもう話してしまってもいいんじゃないか。

 

「…厳密に言えば私のメインのシステムは一つよ。その4つは…なんて言ったらいいかしら。設計図、かしらね。」

「設計図?」

「ええ、メインは工場みたいなもの。その4つには設計図やら、それを使うためのものが収められてて資材が尽きるまで私はその兵器を作り出せたわ。」

「ほぉ、それまた便利な。なんでメインはロックしてないんだ。」

「ロックしてないというか凍結できないのよ。するには大きすぎたの。だからそれ以外を凍結した。設計図がなければ工場なんかあっても意味はないでしょ?」

「まあ、そうだな。じゃあなんで解除しねえんだ。できるんじゃないのか。」

「凍結されたデータが遠くにあったってのが理由だったんだけど、最近なんか手に入ったみたいなのよね。」

「じゃあ、やればいいじゃないか。」

「そうも行かないわ。約束したんだもの。特別なとき以外は使わないって。」

「ほーん。その特別な時ってのは?」

「忘れちゃったのよねぇ。どっちみち今月中には解凍するんだけど、ちゃんと約束は守りたいのよね。」

「うーん、まあそうだな。約束は守りたいよな。思い出せるといいな…いや、お前それ思いっきり使ってないか。零戦作ってるしなんか甲板も出してたよな」

「…作るだけならセーフよセーフ。あの甲板は元々私にはなかったものだし。」

「…作る能力はあるんだよな。」

「ええそうよ。設計図か、もしくはそのデータがあれば作れるわよ。」

「じゃあ、明日色々作ってくれよ。ここなら飛行機の設計図とかもたくさんあるし、俺乗ってみたかった機体がたくさんあるからよ。あ、無理なら無理でもいいんだがよ。」

「いいわよ別に、作るぐらいならね。私に内蔵されてる資源は有限だから作ったら還元させてほしいけどね。」

「やったぜ。今暁が作れる機体ってなんなんだ?」

「ん、そうね…零戦に…あ、いや零戦だけだわ。」

「あれ?前になんか飛ばしてたよなすっごい早いやつ。」

「あれは、機体自体があるのよ。作ってはないわ。」

 

暁は、先程零戦を作り出したときとは違って、一度手を握り、開くとそこに手乗りになった戦闘機が現れる。確か…トムキャットとかいうやつ。

 

「おお、これだ。これ。乗っては見たいんだが何分操作がかなり難しそうなんだよな。」

「乗るだけなら誰でもできるわよ。」

「そうか、そうだな……うっひょー、零戦より操縦席が広いな。それに、なんか知らない機器とか変なボタンばっかりだな。これ全部使うのか?」

「さあ、私はその機体にはあまり詳しくないからよく知らないけどそうなんじゃない。」

「自分のものなのに知らないのか?」

「これはもともと泉のものよ。この機体を飛ばすためのカタパルトも後付されたものだし。本当はちゃんとした自分の愛機もあったのよ。…その愛機は作れないけど。」

「なーるほどなー。」

 

その後は、消灯時間まで謎に零戦を量産し編隊を机の上で作り遊んでいた。妖精さんはその光景を楽しんでいた。

 

 

 

一週間過ぎた。秘書艦は一週間ごとに変えることにした。週末は演習を行った。そのころをめどに変えてもらうことにした。今週は長門だ。

 

「よろしく頼むぞ。」

「ええ、こちらもよろしく頼むわ。」

「…アレはなんだ?」

「あー、やっぱり気になるかしら?」

 

長門の視線の先はタンス。その上には零戦をはじめとして隼、流星、彗星など様々な機体が載っておりその先頭にある零戦の中で妖精さんが満足げに座っている。

 

「あとで片付けとくわ。」

「あ、いや。気にしないでくれ。ちょっと気になっただけだ。」

「妖精さんが気に入っちゃったのよねぇ…。」

 

あの日の翌日、さっそく暇を作った暁はこっそりと工廠に忍び込み設計図を探った。自分の力を見られるわけにはいかなかったので隠れて行ったが、泉にばれてしまいなんやかんやあって泉に設計図を取ってきてもらった。

そこからは、ファッションショーならぬ航空機ショーが始まり、妖精さんが納得いくまで航空機の製造を続けた。結果があれだ。まぁ、ここのでの仕事が終わるまでは放置でいいか。帰るときに全部戻せばいい。

