最強と言われた艦娘   作:猫又提督

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33話

暗い海の底。ある海底洞窟の中。淡い緑色の光だけがこの洞窟を照らしている。その最奥に彼女はいた。彼女はひたすら目の前の機械にかじりついている。機械のもう一つ奥には円柱状のカプセルがあり、その中にはそれが丸まっていた。それを彼女は試作型147号とよんでいた。1つ前の146号は満足な結果を得た。しかし、その代わりに従順性を欠いてしまった。前回それで勝手にカプセルを壊されて逃げられてしまったが、なんとか補足される前に全て始末することができた。

彼女は平和を望んでいた。だからこいつを盗んできた。負けたとはいえやっと戦争が終わった。のに、祖国はこの決戦兵器を使って形勢逆転を狙い始めた。この兵器にはそれだけの力があったが、また戦争を起こせばどれだけの不幸が訪れるだろうか。あの日、彼女は約束した。妹を残し、二人で行った戦場。戦友と最後に交した会話。必ず平和にすると約束した。妹を平和な世界で生活させると。

彼女は戦闘兵器だ。戦うこと以外をあまり知らない。彼女が考えられる平和はこの現状のみだった。新たな敵を作り出し、国と国を遮断させるそうすれば戦争なんかしない。実際彼女の目論見は成功した。だが、あの国と彼の国は対抗手段を作り出した。しかも近頃、祖国が新たに戦争の準備をしているらしい。許されないそんなことは到底許されない。彼女は決断した。この現状と、妹に出会ったことが彼女に決断させた。対抗手段を全て潰してやる。自分は頂点となれば誰も争わない。そのはずだ。絶対そうだ。あの国の艦娘という兵器は決戦兵器すら下してしまう。当時資源の関係上決戦兵器に乗せられた航空機はレシプロ機が限界だった。今は、不明の敵っぽく甲虫だったり丸かったりしているがあれを見てもらえばわかるようにジェット機はすでに載せられる。本気を出す。147号にはSu-27とSu-34を搭載する。戦艦並みの主砲にあの国が作った酸素魚雷、そしてあの戦艦大和よりも強靭な装甲。更には軽巡洋艦並みの速度。昨日の耐久テストも十分。あの国の海軍力ですらあれほどの戦力を投入させた。無敵だ。ネックなのはそれだけの性能ゆえの膨大な資源量だ。コツコツと資源を集めたり無駄に資源だけ食う母艦級を廃止したりしたが、やっと10体分が完成した。今日こいつを10体全て放出する。唯一懸念は万が一ではあるがこの147号を上回る艦娘をあの国が所有しているということだが…いやそんなはずはない。いたとしても1隻、上回る性能なんてたかが1種類だ。一応足止めも含めて3隻回そう。

 

「あっはぁ…!待っててね暁…そうだ!もう本名で呼んでもいいよね。…レシーヌシティ…レシーヌシティ!いや長いな…レシーヌ…うんレシーヌだ。レシーヌ!レシーヌ!あっはっ!私のこともまゆって呼んでおくれよレシーヌ!!」

 

これで全ての軍港を潰してやる。そうしたら妹とここで一緒に住むんだ。みゆのお墓も地上に作ってある。高度差はあるけどまた3人で住める。念願の夢がもうすぐ叶うと思うといても立ってもいられない。彼女はなんの躊躇いもなく放出ボタンを押した。彼女の後ろにあった10個のカプセルにいた147号全てが中身の液体ごと吸い上げられた。彼女は狂気と愉悦の笑みを浮かべ、おやつに取っておいた深海棲艦に齧り付いた。

 

 

 

 

 

向こうが偵察してくれると言うならそっちに任せたほうがいいだろう。こっちはいつもどおりに過ごせばいい。哨戒部隊には例のレ級に気をつけるように言った。

 

「あークソっ。珍しく連絡してきたかと思えば増援!?」

 

昨日、珍しく他鎮守府から電話がかかってきた。出れば何か訳のわからない御託をごちゃごちゃ並べていたが要はレ級討伐に出るからそっちから出す哨戒部隊を増やせだそうだ。今まで散々お願いしようとして電話にすら出なかったくせに。

 

「でも、ちゃんと受けたんだよな。」

「ええ、私は優しいの。そして聡明なの。いくら相手が気に入らないやつでもその要請は正しいから、受けてあげたわ。私怨でこの国を危険に晒してはいけないもの。」

「…お前、それ本当に思ってるのか?」

「もちろんよ?」

「失礼します客人を連れてきました。」

 

ノックが聞こえた。先程鎮守府に客人が来たという連絡が来た。それでガングートに迎えをよこしたのだ。

 

