「スタンド」とは「パワーを持った像(ヴィジョン)」であり、持ち主の傍に出現してさまざまな超常的能力を発揮し、他人を攻撃したり持ち主を守ったりする守護霊のような存在らしい。
発現条件はいろいろあるが、どうやら俺はスタンドの矢というものに傷をつけられたために、それが身についたそうだ。
「木を隠すなら森の中。矢を隠すなら矢筒の中と思ったが、どうやらそれも駄目なようだな。」
虹村先輩は拭き終わり、サビが一つもない矢尻を、満足気に眺めながらそう言った。
スタンドを出すには、自身を守ると強く思ったり、相手を懲らしめてやると念じたりすることでできるらしく、先程、虹村先輩が
「さて、俺はある理由でこの矢を使い、スタンド使いを増やしている。」
そのある理由というのが何なのか、虹村先輩は何一つ明かさなかったが、俺の目の前にある弓と矢を見据えたあとに、こういった。
「俺の意思ではないが、お前は偶然スタンド使いになっちまった。どんな能力かは知らんが、それをどう使うかはお前次第だ。
ただ俺の邪魔をするようなら、俺はお前の頭を容赦なく吹き飛ばす。いいなッ!」
冗談抜きのその警告に、俺はすっかりビビり上がっており、声を出すことが出来ず、小さく顎を下に動かすだけであった。俺には怖いと思ったときに、何かを強く握るという癖があるらしく、今俺の右手は袴を強く掴んでいた。
そして、俺が恐怖から解放され、手の力を緩める頃には、既に袴はシワクチャになっていた。
四月になって大分昼は長くなったが、部活終わりには既に日は沈み、辺りは闇に覆われていた。雲に覆われ、月も顔を覗かせない。そんな通い慣れた帰路を弓袋に包まれた和弓を片手に、矢筒を背負いながら歩いていた。
既に明日の試合のことなど頭の中には存在していなかった。今にも雨が振りそうな曇り空を見上げて、ポツリと嘆く。
「弓とかじゃなくて、もっと使い易いスタンドが良かったなぁ……」
今日まで知らなかったスタンドという超能力。俺はどれほどのスタンド使いとこれから出逢い、戦うのか。そんなことは微塵も考えず、自身のスタンドに宿る力も知らぬまま、そんな心無い言葉を零した。
そんな
自我があるタイプのスタンドは、自分でものを考えることができる。彼のスタンドもそのうちの一人であり、後にこれがスタンドの成長を早めたとは、彼自身、知る由もなかった。
主の無神経な言葉で成長を望んだ弓型のスタンド。健気だ。