ちなみに、何故か妖精さんにシステムの話をしていたことを泉に怒られたので、以前泉が話したというと、一瞬真顔に戻り頭を抱えた。…うっかりだったのか。

 

そして今。例のごとくやることがなくなり暇だ。一週間たってもこの暇な時間をつぶす方法が見つからない。読書を進められたがここにあるのはどこも堅苦しい指南書ばかりだ。漫画の一冊もおいてない。

 

「暇ねぇ…。」

「…提督は武術が達者だと聞いたが本当か?」

「武術?うーん、どうかしらあまり人と比べたことないからわからないわ。ていうかそれどこ情報?」

「摩耶がいろんな人に話しかけているのを聞いてな、大きな斧を用いるそうじゃないか。天龍や木曾が目を光らせていた。かくいう私も気になっているだがな。」

 

あー、なるほど。摩耶か。あの時は怒りで我を忘れていたが今思うとちょっとまずかったかもしれない。後付け品とはいえ自分の装備の一つをさらしてしまった。そこまで神経質になっていろいろ隠す必要もないかもしれないが、念には念をということだ。しかし、見せてしまったのならもう遅い。幸い、後付け品なので別にばれても問題はない。心配なのはこれで私の反応速度等のスペックが知られるくらいだが…鎮守府内の怪しい奴は全部あいつら二人が調べているらしいからひとまず鎮守府内でその危険性はなかろう。

 

「…あれは、まあ。あまり振り回すものではないのよ。危ないから。何でも切れちゃうわ。」

「あまり覇気がないな。触れてほしくなかったか?」

「いや、そういう訳ではないけど、そうねあまり触れないでもらえると助かるわ。」

 

全く、長門は優秀だな。非の打ち所がない。別に見せてしまってもいいんだが、まあその木曽と天龍というやつに付きまとわれても面倒だし後で摩耶にあまり話さないように言っておこうか…いや、あの時すでに結構な数の艦娘に視られたから摩耶に言っても無駄か。何か問題が起こったらそのときに考えればいいか。

その後、哨戒隊が帰ってくるまで長門と世間話をした。長門は案外外のことも知っているようだ。霧島はあまり知らないようだったからあまり外聞が広くないと思ったが長門は毎日新聞を読んでるそうだ。一部の艦娘しか読んでいないようだが、そのおかげで外の出来事もよく知っていていい話し相手になってもらった。相談事も上手く、特に今日の遠征にどの艦を使おうかと悩んでいると、熱く駆逐艦を推し、その何がいいのかまで詳しく教えてもらった。途中からただただ長門の駆逐艦に対する愛を語られたがそれだけ彼女は駆逐艦に関心を持っているのだろう、うん。ちょっと怖かったが。

 

 

 

「ちぃーっす。鈴谷、帰ってきました。はいこれ報告書。」

「ノックはしてね…はい、じゃあ交代してきて、ゆっくり休んでね。」

「ほーい、じゃあしっつれいしまーす。」

 

旗艦だった鈴谷が報告書を出してすぐに出ていった。元気なのはいいがもう少し礼儀正しくしてもらうと助かるが、素のままでいいといったのは自分なのでこう、強く言えるわけでもないが。しかし、長門は呆れているようだった。

 

「はあ、全く。済まないな提督。あいつは昔からああでな。後で言っておくからあまり悪く思わないでくれ。あれでも結構ムードメーカーなんだ。提督の前ぐらいはもう少し弁えてくれるといいんだがな。」

「いいのよ、気にしなくて。楽にしてって言ったのは自分だから。」

 

それでも長門はまだ少し申し訳ない顔をしていた。

報告書を見ると、前回からほんの少しだが深海棲艦の数が増えていた。誤差の範囲内だが、今まで減少し続けていたぶん少し気になった。だが、本当に誤差の範囲内だし、他におかしなところもなかったので放置しておいた。その後、遠征に出す艦娘を呼び遠征に行ってもらった。明日の朝帰ってくるよていだ。長門が変にウズウズしていたのでついでに見送りを頼んだら喜んでついていった。駆逐艦たちも喜んでいたし、相当人望があるのだろう。流石に駆逐艦と一緒に遠征に行こうとしたのは引いたが。




川内を出すのならやはりニンジャは出したいですよね。長年の夢がかなってよかった。初期設定だと、いまの長門ポジは川内だったらしいんですけど一体何があったのか…まあ、アニメのせいでしょうけど。
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