「失礼します。」

「やっほー、お姉ちゃん元気?」

「…は?なんでいるの。」

「えへへ、来ちゃった。」

「来ちゃった、じゃないわよ。なんでここに来たのよ、仕事は。」

「雷達に任せてきた。えへへ、あれだよ。抜き打ち検査ってやつ。お姉ちゃんがちゃんと提督出来てるがテストしに来たんだよ。」

「…そう。まあ、来ちゃったんならいいわ。もう、すぐに回るの?」

「うん。ついでにガングートに色々聞いちゃおうかな。」

「好きに聞くといいわ。行ってらっしゃい。」

「はーい、行ってきまーす。」

「失礼します。」

「自由だな、お前の妹。」

「……そうね。」

 

暁は少ない書類を裁いていた。その様子はたいへん落ち着いているように見える、しかし内心は昨日のレ級のことでいっぱいだった。レ級を見たことはないがあの決戦兵器らしい。艦娘でも撃破できると聞いたので残念半分安心している。が、昨日報告されたという謎の行動が違和感として残っていた。「威力偵察」という結論が出たが、それを前提として考えると近日中に行動に出るはずだ。どう行動に出るのかはわからないが予測では全力攻撃。問題はその攻撃を点で行うか、面で行うか。

点で行う場合、目的は海軍の壊滅。この国の海軍を壊滅させてしまえば脅威はない。彼の国も恐らくまだこの国ほどの力は持っていないはずだ。

面で行う場合、目的は戦力の分散だろう。現状レ級に対抗できるのはこの国のみ。であればカバーできる戦力は広くない。西の方までいけばこの国の防御は薄くなるだろう。デメリットは戦力を分散させる前に補足され各個撃破されてしまう可能性があること。点の場合は集結させてもその全てが撃沈されてしまうこと。

これはあまり確信できない予想だが、奴の拠点は南西側、太平洋の真ん中。もちろんあの進路が欺瞞の可能性もあるがひとまずそれを前提とすると基地が南西の場合だと攻撃は面で行うはずだ。ここから離れているし南側を通れば彼の国に補足される可能性も低いだろう。となれば攻撃は面の可能性が大?……最終的な判断は上とやらの報告を待つべきか。祖国には東側に大きな軍港が1つある。死守しなければ……。

 

「お、美味そうだな。それ食っていいか?」

「…へ?」

 

暁の前にはいつの間にか机にティータイムセットが並んでていた。何故かちょっと高級そうに見える。

 

「あれ、私こんなの準備したかしら。え、誰か準備してくれた?」

「お前がずっと難しい顔しながら準備してたが?なんだ、無意識か?」

「そうっぽいわね…うわ、美味しい。」

 

いつも自分で入れるときより何故か美味しい。なぜ意識下でこれを発揮できない自分。

 

「提督!応答願います!」

 

おや哨戒部隊から連絡だ。しかも緊急事態のようだ。

 

「はいはい。どうしたのかしら。」

「大変です。恐らくですが例のレ級が索敵機から確認されました。私たちから約30km離れています」

「は…それ本当?」

「提督!大変だよ!レ級だ!」

「ああもう。こっちも!?」

 

哨戒部隊はそれぞれ距離が離れている。つまりこの時点でレ級が2体いるということ。なんてことだ、まさか翌日に行動を起こすなんて。ええい、討伐隊は何をしているんだ!貴様らが別の仕事をするっていうからこっちが貴様らの仕事分も引き受けたというのに。

 

「空襲!」

「え、そんな。もう!?っ、対空戦闘用意。」

 

無線機からは混乱している様子がよくわかる。

 

「うっ、は、早すぎる!な、なにあれ…」

「落ち着いて、どうしたの。」

「て、敵航空機が見たことがない形状で、尋常じゃない速度なんです!」

「何か飛んでくるぞ!」

「え…きゃあ!」

「どうしたの。鳥海?鳥海!?」

「提督、鳥海が大破した。代わりに私が連絡を取るぜ。」

「摩耶ね。どう、状況を説明できる?」

「航空機が一機だけとんでもない速度で近づいてきた。対空戦闘を始めようと思ったら射程外から何か打ち込んできたらしいんだ。それが鳥海に直撃した。一瞬しか見えなかったがよ、あの航空機どっかで見覚えがあるぜ。確かじぇ、じぇ…」

「……ジェット機。」

「そうそれだ。昔演習で見たことあるぜ、その時見たやつよりも早かったが。」

「退避!今すぐ退避して!できるだけ距離を取って!」

「お、おう。了解した。おい!退避!逃げるぞ!鳥海、動けるか…?」

 

