最強と言われた艦娘   作:猫又提督

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戦闘表現頑張った……


31話

今週は何も起こらなかった。いつも通り少ない書類をさばき、長門と会話して夜は奴らの誘いを断る。そういえばあの時杞憂だと思っていた深海棲艦の数だが、懸念までになってきた。明らかにまた増えてきた。もはや母艦は一切見なくなったものの、駆逐級が数を増やしてきた。そして潜水艦も増えたそうだ。潜水艦は見たことがなかった。それ以外は依然として見ないのであっちの狙いが全くわからない。現状、あちらが手を出してこない以上代理である彼女に作戦の発動権はない。だからほっといてはいるのだが。

 

「…気になるわねえ。」

「深海棲艦の発見数の増加か。」

「そう。私は何もできないから一層ね。」

 

今日は日曜日、演習をする日で長門の秘書艦期限だ。今、彼女は演習場で哨戒の報告書を読みながら提督の待機場にいた。

 

「他の鎮守府が何も言ってこないなら、まだ大丈夫だと思うが。」

「私もそう思うけど、何もできないと少しの不安が増強されるのよ。」

 

2週間のうちに、かなりこの鎮守府に情が湧いてしまった。上としての自覚が出たということだろうか。それとも、久々にまとめる立場に立ったが故か。ともかく、そのおかげで少しの懸念がかなり気になるようになってしまった。あまり危険なことにはしたくない。

 

「そのことはまた後で考えよう。演習が始まるぞ。」

「ええ、そうね。」

 

ファイルから目を挙げ目の前のモニターを見る。間も無くブザーが鳴り、演習の開始を告げる。今日の演習の編成は『赤城 加賀 榛名 鳥海 吹雪 深雪』と『翔鶴 瑞鶴 霧島 摩耶 球磨 雪風』。両者の旗艦は共に空母。強力な戦力となるが、防御力は脆弱で夜戦には投入できない。今回は演習なので夜戦はできないが空母をどう扱うのかが鍵となるだろう。交戦距離は鎮守府を基準に10km、お互い20km離れている。

まず互いに航空機を出す。赤城と加賀はまず戦闘機から発艦させている。空母はまず戦闘機から発艦させるのがセオリーだと聞いた。一方翔鶴と瑞鶴の方は、翔鶴が出しているのは戦闘機、瑞鶴は攻撃機を出している。こっちは少し変わった出し方だ。一方が攻撃機を集中的に出し、もう一方が戦闘機を出すらしい。翔鶴の艦隊は空母はそのまま他の艦が動き出す。

彼女の前に広がる海で飛行機が交差、戦闘が始まった。それぞれの飛行機には認識しやすいそうに赤城と加賀の飛行機には尾翼に赤と青のラインを、翔鶴と瑞鶴には白いラインを入れている。航空戦は赤城たちの方が優勢か。しかし、翔鶴が先に攻撃機を出したので、戦闘機の網を抜けた攻撃機が赤城たちに向かう。翔鶴の艦隊は空母を置いて残りの艦が進んだが、赤城の艦隊はその場で輪形陣をとっていた。防空特化の陣形に翔鶴の飛行機はどんどん落とされる。しかし、翔鶴たちの機体は流星。速度が速い。やはり何機か対空砲火を抜けて魚雷を落とす。ただ魚雷を投下した機体が少ないので艦隊は難なく魚雷を躱す。それ以降も数機ずつ変に時間をかけながらしていると突如赤城と加賀の周りに水柱が立つ。どうやら艦攻に気を反らせてそのうちに艦爆を気付かれずに艦隊の上まで持ってきたらしい。翔鶴の装備を確認すると見事に全ての機体が流星だった。流星は魚雷の他に爆弾も持てる。それには流星はエンジンのパワーもあるので他の艦爆機よりも早く登る。まさに流星だからできる芸当だろう。

 

「…洒落たことするわねー。」

「いやー、すごいな。あれはなかなか難しいぞ。」

 

妖精さんが興奮気味に言う。

「やっぱりそうなの。」

「ああ、俺は艦攻に乗ったことはないがそれでも怖さは分かるぜ。戦闘機と一緒に前はって飛ぶなんてほぼ自殺行為だぜ。でも、初っ端に攻撃機が来ると結構焦ると思うぜ。どんなに数が少なくてもな。」

「本当に賭けだがな。制空権が取れてないうちに攻撃機を出してもすぐに落とされる。それでも、これを決行しようとしたのは流石姉妹。それ相応の信用がある。」

「…実は前々からこの戦術を試していたのは知っていたんだ。」

「ほう、それはなんで?」

「前に、一航戦に負けた時にな…あー、その、加賀が酷く瑞鶴を煽ってな。それで瑞鶴がまあキレて。なんとか出し抜こうとこの作戦を思いついたんだ。」

「へえ…え、加賀って煽るの?」

 

