暫く続く体の硬直。俺、
虹村先輩は非常に几帳面で知られているため、試合前日の今日、矢筒を持って帰るのを忘れるということは考えにくかった。
いやいや、そもそもこれは本当に虹村先輩のなのか? もしかしたら女子部員がたまたま虹村先輩と同じ色の矢筒を使っているという可能性も……、そうだ! 矢の色を見よう。
俺は矢筒に手を掛け、慎重にジッパーを開く。やはりというべきだろうか。矢筒に収納された矢の羽の色は黒で、矧ぎ糸の色は緑。やはり間違いなく虹村先輩の物であった。
俺はそれを確認し終え、ジッパーを閉めようとしたその時、奇妙な物を発見してしまったのだ。
明らかに一つだけ、柄の違う矢があった。白の羽に黄金の尖った矢じり。明らかに競技用の矢ではないことは確かである。
気のせいか、矢じりが妖しく光ったと思われたのその時、確かに
「何ィーッ!?」
その奇妙な矢は、そのまま手の中を滑り、鋭い矢じりで俺の指を切り裂く。想像を絶する激痛、そして傷口からの多量の出血。全てが普通ではなかった。
まるで理解が追いつかない。ただ矢が手の中を滑り、たまたま指にかすっただけなのに、俺の指は紙のようにいとも容易く切り込みを入れられたのだ。
俺は恐れをなして、すぐに矢を放り投げ、壁にもたれた。辺りは急に静かになったように感じ、矢は先程のあれが嘘のように、ただただその場に静止していた。
ふと、傷口に目をやると
「どうなってんだ……、さっきから…、一体」
そこには既に傷と呼べるものは存在していなかった。やはり、俺が見たあれは幻想……、いやそれにしては痛みがリアル過ぎた。これは白昼夢でも幻でもない。何かが確かに今起きたんだ……ッ!
俺は息を荒くして、思索にふけった。だが、思考は更衣室の扉が開かれた音で閉ざされた。
「俺の荷物は漁るなって言ったのによ〜、遂に見ちまったようだな。見てはいけない物を」
「に、虹村先輩!」
そこに佇んでいたのは、この矢の持ち主であろう虹村先輩であった。先輩はポケットから取り出したハンカチで、地面に転がっていた矢の先端を丁寧に拭き始める。
「そうだな。まずはおめでとう…か。生きていてな」
生きていて、か――
俺はまた嫌な汗が吹き出すような感覚を覚える。この男は危険だと、本能が叫んでいる。逃げようと、ドアノブに手をかけようと思ったその時、俺は小人のような迷彩柄の服を身に着けた兵隊が、そのドアノブの上に立っていることに気づいた。
そして、兵隊はゆっくりと、銃口を俺に向けてきたのだ。標準は俺の頭に合わせて。
「な、何なんだ! こいつらはァーッ!」
それが一人や二人ではなく、幾多の兵隊が一斉に銃口を俺に向けたのだから、不気味さも数倍増しである。俺は尻もちをついた。それと同時に何かが落ちた音が響く。
吹雪のようなものが描かれた、青い柄の握りで、全体的に黒っぽい弓が、目の前に落ちていた。先程まではなかったはずのものだ。
「ほう、それがお前のスタンドか……」
虹村先輩はニヤリと口角を吊り上げた。
〈???〉
【破壊力 - B / スピード - A / 射程距離 - B / 持続力 - C/ 精密動作性 - E/ 成長性 - A】
やっぱ飛び道具主人公に成長性は必要だと思うんだよ。
あ、形兆は忘れ物を取りに帰ってきたそうです。