なんていうことだ。決戦兵器はレシプロ機しか乗せれないはずではなかったのか。ああでもあれから時間もたっている。奴なら改修ぐらいする。

今は後悔している場合ではない。すぐにもう一つの部隊にも退避させなければ。間違いない、相手が撃ってきたのは対艦ミサイルだ。鳥海が重巡であったのが幸いだったが、軽巡以下では1発でも当たれば撃沈してしまう可能性が大いにある。

 

「センダイ=サン!退避!今すぐ退避して!そいつはとても危険よ。」

「了解。提督がそんなに慌てるっていうなら相当だね。」

「っ、そうだ。連絡、連絡しないと。」

 

暁はすぐさま哨戒を頼んできた鎮守府に電話をかけた。しかし、ワンコールでその電話は切られてしまった。この期に及んで…

 

「このっ役立たずがぁ!!!」

 

暁は苛立ちのあまり電話を放り投げた。電話は強く壁に打ち付けられ少し中の部品が散らばってしまった。

 

「おい!落ち着け!お前が慌ててどうする!」

「はぁ…はぁ…ありがとう妖精さん。ちょっとカッとなり過ぎた。…摩耶、センダイ=サン。何か飛んでくるのが見えたらとりあえず動き続けて急制動を繰り返すの。それで何とかこっちまで戻ってきて。」

「了解。」

「了解。援軍は早めに頼むよ。」

「ええ、何とかするわ。」

 

これは大本営に連絡を入れたほうが早そうだ。そんなことを思っていたらバタバタと響とガングートが部屋に入ってきた。

 

「お姉ちゃん!」

「響!ちょうどよかった、たぶん例のレ級が。」

「連合艦隊が敗走した!」

「…ど、どういうこと?」

「さっき連絡が来て大本営と他の鎮守府で組んだ討伐隊の連合艦隊が例のレ級と接敵してすぐに負けたの!連合艦隊が一隻で蹂躙された!」

「は、う、うそでしょ。」

 

連合艦隊が敗走しただと。一隻で蹂躙された?やばい、やばいやばいやばい!それはつまりこの国では手に負えないということだ。同時に我々にはそいつを止める手段がないということになる。

 

「…艦隊が命がけで集めた情報によると、相手は戦艦並みの射程を持っていて速度は大体軽巡ぐらい。ジェット機を飛ばしてきて、追尾式の噴進弾つまりミサイルを所有している。威力からしてたぶん対艦ミサイル。そしてこれは憶測らしいけど主砲と装甲は恐らく戦艦大和並みかそれ以上。」

「は、や、大和を超えるだぁ!?」

「これは絶望的ですね…。」

「ええ、ついでに悪いニュースよ。さっきうちの哨戒部隊二つがそいつと接敵した。少なくとも奴は3体いる。」

「そんな…」

「残念ながら事実よ。」

 

どうする、どうやってあの娘たちを逃がす。逃げ切るにしてもここまで距離がある。それに逃げ切れたとしても航空機でここを攻撃する可能性もある。あるにはある、対抗手段が。しかしそれはつまり姉との約束を破ることになる。

 

「暁。」

「泉…どうしてここに。」

「響がわしと話しているときに急に走り出すもんじゃから追いかけてきたのじゃ。話は全て聞いたぞ……」

「…そうだ…泉、あなた飛ばせるでしょ?」

「…ああ、飛ばせるぞ。じゃがなそれはお主も一緒じゃ。覚えておるじゃろ?」

「…でもそれじゃ約束を破ってしまうわ。」

「お主、国のためには私情は挟まんのじゃろ?今、ここで証明してみせよ。」

「は?今?分かってんの、状況。そんなこと言ってる場合じゃないのよ?」

「暁、わしは心配じゃ。今のお主では最後の決断ができないように見える。その約束は確かにお主には大切なことじゃろう。じゃがの、正直に言うぞ。儂らにとってその約束は邪魔じゃ。お主を手に入れるを邪魔する障害物じゃ。今すぐそれを捨てんかい。」

「……」

「儂は優しいからの。強制はせんが好きに言わせてもらうぞ。お主、いつまで死人の言葉に憑かれとるんじゃ。いい加減やめんか。その言葉は未来永劫をとうしたもんじゃがの今はそれが邪魔じゃ。」

「別に大した不都合なんて

「起こっとるじゃろうが!今!ここで!お主がさっさと捨てんから、先手を取られた!部下を危険な目に合わせた!助けもできんじゃろうが!」

「…ちっ、うっさいわね!この魚類が!」

「好きに言え。じゃが、部下が死ぬ気で来もせん援軍を今か今かと待っておる間、お主が儂に意味もなく安全に暴言を吐いていることを忘れるな。さあ、いえ、言え!部下を見殺しにしながら儂を貶せ!」

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