会った時にただひたすらに冷静に対応していたから、そんな煽るなんてことするはずがないと思っていたんだが。

 

「いや、そんな悪いやつじゃないんだ。ちょっと感情表現が下手でな。煽ってるって言っても瑞鶴のことを思ってなんだ。あいつにとって瑞鶴は大切な後輩だからな。ただ、ちょっと変なプライドが邪魔してるだけなんだ。」

「へえー大変なのねえ。」

「おぉーこっちの赤城もすっげえなぁ艦隊への指示が速いぞ。」

 

ん?あ、そうか。そういえば妖精さんって元々赤城のところにいたのか。…別個体っていうことなのか、つまり。ねえ…と聞こうとしたが長門が聞くと不審がるかもしれない。代理といえども提督をしているものが艦娘における常識を知らないのはおかしい。後で泉か響にでも聞いてみよう。

さて、その赤城はというと攻撃を受けてからすぐに対空砲火を上に向けた。思いがけない方向から受けたにもかかわらずパニックにならずにすぐに指示を出せるのは難しいものだ。彼女もその昔、隊長をしていた時に奇襲を受けたことがあるが暗闇だった上、隊長として日が浅かったのでかなり取り乱した。あれはかなり旗艦として経験を積んだのだろう。しかし、運悪く一発の爆弾が加賀に被弾。当たりどころが悪く中破してしまった。

 

「これは痛いな。空母が一隻抑えられるだけで戦力は半減したと言ってもいいな。」

「いつの時代も戦闘は空を制したものなのね。」

「瑞鶴が随分とはしゃいでいるが…まあ仕方がないか。」

「煽られた相手にいっぱい食わせれたら、まあね。」

 

しかし赤城の艦隊にはさらに追撃が来る。今度はまた大きな柱が生える。爆弾ではない。砲撃だ。開幕翔鶴の艦隊は空母を残して他の随伴艦は前に出たがそれが到着したのだ。霧島が砲撃をし、さらにその前を走る摩耶が砲撃、さらに進んで球磨が砲撃をする。雪風はそこから少し離れて艦隊の側面に回ろうとしている。駆逐艦には一撃必殺の魚雷がある。駆逐艦をどう扱うかで勝敗が決まると言ってもいいだろう。して、その駆逐艦である雪風は単艦で側面に回ったがいくら他が注意を向けようとしても、目論見がわかりやすい分相手は多少リスキーでも駆逐艦を止めようとする。雪風以外の攻撃に対して榛名だけ対応し、他は雪風に全砲門を向ける。

 

「あれは終わったわね。作戦はいいと思うけど無茶しすぎたわね。」

「いや、案外そうでもないぞ。この戦いは翔鶴の勝ちだろう。」

「なんで?」

「運だよ。」

「運?」

「見てればわかる。」

 

雪風に向かう無数の砲弾。避けようともせずまっすぐ進む。やがて再装填の間が空くが、雪風のスピードは変わらず、その姿から被弾しなかったことがわかる。

 

「は?嘘でしょ。あれ全部避けたの?」

「違う。運が良かったんだ。運良く全ての砲弾が雪風に当たらなかったんだ。」

「うおー、すげぇ。あれが噂の幸運の女神か。」

「有名なの?」

「ああ、佐世保の時雨と一緒に呉の雪風って言われてる。他の雪風も運がいいんだが、呉の雪風は特に運がいいんだ。」

「出鱈目な運してるわねえ。」

「結構新聞に出てると思うが知らなかったか?」

「…さあ?新聞に出てたかしら。最近提督になったばかりだから。」

「はは、そんなに怖い顔しないでくれ。確認してみたかっただけだ。そうだ。新聞には出ていない。軍の情報はそうそう外には流れん。流れるとしたら鎮守府内で全員が知っていることかつ、少し古い情報だからな。漏れてないか確認してみたかった。流石に横奈のことはマスコミに散々報道されてしまったがな。」

 

危ない危ない。後で一通り教えてもらわないと。

 

「でも長門は毎日新聞読んでるじゃない。」

「大規模作戦のときは数日開けることもあるからな。」

「あなたが見張ってどうするのよ。そういうのは上の仕事でしょ。」

「む…そうだな。私が見逃しても上が見逃すわけがないか。はは!一番しょうもないことに気づかないとは、灯台もと暗しだな。」

 

さて、話を戻そう。

きっと、実力もあるのだろう。運良く弾が当たらないのだとしたら相手が発砲した時点でそれが決まっているはず。発砲されたからといって無駄に避ければかえって被弾する可能性が高い。自分には当たらないという自信が幸運を助長させているのだろう。…適当に動いてアレなら本当に幸運だが。

十分に接近した雪風は魚雷を発射。すぐには進路を変えずもう少し進んでから横に避けた。進路を変えれば魚雷を撃ったとわかるから、タイミングをずらした。魚雷を発射するところをおそらく見られはしただろうが誤認と判断するかもしれない。その実、陣形の都合上一番雪風に近かった吹雪は雪風が横に逸れたのを見てから赤城に魚雷が発射された旨を伝えた。幸運にも丁度雪風が魚雷を撃つ直前に挟射のために吹雪だけしか見えなかったのも功をそうし、見事魚雷は命中。赤城、加賀を除いて榛名以下全員が中破ないし大破した。魚雷を警戒して雪風とは反対に移動していた赤城と加賀は直撃を免れたが、まもなく摩耶と霧島の砲撃により大破。翔鶴たちの勝利となった。

ブザーを鳴らし演習を終了する。

「早く終わったわね。先週は1時間かかったのに。」

「そうだな、特に今回はかなり早い。まだ30分しか経ってないぞ。」

「それほど新しい戦術が聞いたということね。空母の護衛を捨てて火力に全振りしたのは斬新だし、結果的にいいけど実戦には向かないわね。まあ、よく避けてたとは思うけどね。あの二人空母にしては機動力がいいのね。」

「そうだ。あの二人は高速空母だ。艦隊行動についていけるからな。本気を出せば駆逐艦にも追いつけるんだぞ?」

「え、はや。」

「おい、そろそろ行かねえと。みんな集まってるぜ。」

「あら、いけない。」

 

話しているうちにみんな戻っていたようだ。港に向かい評価をしたあとに解散させる。

 

「うーん、はぁ。疲れたー。」

「お前座ってただけだろうが。」

「えー。最後に何言うのか考えるの結構難しいのよ。今日はすぐに思いついたけど先週なんか大変だったんだから。みんな完璧で素晴らしかったとしか出なかったのよ。」

「はは!褒められると嬉しいな。」

「さ、早く戻りましょ。戻ったら少ない書類を裁かないと。」

 

 

 

今日の報告書を見る限り、また増えた。駆逐艦と潜水艦。戦闘はなし。新しく輸送艦も見えたらしい。なんだ、輸送?巡洋艦以上をすべて駆逐艦や潜水艦、輸送艦にかえて輸送しているのか?…嫌な予感がするな。私の知る限りこの兵器に意思はない。誰かが命令しない限り動かないはずだ。物資の輸送なんて以ての外だ。あいつ、またなんかおっぱじめる気か。取り敢えず、この物資の輸送先が気になる。少しでも情報がほしい。他の鎮守府は嫌がらせのつもりなのか全く教えてくれないし、仕方なく響から教えてもらっているのだがやはり同様の報告が上がっているようだ。どこに向かっているのかはまだどこもわかっていない。途中で潜ってしまうために捜索できないようだ。前線を進むため水上艦が向かうわけにはいかない。だから飛行機で偵察するのが限界だが潜ってしまっては見えなくなる。そこで泉と明石に頼んで特別な索敵機を作ってもらった。とは言っても彩雲に改造を施しただけだが、水中を視認できるようにした。高度によって視認できる深度は違うが海面近くを飛べば30mまで視認できるカメラを搭載した。

この彩雲を護衛付きで飛ばしてもらう。だからもしもの時のことも考えて翔鶴に出てもらうことにした。

 

「さて、これで何か進展があればいいんだけど。えーと午後の演習は…。」

「これだな。」

「あら、ありがとう。…川内=サンがいるのね。」

「(川内さん?)あぁ、相手は災難だな。川内は夜戦になると強いぞ。伊達に夜戦夜戦騒いでないからな。」

「あまりにうるさいからこれで落ち着いてくれるといいんだけど。出撃できないし。あとはどうかしら、一緒に夕立と綾波も入れてみたんだけど。」

「……一方的になるだろうな。大丈夫なのか、それ。」

「大丈夫よ。3人とも一人に時は強いんでしょ?一緒に行動させれば少しはおとなしく戦うんじゃない。」

「どうだろう、どうだろうなぁ。」

 

 

 

 

 

日の入りを迎えてから始める午後の演習。結果は20分も持たず相手が全員大破。川内たちが圧勝した。暁はこの日から川内をこう呼ぶことにした。ヤセンニンジャ=サンと。




受験が近くなったので再開してすぐにまたこんなことになるのは申し訳ありませんがまたしばらくお休みします。執筆は続けるのでできれば投稿はしたいですがないものと思ってください
それではまた2月の中旬に!
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